映画業界

映画業界とは?現状は課題が多く厳しい?今後の動向や将来性も解説

映画業界とは?

映画業界とは、映画を生み出し、映画館で上映するまでに必要な一連の活動を行う人々や会社が属する業界です。厳密に言えば、映画が映画館で上映された後も、以下のような二次利用においても映画業界が関わっています。

  • 映画のDVD・Blu-rayの販売やレンタル
  • 動画配信
  • キャラクターグッズの販売

など

映画を上映するにあたっては、主に以下の3つの役割を担う会社が関わっています。

会社の種類

概要

映画制作会社

映画を企画し、資金や人材を集めて完成させる。映画配給会社への販売代金から映画製作費を差し引いた残りが利益となる。

映画配給会社

映画制作会社から映画を買い映画興行会社(映画館を運営する会社)に上映してもらうよう交渉する。映画の宣伝を行うのも映画配給会社の役割。映画興行会社への販売額から映画制作会社の買取価格・宣伝費を差し引いた残りが映画配給会社の利益となる。

映画興行会社

映画配給会社から買い取った映画をスクリーンで上映する。映画上映の他、飲食の提供や映画関連グッズの販売なども手がける。顧客から受け取る入場料から映画配給会社に支払った買取価格と施設の維持費用・人件費を差し引いた残りが利益となる

上記のような会社が映画業界に属します。

2021年における映画業界の市場規模や成長率・利益率は以下の通りです。

業界市場規模

0.5兆円(146位/190業界)

成長率

-6.5%(164位/190業界)

利益率

-0.5%(147位/190業界)

出典:業界動向SEARCH.COM「映画業界

映画業界の市場規模0.5兆円は、190ある業界のうち146番目と決して大きいとは言えません。一方、成長率や利益率から見れば、まだまだ成長できる余地がある業界であることが読み取れます。

映画業界の代表的な企業と売上高ランキング

次に映画業界における代表的な企業について、売上高が多い順番に確認していきましょう。

ランキング

業界名

売上高

1位

東宝株式会社

1,919億円(※1)

2位

東映株式会社

1,076億円(※2)

3位

株式会社東北新社

528億円(※3)

4位

松竹株式会社

524円(※4)

5位

東映アニメーション株式会社

515億円(※5)

6位

AOI TYO Holdings株式会社

510億円(※6)

7位

株式会社マーベラス

255億円(※7)

8位

株式会社東急レクリエーション

216億円(※8)

9位

東京テアトル株式会社

133億円(※9)

10位

オーエス株式会社

61億円(※10)

※1 出典:東宝株式会社「有価証券報告書
※2 出典:東映株式会社「有価証券報告書
※3 出典:株式会社東北新社「有価証券報告書
※4 出典:松竹株式会社「有価証券報告書
※5 出典:東映アニメーション株式会社「有価証券報告書
※6 出典:AOI TYO Holdings株式会社「有価証券報告書
※7 出典:株式会社マーベラス「有価証券報告書
※8 出典:株式会社東急レクリエーション「有価証券報告書
※9 出典:東京テアトル株式会社「有価証券報告書
※10 出典:オーエス株式会社「有価証券報告書

日本国内において売上高トップを誇るのは、東宝株式会社です。売上高は1,919億円と、上位10社のうち33.4%のシェアを占めます。2020年は「鬼滅の刃 無限列車編」のミラクルヒットも売上高に大きく貢献しました。

次に続くのは、東映株式会社です。売上高は1,076億円と、上位10社のうち18.7%のシェアにあたります。2020年4月から2021年3月にかけて配信した計25本の映画のうち、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が記録的なヒット作となりました。

売上高3位に位置するのは、株式会社東北新社です。売上高528億円は上位10社のうち9.2%のシェアに相当します。東北新社は映画制作だけでなく、CMなどの広告制作やプロモーション制作、音響・字幕制作など幅広いコンテンツを手がけているのが特徴です。

映画業界の職種・仕事内容

映画館や動画配信などを通じて映画を提供する映画業界では、多種多様な職種の人が働いています。ここからは、映画業界の代表的な職種や仕事内容を以下の3つの役割に分けて解説していきます。

