化粧品業界

化粧品業界とは?現状の課題や今後の動向、市場規模や年収などを解説

化粧品業界とは?市場規模や成長率、利益率を解説

化粧品業界とは、「キレイになりたい」と願う女性の気持ちに応えるため、さまざまな化粧品を開発・製造・販売する業界です。

女性が手入れに使用する化粧品のジャンルは、大きくスキンケア・ボディケア・ヘアケア・メイクアップの4つに分けられます。

 

商品

役割

スキンケア

  • 洗顔料
  • 化粧水
  • 乳液
  • クリーム
  • パック
  • メイククレンジング

など

肌を清潔に保ち状態を整える

ボディケア

  • ボディソープ
  • ボディローション
  • ボディクリーム

など

顔以外の肌を清潔に保ち状態を整える

ヘアケア

  • シャンプー
  • リンス
  • トリートメント

など

髪や地肌を清潔に保ち、つやとうるおいを与えて美しい髪に見せる

メイクアップ

  • ファンデーション
    コンシーラー
  • チーク
  • アイシャドウ
  • 口紅

など

肌の色を補正したり陰影を加えたりして、整った顔立ちに見せる

特定のジャンルに特化した企業もあれば、幅広いジャンルを取り扱う企業もあります。

化粧品業界における2021年の市場規模や成長率・利益率は以下の通りです。

業界市場規模

2.1兆円

成長率

-4.6%

利益率

3.6%

出典:業界動向SEARCH.COM「化粧品業界

コロナ禍で化粧品の需要は落ち込んだものの、依然として業界市場規模は2兆円を超えており、国内においては巨大な業界であることが伺えます。

化粧品業界の代表的な企業

次に、化粧品業界の代表的な企業を確認していきましょう。

企業名

売上高

株式会社資生堂

10,351億円(※1)

花王株式会社

2,393億円(※2)

株式会社コーセー

2,249億円(※3)

株式会社ポーラ・オルビスホールディングス

1,786円(※4)

株式会社ディーエイチシー

901億円(※5)

株式会社ファンケル

588億円(※6)

株式会社マンダム

573億円(※7)

ノエビアホールディングス

512億円(※8)

日本コルマー

493億円(※9)

日本メナード化粧品株式会社

426億円(※10)

※1 出典:株式会社資生堂「有価証券報告書
※2 出典:花王株式会社「有価証券報告書
※3 出典:株式会社コーセー「有価証券報告書
※4 出典:株式会社ポーラ・オルビスホールディングス「有価証券報告書
※5 出典:業界動向サーチ「化粧品業界 売上高ランキング
※6 出典:株式会社ファンケル「有価証券報告書
※7 出典:株式会社マンダム「有価証券報告書
※8 出典:ノエビアホールディングス「有価証券報告書
※9 出典:日本コルマー「会社概要
※10 出典:日本メナード化粧品株式会社「会社概要」

化粧品業界において売上No.1を誇るのは、株式会社資生堂です。

10,351億円の売上高は上位10位のうち51.1%を占め、資生堂が過半数を超えるシェアを握っていることがわかります。資生堂が展開する化粧品ブランドは、「SHISEIDO」「エリクシール(ELIXIR)」「マキアージュ(MAQUi)」などが有名です。

そして、売上高2位は花王株式会社の2,393億円です。花王の化粧品事業におけるシェアは11.8%であり、3位の株式会社コーセー(シェア11.1%)とほぼ差はありません。

花王が展開する化粧品ブランドには、「アルブラン(ALBLANC)」「アリー(ALLIE)」「アスレティア(athletia)」があります。これらとしのぎを削っているのが、コーセーの「コスメデコルテ(DECORTE)」「ジルスチュアート(JILLSTUART)」などです。

化粧品業界の職種別の仕事内容

スキンケアからボディケア・ヘアケアまで手入れに必要な化粧品を開発・製造・販売する化粧品業界には、さまざまな職種や仕事が存在します。

化粧品業界における代表的な職種は次の通りです。

  • 美容部員
  • 営業
  • マーケティング
  • 商品企画
  • 研究開発
  • 生産管理

それぞれ仕事内容とともに解説していきます。

美容部員

美容部員はビューティアドバイザーまたはビューティカウンセラーとも呼ばれ、化粧品業界の職種の中で最も身近でイメージしやすい職種です。

美容部員の役割は、百貨店やスーパーなど化粧品売り場の対面コーナーで接客販売を担当し、ブランド化粧品の魅力をお客様に伝えて購入してもらうことです。必要であればお客様にメイクアップやスキンケアを行い、化粧品の仕上がりや使い心地を体験してもらうこともあります。

