介護業界

介護業界とは?現状の課題や今後の動向・将来性、年収なども解説

介護業界とは?

介護業界とは、高齢者に対し食事や入浴・排泄・移動などの世話を行う「身体介護」や、掃除・洗濯・調理など身の回りの世話を行う「生活援助」などのサービスを提供する業界です。

近年、高齢化の進展を背景に高まる介護需要から業界は著しく成長しており、民間企業の参入も増えています。

介護業界の2021年の市場規模や成長率、利益率のデータは以下の通りです。

業界市場規模

1.0兆円(116位/190業界)

成長率

6.8%(18位/190業界)

利益率

2.9%(81位/190業界)

出典:業界動向SEARCH.COM「介護業界

介護業界のビジネスモデルとその仕組み

介護業界のビジネスモデルと仕組みについて解説します。

介護業界のビジネスモデルとは

介護業界のビジネスモデルは他の業界に比べて特殊です。介護事業者が提供したサービスへの報酬は、その1~3割(所得による)を利用者が自己負担し、残りの大半は行政から支払われます。

そのため、介護保険が適用されるサービスの介護報酬は国によってその額が決められており、事業者が料金を決定したり変えたりすることはできません。

介護業界の仕組みとは

介護サービスには、民間企業の参入が許可されているものと許可されていないものがあります。

以下に挙げる介護保険施設は社会福祉法人(営利目的ではない民間企業)や自治体等によって運営されており、民間企業の参入は許可されていません。

  • 特別養護老人ホーム
  • 介護老人保健施設
  • ケアハウス
  • デイケア

一方、民間企業の参入が許されているサービスは以下の通りです。

  • 訪問・通所介護(デイサービスなど)
  • 介護付き老人ホーム
  • 有料老人ホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅
  • 介護用品

保険適用対象外の介護サービス

その他、介護サービスには以下に挙げる介護保険適用対象外のサービスもあります。

  • 家事や買い物代行
  • 宅食
  • 外出の付き添いや送迎
  • 高齢者の安否確認や見守り

これらサービスの利用料については、全額が利用者の自己負担です。

こうした「保険外サービス」の料金は事業者ごとに独自に設定でき、他社との差別化が図れるなどメリットが大きいため、この領域に力を入れる企業が増えています。

介護業界の代表的な企業

介護業界の代表的な企業と、その売上高をまとめました。

企業名

売上高

ニチイ学館

1,537.8億円(※1)

SOMPOホールディングス

1,366.6億円(※2)

ベネッセHD

1,273.9億円(※3)

ツクイ

911.9億円(※4)

セコム

745.7億円(※5)

学研HD

657.9億円(※6)

ユニマットリタイアメント・コミュニティ

574.3億円(※7)

ソラスト

506.8億円(※8)

セントケア・HD

488.7億円(※9)

ケア21

363.6億円(※10)

※1 出典:株式会社ニチイ学館「2019年度有価証券報告書
※2 出典:SOMPOホールディングス株式会社「2021年度有価証券報告書」(介護・シニア事業)
※3 出典:株式会社ベネッセホールディングス「2021年度有価証券報告書」(介護・保育事業)
※4 出典:株式会社ツクイ「2019年度有価証券報告書
※5 出典:セコム株式会社「2021年度有価証券報告書」(メディカルサービス事業)
※6 出典:株式会社学研ホールディングス「2020年度有価証券報告書」(医療福祉分野)
※7 出典:株式会社ユニマット リタイアメント・コミュニティ「2019年度有価証券報告書
※8 出典:株式会社ソラスト「2021年度有価証券報告書」(介護・保育事業)
※9 出典:セントケアホールディング株式会社「2021年度有価証券報告書
※10 出典:株式会社ケア21「2020年度有価証券報告書

売上高上位のニチイ学館・SOMPOホールディングス・ベネッセHDの3社が、それぞれ業界シェアの1割以上を占めます。売上高4位のツクイも含めると、上位4社までの売上高だけで業界シェアの約半数を占めることになります。

介護業界の職種・仕事内容

介護業界の職種・仕事内容には、以下のようなものがあります。

  • 介護福祉士
  • ケアマネージャー
  • 生活相談員
  • 介護補助員

介護福祉士

介護福祉士は、身体介護や生活援助といった介護を専門にしているプロフェッショナルです。サービス利用者の生活全体の支援がその仕事です。

主に訪問介護員や特別養護老人ホーム、身体障害者施設などの社会福祉施設の介護職員として働いています。普通の介護士とは異なり、国家資格を所有している介護士を介護福祉士と呼びます。

ケアマネージャー

ケアマネジャーは、ケアプラン(介護サービス提供についての計画)の作成が主な仕事です。その他にも、要介護認定の申請代行や認定を行うための訪問調査なども行います。

ケアマネジャーは在宅介護サービスを提供する事業所や介護老人福祉施設、地域包括支援センターなどさまざまな場所で活躍しています。なお、ケアマネジャーになるためには介護支援専門員の資格が必要です。

