化学業界

化学業界とは?仕事内容や年収は?現状の課題や今後の動向・将来性も解説

化学業界とは?

化学業界とは、化学製品に関連する製造業の一種です。「化学プラント」と呼ばれる工場を持ち、化学反応を駆使して合成ゴムや合成繊維、プラスチックなどを製造・販売します。

化学業界の強みは、技術を諸外国に真似されにくい点です。家電などの機械品は構造を分析できるため、他の国でもコピー品を作れてしまいます。

一方で化学品の場合は、外観を分析したとしても化学反応の温度や時間、触媒の種類といった製造条件はわかりません。よって模倣が難しく、諸外国と差を付けやすい産業となっています。

2021年における化学業界の市場規模や成長率等は、以下の通りです。

業界市場規模

29.8兆円(11位/190業界)

成長率

−1.3%(110位/190業界)

利益率

4.7%(74位/190業界)

出典:業界動向SEARCH.COM「化学業界

化学業界は、製造業を影から支える一大産業です。自動車やスマホなどのあらゆる工業製品に必要な原料を供給しており、巨大な市場規模を誇ります。

また、炭素繊維やシリコンウェーハといった先端材料を扱うメーカーは、高い利益率を維持しています。

化学業界に属する企業の区分

化学業界に属する企業の種類は、商流ごとに役割が細分化されています。原料から最終製品までを1社で生産するケースは稀で、何社もの化学メーカーが介在します。

ここからは、化学業界に属する企業の区分を見ていきましょう。

基礎化学品メーカー

基礎化学品は「粗原料」とも呼ばれ、単一の化学物質を指します。粗原料のみでは機能を果たさないものの、化学反応の材料や薬品として重要な物質です。このような粗原料を製造する企業が、基礎化学品メーカーです。

粗原料の例として、以下の化学物質が挙げられます。

  • アンモニア
  • 塩酸
  • 酸素
  • エチレン

基礎化学品メーカーでは、精製や蒸留を駆使して純度の高い化学物質を生み出します。

なお基礎化学品は、大手総合化学メーカーが一つの部門を設けて製造しているケースが多いです。

【基礎化学品メーカーの代表例】

中間化学品メーカー

中間化学品メーカーでは仕入れた基礎化学品を化学反応させ、機能性の高い素材を生み出します。具体例として、以下の素材が挙げられます。

  • 強化ガラスの原料
  • 熱に強いプラスチック
  • 合成ゴム

素材の高強度化や軽量化をする上で、中間化学品メーカーの存在が重要です。

【中間化学品メーカーの代表例】

最終化学品メーカー

最終化学品とは、その製品のみでも機能を発揮できる化学物質です。多種多様な原料を配合して製造されます。最終化学品メーカーでは中間化学品メーカーから原料を購入し、最終製品を製造します。

以下の製品が、最終化学品の具体例です。

  • 自動車用エアバックの火薬
  • 食品用洗剤
  • 農薬
  • 化粧品

最終化学品は家電や自動車メーカー向けに販売されるほか、一般消費者に届けられるものもあります。

【最終化学品メーカーの代表例】

化学品商社

化学業界には、化学品に特化した専門の商社が存在します。この化学品商社は、化学業界におけるサプライチェーンの仲介役です。

ほとんどの化学メーカーは、主要都市にしか営業拠点を設置していません。そこで化学品商社が各地に営業所を設置して、販売窓口の機能を代行します。

【化学品商社の代表例】

化学業界が扱う製品ジャンル

化学業界の中でも、企業によって扱う分野や製品はさまざまです。ここでは、化学業界における代表的な製品ジャンルを紹介します。

石油化学

化学業界で最大の規模を持つジャンルが、石油化学です。石油は合成ゴムやプラスチック、合成繊維などさまざまな製品の原料として用いられています。

「石油コンビナート」と呼ばれる工業地帯では多くの化学メーカーが集結し、多種多様な製品が生産されています。

繊維

合成繊維も、化学業界における主要なジャンルです。東レやクラレ、帝人のように繊維業を発祥として、数々の化学メーカーが誕生しました。

もともとは人工皮革や合成繊維の生産が中心だったものの、昨今では炭素繊維や光学フィルムなどの先端材料に注力しています。

産業用ガス

産業用ガスを扱う化学メーカーも存在します。高純度の気体は、医療や食品、工業製品に欠かせません。具体例として、以下の気体が挙げられます。

  • 酸素
  • 水素
  • アルゴン
  • 半導体用エッチングガス

産業用ガスのメーカーでは、これらの気体を製造してさまざまな業界へ供給しています。

インキ

インキや塗料も、化学業界が扱う製品です。建築用のペンキから自動車用の塗料まで用途は幅広く、巨大な市場を形成しています。

インキメーカーはBtoBだけではなく、一般消費者向けにも製品を展開している点が特徴です。

化学業界の代表的な企業

化学業界の代表的な企業と、その売上高をまとめました。

企業名

売上高

三菱ケミカルホールディングス株式会社

39,769億円(※1)

住友化学株式会社

27,653億円(※2)

東レ株式会社

22,285億円(※3)

旭化成株式会社

21,061億円(※4)

三井化学株式会社

16,126億円(※5)

エア・ウォーター株式会社

8,887億円(※6)

DIC株式会社

8,554億円(※7)

長瀬産業株式会社

7,805億円(※8)

稲畑産業株式会社

6,809億円(※9)

宇部興産株式会社

6,553億円(※10)

