テレビ業界とは?
テレビ業界とは、テレビ放送や番組制作に携わる産業を指します。番組を通して情報を発信することが主な仕事です。
業界市場規模 | 2.3兆円 |
成長率 | 2.2% |
利益率 | 4.3% |
出典:業界動向SEARCH.COM「テレビ業界」
テレビ業界は2つに分類される
テレビ業界の事業は大きく以下の2つに分類されます。
- テレビ局
- 番組制作会社
テレビ局
テレビ局は自社で制作した番組や番組制作会社が制作した番組を放送します。視聴者の傾向を検討したうえで、いつどの番組を流すのかといった番組スケジュールの管理もします。
全国放送ができるのはキー局と言われるテレビ局で、ローカル局(地方局)では特定の地域でのみ放送が可能です。有料で衛星放送を提供している放送局もテレビ局に含まれます。
番組制作会社
番組制作会社はテレビ局で放送する番組を制作するのが仕事です。テレビ局から依頼を受けて番組を制作することもあれば、自社で制作した番組をテレビ局に売り込むこともあります。
番組制作会社にはテレビ局のグループ会社と独立系の2種類があります。テレビ局のグループ会社は、テレビ局の方針に沿って番組を作るのが一般的です。対して独立系の制作会社であれば、1つのテレビ局に縛られずさまざまな番組が作れます。
テレビ業界のビジネスモデル
テレビ業界は以下に挙げる3つを収益としています。
- 広告収入
- 視聴料金
- 番組制作費
広告収入
テレビ局の主な収益源は、広告主(スポンサー)の企業や団体にCM枠を販売し得られる広告収入です。番組制作にかかる費用もこの広告収入から捻出されています。
視聴料金
テレビ局の中には、視聴者が支払う受信料や視聴料を収益としている媒体もあります。
その代表的なテレビ局としてはNHKが挙げられるでしょう。NHKは受信料を国民から徴収しています。CMで広告収入を得るビジネスモデルではないため、スポンサーの意向や視聴率を気にせず番組を制作・放送できます。
また、視聴料を支払うことで見られる有料チャンネルの一例として、次のようなものがあります。
- スカパー!
- WOWOW
- Hulu
- Netflix
- Abema
番組制作費
番組制作会社は、テレビ局から支払われる番組制作費を主な収益としています。
テレビの放送枠内に収まるよう番組を制作し、その対価として費用を支払ってもらいます。
テレビ業界の代表的な企業
テレビ業界の代表的な企業と、その売上高をまとめました。
企業名 | 売上高 |
フジ・メディア・HD | 5,250億円(※1) |
日本テレビHD | 4,063億円(※2) |
TBS HD | 3,582億円(※3) |
テレビ朝日HD | 2,982億円(※4) |
テレビ東京HD | 1,480億円(※5) |
スカパーJSAT HD | 1,196億円(※6) |
朝日放送グループHD | 851億円(※7) |
サイバーエージェント | 828億円(※8) |
WOWOW | 796億円(※9) |
中部日本放送 | 327億円(※10) |
※1 出典:フジ・メディア・ホールディングス「2021年度有価証券報告書」
※2 出典:日本テレホールディングス株式会社「2021年度有価証券報告書」
※3 出典:株式会社TBSホールディングス「2021年度有価証券報告書」
※4 出典:株式会社テレビ朝日ホールディングス「2021年度有価証券報告書」
※5 出典:株式会社テレビ東京ホールディングス「2021年度有価証券報告書」
※6 出典:株式会社スカパーJSATホールディングス「2021年度有価証券報告書」
※7 出典:朝日放送グループホールディングス株式会社「2021年度有価証券報告書」
※8 出典:株式会社サイバーエージェント「2020年度有価証券報告書」(メディア事業)
※9 出典:株式会社WOWOW「2021年度有価証券報告書」
※10 出典:中部日本放送株式会社「2021年度有価証券報告書」
上位4社の売上高が突出していることが分かります。5位以下の売上高は、4位のテレビ朝日HDの半分以下です。
上位4社までの売上高を合計すると1.5兆円にものぼり、業界市場規模2.3兆円の6割以上を占めることになります。
テレビ業界の職種・仕事内容
テレビ業界の職種・仕事内容には、以下のようなものがあります。
- プロデューサー
- ディレクター
- AD
- タイムキーパー
- カメラマン
- 照明スタッフ
- 音響スタッフ
- アナウンサー
- 営業・事務
プロデューサー
プロデューサーは番組の最高責任者です。番組の企画・立案・予算の設定・出演者の選定など、制作全体を管理しています。
番組に関する全ての裁量権を持っており、テレビ業界を目指す人にとっては憧れの職種と言えるでしょう。
ディレクター
ディレクターは番組制作における現場監督のような仕事をします。
プロデューサーの企画・立案に基づいて番組制作の進行管理をしたり、番組出演者との交渉をしたり、照明・音響スタッフやカメラマンに演出の指示を出したりします。
取材やロケ、編集を全て自分で行うこともあり、業務内容は非常に幅広いです。
AD
ADはディレクターの補佐役として番組制作をサポートする仕事です。
具体的には、以下のような仕事があります。
- 番組制作に必要な情報のリサーチ
- 撮影場所の選定
- 収録の準備
- 出演者へのフォロー(カンペ出しなど)
- 現場の後片付け
