出版業界

出版業界とは?仕事内容や市場規模、年収は?現状の課題や今後の将来性も解説

出版業界とは?

出版業界とは、雑誌や漫画、書籍の企画・制作・販売を行う業界を指します。

出版物は、あらゆる世代をターゲットにできる商品です。ジャンルも豊富であり、幼児向け書籍や参考書、週刊誌まで幅広く展開されています。

また出版業界は長い歴史を持っており、伝統が息づく産業です。老舗企業も多く、各社がそれぞれのジャンルで強みを持っています。

2021年における出版業界の市場規模や成長率等は、以下の通りです。

業界市場規模

0.9兆円(119位/190業界)

成長率

1.8%(64位/190業界)

利益率

−2.9%(162位/190業界)

出典:業界動向SEARCH.COM「出版業界

活字離れの影響で紙の書籍は減少傾向にあるものの、インターネットやメディアを組み合わせた新しい業態が誕生しています。

出版業界に属する企業の区分

ひとつの書籍が世の中に送り出されるまでには、さまざまな役割を持つ企業の協力が不可欠です。ここでは、出版業界に属する企業の区分を紹介します。

出版社

出版社は、書籍の制作や発行を行う企業です。産業構造の上流に位置しており、出版社の企画によってプロジェクトがスタートします。

出版社には、書籍発行までの全工程を統括する役割があります。そのため、出版社に在籍する社員の業務も多種多様です。制作や発行以外にも、広告費の獲得や版権管理など幅広い仕事があります。

編集プロダクション

編集プロダクションとは、原稿作成や編集を専門に請け負う企業です。

一冊の書籍を発行するまでには多くの労力を要するため、出版社の人員だけでは足りません。そこで活躍する存在が、編集プロダクションです。

編集プロダクションは出版社からの依頼を受け、原稿のコンセプトに沿った記事を作成します。多くのライターやカメラマンと契約を結んでおり、さまざまな記事に対応できる点が特徴です。

編集プロダクションの名は出版物には記載されませんが、出版業界を陰で支える重要な存在です。

書籍取次

書籍取次とは、出版社と書店を結ぶ書籍専門の卸売業者です。

書籍取次は各出版社から発行される新刊を取りまとめ、各書店に発送します。その上で、売れ残った書籍を回収し出版社に返却する役割も担います。

加えて書籍取次は、出版社の資金繰りをサポートしたり、書籍のプロモーション活動に協力したりもします。独特な出版業界の流通網は、書籍取次の存在によって実現しています。

