ガス業界とは?
ガス業界とは、日常生活を送る上で欠かせないガスの供給・販売を行う業界です。電力や鉄道に並ぶインフラとして扱われています。
ガス会社は、ガスの主原料であるLNG(液化天然ガス)を海外から輸入し、それに気化・熱量調整・付臭などの処理をし、消費者へ提供しています。加えて、ガスを提供した後のガス設備の点検や管理、トラブル対応などもガス会社の業務のひとつです。
2021〜2022年における市場規模や成長率等は以下の通りです。
業界市場規模 | 5.4兆円 |
成長率 | -3.8% |
利益率 | 3.9% |
出典:業界動向SEARCH.COM「ガス業界」
インフラのひとつに数えられるだけあり、業界市場規模は5.4兆円と大規模です。成長率がマイナスになっている理由には、コロナ禍によって工業用ガスの需要が伸び悩んだことが考えられます。
ガス業界の代表的な企業
ガス業界の代表的な企業と、その売上高をまとめました。
企業名 | 売上高 |
東京ガス | 2兆1,451億円(※1) |
大阪ガス | 1兆5,868億円(※2) |
東邦ガス | 5,153億円(※3) |
西部ガスHD | 2,152億円(※4) |
日本瓦斯 | 1,625億円(※5) |
静岡ガス | 1,329億円(※6) |
北海道ガス | 1,269億円(※7) |
サーラコーポレーション | 1,166億円(※8) |
京葉瓦斯 | 897億円(※9) |
TOKAIホールディングス | 867億円(※10) |
※1 出典:東京瓦斯株式会社「2021年度有価証券報告書」
※2 出典:大阪瓦斯株式会社「2021年度有価証券報告書」
※3 出典:東邦瓦斯株式会社「2021年度有価証券報告書」
※4 出典:西部ガスホールディングス株式会社「2021年度有価証券報告書」
※5 出典:日本瓦斯株式会社「2021年度有価証券報告書」
※6 出典:静岡ガス株式会社「2021年度有価証券報告書」
※7 出典:北海道瓦斯株式会社「2021年度有価証券報告書」
※8 出典:株式会社サーラコーポレーション「2021年度有価証券報告書」(エネルギー&ソリューションズ事業)
※9 出典:京葉瓦斯株式会社「2021年度有価証券報告書」
※10 出典:株式会社TOKAIホールディングス「2021年度有価証券報告書」(エネルギー事業)
ガス業界の代表的な企業の中では、1位の東京ガス、2位の大阪ガスの売上高が突出しています。1位の東京ガス1社の売上高だけで、上位10位の売上高合計の約4割を占めており、上位企業が圧倒的なシェアを持っていることが分かります。
ガス業界では、2017年の都市ガス全面自由化により新規参入業者が増えているものの、ランキング上位がすぐに入れ替わることは考えにくいでしょう。
ガス業界の職種・仕事内容
ガス業界の職種・仕事内容には、以下のようなものがあります。
- 営業
- 施工管理
- 保守・保全
- 調達
営業
ガス業界の営業は、ガス機器の販売や導入提案を行うのが仕事です。一般家庭向けの家庭用営業と、飲食店・工場などの法人に対して行う業務用営業の2つがあります。
また、家庭用のガス機器をハウスメーカーやデベロッパーに提案すること、住宅展示場でガスに関するイベントを企画・開催することも営業の業務の一つです。
ガスはインフラの一つということもあり、他の業界に比べて安定していると考えられていました。しかし昨今のガス自由化によって競争が活性化していることから、これまで以上に営業の担う役割は大きくなっています。
営業に興味がある方は、「営業職とは何か説明!種類や仕事内容、向いている人の特徴や年収」も読んでみてください。
施工管理
施工管理は、一般家庭や企業などでガス設備の工事を行う際、計画や施工などの工程を取りまとめる仕事です。工事に必要なモノ・ヒトを手配し、スケジュール通りに進むよう管理をするなど、工事現場の司令塔としての役割を果たします。
加えて、施工管理の業務には以下に挙げるものがあります。
- 工事会社との打ち合わせ
- 予算管理
- 工事に関する行政許可の取得
- 職人や技術者の配置
- 工事中の安全管理
保守・保全
保守・保全は、ガス管からのガス漏れ等を防ぐために、設備の点検・修理・管理・維持をする仕事です。
定期メンテナンスや予防メンテナンスを実施することで、ガス漏れによる火災・爆発といった事故を未然に防ぎます。設備に老朽化が見られれば、設備改善の提案を行うこともあります。
調達
調達はガスの原料となるLNG(液化天然ガス)を輸入し、調達する仕事です。調達の業務では、生活を支えるガスをなるべく安く、かつ安定的に調達することが求められます。
コストを下げて燃料を調達できれば会社の利益を上げることにも繋がるため、調達はガス会社の経営状況を大きく左右する重要な職種とも言えるでしょう。
ガス業界の年収
ガス業界の平均年収と、全業界の平均年収を比較してみましょう。
業界 | 平均年収 |
ガス業界 | 608万円(※1) |
全業界 | 433.1万円(※2) |
※1 出典:業界動向SEARCH.COM「ガス業界」
※2 出典:国税庁「民間給与実態統計調査」
ガス業界の平均年収は、全業界の平均年収の約1.5倍です。一般的には高年収の部類と言えます。
売上高上位の大企業に入社すれば、業界の平均年収よりもさらに高い年収を得られる可能性もあります。
ガス業界の現状の課題
ガス業界の現状の課題として、都市ガスの全面自由化による企業間の競争激化が挙げられます。
2017年4月より都市ガスの全面自由化が始まり、消費者はガス会社を好きに選んで契約できるようになりました。ここ数年では、大手電力会社・石油会社・商社などさまざまな業界から参入が進み、自由化の流れは加速しつつあります。
実際に電力・ガス取引監視等委員会の「ガス取引の状況」によると、2022年11月にはガス会社のスイッチング(切り替え手続き)件数は488万件を超えています。既存のガス会社同士はもちろん、新規参入業者との競争は今後はより激しくなっていくでしょう。
ガス業界はこれまで、安定した業界と言われてきました。しかし市場が自由化された現状においては、優れた商品提案力や価格競争力などで他社との差別化が図れなければ、企業としての存続は難しくなっていく恐れがあります。
ガス業界の今後の動向・将来性
ガス業界の今後の動向・将来性について解説します。
環境に配慮したガスの開発
2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにすること)の実現を見据え、業界全体で環境に優しいガス開発が進んでいます。以下に挙げるものはその一例です。
ガスの種類 | 特徴 |
グリーンLPガス | 食品廃棄物や木くず、動物の排泄物といったバイオマス資源から作られる |
カーボンニュートラルメタン (合成メタンとも呼ばれる) | 水素とCO2からガスの主成分であるメタンを合成する |
特にグリーンLPガスは貯蔵や搬送が可能なことから、災害時のエネルギーとしても期待されています。今後もガス業界全体で、こうした新しいガスの開発・普及が進んでいくでしょう。
クリーンエネルギー分野への拡大
電力自由化によって、ガス会社による電力産業への参入も始まりました。ガス会社では、ガス・電気のセット販売を強化しています。
特にガスを燃料として電気と熱を作るガス・コジェネレーションシステムは、発電と同時に発生する熱を有効利用できます。そのため、効率的かつクリーンなエネルギーシステムとして注目されています。
近年の温暖化対策の影響もあり、ガス業界も含めたエネルギー業界全体で、クリーンエネルギー分野の事業拡大が見込まれるでしょう。