食品業界とは?
食品業界とは、食品の加工や製造を行う食品メーカーのことを指すことが一般的です。
しかし一口に食品と言っても種類は幅広く、以下のような製品を扱うメーカーは全て食品業界に属します。
- 冷凍食品
- レトルト食品
- 調味料
- 乳製品
- 酒類
- 食品原料(調味料・油・小麦粉など)
また、食品の加工や製造を行うメーカーに限らず、食品の主原料を生産するメーカーや食品販売を行うメーカーも、厳密に言えば食品業界に属します。
食品業界の2021年の市場規模や成長率、利益率を確認してみましょう。
業界市場規模 | 21.1兆円 |
成長率 | −0.1% |
利益率 | +2.6% |
出典:業界動向SEARCH.COM「食品業界」
食品業界の代表的な企業
食品業界には、さまざまな食品メーカーが関わっています。その中でも売上高が大きい企業は次の通りです。
企業名 | 売上高 |
日本ハム株式会社 | 11,743億円(※1) |
味の素株式会社 | 11,493億円(※2) |
山崎製パン株式会社 | 10,529億円(※3) |
明治ホールディングス株式会社 | 10,130億円(※4) |
マルハニチロ株式会社 | 8,667億円(※5) |
伊藤ハム米久ホールディングス | 8,543億円(※6) |
日本水産株式会社 | 6,936億円(※7) |
(株)日清製粉グループ本社 | 6,797億円(※8) |
雪印メグミルク株式会社 | 5,584億円(※9) |
森永乳業株式会社 | 3,668億円(※10) |
※1 出典:日本ハム株式会社「会社概要」
※2 出典:味の素株式会社「有価証券報告書」
※3 出典:山崎製パン株式会社「会社概要」
※4 出典:明治ホールディングス株式会社「会社概要」
※5 出典:マルハニチロ株式会社「有価証券報告書」
※6 出典:伊藤ハム米久ホールディングス「有価証券報告書」
※7 出典:日本水産株式会社「有価証券報告書」
※8 出典:(株)日清製粉グループ本社「会社概要」
※9 出典:雪印メグミルク株式会社「有価証券報告書」
※10 出典:森永乳業株式会社「会社概要」
食品業界の中でも11,743億円と売上トップを誇る日本ハム株式会社は、上位10社の中で14.0%のシェアを占めています。
2位以下に続くのは味の素株式会社、山崎製パン株式会社、明治HDですが、シェア自体は10%をやや超える程度で大きな差はありません。食品業界は少数の会社がシェアを独占しているというより、強みの異なる企業同士がお互いにしのぎを削っていると言えます。
食品業界の職種別の仕事内容
食品の製造と販売を手がける食品業界には、どのような職種や仕事があるのでしょうか?ここからは、食品業界における主な職種別の仕事内容についてご紹介します。
営業
食品業界における営業とは、取引先である卸売業や小売業に対して、商品を提案して売り込む仕事を指します。
テレビCMなどのイメージから、食品メーカーは消費者相手に取引をするイメージがありますが、実際には企業相手に仕事をすることが多いです。 さらに営業には、取引先からライバル他社の情報を集め、今後のマーケティングや商品開発につなげる役割もあります。
商品開発
食品業界における商品開発では、次に投入する新商品の考案や既存商品の改良を行います。
まずは市場のニーズから商品コンセプトを決定し、試作品を作成します。試作品は試食会などを通じて提供され、評価や改善を繰り返すことで商品のオリジナリティーを追求していきます。試行錯誤を繰り返すことで、初めて商品が市場へと投入されていきます。
試作品では味が優れていることはもちろん、商品が完成するまでにかかるコストや消費者が求める手軽さ、栄養面も考慮する必要があります。
生産・品質管理
生産・品質管理は工場のライン工程に携わり、商品の製造から梱包、出荷までの流れを一貫して担当する仕事です。
食品メーカーの商品は、工場のラインで作られています。ほとんどの工程が自動化されていますが、中には手作業が一部必要な商品や、目視での確認が必要な商品もあります。
異物が混入したり不良品が発生したりすると、企業のブランドイメージに影響するため、企業の信用に関わる重要な仕事です。
マーケティング
マーケティングとは、消費者の嗜好を調査・分析し、より消費者ニーズにあった商品を企画する仕事です。 仕事の範囲は市場の調査から販売ルートの拡大まで幅広く、さまざまな業務を担当します。