※1 出典:三菱ケミカルホールディングス株式会社「業績・財務ハイライト
※2 出典:住友化学株式会社「財務・業績サマリー
※3 出典:東レ株式会社「セグメント情報
※4 出典:旭化成株式会社「決算のポイント
※5 出典:三井化学株式会社「業績推移
※6 出典:エア・ウォーター株式会社「直近の業績
※7 出典:DIC株式会社「業績ハイライト
※8 出典:長瀬産業株式会社「有価証券報告書等
※9 出典:稲畑産業株式会社「財務ハイライト
※10 出典:宇部興産株式会社「決算短信

化学プラントの建設には莫大な資金が必要であるため、売上高上位には資金力のある大手企業が名を連ねています。

また化学業界の中でも、それぞれの企業が得意とする製品ジャンルはさまざまです。よって、業界の中で住み分けがなされています。

化学業界の職種別の仕事内容

化学業界の仕事内容は独特で、他の製造業と異なる点もあります。ここでは、化学業界における仕事内容を職種別に取り上げます。

製造の場合

製造の仕事では、化学プラントの操業(機械の操作)に従事します。大型の化学プラントは24時間365日稼働しており、2〜3班による交代勤務体制が敷かれています。

操業にあたる作業員は、以下の2種類です。

  • フィールドオペレーター:生産現場を巡回しながら製造と点検を行う
  • ボードマン:制御室で工場全体の監視をしながら製造の指揮を取る

作業員は製造業務だけでなく、化学プラントの点検や安全管理にも重要な役割を果たします。

設備管理の場合

設備管理は、化学プラントの保守・点検を行う仕事です。機器に異常がないかを検査し、必要に応じて整備や交換をします。

大型の化学プラントに対しては数年に一回、大規模メンテナンス「定期修理」を行わなければなりません。この定期修理の期間は、数か月にもおよびます。設備管理にとって一番の大仕事であり、メンテナンスの計画から実行まで全体を取り仕切ります。

環境・安全の場合

化学メーカーでは、安全管理や環境保護を専門とする仕事があります。化学プラントで扱う原料には石油や有毒な薬品など、危険な化学物質が多数存在するからです。

危険な化学物質の取り扱いを誤ると、火災・爆発といった重大事故になりかねません。そこで環境・安全の仕事では、事故を未然に防ぎ安全な職場をつくる役割を担います。

営業の場合

販売の窓口として顧客対応にあたるのが、営業です。

化学品の場合は、長年に渡って継続的に製品を納入するケースがほとんどです。そのため、法人顧客に対するルートセールスが主な仕事となります。また、化学品を使用する顧客は限定されているため、飛び込み訪問のような営業スタイルはほとんどありません。

なお、営業活動において、化学の高度な知識が求められる場面はそれほど多くありません。そのため、文系出身の営業マンも数多く活躍しています。

営業職に興味がある方は、「営業職とは何か説明!種類や仕事内容、向いている人の特徴や年収」も読んでみてください。

化学業界の年収や給料

化学業界の年収

化学業界の平均年収と、全業界の平均年収を比較します。

業界

平均年収

化学業界(ガラス・化学・石油)

474万円(※1)

全業界

433.1万円(※2)

※1出典:マイナビ転職「2022年版 業種別モデル年収平均ランキング
※2出典:国税庁「民間給与実態統計調査

化学業界は一般的な製造業と比較して工員の人数が少ないため、年収額がやや高い傾向にあります。特に交代勤務で製造にあたる従業員は交代勤務手当や深夜手当が上乗せされることもあり、高い年収が期待できます。

化学業界の現状の課題

高度成長の時代に建設した化学プラントは、老朽化が深刻です。加えて、脱プラスチックや脱石油など、世界的なトレンドへの対応にも迫られています。

化学業界の現状の課題について、具体的に見ていきましょう。

エチレンセンターの再編

エチレンセンターとは、石油化学の生命線である原料「エチレン」を生成する設備です。近年、このエチレンセンターは老朽化により稼働停止が相次いでいます。加えて石油の消費量も減少傾向にあり、新たなエチレンセンターの建設は期待できないとされています。

その結果として、今後もエチレンセンターの統廃合が進むでしょう。エチレンセンターの統廃合に伴い、石油化学メーカーも再編を迫られるかもしれません。

脱プラ・脱石油に向けた風潮の高まり

世界的に、脱プラスチックや脱石油を目指す風潮が強まっています。一方で化学メーカーは、石油やプラスチックと切っても切れない関係にあります。

このような背景から、化学メーカーに対する風当たりは強くなっていくと考えられています。

化学メーカーでも環境に配慮した製品の開発を進めているものの、まだ充分な収益を得られる段階にない企業も見られます。脱プラスチックや脱石油を進めるには抜本的な改革が必要であり、課題は尽きないと言えるでしょう。

化学業界の今後の動向・将来性

続いて、化学業界の今後の動向・将来性について紹介します。

循環型社会に向けた製品開発

脱石油やCO2削減が、今後の化学業界における重要な開発テーマです。

そのために、自然に還るプラスチックや石油を使わない天然素材、電気自動車向け材料の開発など、新製品の開発に注力しています。例えば、電気自動車への搭載が期待されている「全固体電池」などの研究が盛んです。

脱石油やCO2削減に応えられる製品で利益を上げられるようになれば、化学業界における今後の不安は払拭できるでしょう。

ヘルスケアやライフサイエンスへの注力

化学業界では、医療分野や人間の健康に役立つ製品の開発を進めています。これらの分野は「ヘルスケア」や「ライフサイエンス」と呼ばれ、市場の成長が見込まれています。

従来の化学業界は、工業用途の製品開発が中心でした。しかし現在は、医療など新しい分野への進出が積極的に進められています。

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