書店

書店は書籍取次から仕入れた本を店頭に並べ、消費者に届ける役割を担います。出版業界の中でも、消費者にとって最も身近な存在です。

書店には新刊を扱う書店と、中古本の専門店が存在します。

出版業界に属する企業のジャンル

出版社は、書籍のジャンルごとにそれぞれ得意分野を持っています。そのためジャンル別に、大小さまざまな出版社がひしめき合っています。

ここでは、出版業界に属する企業のジャンルを見ていきましょう。

総合系ジャンル

総合系ジャンルの出版社では、あらゆる世代に向けて雑誌から漫画、専門書籍までを幅広く展開しています。

また書籍だけに留まらず、メディアや映画へも進出している点が特徴です。総合型ジャンルで有名な出版社としては、以下のような企業が挙げられます。

  • 集英社出版株式会社
  • 株式会社小学館
  • 株式会社講談社
  • 株式会社KADOKAWA

ビジネス系ジャンル

ビジネス系ジャンルの出版社は、経済系の雑誌やビジネス書などを専門とします。経済誌や金融マーケットに特化した本など、専門性の高い書籍を扱っています。

ビジネス系ジャンルで有名な出版社は、以下のような企業です。

  • 株式会社日経BP
  • 株式会社ダイヤモンド社
  • 株式会社東洋経済新報社

文芸系ジャンル

文芸系ジャンルの出版社は、音楽や芸術、大衆文化などの雑誌を発行しています。

なかには豪華な付録をメインにした雑誌など、ユニークな商品展開をする出版社もあります。文芸系ジャンルで有名な企業は、以下の通りです。

  • 株式会社宝島社
  • 株式会社文藝春秋
  • 株式会社新潮社
  • 株式会社扶桑社
  • デアゴスティーニ・ジャパン

教育系ジャンル

教育系ジャンルの出版社は、教科書や通信教育、参考書などに特化しています。書籍だけでなく、通信教育や学習塾など教育関連ビジネスを展開している企業もあります。

教育系ジャンルの代表的な企業は、以下の通りです。

  • 株式会社ベネッセホールディングス
  • 株式会社文溪堂
  • 株式会社学研ホールディングス
  • 東京書籍株式会社
  • 株式会社三省堂
  • 教育出版株式会社

専門系ジャンル

専門系ジャンルの出版社は、特定の分野に特化しています。発行部数は少ないながらも、専門領域で高いシェアを誇っています。

ある特定の分野で力を持つ企業が、そのジャンルに関する専門誌を発行する場合もあります。専門系ジャンルで有名な出版社は、以下の通りです。

  • 株式会社リクルート(ブライダル、就職活動)
  • 株式会社ゼンリン(地図)

出版業界の代表的な企業

出版業界の代表的な企業と、その売上高をまとめました。

企業名

売上高

株式会社小学館

943億円(※1)

株式会社講談社

1449億円(※2)

株式会社KADOKAWA

1281億円(※3)

株式会社ダイヤモンド社

141億円(※4)

日本出版販売株式会社

4074億円(※5)

株式会社トーハン

4013億円(※6)

株式会社日経BP

403億円(※7)

株式会社ぎょうせい

213億円(※8)

株式会社光文社

168億円(※9)

株式会社朝日新聞出版

107億円(※10)

※1出典:株式会社 小学館「会社概要
※2出典:株式会社講談社「企業概要
※3出典:株式会社KADOKAWA「統合報告書
※4出典:株式会社ダイヤモンド社「会社概要
※5出典:日本出版販売株式会社「会社概要
※6出典:株式会社トーハン「業績推移
※7出典:株式会社日経BP「会社概要
※8出典:株式会社ぎょうせい「会社概要
※9出典:株式会社光文社「会社概要
※10出典:株式会社朝日新聞出版「会社情報

売上高では、アニメや漫画などを展開する総合系の出版社が上位を占めています。

また出版業界の特徴は、ニッチなジャンルで活躍しつつ売上高が大きい企業が存在する点です。例えば法令ジャンルに特化した株式会社ぎょうせい、文庫本ジャンルに強い株式会社光文社なども、売上高としては業界トップ10に入ります。

出版業界の職種・仕事内容

一冊の本を出版するまでには、企画や流通など多くの職種の人が介在します。

具体例として、以下の職種が挙げられます。仕事内容とともに見ていきましょう。

営業

営業は、書籍のセールスを担当します。

書籍の他にも、出版業界ではさまざまな顧客への営業が必要です。例えば雑誌の広告枠や版権も、営業が売り込みを行います。他にも書籍のプロモーションとして、イベントの開催や関連商品の展開なども担います。

営業職に興味がある方は、「営業職とは何か説明!種類や仕事内容、向いている人の特徴や年収」も読んでみてください。

編集

編集は、書籍作成の全体プロジェクトを統括する仕事です。

編集者は原稿の内容に合わせて、編集プロダクションやカメラマンへ仕事を依頼します。その上で、出来上がった原稿を組み合わせて、一冊の書籍にまとめます。

加えて、原稿のチェックやスケジュール管理も、編集の仕事です。

校閲

校閲は出版前の原稿を確認し、書籍の信頼性を担保する仕事です。

出来上がった原稿に対して、真偽の確認や校正を行います。加えて、誤字脱字やレイアウト崩れの有無も確認します。校閲は書籍の品質を保つ上で、重要な仕事です。

流通

流通は書籍を出荷し、市場に送り届ける仕事です。印刷会社と協力し、製本化や出荷業務を担います。

また、書籍の売り上げを考慮しながら、適切なタイミングでの増刷や出荷指示が求められます。

出版業界の年収や給料

出版業界の年収

出版業界の平均年収と、全業界の平均年収を比較してみましょう。

業界

平均年収

出版業界

502万円(※1)

