スポーツ業界とは?
スポーツ業界とは、スポーツ用品の製造や販売、スポーツ教室やスポーツイベントの開催など、スポーツに関するさまざまな事業を行う業界を指します。定義は広く、人がスポーツを楽しむために必要なサービスや製品を提供する企業は全てスポーツ業界に含まれます。
そのため一口にスポーツ業界と言っても、各企業によって事業内容は大きく異なります。多様なビジネス・業態があるという点が、他の業界にはない特徴と言えるでしょう。
スポーツ業界の事業の種類
スポーツ業界の事業は、以下の種類に大きく分けられます
- スポーツ用品店
- スポーツ用品製造・販売
- スポーツクラブ
- スポーツ施設・空間
- eスポーツ
それぞれ詳しく解説していきます。
スポーツ用品店
スポーツ用品店とは、スポーツに必要なシューズやウェア、ボールなどさまざまなアイテムを販売する小売会社のことです。
国内外のスポーツメーカーからスポーツ用品を仕入れ、大規模店舗で販売するといった業態が一般的ですが、中には特定のスポーツ用品のみをまとめて販売する専門店舗もあります。
スポーツ用品店に該当する代表的な企業は以下の通りです。
スポーツ用品店業界の2021〜2022年における市場規模や成長率、利益率は以下の通りです。
業界市場規模 | 0.5兆円 |
成長率 | 0.6% |
利益率 | 2.1% |
出典:業界動向SEARCH.COM「スポーツ用品店業界」
スポーツ用品製造・販売
スポーツ用品製造・販売とは、スポーツに必要不可欠な製品の製造・販売を行っているスポーツ用品メーカーのことを指します。
スポーツ用品メーカーは、総合スポーツメーカーと専門スポーツメーカーの2つに分けられます。
スポーツウェアやシューズなど、スポーツ用品を総合的に扱う以下のような企業は総合スポーツメーカーです。総合スポーツメーカーには、多国籍企業や海外に進出している大企業が多いのが特徴と言えるでしょう。
一方で、特定のスポーツに特化したスポーツ用品を扱っている以下のような企業は、専門スポーツメーカーと呼ばれます。
- ヨネックス株式会社(テニス・バドミントン用品)
- 株式会社シマノ(フィッシング用品・自転車部品)
- 株式会社エスエスケイ(野球・ソフトボール用品)
スポーツ用品製造・販売業界の2021〜2022年における市場規模や成長率、利益率は以下の通りです。
業界市場規模 | 1.2兆円 |
成長率 | 3.1% |
利益率 | 8.1% |
出典:業界動向SEARCH.COM「スポーツ用品業界」
スポーツクラブ
スポーツクラブとは、利用者にスポーツ体験を提供する場所です。運動器具を提供するジムや、インストラクターが利用者に指導を行うフィットネスクラブやヨガ教室、トレーナー付きのダイエットジムなどが該当します。
スポーツクラブに該当する代表的な企業は以下の通りです。
スポーツクラブ業界の2021〜2022年における市場規模や成長率、利益率は以下の通りです。
業界市場規模 | 0.2兆円 |
成長率 | -9.2% |
利益率 | 5.5% |
出典:業界動向SEARCH.COM「スポーツクラブ業界」
スポーツ施設・空間
スポーツ施設・空間とは、以下のような場所です。
- ゴルフ場
- スキー場
- ボウリング場
- テニス場
- スタジアム
- アリーナ
ゴルフ場やスキー場など一般客向けの施設だけでなく、プロ選手の試合を観戦する野球・サッカーのスタジアムなども含まれます。
eスポーツ
eスポーツとは「エレクトロニック・スポーツ」の略で、ネット上で行う対戦ゲームを競技とするものです。主に以下のような競技を行います。
- 格闘ゲーム
- 戦闘ゲーム
- シューティングゲーム
- カードゲーム
家庭で行うゲームと大きく異なるのは、大規模な施設に観客を集めて試合の様子を配信するなど、競技要素が強い点です。
またスポーツ業界の他の業態に比べて、ゲーム会社・動画配信会社・イベント会社など多彩な業種の協賛企業が存在することも、eスポーツならではの特徴と言えるでしょう。
スポーツ業界の代表的な企業
スポーツ業界の代表的な企業と、その売上高をまとめました。
スポーツ用品店の企業
スポーツ用品店の代表的な企業と、その売上高は次の通りです。
企業名 | 売上高 |
アルペン | 2,323億円(※1) |
ゼビオHD | 2,232億円(※2) |
ヒマラヤ | 589億円(※3) |
※1 出典:株式会社アルペン「2021年度有価証券報告書」
※2 出典:ゼビオホールディングス株式会社「2021年度有価証券報告書」
※3 出典:株式会社ヒマラヤ「2021年度有価証券報告書」
売上高1,000億円を超えるのは、アルペンとゼビオHDのみです。両者の売上高の差は小さく、数年で順位の入れ替わりも予想されます。
スポーツ用品製造・販売の企業
スポーツ用品製造・販売の代表的な企業と、その売上高は次の通りです。
