インテリア業界とは?
インテリア業界とは、室内空間を彩るさまざまな商品の企画・製造・販売を手がける業界です。
インテリア業界が対象とするのは、新築住宅や住宅リフォームを希望する一般消費者だけではありません。店舗やオフィスを営む企業・団体もインテリア業界にとって大切な取引先です。
インテリア業界が取り扱う商品は幅広く、室内に配置する家具や照明器具のみならず、カーテンやカーペットなどの内装類からこまごまとした生活雑貨まで多岐に渡ります。
2021〜2022年におけるインテリア業界の市場規模や成長率・利益率は以下の通りです。
業界市場規模 | 1.5兆円 |
成長率 | 8.3% |
利益率 | 5.1% |
出典:業界動向SEARCH.COM「インテリア業界」
インテリア業界の市場規模は1.5兆円と、他業界と比べてそれほど大きな規模ではありません。しかし、成長率は8.3%と健闘しており、まだまだ伸びる可能性がある業界と言えます。
インテリア業界の代表的な企業と売上高ランキング
次に、インテリア業界を代表する企業について、売上高が多い順に紹介していきます。
ランキング | 業界名 | 売上高 |
1位 | 株式会社ニトリホールディングス | 8,115億円(※1) |
2位 | 株式会社良品計画 | 4,536億円(※2) |
3位 | イケア・ジャパン株式会社 | 939億円(※3) |
4位 | 株式会社東京インテリア家具 | 595億円(※4) |
5位 | 株式会社ナフコ | 206億円(※5) |
6位 | 株式会社アクタス | 184億円(※6) |
7位 | 株式会社ミサワ | 116億円(※7) |
8位 | 株式会社カッシーナ・イクスシー | 114億円(※8) |
※1 出典:株式会社ニトリホールディングス「有価証券報告書」
※2 出典:株式会社良品計画「有価証券報告書」
※3 出典:業界動向SEARCH.COM「インテリア業界 売上高ランキング」
※4 出典:株式会社東京インテリア家具「会社概要」
※5 出典:株式会社ナフコ「業績推移」
※6 出典:株式会社アクタス「会社概要」
※7 出典:業界動向SEARCH.COM「インテリア業界 売上高ランキング」
※8 出典:株式会社カッシーナ・イクスシー.「決算短信」
日本のインテリア業界において売上高No.1を誇るのは、株式会社ニトリホールディングスです。8,115億円の売上高は上位8社のうち54.8%ものシェアを占めます。
「お、ねだん以上。ニトリ」のキャッチフレーズで知られる同社は、手頃価格の商品開発に強く、コストパフォーマンスの高さで人気を集めています。
インテリア業界2位に続くのは、「無印良品」でお馴染みの株式会社良品計画です。4,536億円の売上高は、上位8社のうち30.6%を占めます。装飾を徹底的に排除したシンプルで自然な世界観に定評があり、同社が企画・製造・販売する商品群は今や7,000品目を超えています。
そして、インテリア業界3位に位置するのは、イケア・ジャパン株式会社です。939億円の売上高は上位8社のうち6.3%のシェアに該当します。スウェーデン発祥の北欧家具メーカーであるイケアは、おしゃれなデザインや手頃な価格で人気です。
上記3社を比較すると、ニトリと無印良品の2社だけでインテリア業界の85.4%ものシェアを占めており、二強が他社を圧倒する構図が読み取れます。
インテリア業界の職種・仕事内容
室内空間を彩る幅広い商品の企画・製造・販売を行うインテリア業界には、それに付随するさまざまな業務があります。
ここからは、インテリア業界における代表的な仕事内容について、職種別に紹介していきます。
- 店舗運営
- 法人営業
- 物流管理
- 商品計画
- 店舗開発
- ITシステム開発
- 商品企画・商品開発
店舗運営
店舗運営は、店舗に来店したお客様への接客・販売やパート・アルバイトの指導、商品のディスプレイ、商品の配送など店舗運営に関する幅広い業務を担当します。
インテリア業界のうち、消費者や法人との接点となる店舗を運営する企業(小売業・製造小売業)において行われます。
接客では、色味や素材、機能性など、お客様の希望に合ったインテリアのコーディネート提案が求められます。お客様に満足してもらうためには、幅広い商品知識に加え、チームをまとめあげるリーダーシップやスムーズに意志疎通を図るコミュニケーション能力が必要です。
法人営業
法人営業は、新規オフィスや店舗移転などの企業のニーズに合わせ、オフィス家具などのインテリア提案を行う仕事です。インテリア業界のうち、一般消費者だけではなく企業や団体など法人を相手にビジネスをする企業において行われます。
法人営業は1件あたりの取引金額が大きく、取引が決まれば大幅な売上向上が期待できます。顧客との接点を通して現状の商品への不満や改善点を吸い上げられるため、法人営業が集めた声は今後の商品開発にも活かされます。