全業界

433.1万円(※2)

※1出典:マイナビ転職「2022年版 業種別モデル年収平均ランキング
※2出典:国税庁「民間給与実態統計調査

出版業界の年収は、全業界の平均値と比較して高い水準にあります。ただし、同じ出版業界であっても、企業によって年収はさまざまです。

メディア展開をする総合出版社は年収が高い一方で、苦境が続く専門誌の企業は年収が減収傾向にあります。

出版業界の現状の課題

出版不況という言葉に表されるように、出版業界の市場は縮小傾向にあります。この出版不況には、以下に挙げる複数の原因が影響しています。

紙書籍の需要の減少

紙の書籍や雑誌は、年々減っている傾向にあります。

文化庁の「国語に関する世論調査」によると、人々の読書時間そのものが減少しています。インターネットや電子書籍などの影響で、外出時に紙書籍を持ち歩く人も減りました。

人々の活字離れは収束の兆しが見えず、出版業界の市場は縮小傾向が続いています。

YouTubeなど新たな脅威の参入

YouTuberが投稿する書籍のまとめ動画は、出版業界にとって脅威です。

近年では、中田敦彦さんなどの有名YouTuberが書籍の要約動画を投稿しています。これらのYouTube動画によって本の知名度は高まるものの、「大体の内容を知ったから買わなくても良いだろう」と考える人がいるのも事実です。

結果として書籍の売上が増加せず、出版業界の苦境に拍車をかけています。

広告収入の減少

雑誌や週刊誌では、広告収入が減少しています。

株式会社電通の「2021年 日本の広告費」によると、2011年には2,542億円あった雑誌の広告収入は、わずか10年で半減しました。この背景には、インターネットなどの登場による、メディア媒体の多様化が挙げられます。

広告主としては、インターネット広告などの選択肢も増えたため、広告出稿先を雑誌や週刊誌に限る必要がありません。その結果、ファッション誌などを中心に雑誌の休刊が相次いでいます。

出版業界の今後の動向・将来性

出版不況の時代と言われ、書籍や雑誌の発行数量は減少傾向にあります。しかし一方で、出版業界には新たなトレンドも登場しました。

電子書籍の市場拡大

紙の書籍が縮小傾向にある一方で、電子書籍の市場は拡大しています。特に、漫画を読める電子アプリは、出版社の新たな収益の柱となりました。

電子書籍はひと昔前までにはなかった新たなマーケットであり、今後の成長が期待できる分野です。

YouTuberと組んだビジネス展開

近年では、人気YouTuberが自伝などの書籍を出版するケースが増えました。YouTuber自らが動画内でファンに新刊の宣伝をするため、爆発的な売れ行きにつながるケースもあります。

YouTuberによる書籍の出版は、出版会社にとって新たなビジネスチャンスとなるでしょう。

書籍を中心とした多角化経営

出版業界では、書籍を中心とした経営の多角化が進んでいます。

従来の紙の書籍だけでは、業績維持が難しい環境となりました。そこで、書籍から派生するさまざまなビジネスが生まれています。

例えば出版社は漫画や小説の版権を持っているため、アニメ・ドラマ化やオリジナルグッズの作成といったビジネスを展開できます。これらのビジネスが、書籍のみの売上を大きく上回るケースも珍しくありません。

書籍を中心とした経営の多角化は、今後の出版業界におけるトレンドとなっていくでしょう。

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