さまざまな部門と連携して作業を進めるため、トレンドに強いだけでなく、コミュニケーション力も必要です。
食品業界の年収
食費業界の年収は他の業界と比べてどうなのでしょうか?食品業界の年収と全業界の平均年収を比較してみましょう。
業界 | 平均年収 |
食品業界 | 439万円(※1) |
全業界 | 433.1万円(※2) |
※1 出典:マイナビAGENT「業種別平均年収ランキング 食品」
※2 出典:国税庁「民間給与実態統計調査」
食品メーカーの平均年収は439万円であり、全業界との平均と比べて大きな差はありませんでした。
ただし一口に食品業界と言っても、中小企業から大企業までさまざまです。実際に得られる年収は、就職する企業や勤続年収などによっても大きく左右されるでしょう。
食品業界の現状の課題
安定したイメージがあり、学生の就職先としても人気が高い食品業界ですが、課題もあります。
ここからは、食品業界が現在抱える課題について解説していきます。
円安による物価上昇
円安とは、海外の通貨と比べて日本円の価値が相対的に安くなることを意味します。食材原料をはじめさまざまなものを海外から輸入する日本では、取引する際に日本円を海外の通貨に交換することが欠かせません。
日本円が安くなればその分支払う金額が大きくなり、食品メーカーが食材原料を入手するための費用が増加してしまいます。
新興国の買い付け増加
経済発展が著しい新興国では、食材原料を世界中から買い付けようとする動きが活発化しています。この動きに影響を受けるのが、食品メーカーが輸入する食材原料の価格です。
食材原料の価格は、売りたい企業と買いたい企業の需給バランスで決まります。新興国のように買いたい企業が増えると、食材原料は高い値段でも売れるようになります。
この結果、日本の食品メーカーは高い価格で食材原料を輸入せざるを得なくなり、生産コストの増加につながります。
新型コロナウイルス流行による行動規制
新型コロナウイルスの流行は、世界中に大きな影響を与えました。感染拡大を予防するために各国政府が打ち出した政策は、行動規制や外出制限などです。しかし、これらの政策は原料加工に必要な労働力を不足させ、供給量を減らす原因となりました。
この結果、食材原料の需要と供給のバランスが崩れ、食材原料の価格はさらに押し上げられることになったのです。原料価格が値上がりすると、食品価格に転嫁しない限り食品メーカーは利益を確保できません。
その一方で、値上げによる顧客離れも懸念されています。そのため、食品メーカーは大胆な値上げに踏み切れず、今後の利益確保にも工夫が求められます。
食品業界の今後の動向・将来性
食品業界の国内市場は徐々に縮小していくことが予想され、次の一手を模索する時期に来ています。
そんな状況の中、今後食品業界がどうなっていくのか、食品業界の動向と将来性についての考察を紹介します。
海外進出によって売上拡大を目指す
食品メーカーが新たな市場として注目しているのが、経済発展を続けるASEAN(シンガポール・フィリピン・タイなど)諸国です。
これらの国々は比較的食の嗜好が日本人に近く、日本食に親しみやすいことが期待されます。 すでに現地に進出している食品メーカーもあり、海外進出する流れは、今後ますます加速していくでしょう。
健康食品の開発に力を入れる
日本国内では、健康志向の高まりによって、機能性表示食品など特定の機能を持つ食品の売上が伸びています。
食品メーカーはこれらのニーズに合わせさまざまな新商品を開発しており、今後もこの傾向は続いていくでしょう。
手軽に調理できる食品開発に力を入れる
女性の社会進出や高齢者の単身世帯の増加によって、より手軽に料理できる食品のニーズが増えています。
短時間で手軽に食べられる食品開発をすることで、新たな市場獲得が期待できます。
同業他社との提携で生産効率を上げる
食品メーカーの中には、同業他社と提携することで生産効率を上げようとする動きも見られます。 例えば同じ自動販売機を、飲料メーカー同士で共同に利用するなどの取り組みです。
生産効率を上げることで、これまではできなかった新たな価値提供が期待されます。
ECでの流通が活発化している
これまで食品メーカーが製造した商品は、卸売業や商社、小売業を通して消費者に届けられることが一般的でした。 しかし、インターネットの発達により、商品を消費者に直接販売する食品メーカーが増えています。
食品メーカーがECマーケットを活用することで、流通コストを下げ、同時に利益率をアップさせることも期待できます。