美容部員が販売する化粧品は高価格帯の商品が多いものの、一人ひとりに合ったアドバイスをすることで、陳列棚から購入する化粧品とは異なる付加価値を提供しています。

営業

営業とは、取引先である百貨店や小売店(スーパー・ドラッグストア・コンビニエンスストアなど)に足を運び、自社の商品が売れるように販売支援をする仕事です。

具体的には、化粧品ブランドの魅力をアピールできる販促物を配ったり、売り場作りを手伝ったりします。また、自社商品の取り扱いのない店舗に対し、商品を取り扱ってもらえるよう交渉するのも仕事の一つです。

マーケティング

マーケティングとは、流行の移り変わりが激しい化粧品業界において消費者のニーズを分析し、商品企画や開発、営業・販売活動に役立てる仕事です。

具体的には、商品企画や営業の依頼を受け、インタビューやアンケートを通じて資料を作成したり、競合分析を行って自社の強みや弱みを把握したりします。企業の規模によっては、マーケティングと商品企画の両方を任されることもあります。

商品企画

商品企画とは、マーケティングで収集・分析した資料を元に、新しい商品やブランドを企画する仕事です。具体的には、新商品や新ブランドのコンセプトやパッケージデザイン、効果的な販売方法などを考えます。

商品企画の仕事は研究開発や営業など異なる職種の人と連携して進めるため、コミュニケーション能力が求められます。

研究・開発

研究・開発とは、商品企画のコンセプトに基づいて新成分や成分の組み合わせを研究し、商品を新たに生み出す仕事です。

企画書通りに効果やつけ心地を実現するのは難しく、何度も実験や改良が繰り返されます。さらに、肌に身に付けて使用する化粧品は高い安全性も必要です。そのため、研究・開発には生物学や物理学・薬学・情報学などの高い専門知識が求められ、主な採用ルートは理系学部出身者で占められています。

生産管理

生産管理とは、生産計画に基づき、化粧品原料の発注先の選定や価格の交渉、納期管理、作業員の確保まで、化粧品の製造から出荷されるまでの工程を一貫して担当する仕事です。

化粧品業界では幅広いラインナップを取り扱うことも多く、在庫状況に合わせた工程変更など柔軟な対応が求められます。過剰生産を防いで生産量を適切にコントロールするには、状況分析力や対応力に加え、マネジメント力も必要です。

化粧品業界の年収

化粧品業界の年収

化粧品業界の平均年収と全業界の平均年収を比較してみましょう。

業界

平均年収

化粧品業界

424万円(※1)

全業界

433.1万円(※2)

※1 出典:マイナビAGENT「化粧品メーカーの平均年収・給料(給与)
※2 出典:国税庁「民間給与実態統計調査

化粧品業界の平均年収は424万円であり、全業界の433.1万円と比べて大きな差はありません。

しかし、化粧品業界と一口に言っても大企業から中小企業まで幅広く、各企業の売上高も異なります。実際に手にする年収は、就職する企業や職種、勤続年数によって異なると言えます。

化粧品業界の現状の課題

化粧品業界が抱える現状の課題には、以下の3つが挙げられます。

  • 渡航制限によるインバウンド需要の消失
  • 外出自粛・マスク着用によるメイクアップ需要の低下
  • 少子高齢化による国内需要の伸び悩み

それぞれ詳しく解説していきます。

渡航制限によるインバウンド需要の消失

化粧品業界が抱える現状の課題の1つ目は、渡航制限によるインバウンド需要の消失です。

経済産業省の「生産動態統計2021年年報」を参考にするとと、2021年における化粧品出荷額は1兆3,529億円と前年比で8.2%減少しています。その要因の1つが、新型コロナウイルス感染症拡大による渡航制限がもたらした訪日外国人の減少です。

観光庁の「訪日外国人旅行者数の推移」によると、訪日外国人数は3,188万人(2019年)をピークに、2020年は412万人、2021年は25万人と減少の一途をたどっています。そのため、訪日外国人をターゲットに百貨店の対面販売を強化してきた化粧品業界は、大きな打撃を受けているのです。

外出自粛・マスク着用によるメイクアップ需要の低下

化粧品業界が抱える現状の課題の2つ目は、外出自粛やマスク着用によるメイクアップ需要の低下です。

人々の日常生活と密接にかかわりを持つ化粧品業界において、新型コロナウイルスによる感染症拡大は、メイクに対する人々の考え方を一変させました。外出自粛によってそもそも化粧をする機会が減っただけでなく、外出時のマスク着用によってファンデーションや口紅の工程を省く人が増えたのです。

経済産業省の「生産動態統計2021年年報」によると、メイクアップ化粧品の出荷額は2019年の3,729臆がピークになっています。その後2020年に2,456億円(前年比.34.1%減)、2021年に2,283億円(前年比.11.1%減)と年々減少しており、人々の意識変化がうかがえます。

少子高齢化による国内需要の伸び悩み

化粧品業界が抱える現状の課題の3つ目は、少子高齢化による国内需要の伸び悩みです。

少子高齢化によって人口減少が続く日本では、今後化粧品市場の縮小が懸念されています。化粧品がすでに日常生活に浸透している日本では、化粧品市場がすでに飽和状態に近づいていると言っても過言ではありません。そのため、これまでと同じ方法では売上を伸ばすのが難しくなりつつあります。