法人営業に興味がある方は、「法人営業とは何か解説!種類や仕事内容、年収・給料などを紹介」も読んでみてください。
物流管理
物流管理は、生産した商品(または仕入れた商品)を倉庫から店舗、お客様に届ける仕事です。
店舗で安定して商品を販売するには、速やかに商品を届ける物流管理が欠かせません。物流管理では、物流センターにおいて店舗で販売する商品を仕分けし、大量の商品を店舗に毎日届けています。
商品計画
商品計画は、取り扱うインテリア商品の販売量や在庫量を計画し、調整する仕事です。
過去のデータや売上予測から年間発注量を決定し、そこから逆算して商品計画を組み立てます。無駄を省くことで機会ロスを減らし、スムーズな店舗販売やインターネット販売につなげるのが目的です。
店舗開発
店舗開発は、顧客との直接の接点となる店舗展開を促進する仕事です。インテリア業界のうち店舗を運営する企業では多くの場合、店舗開発の仕事があります。
店舗開発の具体的な仕事内容は、出店地域の調査を行って予算を策定したり、不動産の交渉をしたりすることです。海外に進出している企業では、海外も対象とした店舗開発の仕事もあります。
ITシステム開発・設計
ITシステム開発・設計は、インターネット上でインテリア商品を販売できるECサイトやWEBサイトを構築する仕事です。インテリア業界のうちインターネット通販に特化した企業や、店舗と通販両方で商品を販売する企業において行われます。
インテリア商品は家具などサイズが大きいものも多く、実物を確認してみなければ、部屋の配置のイメージがなかなか掴めません。さらに、インテリア商品は頻繁に買い換えることが少なく、じっくり商品を見て選びたいニーズも多いです。
このようなニーズに応えるべくインテリア業界で取り組まれているのが、ITシステム開発・設計です。特に、インターネット空間で実際に店舗で買い物しているかのようなリアル体験ができるITシステムは、インテリア業界の常識を変える画期的な技術として注目を集めています。
例えば、欲しい家具や設置したい場所の写真を撮影すると、縦×横×高さを瞬時に計測してくれるアプリが開発されています。このアプリを活用すれば、気になる家具を思い通りに配置できるかどうか、場所を問わずに確認可能です。
インテリア業界の発展においては、ITシステム開発・設計は欠かせない仕事と言えるでしょう。
商品企画・商品開発
商品企画・商品開発は、インテリアにおいて「こんなのあったらいいな」という商品を企画して新しく生み出す仕事です。消費者の潜在ニーズを満たす新商品の他、既存商品の問題点を改良してリニューアルするのも役割の一つです。
商品企画・商品開発の仕事では、商品として実現可能性が高いことはもちろん、製造コストや製造工程にも配慮し、利益を出せる商品に仕上げることが求められます。
また、さまざまな職種の人と協力し合って進めるため、深い商品知識に加え、協調性やコミュニケーション能力の高さも必要です。
インテリア業界の年収
ここからはインテリア業界と全業界の年収を比較して紹介します。
業界 | 年収の目安 |
インテリア業界 | 378万円(※1) |
全業界 | 443万円(※2) |
※1 出典:転職・求人doda|業種別の平均年収「家具/インテリア/生活雑貨」
※2 出典:国税庁「民間給与実態統計調査」
インテリア業界の年収は378万円であり、全業界の443万円と比べると、65万円程度低いです。ただしこの額は、あくまでインテリア業界全体の平均金額に過ぎません。
実際に受け取る年収金額は、所属企業や職種、勤続年数、役職などによっても大きく変わります。年収を重視して就職活動をする人は、応募する前に求人の条件を良く確認してから選ぶようにしましょう。
インテリア業界の現状の課題
インテリア業界が抱える現状の課題として、以下の2つが挙げられます。
- ライフスタイルの変化による大型家具需要の減少
- 少子高齢化による将来的な市場縮小の懸念
それぞれ具体的に解説していきます。
ライフスタイルの変化による大型家具需要の減少
インテリア業界が抱える課題の1つ目は、ライフスタイルの変化による大型家具需要の減少です。
これまでインテリア業界にとって、単価の高い大型家具は安定した収益源の一つとなっていました。引越しやマイホーム購入をきっかけに大型家具をまとめ買いしてもらうことで、安定した売上確保につながっていたと言えます。
しかし、賃貸の上昇やDIY志向の高まりにより、高額な大型家具は生活における必需品ではなくなりつつあります。加えて、近年は大型家具のレンタルサービスも台頭してきました。
その結果、高額な大型家具だけを取り扱う従来型のインテリア企業のやり方では、経営が厳しくなっていると言えるでしょう。
少子高齢化による将来的な市場縮小の懸念
インテリア業界が抱える課題の2つ目は、少子高齢化による将来的な市場縮小の懸念です。少子高齢化による人口減少は、日本で長い間議論されてきた社会問題の一つです。
