インターネット業界とは?
インターネット業界とは、その名の通りインターネットを利用したサービスを提供している業界です。
一口にインターネット業界と言っても、Webサイトの制作やWebマーケティング、SNS運用など職種や業務内容は企業によってさまざまです。またBtoCやBtoBなど、取り扱うサービスによって取引先の形態も異なります。
インターネット業界の2021〜2022年における市場規模や成長率、利益率は以下のとおりです。
業界市場規模 | 7.1兆円 |
成長率 | 12.2% |
利益率 | 2.5% |
出典:業界動向SEARCH.COM「インターネット業界」
インターネット業界の市場規模と利益率は、全業界の中でもトップクラスの数値です。コロナ禍により家庭で過ごす時間が増えたことが、業界にとってプラスに働いたと言えるでしょう。
かつてはPCが中心だったインターネット業界ですが、動画視聴やSNSの利用が増えてスマートフォンユーザー主体に切り替わっていることも、業界が成長を続ける理由の一つです。
インターネット業界の代表的な企業
インターネット業界の代表的な企業と、その売上高は次のとおりです。
企業名 | 売上高 |
楽天グループ | 16,817億円(※1) |
Zホールディングス | 15,674億円(※2) |
リクルートHD | 15,098億円(※3) |
GMOインターネット | 2,414億円(※4) |
エムスリー | 2,081億円(※5) |
ZOZO | 1,661億円(※6) |
ディー・エヌ・エー | 1,308億円(※7) |
メディアドゥ | 1,047億円(※8) |
ガンホー・オンライン・エンターテイメント | 1,046億円(※9) |
デジタルガレージ | 729億円(※10) |
※1 出典:楽天グループ株式会社「有価証券報告書」
※2 出典:Zホールディングス株式会社「有価証券報告書」
※3 出典:株式会社リクルートHD「有価証券報告書」
※4 出典:GMOインターネット株式会社「有価証券報告書」
※5 出典:エムスリー株式会社「有価証券報告書」
※6 出典:株式会社ZOZO「有価証券報告書」
※7 出典:株式会社ディー・エヌ・エー「有価証券報告書」
※8 出典:株式会社メディアドゥ「有価証券報告書」
※9 出典:ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社「有価証券報告書」
※10 出典:株式会社デジタルガレージ「有価証券報告書」
売上高は楽天、Zホールディングス、リクルートの3強です。上位3企業は4番手であるGMOと比べると、約13,000億円以上も売上高に差をつけています。
上位企業はいずれもさまざまなサービスを打ち出し、事業の多角化に力を入れているのが特徴です。例えばZホールディングスは「PayPay」を、楽天は「楽天ペイ」などのサービスを展開しています。
利用率の高いスマートフォンのサービスが広く受け入れられていることが、売上高を確保している大きな要因です。
インターネット業界の主なサービス
インターネット業界を代表する6つのサービスについて順に紹介します。
Web広告
Webにおける広告とは、検索結果画面や各Webサイト、SNSなどで表示される広告のことです。
Web広告には、以下のような広告があります。
- ディスプレイ広告:Webサイトやアプリの決められた枠に表示される広告
- アフィリエイト広告:利用者が商品を購入することで広告主に報酬が支払われる広告
これらの広告を出すことで利益を得られます。
eコマース
eコマースとはElectric Commerceの略称で、インターネットを通じた取引全般を指しています。国内ではAmazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングなどが有名なeコマースのサービスです。
ECと呼ばれることもあるeコマースは、先に挙げたようなプラットフォームだけでなく自分でサイトを運営する「自社EC」もあります。
SNS
SNSはSocial Networking Serviceの略称で、インターネットを通じて利用者同士が交流ができるプラットフォームです。代表的なSNSとしては、国内での利用者が多いLINEやTwitterなどがあります。
