損保(損害保険)業界

損害保険業界(損保業界)とは?現状の課題や今後の動向・将来性、年収を解説

損害保険業界(損保業界)とは?市場規模や成長率

損害保険業界とは、顧客が自動車事故や地震・火災などにあった際、発生した損害を補償する保険商品を提供する業界です。顧客が支払う保険料が主な収入源となります。

また、保険商品の販売に限らず債券や株式の資産運用なども行っており、これらも損害保険業界にとっては貴重な収入源です。

2021〜2022年における市場規模・成長率・利益率は以下のとおりです。

業界市場規模

11.4兆円

成長率

3.2%

利益率

5.7%

出典:業界動向SEARCH.COM「損害保険業界

損害保険が我々の生活に根付いていることもあり、損害保険業界の市場規模は10兆円と大きく、成長率も3.2%と高い水準です。

損害保険と生命保険の違い

損害保険は、偶然の事故や災害によって物や財産が被った損害を補償するものです。対して生命保険は、人の病気や怪我・生死に対して保険金が支払われます。

損害保険と生命保険の違いを以下の表に分かりやすくまとめました。

保険の種類

補償対象

補償金額

商品の具体例

損害保険

物や財産の受けた損害

実際に受けた損害分に応じる

・自動車保険

・火災保険

・地震保険

・ペット保険 など

生命保険

人の病気や怪我・生死

契約時に補償額が決まっている

・死亡保険

・医療保険

・介護保険

・生存保険 など

生命保険業界に興味がある方は、「生命保険業界とは?現状の課題や今後の動向・将来性、年収などを紹介」も読んでみてください。

損害保険業界の代表的な企業や保険料収入シェア

損害保険業界の代表的な企業と、その保険料収入をまとめました。

企業名

保険料収入

東京海上HD

3兆8,878億円(※1)

MS&ADインシュアランスG

3兆6,090億円(※2)

SOMPOホールディングス

3兆2,157億円(※3)

トーア再保険

3,020億円(※4)

日本地震再保険

2,524億円(※5)

共栄火災海上保険

1,701億円(※6)

AIG損害保険

1,524億円(※7)

日新火災海上保険

1,454億円(※8)

ソニー損害保険

1,395億円(※9)

セゾン自動車火災保険

582億円(※10)

※1 出典:東京海上ホールディングス株式会社「2021年度有価証券報告書
※2 出典:MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社「決算説明資料
※3 出典:SOMPOホールディングス株式会社「連結損益計算書
※4 出典:トーア再保険株式会社「2021年度有価証券報告書
※5 出典:日本地震再保険株式会社「2022年3月期決算概況
※6 出典:共栄火災海上保険株式会社「2022年3月期決算
※7 出典:AIG損害保険株式会社「2022年3月期業績概要
※8 出典:日新火災海上保険株式会社「日新火災の現状
※9 出典:ソニー損害保険株式会社「2021年3月期決算概要
※10出典:セゾン自動車火災保険株式会社「貸借対照表

「3メガ損保」と呼ばれる東京海上HD、MS&ADインシュアランスG、SOMPOホールディングスの上位3社が業界シェアの9割を占めています。4位以下の企業には再保険会社や災害保険会社が多いです。

損害保険業界の職種別の仕事内容

損害保険業界の職種には、以下のようなものがあります。

  • 営業
  • 損害サービス
  • コーポレート部門

営業

営業は顧客へ自社の保険商品を提案する仕事です。損害保険業界の営業では、顧客へ直接商品を売り込む直接営業ではなく、代理店へ営業したり販売支援を行ったりする間接営業が主体です。