参考までに、日本国内の人口推移(将来予想含む)を以下に示します。
年度 | 人口 (千人) | 前年比 |
2015年 | 127,110 | ー |
2020年 | 124,100 | -2.4% |
2025年 | 120,659 | -2.8% |
2030年 | 116,618 | -3.3% |
2035年 | 112,124 | -3.9% |
2040年 | 107,276 | -4.3% |
2045年 | 102,210 | -4.7% |
2050年 | 97,076 | -5.0% |
出典:国土交通省「我が国の人口構造の変化」
日本の国内人口は2015年以降年々減り続け、2050年には1億人を切ると予想されています。
人口減少とともにインテリア商品を購入する人も減ると考えられるため、将来的な市場縮小を避けるのは難しいと言えるでしょう。
インテリア業界の今後の動向・将来性
大型家具需要の減少や少子高齢化による市場縮小に直面するインテリア業界ですが、ただ何もせず手をこまねいているわけではありません。課題を克服すべく、以下のような取り組みが行われています。
- 生活雑貨にも力を入れたトータルコーディネートの提案
- ネットと実店舗の垣根を超えたOnline to Offlineの推進
- 新たなニーズを求め海外展開も視野に
それぞれ詳しく解説していきます。
生活雑貨にも力を入れたトータルコーディネートの提案
インテリア業界による取り組みの1つ目は、家具に加え生活雑貨にも力を入れたトータルコーディネートの提案です。
これまでインテリア業界と言えば、家具や雑貨、調度品をそれぞれ別の店で販売するのが一般的でした。しかし消費者目線で考えたとき、別々の店舗で購入しようとすると商品選択に手間や時間がかかる上、空間に統一感を出すのも難しいという課題があります。
そこで、インテリア選びの考え方をさらに発展させたのが、家具に加え生活雑貨も含めたトータルコーディネートの提案です。理想の空間イメージに合った生活雑貨を開発することで、統一感のある居住空間を演出できます。
さらに、手頃価格で販売できる生活雑貨は、購入へのハードルが低いのも魅力です。生活雑貨のファンが増えれば、生活雑貨のイメージに合った家具を検討してもらうチャンスも自然に増えます。
ネットと実店舗の垣根を超えたOnline to Offlineの推進
インテリア業界による取り組みの2つ目は、ネットと実店舗の垣根を超えたOnline to Offlineの推進です。Online to Offlineとは、ネット通販であるオンラインから実店舗のオフラインへの誘導を目指した販売促進活動のことです。
例えば、インテリア業界最大手であるニトリホールディングスは、Online to Offline推進室を設置し、積極的にこの活動を推し進めています。
ニトリホールディングスが目指すのは、ネットや店舗といった場所を問わず、欲しいものをいつでもどこでも購入できる体制の構築です。ネットクーポンをきっかけに店舗に来店して商品を見てもらう他、店舗で気に入った商品をネットやアプリから購入することもできます。
Online to Offlineに力を入れているのは、国内売上高2位の良品計画も同じです。良品計画が開発したアプリ「MUJI passport」のダウンロード数は2022年に6,978万(※)に到達しており、ユーザーに大きな影響力があります。
良品計画はこのアプリを活用して、ネットクーポンの配信やユーザーとのコミュニケーションに役立てています。ネットと実店舗の垣根を超えようとする試みは、今後もますます活発化していくでしょう。
※出典:株式会社良品計画「数字で見る良品計画」
新たなニーズを求め海外展開も視野に
インテリア業界による取り組みの3つ目は、海外展開を視野に入れた活動です。
日本国内は少子高齢化によって市場が縮小していくことが予想されていますが、海外に目を向ければ、経済発展をし続けている国々もたくさん存在します。そのような国のニーズを取り込んでいくことが、企業を成長させる鍵です。
例えば、業界最大手のニトリホールディングスは、ここ3年間のうちに中国や東南アジアでの店舗数を3倍の300店舗まで増やす計画があります(※1)。この店舗数は、日本国内の新規出店数をさらに超えた数字です。
また、北欧家具メーカーであるイケアも、中国でネット通販を開始する予定です。さらに、良品計画も海外店舗(604店舗)の数が国内店舗(532店舗)よりも多く、海外進出に力を入れていることがうかがえます(※2)。
インテリア業界では、今後も大手企業を中心としてグローバル化の流れが加速していくと予想されます。
※1 出典:日本経済新聞「アジアで家具2強競り合う ニトリ、日本上回る出店数へ」
※2 出典:株式会社良品計画「数字で見る良品計画」