専門商社業界

専門商社業界とは?仕事内容や魅力、現状の課題や年収をわかりやすく解説

専門商社業界とは?

専門商社業界とは、売り手と買い手の仲介を行う商社の業態の一つです。

商社は大きく専門商社・総合商社の2つに分けられますが、専門商社は総合商社と異なり特定の分野や商材に特化して事業を展開しています。

基本的に、特定の分野や商材の売上が50%以上を占める商社が専門商社と呼ばれます。また、専門商社は総合商社に比べて事業の規模が小さいことも特徴の一つです。

2021年の市場規模や成長率等は以下の通りです。

業界市場規模

53.5兆円

成長率

-0.7%

利益率

0.6%

出典:業界動向SEARCH.COM「専門商社業界

総合商社よりは小さいものの、専門商社の市場規模は50兆円を超えており、他の業種に比べてスケールは大きい方だと言えます。原材料価格の高騰・円安の影響もあり、2021〜2022年の成長率はマイナスです。

専門商社の種類

専門商社は、実施している事業の特徴や仕組みから大きく以下の3つに分けることができます。

  • 総合商社系
  • メーカー系
  • 独立系

それぞれの特徴や代表的な企業を以下の表にまとめました。

種類

特徴

代表的な企業

総合商社系

総合商社の子会社や関連会社。総合商社で扱う特定の商材に特化している。専門商社では扱わないニッチな商品や小規模案件を担当する。

・伊藤忠丸紅鉄鋼

・メタルワン

・三菱商事エネルギー など

メーカー系

特定のメーカーの商品を販売することを目的としている。メーカーのグループ会社として営業・販売部門的役割を果たすことが多い。

・JFE商事

・花王カスタマーマーケティング

・日産トレーディング など

独立系

総合商社・メーカーのどちらにも属さず事業を行う専門商社。商品や営業先が比較的自由で、独自のノウハウやコネクションを持つ。

・‌兼松

・阪和興業

・豊島

ビジネスの仕組み

専門商社のビジネスは企業と企業の間に立ち、商品の取引を仲介する「トレーディング事業」が主です。トレーディングによって得られる仲介手数料や、売値と買値の差益などが専門商社の利益となります。

トレーディングでは単に商品を仕入れて販売するだけでなく、仕入れや運搬にかかるリスクや手続き・交渉を顧客に代わって専門商社が請け負います。

専門商社業界の代表的な企業

専門商社業界の代表的な企業と、その売上高をまとめました。

企業名

売上高

メディパルHD

3兆2,909億円(※1)

伊藤忠丸紅鉄鋼

2兆7,840億円(※2)

アルフレッサHD

2兆5,856億円(※3)

スズケン

2兆2,327億円(※4)

阪和興業

2兆1,640億円(※5)

メタルワン

2兆78億円(※6)

三菱食品

1兆9,556億円(※7)

日鉄物産

1兆8,659億円(※8)

東邦HD

1兆2,261億円(※9)

JFE商事

1兆2,317億円(※10)

※1 出典:株式会社メディパルホールディングス「2021年度有価証券報告書
※2 出典:伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社「2021年度決算報告資料
※3 出典:アルフレッサ ホールディングス株式会社「2021年度有価証券報告書
※4 出典:株式会社スズケン「2021年度有価証券報告書
※5 出典:阪和興業株式会社「2021年度有価証券報告書
※6 出典:株式会社メタルワン「2021年度連結決算概要
※7 出典:三菱食品株式会社「2021年度有価証券報告書
※8 出典:日鉄物産株式会社「2021年度有価証券報告書
※9 出典:東邦ホールディングス株式会社「2021年度有価証券報告書
※10 出典:JFEホールディングス株式会社「2021年度有価証券報告書」(※セグメント情報「商社」より)

売上高上位の企業には医薬品と鉄鋼を扱う専門商社がやや多い傾向にあるものの、バリエーションに富んだ顔ぶれと言えるでしょう。また、上位10社までの売上高は1兆〜3兆円と、各社の規模の差はそれほど大きくありません。

専門商社業界の職種別の仕事内容

専門商社業界の職種には、以下のようなものがあります。

  • 営業職
  • 事務職
  • 技術職

営業職

営業職は商材や特定分野に関する知識を活かして顧客へ営業活動を行う仕事です。

他業界の営業と同じく、新規顧客の開拓やルート営業での商品提案も行います。それに加えて商社の営業職は、企業同士の円滑な取引を仲介するパイプ役としての役割も果たします。