企業名 | 売上高 |
アシックス | 4,040億円(※1) |
ミズノ | 1,727億円(※2) |
グローブライド | 1,206億円(※3) |
デサント | 1,089億円(※4) |
シマノ | 1,023億円(※5) |
住友ゴム工業 | 1,014億円(※6) |
ゴールドウィン | 982億円(※7) |
ヨネックス | 744億円(※8) |
ゼット | 447億円(※9) |
エスエスケイ | 437億円(※10) |
※1 出典:株式会社アシックス「2021年度有価証券報告書」
※2 出典:美津濃株式会社「2021年度有価証券報告書」
※3 出典:グローブライド株式会社「2021年度有価証券報告書」
※4 出典:株式会社デサント「2021年度有価証券報告書」
※5 出典:株式会社シマノ「2021年度有価証券報告書」(釣具事業)
※6 出典:住友ゴム工業株式会社「2021年度有価証券報告書」(スポーツ事業)
※7 出典:株式会社ゴールドウィン「2021年度有価証券報告書」
※8 出典:ヨネックス株式会社「2021年度有価証券報告書」
※9 出典:ゼット株式会社「2021年度有価証券報告書」
※10 出典:株式会社エスエスケイ「企業情報」(2022年7月期売上高)
スポーツ用品製造・販売業界における売上高1位は、総合スポーツメーカーのアシックスです。日本発祥の多国籍企業で、2位以下の売上高に2倍以上の差をつけており、圧倒的なシェアを誇ります。
スポーツクラブの企業
スポーツクラブの代表的な企業と、その売上高は次の通りです。
企業名 | 売上高 |
RIZAPグループ | 447億円(※1) |
コナミHD | 420億円(※2) |
セントラルスポーツ | 403億円(※3) |
ルネサンス | 371億円(※4) |
カーブスHD | 246億円(※5) |
東急不動産HD | 238億円(※6) |
日本テレビHD | 231億円(※7) |
野村不動産HD | 136億円(※8) |
東祥 | 121億円(※9) |
バローHD | 96億円(※10) |
※1 出典:RIZAPグループ株式会社「2021年度有価証券報告書」(ヘルスケア・美容事業)
※2 出典:コナミホールディングス株式会社「2022年3月期 決算発表資料」(スポーツ事業)
※3 出典:セントラルスポーツ株式会社「2021年度有価証券報告書」
※4 出典:株式会社ルネサンス「2021年度有価証券報告書」
※5 出典:株式会社カーブスホールディングス「2021年度有価証券報告書」
※6 出典:東急不動産ホールディングス株式会社「2021年度有価証券報告書」(ヘルスケア事業)
※7 出典:日本テレビホールディングス株式会社「2021年度有価証券報告書」(生活・健康関連事業)
※8 出典:野村不動産ホールディングス株式会社「2021年度有価証券報告書」(フィットネス事業)
※9 出典:株式会社東省祥「2021年度有価証券報告書」(スポーツクラブ事業)
※10 出典:株式会社バローホールディングス「2021年度有価証券報告書」(スポーツクラブ事業)
スポーツクラブ業界の売上高1位は、印象的なCMが話題となったRIZAPグループです。ただし、売上高だけを比べると1〜4位までの各社に大きな差はありません。
また、5位の東急不動産、6位の日本テレビHD、7位の野村不動産HDなど、他の業態に比べて異業種からの参入が目立つ点が特徴です。
スポーツ業界の職種・仕事内容
スポーツ業界にも他業界と同じく、事務や営業といった職種は存在しますが、ここではスポーツ業界特有のものとして以下に挙げる職種と仕事内容について解説します。
- プロスポーツ選手
- トレーナー
- インストラクター
- 企画開発職
- スポーツドクター
プロスポーツ選手
プロスポーツ選手とは、スポーツを職業として収入を得る人のことを言います。スポーツ業界の仕事で最もイメージしやすい職種でしょう。
成果を出して認められれば、人気のスター選手になれるなど夢のある仕事です。一方で、試合や大会では自分の実力だけで勝負し、常に成績を残さなくてはならない厳しい側面もあります。
プロスポーツ選手の収入には試合や大会の出場賞金のほか、スポンサーCMやテレビへの出演報酬などがあります。
トレーナー
トレーナーとは、スポーツ選手の健康管理や技術指導を行う職種です。選手が最高のパフォーマンスを発揮できるようサポートします。
また、競技スクールの講師やクラブチームのコーチもトレーナーと呼ばれます。スポーツ経験を仕事に活かせるため、スポーツ選手やアスリートだった人がこの職に就くことも少なくありません。
トレーナーとなるために必須の資格はありませんが、選手の怪我の処置・予防やコンディショニングのため、「柔道整復師」「理学療法士」などの医療系国家資格を取得している人が多いです。
インストラクター
