重電業界とは?
重電業界とは、主に発電設備や工業施設などで使用する大型の電気機械を製造する業界です。「重電」は「重電機器」の略で、発電設備だけでも発電・送電・配電の3つに大きく分けられます。
重電機器を製造するためには多くの資金や人材が必要なため、重電メーカーの多くは大手企業です。また、メーカーごとに得意分野や強みが異なります。一つひとつの製品の売上が大きいことから、業界市場規模も大きい業界です。
2021年の市場規模や成長率等は以下の通りです。
業界市場規模 | 5.4兆円 |
成長率 | 2.0% |
利益率 | 5.7% |
出典:業界動向SEARCH.COM「重電業界」
重電機器は、各企業や官公庁の計画によって需要が上下します。2021年度は企業の設備投資が増加傾向にあることから、業界市場規模は大きくなっています。
重電業界の代表的な企業
重電業界の代表的な企業と、その売上高をまとめました。
企業名 | 売上高 |
株式会社日立製作所 | 23,487億円(※1) |
三菱電機株式会社 | 12,381億円(※2) |
株式会社東芝 | 12,137億円(※3) |
富士電機株式会社 | 3.096億円(※4) |
株式会社明電舎 | 2,550億円(※5) |
日新電機株式会社 | 1,321億円(※6) |
※1 出典:株式会社日立製作所「2021年度有価証券報告書」
※2 出典:三菱電機株式会社「2021年度有価証券報告書」
※3 出典:株式会社東芝「2021年度有価証券報告書」
※4 出典:富士電機株式会社「2021年度有価証券報告書」
※5 出典:株式会社明電舎「2021年度有価証券報告書」
※6 出典:日新電機株式会社「2021年度有価証券報告書」
日本国内の重電メーカーの数はそれほど多くありません。しかし、先述の通り業界市場規模は5.4兆円と大きな業界であり、その中でも上位3社である日立製作所、三菱電機、東芝の売上高が特に高いことがわかります。
重電業界の職種別の仕事内容
重電業界には、主に下記6つの職種があります。それぞれの仕事内容について、詳しく見ていきましょう。
- 営業
- 研究
- 設計
- 調達
- 生産管理
- 製造
営業
重電業界の営業は、主に企業や官公庁に対してアプローチします。重電機器は、主に企業や官公庁の施設で利用されるからです。
大規模な案件が多く納期も長いため、進捗管理や納品までのコミュニケーションが欠かせません。
営業に興味がある方は、「営業職とは何か説明!種類や仕事内容、向いている人の特徴や年収」も読んでみてください。
研究
研究職は、将来の製品につながる技術や素材などの研究を行います。重電業界の研究は、メーカーや業界だけではなく、世界でも注目されています。
そのため、さまざまな職種の中でも特に重要な役割を持つ職種です。重要である一方で、難題に直面することもある難しい仕事でもあります。
設計
設計では、研究結果や新たな技術を取り入れて、顧客の要望に合った製品の企画や開発を行います。
重電業界では、既存の製品を生産して納品するだけではなく、顧客と要件を取り決めて専用の設備などを製造することもあります。そのため、場合によっては営業に同行して顧客にヒアリングを行うこともあるでしょう。
調達
調達では、製品を製造するために必要な材料や部品を決められた期日までに準備します。重電機器は膨大な材料や部品を必要とするため、高品質な材料や部品をいかに安く期日通りに調達できるかが重要です。
国内だけではなく海外からも仕入れを行う必要があり、納入方法や納期の打ち合わせ、契約締結などの多くの仕事があります。
生産管理
生産管理は、工場などの生産現場で生産ラインの構築、生産効率化のための既存設備の改良などを行う仕事です。大きな仕事になると、工場そのものの立ち上げを行うこともあります。
重電機器は大きく複雑なものが多いため、生産が遅れないように綿密に計画を立てて進捗を管理する必要があります。
製造
製造は、受注した製品を期日までに製造する仕事です。期日までに製造するのはもちろんのこと、品質にも注意しなければなりません。
特に発電設備などの大型設備の場合、設計通りの品質が確保できていなければ大きな事故につながり、顧客からの信頼を失う可能性があります。そのため、製造ミスがないように細心の注意を払って製造しなければなりません。
メンテナンス
重電機器は、製品を納品して仕事が終わるわけではありません。発電設備などは、数十年という長い期間利用されます。そのため、メンテナンスや修理などの仕事も行う必要があります。
重電業界の年収
重電業界の平均年収と、全業界の平均年収を比較してみましょう。
業界 | 平均年収 |
重電業界 | 801万円(※1) |
全業界 | 433.1万円(※2) |
※1 出典:業界動向SEARCH.COM「重電業界」
※2 出典:国税庁「民間給与実態統計調査」
重電業界の平均年収801万円は、全業界の平均年収433.1万円と比較すると約370万円高いです。
重電業界は専門性が高く、かつ利益率も高い業界です。そのため、全業界と比較すると給与水準が高く安定しています。
重電業界の現状の課題
重電業界には、下記のような課題があります。それぞれどのような課題か、詳しく解説します。
- 脱炭素化への開発シフト
- 大手企業との競争激化
脱炭素化への開発シフト
重電業界の発電所でメインとなっているのは火力発電ですが、世界的に脱炭素化の動きが活発になっており、今後は規模が縮小していくことが予測されます。
2015年に採択された「パリ協定」においては、温室効果ガスを実質ゼロにするという目標が掲げられました。これに伴い、現在のメインである火力発電から自然エネルギーや再生可能エネルギーなどへとシフトしていく必要があります。
大手海外企業との競争激化
重電業界には、アメリカの「ゼネラル・エレクトリック」やドイツの「シーメンス」といった大手海外企業があります。
日本企業は国内外の事業において、これら2社をはじめとする海外企業の大規模な参入に対抗しなければならず、技術力の向上や製品の差別化などが必要です。
重電業界の今後の動向・将来性
重電業界の今後の動向・将来性について、下記3つの視点で解説します。
- 海外事業の拡大
- アフターメンテナンスの強化
- IoT技術の活用が加速
海外事業の拡大
重電業界は、インフラ設備の需要減少などに伴い日本での需要が減少傾向にあります。そのため、各社で新興国をはじめとする海外での事業拡大が進んでいます。今後は新興国を新たな拠点として、それぞれの国に適した製品開発が進むことが予測されます。
アフターメンテナンスを強化
これまで、日本の重電業界は製品そのものの性能・品質の高さで市場を拡大してきました。しかし海外企業の台頭により、製品価値だけでは競争力不足になりつつあります。そこで注目されているのがアフターメンテナンスです。
発電所を導入しても、安定して運用できなければ電力を供給できません。特に、事業拡大を狙う新興国などでは、製品だけを納品しても運用は難しいでしょう。
そのため、発電所などのハードウェアだけではなく、安定して運用するためのアフターメンテナンスまで含めたサービスを展開する必要があります。
IoT技術の活用が加速
重電業界では、IoT技術の活用が加速しています。IoTを活用することで、発電所などの設備全体の運転状況を監視して、最適に運転できるようになります。
また、リアルタイムで異常を検知できるようになるため安全に運転することもできます。海外企業との差別化という観点からも、IoTの技術活用が加速していくでしょう。