営業に興味がある方は、「営業職とは何か説明!種類や仕事内容、向いている人の特徴や年収」も読んでみてください。

事務職

専門商社の事務職は、営業事務と貿易事務の2つに分けられます。それぞれの業務の具体的な仕事内容は以下に挙げる通りです。

営業事務

営業事務は主に営業職のサポートを行う仕事です。仕事内容は他業界の事務職とそれほど変わりませんが、海外と取引のある商社では語学力が要求される場面もあるでしょう。

<仕事内容>

  • メール・電話の応対
  • 書類作成・整理
  • 納品・在庫管理
  • 顧客管理

貿易事務

貿易事務は輸出入に際して通関業務を行う仕事です。通関手続きに関する知識や高い語学力といった特殊なスキルが必要です。

<仕事内容>

  • 貿易書類の作成
  • 通関手続き
  • 商品輸送の手配
  • 海外の取引先とのやり取り

一般事務に興味がある方は、「一般事務とは?仕事内容や給料・年収、取得すべき資格などを解説」も読んでみてください。

技術職

技術職は仕入れた商品の加工を行ったり、独自に製品を開発したりする仕事です。専門知識を駆使して研究・開発を行うほか、顧客の課題を解決する技術を提案します。

技術職の仕事に就くためには、商材に関する専門知識や特定分野での研究・開発実績が求められるでしょう。

専門商社業界の年収

専門商社業界の年収

専門商社業界の平均年収と、全業界の平均年収を比較してみましょう。

業界

平均年収

専門商社業界

634万円(※1)

全業界

433.1万円(※2)

※1 出典:業界動向SEARCH.COM「専門商社業界
※2 出典:国税庁「民間給与実態統計調査

専門商社業界の平均年収は、全業界の平均年収の1.5倍ほどです。平均よりはやや高収入の部類と言って良いでしょう。

ただし、勤務する会社の規模や職種によっても年収は大きく異なるため、応募前に待遇を確認しておく必要があります。

専門商社業界の魅力

商社業界に共通する魅力として、海外の企業との取引や大規模プロジェクトに関われるなど、活躍のフィールドが広いことが挙げられます。若手のうちから大きな裁量が与えられ、やりがいを持って働けることなども商社の魅力と感じている人は多いようです。

また、専門商社は総合商社とは異なり、特定の分野の商材のみを扱います。特定分野の専門性を身につけたい人にも専門商社業界は向いているでしょう。

専門商社業界の現状の課題

専門商社業界の現状の課題として、以下のような事柄が挙げられます。

「商社は不要」という意見がある

商社はもともとメーカーと小売、またはメーカーと消費者を結びつけるトレーディング業務で収益を上げてきた業種です。

しかし、近年はインターネットの普及やECサイトの立ち上げによって、メーカーが自社で販売先を探せるようになりました。結果として、商社の存在意義が問われる場面が増えています。

交渉の代行や独自ネットワークの活用など、専門商社の存在意義や付加価値をどれだけメーカーにアピールできるかが業界の課題と言えるでしょう。

原材料価格の高騰

世界的な資源高や円安の進行により、原材料価格が高騰しています。値上げによる消費の冷え込みが懸念される中、専門商社は中間マージンを確保しつつ、顧客である小売店にどれだけ適切な価格転嫁を行えるかが課題です。

単に商品を仕入れ小売店に卸すといった業態だけでは利益を確保することが厳しくなる中、付加価値を提供することにより納得感のある価格を提示するなどの施策も有効でしょう。

専門商社業界の今後の動向・将来性

専門商社険業界の今後の動向として、以下の事柄が挙げられます。

進む海外展開

専門商社はビジネスの維持・拡大のために、商材や業態に関わらず海外市場の開拓が必須となるでしょう。

業界大手3社では以下に挙げる通り、すでに海外展開を始めています。

専門商社

概要

メディパルHD

希少疾患薬の海外販売に着手

伊藤忠丸紅鉄鋼

海外拠点数52ヵ国88拠点、海外収益比率6割

アルフレッサHD

中国で医薬品・ヘルスケア関連製品の代理店に出資

ベトナムで医療感染製品卸売り会社を設立

他の専門商社各社でも、同様の動きはますます進んでいくとみられます。

M&Aによる規模拡大

専門商社業界では、国内市場が飽和状態にあることに加えて、事業拡大・販路拡大を求めてM&Aの動きが活発になっています。M&Aには領域拡大、交渉力や開発力の強化、海外展開の加速といった大きなメリットがあり、専門商社の生き残りにも繋がる動きです。

専門商社同士はもちろん、総合商社や別業種の会社による専門商社の買収案件も活発に進んでいます。

買い手

売り手

実施目的

メディパルHD

(医薬品)

住友ファーマフード&ケミカル

(食品製造・加工の専門商社)

海外展開・事業基盤・サプライチェーンの強化、競争力の高い商品の獲得

丸紅

(大手総合商社)

ソルトン

(電子部品を扱う専門商社)

商品ラインナップの拡充、電子部品事業の拡大

エムスリー

(医療従事者専門Webメディア)

東和産業

(眼科用医療機器販売に特化した専門商社)

サービス提供エリアの拡大、DXの加速

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