生活相談員

生活相談員はソーシャルワーカーとも呼ばれます。主に介護福祉施設などで活躍しており、その業務は多岐にわたります。

具体的には、介護サービスの利用手続きや施設の入退所手続き、利用者や家族からの相談対応、他部署との連絡・調整、介護スタッフのサポートなどがその業務です。ケアマネジャーと違ってケアプランの作成はしません。

職場となる介護施設には以下のような場所があります。

  • 通所介護施設
  • 特別養護老人ホーム
  • 介護付き有料老人ホーム
  • 介護老人保健施設

なお、資格がなくても自治体の設けている要件をクリアすれば生活相談員になれます。

介護補助員

介護補助員は介護福祉士のサポートを行う職種です。専門的な介護業務ではなく、サービス利用者の見守りをしたり、話し相手になったり、部屋の整備をしたりします。資格がなくても介護職として働いてみたい人向けの職種です。

人手不足の介護の現場を支え、サービスの質を向上させるために重要な存在です。

介護業界の年収

介護業界の年収

介護業界の平均年収と、全業界の平均年収を比較してみましょう。

業界

平均年収

介護業界

577万円(※1)

全業界

433.1万円(※2)

※1 出典:業界動向SEARCH.COM「介護業界
※2 出典:国税庁「民間給与実態統計調査

全業界と比較すると、高い年収水準にあります。国全体で介護職員の待遇改善が進められており、平均年収は年々増加傾向です。

ただし、介護業界は資格の有無などで給与差が生まれやすい業界とも言われています。高年収を目指すためには、介護福祉士など専門的な資格を取得することが推奨されます。

介護業界の現状の課題

介護業界の現状の課題として、以下のような事柄が挙げられます。

  • 慢性的な人手不足
  • 要介護者は年々増加

慢性的な人手不足

介護労働安定センターの「令和3年度介護労働実態調査」によると、全国の介護事業所の約63%が「人材不足感がある」と答えています。また、介護事業労働者に最も多い悩みとして「人手が足りない」、次いで「仕事の割に賃金が低い」「身体的負担が大きい」が挙げられています。

ニーズが高く常に人手不足であるために、職員一人あたりの労働負荷が高まり重労働となっていることが、更なる人手不足を引き起こしている要因と考えられます。

要介護者は年々増加

介護を必要とする「要介護者」は高齢化により年々増え続けています。内閣府の「令和4年版高齢社会白書」によると、日本の総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は28.9%となっています。

日本の人口は徐々に減少していくと言われていますが、高齢者の比率は増え、2025年には約3人に1人が高齢者になると言われています。高齢者人口の増加を背景に、介護事業は今後も拡大を続けていくでしょう。

介護業界の今後の動向・将来性

介護業界の今後の動向として、以下の事柄が挙げられます。

  • 外国人人材の登用が進む
  • 国の処遇改善による賃上げ
  • 規制緩和による現場の負担軽減
  • ロボット・IoTの導入

外国人人材の登用が進む

介護業界で人手不足が続いていることから、政府は2019年より新たな在留資格「特定技能」を施行し、外国人の技能実習生の受け入れを進めています。

技能実習制度の下では5年間国内に滞在ができ、介護福祉士の国家資格を取得できれば介護ビザを得て永続的に在留することも可能です。

介護労働安定センターの「令和3年度介護労働実態調査」では現状、外国籍労働者を受け入れている事業所は全体の6.2%に留まります。しかし、今後も人材不足が続く見込みであることから、外国人人材の採用は増加していくでしょう。

国の処遇改善による賃上げ

現場では、介護業界の人材不足を重く見た国による賃上げが進んでいます。2019年より「介護職員等特定処遇改善加算」が創設され、リーダー級の介護職員について、全産業の平均年収を440万円まで引き上げることを目指しています。

これによって介護人材の確保・職場定着につなげることが狙いです。国による取り組みで、介護職の処遇は改善に向かっています。

規制緩和による現場の負担軽減

人手不足による現場の負担軽減を図るため、介護施設における人員配置の基準緩和や介護業務を他の医療人材に委託する「タスクシェア」の検討が進んでいます。

現行の基準では、介護施設の入所者3人に対し少なくとも1人の職員を配置しなくてはなりません。これを4人に1人に緩和することが検討されています。

タスクシェアは介護業務を職種の異なる看護師や薬剤師にも分担してもらうことで、現場の人手不足を解消しようという試みです。このように介護職員が働きやすい環境整備が、政府主導のもと進められています。

ロボット・IoTの導入

介護業務の一部をロボットに代替させるIoT技術や、介護職員の体の動きを補助するパワードスーツ・介護ロボットなどの導入が検討されています。これらの技術の普及が進めば、介護者の身体的負担や業務負担の軽減が期待できます。

コスト面や大量生産が難しいといった事情から、まだまだ普及へのハードルは高いですが、導入が進めば介護職員の労働環境の改善、ひいては介護業界の人材不足解消につながるでしょう。

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