通信業界とは?
通信業界とは、電話やインターネットの通信環境を提供する業界です。
現代社会において、電話やインターネットは社会インフラとなっています。そのため通信業界は、巨大な市場規模を誇る産業です。
2021年の市場規模や成長率等は以下の通りです。
業界市場規模 | 29.9兆円(10位/190業界) |
成長率 | −3.4%(141位/190業界) |
利益率 | 6.6%(20位/190業界) |
出典:業界動向SEARCH.COM「通信業界」
通信業界は市場が成熟したため、一部では価格競争が見られます。しかし依然として、高い利益率を誇る業界です。
通信業界に属する企業の事業内容の区分
通信業界に属する企業は、以下の4種類に区分できます。ただし現在では、業種区分を超えた協力体制を構築する企業も登場しています。
固定回線
固定回線は、固定電話や光ファイバー通信を提供するサービスです。一般家庭やオフィス、工場で利用されるため、多くの顧客がターゲットとなります。
モバイル回線
モバイル回線は、スマートフォンやポケットWi-Fi向けのサービスです。近年では格安スマホが普及し、新興の通信事業者も数多く登場しています。
ケーブルテレビ
ケーブルテレビとは、固定回線によってテレビの映像を提供するサービスです。テレビの映像に加え、インターネットサービスや電話回線を組み合わせたサービスもあります。
インターネットサービス・プロバイダー(ISP)
インターネットサービス・プロバイダー(ISP)とは、インターネット接続サービスを提供する企業です。
インターネットは、通信回線を契約しただけでは利用できません。そこで、パソコンと通信回線を橋渡しする接続サービスがインターネットサービス・プロバイダーです。
通信業界におけるビジネスモデル
通信業界のビジネスモデルは、顧客層によって以下の3つに区分できます。ビジネスモデルによって、提供されるサービスも異なります。
BtoC
BtoCは、一般消費者向けのサービスです。個人が利用する携帯電話やインターネットの回線がこれに該当します。
BtoB
BtoBとは、法人顧客向けの通信サービスです。顧客のビジネスを支えるため、企業の通信環境を一手に引き受けます。専門性の高さと規模の大きさが特徴です。
BtoBtoX
BtoBtoXは、新たなビジネスモデルとして注目される分野です。人工知能やDXによって法人顧客をサポートし、その恩恵を第三者が受ける仕組みを構築します。まだ実用例はほとんどありませんが、今後の発展が期待される分野です。
通信業界の代表的な企業
ここでは、通信業界の代表的な企業とその売上高をまとめました。
企業名 | 売上高 |
東日本電信電話株式会社(NTT東日本) | 17,180億円(※1) |
西日本電信電話株式会社(NTT西日本) | 15,135億円(※2) |
ソフトバンク株式会社 | 56,906億円(※3) |
株式会社NTTドコモ | 47,138億円(※4) |
KDDI株式会社 | 54,467億円(※5) |
JCOM株式会社 | 3,249億円(※6) |
株式会社オプテージ | 2484億円(※7) |
UQコミュニケーションズ株式会社 | 1,722億円(※8) |
株式会社TOKAIコミュニケーションズ | 554億円(※9) |
日本通信株式会社 | 463億円(※10) |
※1 出典:東日本電信電話株式会社「財務情報」
※2 出典:西日本電信電話株式会社「損益状況(連結・IFRS)」
※3 出典:ソフトバンク株式会社「業績分析」
※4 出典:株式会社NTTドコモ「財務・業績」
※5 出典:KDDI株式会社「有価証券報告書」
※6 出典:JCOM株式会社「IR情報」
※7 出典:株式会社オプテージ「会社概要」
※8 出典:UQコミュニケーションズ株式会社「接続会計」
※9 出典:株式会社TOKAIコミュニケーションズ「会社概要」
※10出典:日本通信通信株式会社「財務ハイライト」
通信業界は大企業によって占められています。なぜなら、巨額の設備投資が必要であり、企業体力のない会社は参入できないからです。NTTグループに加えて、ソフトバンク・NTTドコモ・KDDIは特に大きな影響力を持ちます。
また、ケーブルテレビやインターネットサービスプロバイダーの中には、特定の地域で高いシェアを誇る企業もあります。
通信業界の職種・仕事内容
通信業界の仕事には、スピード感があります。なぜなら通信業界では、新しい技術やトレンドが次々と登場するためです。
この変化に対応できるように、通信業界の企業にはさまざまな部署が設けられています。
営業職
営業職は、顧客へサービス内容を説明したり契約を締結したりするのが仕事です。法人顧客か個人顧客によって、以下の2つに区分できます。
BtoBの法人営業
BtoBの法人営業では、企業に対して通信サービスの提案を行います。例えば物流企業に対して、全てのドライバーへの携帯電話の支給、位置情報を管理できる通信システムなどを提案します。