- 編集の補助
ADの仕事は、ディレクターを目指すにあたっての下積みとも言えます。
カメラマン
カメラマンはディレクターの指示のもと、企画・構成通りに撮影する仕事です。
撮影のセンスだけでなく、撮影後の編集を意識してカメラを回す想像力も問われます。生放送の撮影では失敗が許されないため、大きなプレッシャーを背負うこともあるでしょう。
照明スタッフ
照明スタッフは番組の雰囲気に合うよう、複数のライトを使ってセットや出演者に照明を当てる仕事です。
照明の当て方や光の演出によってテレビ画面で見たときの印象は大きく変わるため、専門的な知識が必要とされます。
音響スタッフ
音響スタッフは番組制作時の音響や音声を調整・編集する仕事です。
ミキサーという機械を使って、音響効果を加えたり出演者の音声を拾ったりします。効果音や流す音楽によって番組の印象は大きく変わるため、音響・音声の編集は重要な業務の一つです。
アナウンサー
アナウンサーはニュースなどの原稿を読んで情報を伝えたり、番組で司会進行やナレーションを行ったりする仕事です。視聴者が聞き取りやすいよう発声や滑舌を学び、言葉を正しく美しく話す技術を身に着けます。
テレビ業界の花形職種であり、近頃ではアナウンサーがタレントのように番組出演することも増えてきています。
営業・事務
テレビ業界には一般の会社と同様、営業や事務といった職種もあります。
営業は、番組の広告枠をスポンサーに提案・交渉します。会社の収益に直接貢献できる職種です。
事務は一般の会社と同様に、電話対応や来客対応などを行います。
テレビ業界の年収
テレビ業界の平均年収と、全業界の平均年収を比較してみましょう。
業界 | 平均年収 |
テレビ業界 | 961万円(※1) |
全業界 | 433.1万円(※2) |
※1出典:業界動向SEARCH.COM「テレビ業界」
※2 出典:国税庁「民間給与実態統計調査」
テレビ業界の平均年収は961万円であり、全業界平均と比べて約2倍以上の高年収です。
テレビ業界が高年収な理由としては、雑誌や新聞などのメディアに比べて組織が大きく、CMによる莫大な広告収入を得られるため、社員にも利益を還元しやすいからだと考えられます。
経験やスキルを積むほどプロデューサーなど裁量の大きい職種につけるようになり、職歴に比例して年収は上がっていくでしょう。
テレビ業界の現状の課題
テレビ業界の現状の課題として、以下の事柄が挙げられます。
広告売上がネット広告に抜かれている
近年はテレビよりもインターネットの広告が好調です。
電通が調査した「2021年 日本の広告費」によると、2021年のインターネット広告費は2兆7,052億円です。新聞・雑誌・ラジオ・テレビの「マスコミ4媒体」を合算した広告費は2兆4,538億円となっており、初めてインターネット広告費に抜かれる結果となりました。
この要因として、テレビ視聴よりもインターネット利用で時間を過ごす人が増えていることが挙げられるでしょう。総務省の「令和3年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」では、全年代で平日のインターネット利用時間がテレビ視聴時間を超えています。
結果として、テレビではなくインターネットを選択する広告主が増えつつあります。
VODの台頭でテレビの視聴時間が減少している
テレビの視聴時間が減少する一方で、VOD(ビデオ・オン・デマンド)のようにデジタルメディアを利用して番組を視聴する時間は増加しています。
VODはテレビと比べて、求める番組や動画を検索してピンポイントで見ることができます。好きな時間に楽しめるといったメリットが大きいため、今後もニーズはますます伸びていくでしょう。
VODの代表的なものとしては以下があります。
- YouTube
- Netflix
- Hulu
- Amazonプライム・ビデオ
- U-NEXT
- dTV
デジタルメディアは急速な成長を見せており、視聴者がテレビからネットへとシフトする「テレビ離れ」の傾向は今後も続くと予想されます。
テレビ業界の今後の動向・将来性
テレビ業界の今後の動向や将来性について解説します。
非テレビ事業の強化
テレビからネットへの視聴者の流出は止まらず、テレビ業界全体で広告収入の減少は避けられないでしょう。こうした情勢を受けて、大手テレビ局はすでに非テレビ事業の強化に取り組んでいます。
例えば、フジメディアHDは都市開発・観光事業、日本テレビはスポーツクラブ事業、テレビ東京はEC事業、テレビ朝日HDはサイバーエージェントと共同で行うインターネット事業にそれぞれ力を入れています。
テレビ視聴率が低迷する中、周辺事業の売り上げ強化はどのテレビ局にとっても欠かせない戦略と言えるでしょう。
動画配信などネットを活用した配信チャネルの拡大
VODの需要拡大を受け、2015年よりフジテレビ・日本テレビ・TBSテレビ・テレビ朝日・テレビ東京の5社が共同で、見逃し配信サイト「TVer」の運営を開始しました。
TVerは広告付きの無料動画配信サービスであり、視聴者は放送済みの番組を好きな時にスマホやタブレットで視聴できます。NHKでも、2020年よりテレビ番組と同時にインターネットにも番組を配信する「NHKプラス」のサービスが開始されました。
このようにインターネットを活用したテレビ局各社の配信チャネル拡大は、今後もますます活発になっていくでしょう。