インストラクターとは、フィットネスクラブやジムで利用者へスポーツの指導やトレーニングのアドバイスを行う仕事です。
スポーツやトレーニングに関する指導・アドバイスのほか、利用者に合わせたカリキュラムを作成して、食事や生活スタイルにまで及ぶ指導を行うこともあります。そのため、インストラクターにはスポーツや体に関する知識だけでなく、食事や健康に関する知識も必要です。
インストラクターに必須の資格はありませんが、スポーツ経験者や体育大学・専門学校を卒業した専門知識を持つ人が就くことが多いです。
企画開発職
企画開発職とは、スポーツウェアやシューズ、ボールなどスポーツ用品の企画・開発を担当する仕事です。一般ユーザーが使うスポーツアイテムからプロ仕様のスポーツ用品までを幅広く取り扱います。
アスリートやプロスポーツ選手は、使用するスポーツアイテムが試合の成果に影響する可能性があるため、企画開発職は各スポーツの専門知識を備えていなくてはなりません。
また一般ユーザー向けのスポーツ用品においては、トレンドのデザインや、利用者が求める実用性を兼ね備えたスポーツ用品を考案する必要があります。
企画開発職には、スポーツの専門知識とクリエイティブな能力の両方が求められるでしょう。
スポーツドクター
スポーツドクターは、スポーツ選手やアスリートの健康管理や治療を専門に行います。日々のトレーニング内容の管理だけでなく、怪我の診療やメンタル面のサポートもその仕事のひとつです。医療知識とスポーツに対する幅広い知見でプロスポーツ選手を支えます。
スポーツ業界の年収
スポーツ業界の平均年収と、全業界の平均年収を比較してみましょう。
区分 | 平均年収 |
スポーツ用品店 | 556万円(※1) |
スポーツ用品製造・販売 | 663万円(※2) |
スポーツクラブ | 710万円(※3) |
全業界 | 433.1万円(※4) |
※1 出典:業界動向SEARCH.COM「スポーツ用品店業界」
※2 出典:業界動向SEARCH.COM「スポーツ用品業界」
※3 出典:業界動向SEARCH.COM「スポーツクラブ業界」
※4 出典:国税庁「民間給与実態統計調査」
スポーツ業界の年収は総じて、全業界平均よりも高い傾向にあります。比較的新しい事業であるスポーツクラブ業界の年収が最も高くなっています。
国内のスポーツ参加人口が増えれば、スポーツクラブだけでなく業界全体で年収が底上げされていくことも期待できるでしょう。
スポーツ業界の現状の課題
スポーツ業界の現状の課題として、以下の事柄が挙げられます。
スポーツ人口の少なさ
日本では、スポーツを「見る人」は多いものの「する人」は少ないと言われています。
スポーツ庁の「スポーツ関係データ集」によると、2020年時点で「成人で週3回以上の運動・スポーツを行う人」の割合は全体の30.9%に留まっています。運動・スポーツを行わない理由としては「仕事が忙しくて時間がないから」の回答が最も多いです。
スポーツ実施人口が増えなければスポーツ業界の発展は望めません。スポーツ実施人口の増加を目指すことが、スポーツ業界全体の市場拡大に繋がるでしょう。
収益モデルの構築・多角化が急務
プロスポーツにおいては、チケット収益が収入の柱です。しかし、このビジネスモデルでは収益が天候や情勢に左右されてしまい、多額の資金を必要とするプロチームの運営が厳しくなってしまう点が課題の一つとして挙げられています。
こうした現状を踏まえて、チケット収入だけに頼らない収益モデルの多角化が必要とされています。
また、日本には甲子園や駅伝など人気のあるアマチュアスポーツは存在しますが、大会収益などが重視されていないケースも多いです。ビジネスの視点を導入し、アマチュアスポーツを上手に収益化していくことも今後のスポーツ業界の課題の一つです。
スポーツ業界の今後の動向・将来性
スポーツ業界の今後の動向として、以下の事柄が挙げられます。
政府の後押しによる市場拡大
首相官邸の「成長戦略フォローアップ(2020年)」では、2017年時点で8.4兆円に留まっていたスポーツ市場規模を、2025年までに15兆円まで拡大するとしています。
具体的には、スポーツ経営人材育成のためのMBAコースの導入、地域のスポーツ活動などを国が支援する施策が進んでいます。
政府の後押しにより市場規模が拡大すれば、スポーツ業界全体が盛り上がることでしょう。
健康志向の高まりによるスポーツ需要増
国内では、健康志向の高まりからフィットネスやスポーツの人気が高まっています。スポーツ庁の「スポーツの実施状況等に関する世論調査 」によれば、全体の46.6%が運動・スポーツに対して「もっとやりたい」と回答しています。
現状のスポーツ実施人口が少ないという課題がある一方、「スポーツをしたい」という需要が高まっているのは事実です。今後はスマートウォッチや体組成計など健康関連の製品との相乗効果で、新しいスポーツ製品の展開も期待されます。