遠く離れた場所にいる人と交流ができるツールとして、世代を問わず多くの人が利用するサービスの一つです。
eラーニング
eラーニングは、インターネット上での学習サービスです。スマートフォン・タブレットを活用して進める学習コンテンツが用意されています。
これまでの紙媒体と異なり、eラーニングは時間や場所に関係なく、スキマ時間で利用できるのがメリットです。さらにインターネットの強みを活かし、学習の進捗状況やフィードバックを管理できます。
電子書籍
電子書籍は、PCやスマートフォンを使って本を読めるサービスです。電子書籍には、Amazon Kindleや楽天Kobo、ebookjapanなどがあります。電子データを買えば、利用者は好きな時間や場所で本を読むことが可能です。
ポータル
ポータルには入口や門という意味があり、インターネットにアクセスしたときに最初に訪問するサイトを指す言葉です。
主に以下のようなサイトがあります。
種類 | 特徴 | サイト例 |
総合ポータルサイト | ニュースから天気までさまざまなコンテンツが表示される。情報が膨大で、サイト運営におけるコストや人的リソースがかかる。 | Yahoo!Japan |
検索ポータルサイト | 検索に特化している。検索候補が表示されるなど利便性に優れている。 | |
専門型ポータルサイト | 一つの分野に特化している。特定のターゲットに向けた情報が掲載しやすく、Web集客に向いている。 | マイナビ、ホットペッパー・ビューティー |
インターネット業界の職種別の仕事内容
インターネット業界について、職種別に仕事内容を紹介します。
Webデザイナー
Webデザイナーは、Webサイトのデザインに関わる職種です。サイトのレイアウトのほか、色使いやフォントの選定まで行います。
全てのコンテンツにはデザインが存在し、WebデザイナーはECサイトやポータルなどあらゆるインターネットサービスにおいて活躍できるのが特徴です。
また単にデザインだけでなく、クライアントの要望をヒアリングしたりコーディングやプログラミングに関わったりと幅広い業務があります。
デザイナーに興味がある方は、「デザイナーとは?種類や仕事内容、取得すべき資格や年収を紹介」も読んでみてください。
Webマーケター
Webマーケターとは、インターネットサービス全般に関するマーケティング業務に携わる職種です。サイトへのアクセス数などのデータを分析しながら、集客が見込めるよう検証や改善を繰り返します。
Webマーケティングは紙媒体と異なり、データ分析が容易にできます。売上に直結するブランド認知の向上やサイト訪問率の向上が図れるため、インターネット業界には欠かせないポジションの一つです。
Webエンジニア
Webエンジニアは、インターネットサービスに関わるシステムの開発や保守をします。主にWebサイトやモバイルサイト、ECサイトにおける機能の開発などで活躍する職種です。
企業によっては、Webエンジニアがシステムの企画からサイト誘導、マーケティングまで担当することもあります。
またWebエンジニアは、担当する領域によって職種が分かれているのが特徴です。ユーザーの目に入る部分の開発をするフロントエンジニア、サーバーやデータベースを管理するシステムの開発を手がけるバックエンドエンジニアの2種類があります。
エンジニアに興味がある方は、「エンジニアとは?仕事内容や向いている人の特徴・年収・給料などを解説」も読んでみてください。
Webディレクター
WebディレクターはWebサイトの制作現場で、進捗を管理する仕事です。編集者やデザイナー、ライターなど各分野のメンバーをまとめる職種でもあります。
所属によって業務範囲に違いを持つのがWebディレクターの特徴です。事業会社ならサイトリリース後の更新作業のディレクションまで、制作会社ならクライアントとの打ち合わせ業務まで行います。
Webプロデューサー
Webプロデューサーはクライアントから依頼を受けて、制作から運用までを管理する職種です。企画の立案や予算管理、人員配置など幅広い業務があり、Webに関する幅広い知識や経験を持つ人が担当します。