化粧品業界の今後の動向・将来性

インバウンド需要の消失や国内需要の伸び悩みなどの課題を抱える化粧品業界ですが、このまま手をこまねいているわけではありません。現状を打破するべく、化粧品業界で次の取り組みが行われています。

  • アジアを初めとする海外展開の強化
  • 非接触で商品を販売できるデジタル化の推進
  • エイジングケア・男性用化粧品など新たな需要の発掘
  • インフルエンサーマーケティングの活用
  • 異業種から参入の活発化

それぞれ詳しく解説していきます。

アジアを初めとする海外展開の強化

少子高齢化による化粧品市場の縮小を見据え、多くの企業で広がっているのが東南アジアを初めとする海外展開の強化です。

少子高齢化が進む日本とは対照的に、東南アジアの国々は経済成長が著しく、人口も増加傾向にあります。日本市場に加えて海外市場の需要を獲得できれば、化粧品業界は安定した売上の拡大が期待できます。

このような海外展開への動きから、今後はグローバル化に対応できる人材の需要が増えていくでしょう。

非接触で商品を販売できるデジタル化の推進

新型コロナウイルス感染症拡大により、化粧品業界では実店舗による対面販売に頼らずに商品を販売できるデジタル化が加速しています。

化粧品業界の中でも大きな売上高を占めるのが、百貨店を中心とする対面販売です。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大によりメイク体験を自粛する動きが広がり、化粧品業界は対面販売をメインとした販売が難しくなりました。

そのため各企業が対策として取り組んでいるのが、ライブ配信によるメイクの質疑応答サービスです。最近では、オンラインを通じてWebカウンセリングを実施する動きが広がっています。

また、IT企業と組んで自社ホームページを強化し、卸売業者や小売業者を経由せずに直接消費者に化粧品を販売する企業も増えています。さらに、ホームページを通じて海外の消費者への販売を強化する企業も増加中です。

エイジングケア・男性用化粧品など新たな需要の発掘

化粧品市場の伸び悩みを打破すべく各社が力を入れているのが、エイジングケアや男性用化粧品など新たな需要の発掘です。

厚生労働省によると、現在日本は高齢化社会を迎え、平均寿命は男性で79歳、女性で86歳を超えています。そんな状況の中で多くの人が抱くのが、「いつまでも若々しくいたい」という気持ちです。

エイジングケアとは、年齢による肌の衰えをゆるやかにするために行うお手入れを意味します。そのため、クレンジングから美容液、クリームまで年齢肌を意識したさまざまなブランドが開発されています。

今後40代や50代・60代以降の女性をメイン層に取り込むことができれば、化粧品業界はさらなる成長が期待できるでしょう。

また、男性用化粧品も新規開拓の可能性がある分野です。男性の美意識向上に伴い、身だしなみを清潔に整えたいという需要が増加しています。洗顔料や化粧水のほか、1つの商品だけで幅広い機能を兼ね備えるオールインワンコスメが開発されているのも、注目すべきポイントです。

インフルエンサーマーケティングの活用

インフルエンサーの影響力を活用したマーケティングに力を入れる企業も増えています。

インフルエンサーとは、TwitterやInstagramなどで多くのファンやフォロワーを獲得している情報発信者のことを表します。インフルエンサーの特徴は、発信する情報が周囲に与える影響が大きいことです。

インフルエンサーと言えば、かつては芸能人やモデル、タレントなどの有名人を指していました。しかし現在では、コスメフリークや美容家など、特定の分野に限定した情報を発信する一般人も影響力を増しています。

消費者の価値感に近いインフルエンサーに自社商品をアピールしてもらうことで、化粧品業界は自社商品の認知度を高め、ファンを獲得できます。

異業種から参入の活発化

近年、化学業界や小売業界など、本来化粧品業界とは関係の無い異業種から化粧品業界に参入する事例が増えています。

異業種からの参入が増えた理由の1つに、薬機法の改定によって大規模な設備がなくても化粧品を開発できるようになったことが挙げられます。また、インターネット通販の普及により、メーカーが直接消費者に商品を販売できるようになったことも、参入障壁を下げる要因になりました。

異業種の参入事例として知られるのは、富士フィルムによる「アスタリフト(ASTALIFT)」やイオンの「コペルニカ(COPERNICA)」などです。これらの事例から見ても、化粧品業界はまだまだ伸びしろが大きく、魅力的な業界であることがわかります。

実は就職する業界・会社選びよりも、重要なのは職業選び 自分の強み・特徴を活かした職業に就職をしない人は、早い段階で退職しているケースが多いです。単純にこの業界、この会社が好きとかではなく、自分の強み・特徴を活かした職業選択をするために適職診断をぜひご活用ください。

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