  • 映画制作の場合
  • 映画配給の場合
  • 映画興行の場合

映画製作の場合

映画製作は映画を0から生み出す仕事であり、高い専門性とクリエイティブな感性を持つ人々が集結しています。

映画製作に関わる代表的な職種は以下の通りです。

職種

仕事内容や役割

映画プロデューサー

映画を企画し、資金と人材を集めて映画を完成させる総指揮者。幅広い人脈を持ち、限られた予算の中で高品質な映画を作って利益を出すことが求められる。

映画監督

映画の撮影現場における現場責任者。カメラワークや演技指導など撮影に関わるあらゆる決断を下し、チームをまとめあげる。

脚本家

映画プロデューサーの企画に基づき、シナリオや作品の枠組みを考える仕事。脚本家の考えたセリフや場面、指定によって俳優の演技内容が変わる。

カメラマン

映画で求められる演出を撮影する仕事。撮影するアングルへのこだわりや、映像やカメラに関する専門知識が求められる。

音声

映画で使用する音声を収録し、聞き取りやすいように調整する仕事。専用のマイクを使用し、台本に合った音声になるようミキサーを操作する

照明

照明機材を駆使し、光や色合いの演出を手がける仕事。映画の雰囲気や心情を照明で表現し、視聴者の感情を盛り上げることも求められる。

アニメーター

映画に使用するアニメの作画を担当する仕事。アニメーション映画には膨大な数の絵が求められるため、画力やそれを表現する力に加え、作業スピードも求められる。

美術

映画で求められる場面に応じて小道具や大道具などを用意し、背景を作り上げる仕事。映画の雰囲気を盛り上げるための脇役として重要な役割を果たしている。

編集

撮影された映像から不要な映像をカットし、必要な映像だけを選別する仕事。映画監督の指示に合わせて映画を作り上げる。

映画配給の場合

映画配給とは、映画の売買や宣伝を通じて映画の魅力を世の中に普及させる仕事です。映画制作会社と映画興行会社をつなぐパイプ的役割を担っています。

映画がヒットするか否かは作品の中身だけでなく、宣伝方法によっても大きく左右されます。そのため、宣伝が重要視される映画業界において、映画配給は欠かせない仕事です。

映画配給に関わる代表的な職種は以下の通りです。

職種

仕事内容や役割

買い付け

国内外の映画制作会社からヒット作が期待できる映画の上映権を買い付ける仕事。売れる映画を見抜くセンスに加え、語学力や交渉力も求められる。

営業(ブッキング)

買い付けた映画を上映してもらえるように映画館(映画興行会社)に販売交渉する仕事。具体的には、各映画館の営業時間から上映する時間帯や期間を確保するのが役割。

宣伝

多くの人に映画を観てもらえるよう、映画を宣伝する仕事。具体的には予告編やポスターの作成、役者の舞台挨拶の手配などがある。

映画興行(映画館運営)の場合

映画興行とは、映画館運営において必要となるさまざまなサービスを提供する仕事です。映画製作や映画配給よりも、一般消費者と近い存在と言えるでしょう。

映画興行に関わる代表的な職種は以下の通りです。

職種

仕事内容や役割

マネージャー

各映画館でのチケット販売や館内案内、飲食提供、映画関連グッズ販売などをまとめる仕事。在庫を把握して仕入れをしたり、アルバイトやパートの管理をしたりする。チームで協力し合って高い接客サービスを提供するのが任務。

総支配人

映画館の最終責任者として、映画館の采配を任される立場。パート・アルバイトが働きやすい環境作りに努め、観客の満足度向上につなげる。

副支配人

総支配人の補佐として、映画館すべてのセクションを管理する責任者。各セクションで働くアルバイトやパート教育も大切な任務の一つ。

商品開発

本部にて、映画館で提供する食べ物や飲み物、映画関連グッズの企画や原価交渉などを行う仕事。映画を観に来る観客を飽きさせない魅力的な商品開発が求められる。

番組編成

本部にて、映画館で上映する映画の選定や仕入れ値の交渉にあたる仕事。最近では映画だけでなく、人気アーティストやサッカーのライブ中継を上映する映画館も増えており、企画力も求められる。

映画業界の年収

映画業界の年収

映画業界に就職したら、年収はいくらもらえるのでしょうか?ここからは、映画業界と全業種における年収を比較してみましょう。

業界

年収の目安

映画業界

380~850万円(※1)

全業界

433.1万円(※2)

※1 出典:業界動向SEARCH.COM「映画業界 平均年収ランキング(2020 – 2021年)
※2 出典:国税庁「民間給与実態統計調査

映画業界に属する会社の平均年収は380〜850万と、会社の規模によって開きがあります。一方、全業種の平均年収は433.1万円であるため、勤める映画会社によっては全体の平均年収を下回る場合もあるでしょう。

しかし、平均年収は就職先の会社だけでなく、職種や役職、勤続年数などの条件によって変わってきます。映画業界は会社によって年収の金額差が大きいため、応募する前によく求人内容を確認しておくことが大切です。

映画業界の現状の課題|厳しいという噂は本当?