また、リスクコンサルティングと合わせて一般企業や自動車メーカー、ディーラーなどに保険商品を提案・販売することもあります。

営業に興味がある方は、「営業職とは何か説明!種類や仕事内容、向いている人の特徴や年収」も読んでみてください。

損害サービス

損害サービスでは、事故や災害が起きた際の保険金支払いに関する対応を行います。その他、保険金支払いに必要な以下の手続きも担当します。

  • 事後処理のサポート
  • 顧客への連絡
  • 保険金額の査定

コーポレート部門

コーポレート部門は会社運営の中核となるポジションです。営業や損害サービスといった職種の支援業務から契約の申込や変更の受付、ヘルプデスクまで幅広く対応します。

海外部門では、自社の海外進出や顧客企業の海外事業展開のサポート業務を担うこともあります。

損害保険業界の年収

損害保険業界の年収

損害保険業界の平均年収と、全業界の平均年収を比較してみましょう。

業界

平均年収

損害保険業界

972万円(※1)

全業界

433.1万円(※2)

※1 出典:業界動向SEARCH.COM「損害保険業界
※2 出典:国税庁「民間給与実態統計調査

損害保険業界の平均年収は全業界の年収の2倍以上となっており、比較的高年収が狙いやすい業界と言えます。

ただし、就職する会社や就く職種によって年収は大きく変動することが予想されるため、就職を希望する会社の待遇は職種別に確認しておくのが良いでしょう。

損害保険業界の現状の課題

損害保険業界の現状の課題として、以下のような事柄が挙げられます。

自然災害の頻発による保険金支払いの増加

近年、異常気象による自然災害の多発で保険金支払いが増加しています。大手3メガ損保においては、火災保険事業が22年3月期まで12年連続の赤字を記録し、損保業界各社の収益は厳しさを増しているのが現状です。

将来発生しうる自然災害による被害拡大に備え、損害保険各社では保険料を引き上げる、更新期間を10年から5年に変更するなどの対策を検討しています。

自動車関連保険への依存

損害保険業界全体の保険料収入のうち、約半分を自動車関連保険が占めています。

自動車関連の保険料収入は、国内の自動車販売台数や保有数に大きく左右されます。しかし、昨今の自動車離れの加速や自動運転技術の革新から、自動車関連保険のニーズは徐々に低下していくと考えられます。

今後は損害保険業界全体で、新商品の開発や新たな事業の展開など、自動車関連保険からの脱却が求められていくでしょう。

損害保険業界の今後の動向・将来性

損害保険業界の今後の動向として、以下の事柄が挙げられます。

新たな保険商品の開発・拡充

先に挙げた通り、自動車関連保険のニーズ縮小懸念から、変化する顧客ニーズに対応した新たな保険商品の開発が進められています。

昨今のトレンドとしては、自然災害の増加に合わせた災害保険商品の拡充やペット保険の販売拡大に加えて、以下に挙げるような新商品も登場しています。

保険の種類

概要

テレワーク保険

テレワーク中に発生する損害を補償する

(例:端末の紛失やサイバー攻撃、誤操作によるものなど)

サイバー保険

サイバー事故により生じた損害を補償する

(例:サイバー攻撃による情報漏洩や業務阻害など)

モバイル保険

スマートフォンなどモバイル通信機器の修理費用を補償する

保険ショップやダイレクト販売の増加

一般社団法人日本損害保険協会の「2021年度損害保険代理店統計」によると、損害保険代理店数は年々減少を続けています。最新の統計によると、2021年の実店舗数は160,463店で、2000年の323,139店の約半数です。

代理店の減少は、インターネットで直接契約ができる「ダイレクト販売(直接販売)」や、さまざまな保険商品を扱う「保険ショップ」の拡大によるものと考えられます。

ダイレクト販売は代理店を介さず損害保険会社と顧客が直接保険契約を結ぶことのできる販売形態です。ダイレクト販売は代理店に支払う仲介料をカットできる、事務負担が軽減されるなど、顧客・企業双方に大きなメリットがあることから近年取引件数が拡大しつつあります。

加えて、少子高齢化により国内の市場規模は縮小していくことが予想されるため、代理店数の減少は今後も続いていくでしょう。

今後、直接販売に適した新しい販売戦略やオンライン販売戦略、保険ショップとの連携の在り方といったトピックは損害保険業界各社の大きなテーマとなるはずです。

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