案件の規模によっては、クライアント企業の役員や幹部職の前で交渉やプレゼンテーションも必要です。
インターネット業界の年収
インターネット業界の平均年収と、全業界の平均年収を比較してみましょう。
業界 | 平均年収 |
Webエンジニア | 555万円(※1) |
Webディレクター | 505万円(※2) |
Webデザイナー | 474万円(※3) |
Webプログラマー | 473万円(※4) |
Webプロデューサー | 572万円(※5) |
全業界 | 433.1万円(※6) |
※1 出典:求人ボックス「Webエンジニアの仕事の年収・時給・給料」
※2 出典:求人ボックス「Webディレクターの仕事の年収・時給・給料」
※3 出典:求人ボックス「Webデザイナーの仕事の年収・時給・給料」
※4 出典:求人ボックス「Webプログラマーの仕事の年収・時給・給料」
※5 出典:求人ボックス「Webプロデューサーの仕事の年収・時給・給料」
※6 出典:国税庁「民間給与実態統計調査」
インターネット業界の中でも、特に年収が高いのがWebエンジニアとWebプロデューサーです。他の職種と比べても約100万円以上年収が高いことがわかります。
Webエンジニアの年収が高い理由は、プログラミングやコーディングといった専門性が求められるからです。またWebプロデューサーは現場の総監督であるため、業務の幅広さや責任の重さなどから、年収が高く設定されていると考えられます。
インターネット業界の現状の課題
インターネット業界の現状の課題について見ていきましょう。
AIによる自動化への対策
インターネット業界は、今後さらに発展するAIによる自動化への対策が必要です。
2045年、AIが人間の知能を超える「シンギュラリティ」が起こると示唆されています。「AIが人の仕事を奪う」という未来は、インターネット業界においては深刻な問題です。
特に人の手で動かしていたコーディングやプログミングなどは、AIの台頭によって自動化されていくかもしれません。一方で顧客へのヒアリング、細かいデザイン調整などはAIの苦手とする部分です。
つまり今後はAIによって衰退する職種と、大きな影響を受けない職種の2極化が進む可能性があります。
物流業界の負担が増大
インターネットでの買い物が一般的になったことで、宅配事業者への負担増大が社会問題化されています。
宅配事業者は一見すると、インターネット業界とあまり関係ないように思われがちです。しかし、物流停滞や配達員不足が起こってしまうと、ECサイトの運用も一緒に滞ってしまうでしょう。
そのためインターネット業界は、宅配事業者の負担増大を他人事として捉えるのではなく、自分ごととして向き合っていく必要があります。
インターネット業界の今後の動向・将来性
インターネット業界の今後の動向・将来性について見ていきます。
市場規模は増加傾向にある
国内のインターネット利用率は高く、市場規模は増加傾向にあります。
総務省が発表した「情報通信白書(令和3年版)」によると、2019年のインターネット付随サービス業の国内生産額は4.1兆円です。2005年から2019年の年平均成長率は9.1%と、市場規模が年々拡大していることがうかがえます。
コロナ禍によって業績が落ち込む業界も多いなか、「外に出ないで過ごす」という習慣はインターネット業界にとって追い風となり、成長が加速していく可能性が高いでしょう。
今後SNSや動画コンテンツが伸びていく
インターネットサービスのなかでも、特にSNSや動画コンテンツはさらに業績が伸びていくことが予測されます。
総務省の「ICT産業の動向」によれば、「インターネット付随サービス業」の売上全体において、Webコンテンツ配信業が30%を占めています。
ここで言うWebコンテンツ配信業とは、インターネットを通じて映像や音楽といった各コンテンツをユーザーに届ける仕事です。
ユーザーの目に届きやすいというメリットを活かし、TwitterやYouTubeを活用したマーケティング戦略も今後さらに増加していくでしょう。
特に動画コンテンツの中では、時間や場所を選ばずに利用できるWeb会議サービスやeラーニングが好調であり、インターネット業界は今後も伸びしろのある業界の一つです。