映画業界が抱える現状の課題として、以下の2つが挙げられます。

  • コロナ禍の営業自粛による入場者数の減少
  • 手軽に利用できる動画配信サービスの拡大

上記のような背景から、映画業界の現状は厳しいという人もいます。それぞれ詳しく解説していきます。

コロナ禍の営業自粛による入場者数の減少

2020年は映画業界にとって、新型コロナウイルス感染症拡大による影響を大きく受けた1年でした。娯楽産業である映画は不要不急のサービスと判断され、営業自粛や時短営業によって入場者数が大幅に減少しています。

日本映画制作者連盟の「日本映画産業統計」によると、2020年における入場者数は1億613万人であり、前年より45.5%も減少しています。また映画の売上高に当たる興行収入も1,432億円と、前年より45.1%減少しました。

2020年の6月以降から映画館の営業が再開されたとは言え、やはり新型コロナウイルス感染症拡大による影響は大きかったと言えます。

2021年に入ってからは回復の兆しを見せているものの、以前の水準と比較するとまだ十分な回復に至っているとは言えません。2021年時点での入場者数は2019年の59%、興行収入は62%に留まっており、依然として厳しい状態が続いていることがわかります。

手軽に利用できる動画配信サービスの拡大

新型コロナウイルス感染症の拡大は、スマートフォンなどで手軽に利用できる動画配信サービスをさらに拡大させるきっかけを作りました。

動画配信サービスのメリットは、場所を問わずリラックスしながら動画を鑑賞できるところです。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大は、「そもそも人が集まる場所に行かなくても映画は観られる」ということを人々に再認識させることにもなりました。

その結果、「映画は映画館で観るもの」とする従来の映画の鑑賞スタイルが揺らいでいると言えます。このような状況が続けば、人々の映画館離れが進んでいく恐れもあるでしょう。

映画業界の今後の動向・将来性

コロナ禍において、営業自粛や動画配信サービスの流行などによる打撃を受けた映画業界ですが、現状を打開するべく、さまざまな取り組みが行われています。

ここからは、そんな映画業界における取り組みを紹介します。具体的には、以下のような事項です。

  • 大画面と音響を駆使した体験型シアターの導入
  • ヒットが期待できる人気シリーズ映画の公開
  • 海外市場取り込みによる売上高拡大

大画面と音響を駆使した体験型シアターの導入

映画業界が手軽な動画配信サービスとの差別化戦略として力を入れているのが、大画面と音響を駆使した体験型シアターの導入です。

映画館ならではの魅力の一つに、大画面で繰り広げられる迫力映像と臨場感あふれる音響演出が挙げられます。これらの技術は、スマートフォンやタブレット端末などの映画視聴では、体験しえないものです。

現在大手シネマなど映画興行会社では、入場料を値上げしてこれらのサービスを提供する動きがあり、より付加価値の高いサービスで顧客の心をつかもうとする流れが活発化しています。

ヒットが期待できる人気シリーズの映画の公開

映画業界では、常にヒット作を生むために試行錯誤がなされています。安定した売上を確保するため、ヒットにつながりやすい人気シリーズの映画公開を計画的に行っています。

本当に観たいと思える映画があれば、コロナ禍などの状況下でも、一定の集客は見込めます。現にコロナ禍にあった 2020年以降にも、「鬼滅の刃 無限列車編」や「シン・エヴァンゲリオン 劇場編」など人気作品が生まれています。

一方、いかに費用や期間をかけて作成した映画でも、その映画がヒットするかどうかは公開してみるまでわかりません。

映画がヒットすれば、映画による興行収益に加え、DVD・Blu-rayの販売、テレビ放映、動画配信、キャラクターグッズ販売など大幅な売上拡大が期待できます。その反面、映画が話題にならなければ、映画の製作費や広告宣伝費すら回収できず、赤字で終わることもあるでしょう。

映画業界は安定した売上が期待できるシリーズ物や人気漫画、人気原作小説などの制作を常に用意し、リスク分散に努めています。

海外市場取り込みによる売上高拡大

今後の映画業界がさらに売り上げ拡大を目指すには、国内市場だけでなく海外市場に目を向けることも大切です。

映画制作会社の中で特に積極的に海外進出を進めているのは、東映アニメーション株式会社です。

2021年12月までの状況を示す「四半期決算」では、過去最高の63%の海外売上比率を達成しました。その背景として、「ワンピース」「デジモンアドベンチャー」などのヒットアニメの海外放映が大きな利益につながっていることが挙げられます。

文化庁や経済産業省など政府が助成金を通じて海外展開を後押ししていることもあり、映画業界は今後ますます海外進出が活発化していくと予想されます。

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