契約締結までのハードルは高い一方で、1社あたりの契約金額の大きさが特徴です。
BtoCの個人営業
BtoCの個人営業では、一般消費者向けに接客や契約の締結を行います。
個人営業の場合は、販売代理店が顧客との窓口になる場合もあります。BtoCはサービスプランが豊富であり、顧客に合わせた提案が可能です。
営業職に興味がある方は、「営業職とは何か説明!種類や仕事内容、向いている人の特徴や年収」も読んでみてください。
マーケティング職
マーケティング職は、料金体系やサービスの企画・設計を担当します。
通信サービスは速さや安定性が主要な評価項目であり、差別化が困難です。そこで、ポイント制度や他社と連携したサービスによって、自社商品の価値を高めています。
研究開発職
研究開発職は、通信サービスに関する技術開発を担います。例えば以下のような技術の開発です。
- 次世代型の通信システム
- IoT機器
- 自動運転など次世代の社会インフラ
研究開発の分野は多岐にわたっており、次世代を見据えた投資が行われています。
エンジニア職
顧客が安心して通信環境を利用できるように、保守管理を行う仕事がエンジニア職です。エンジニア職のなかで代表的な業務として、以下の2つが挙げられます。
ネットワーク構築
ネットワーク構築は、通信環境を維持する仕事です。
安定した通信環境には、ネットワーク網の整備が欠かせません。この通信網が機能するように保守・整備を行います。
加えて通信網に障害が発生しないように、24時間365日の監視構築によって通信環境を維持しています。
セキュリティ管理
サイバーセキュリティ対策も、エンジニア職の重要な任務です。
利用者が安心して通信するためには、セキュリティの強化が欠かせません。そこでセキュリティ管理の部門が、あらゆる事態を想定した対策を取ります。
コーポレート職(事務職)
コーポレート職(事務職)は、企業の業務全体を支える仕事です。
一例として、カスタマーセンターが挙げられます。カスタマーセンターでは、契約内容の確認やスマートフォンの紛失への対応など、顧客サポート全般を担当します。
コーポレート職の活躍によって、スムーズなサービス提供が可能となります。
通信業界の年収
通信業界の平均年収と、全業界の平均年収を比較してみましょう。
業界 | 平均年収 |
通信業界 | 518万円(※1) |
全業界 | 433.1万円(※2) |
※1 出典:マイナビ転職「2022年版 業種別モデル年収平均ランキング」
※2 出典:国税庁「民間給与実態統計調査」
通信業界の年収は、全業界の平均値と比較して高い水準を誇ります。なぜなら、巨額の設備投資を必要とする通信業界は、大企業がほとんどを占めるためです。
また、一部では価格競争が始まっているものの、依然として高い収益を維持している業界でもあります。通信業界は社会インフラの機能があるため、景気の影響を受けにくい点も特徴です。
通信業界の現状の課題
携帯電話とインターネットの登場によって大きな変革を迎えた通信業界も、その勢いは落ち着いてきました。そのため現状の通信業界は、以下の課題を抱えています。
契約件数の伸び悩み
契約件数の伸び悩みは、通信業界にとっての課題です。
今やほぼ全ての日本国民が、インターネット環境に接続できるようになりました。そのため、新規での契約件数は増加しづらい環境です。各社は通信料の他に、金融や保険など生活サービスを取り込み、収益の拡大を目指しています。
価格競争の激化
通信業界が成熟したため、通信料の値下げ圧力が強まっています。
例えば近年では、政府主導によるスマートフォン通信料の値下げが実施されました。これに加えて格安SIMの台頭により、今後も値下げ競争が激化すると予想されます。
通信業界の今後の動向・10年後の将来性
今後の10年間で、自動運転やDXの分野がさらに発展すると考えられています。これに合わせて、通信業界も大きな変化の波が押し寄せています。
デジタル・トランスフォーメーション(DX)への対応
次世代のトレンドが、デジタル・トランスフォーメーション(DX)です。DXによって、デジタル化やリモート化を前提とした社会に移行しつつあります。
自動運転や遠隔医療を実現するためには、高速通信網が必要です。そこで、通信業界ではこれらの技術の開発や顧客のDX化に力を入れると予想されます。
IoTや5Gなどの次世代技術への取り組み
通信業界では、IoTや5Gなど次世代の技術が誕生しました。そのため今後は、IoTや5G分野での開発競争が本格化すると考えられています。
IoTや5Gは発展途上にある技術であり、今後10年間も急速な成長が予測されます。
通信サービスを中心とした多角化
通信業界の動向として、経営の多角化が挙げられます。
通信サービスが世の中に普及したため、新規契約による規模拡大が難しくなりました。そこで通信各社は、金融や保険、健康管理など生活のさまざまなシーンへ進出しています。
今後も通信以外の分野で、さまざまなサービスが展開されると予測されます。