コンサルティング業界とは?
コンサルティング業界とは、企業が抱えているさまざまな悩みや課題を解決に導く仕事をする業界です。
専門的な知識とノウハウを持ったコンサルタントが、ヒト・モノ・カネ・情報・仕組みなど複雑な要素が絡み合う経営課題を客観的に捉え、問題の解決法を提案します。
経営層・経営者の意思決定を手伝い、ときには企業の内部に入って問題解決に携わることもあるでしょう。
コンサルティング業界における2021年の市場規模や成長率・利益率は以下の通りです。
業界市場規模 | 0.9兆円 |
成長率 | 8.2% |
利益率 | 9.6% |
出典:業界動向SEARCH.COM「コンサルティング業界」
近年は企業の抱える課題の複雑化に伴い、多種多様なコンサルティングファームが出現しており、日々コンサルティグ市場は拡大を続けています。
コンサルティングファームの種類
コンサルティングファームは、主に以下に挙げる種類に分けられます。それぞれのファームの特徴を解説します。
- 戦略系コンサルティングファーム
- 総合系コンサルティングファーム
- シンクタンク系ファーム
- IT系コンサルティングファーム
- 人事系コンサルティングファーム
- 国内独立系コンサルティングファーム
戦略系コンサルティングファーム
戦略系コンサルティングファームは、企業経営や事業戦略など大規模なプロジェクトのコンサルティングを行います。企業が抱える問題を明らかにし、利益や業績の向上に貢献するのが仕事です。
ときにはコンサルタント自らが実際に企業の内部に入って、共に改革案を実行するケースもあります。外資系が多く、顧客は大企業や外資系企業が中心です。
【戦略系コンサルティングファームの例】
総合系コンサルティングファーム
総合系コンサルティングファームは、複数の分野を掛け合わせたコンサルティングを行います。特定の専門分野に特化しているわけではなく、企業の戦略立案から業務・IT・組織・人事など、幅広い分野のコンサルティングに対応しています。
一つの企業が抱える複数の問題を広くフォローできるのが総合系コンサルティングファーム最大のメリットです。大手と呼ばれるような大規模ファームが多く、顧客にも大企業が多い点が特徴です。
【総合系コンサルティングファームの例】
シンクタンク系ファーム
シンクタンク系ファームはさまざまな分野の専門家を集め、政策立案や分析、開発などの高度な研究をしています。大手証券会社や金融機関を親会社に持ち、大手ならではのノウハウを活用した戦略立案・経営・ITコンサルティングを行います。
通常のコンサルティング会社のクライアントは民間企業ですが、シンクタンクは行政機関や国がクライアントとなることが特徴です。そのため、国の社会問題の解決に寄与することもあります。
コンサルティング業界の企業には外資系が多いですが、シンクタンク系ファームは日系企業が比較的多いです。
【シンクタンク系ファームの例】
IT系コンサルティングファーム
IT系コンサルティングファームは、ITを活用して企業の課題解決を行います。DXによる業務改革やIT技術の導入、システム改善などのコンサルティングを得意としており、IT化・DX化で遅れをとる業界・企業を顧客として事業を展開しています。
今後、どの業界でもIT化・DX化はますます進展していくと予想されており、ITコンサルの需要拡大が期待できるでしょう。
【IT系コンサルティングファームの例】
人事系コンサルティングファーム
人事系コンサルティングファームでは、人や組織にまつわる領域の課題解決を行います。組織・人事制度の改革や教育制度の整備、採用計画の立案など、人材面から企業の成長に貢献します。
昨今、若手人材の定着率アップを課題としている企業も多いことから、人事系コンサルティングは注目の分野です。
【人事系コンサルティングファームの例】
国内独立系コンサルティングファーム
国内独立系コンサルティングファームは、国内で進化を遂げたコンサルティングファームです。中堅・中小企業を主な顧客とし、経営者のニーズに合わせて経営戦略・業務・組織・人事など多岐にわたるコンサルティングを行います。
コンサルティングの範囲が多岐にわたる分、柔軟な対応ができる人材が求められます。
【国内独立系コンサルティングファームの例】
コンサルティングファームにおける日系と外資系の違い
コンサルティングファームは、日系と外資系の2つに分けられます。それぞれの特徴を解説します。
案件の受け方
会社によっても異なりますが、日系と外資系では、案件の受け方に以下のような違いが見られることがあります。
区分 | 案件の受け方の違い |
日系 | 顧客と顧問契約を結び、継続してクライアントの支援を行うスタイルが主流。 |
外資系 | プロジェクト単位で複数名のコンサルタントでチームとなり、課題解決にあたる。 コンサルティング期間はプロジェクト完了まで。 |
外資系よりも日系の方が、同じクライアントと長くにわたって付き合う傾向にあります。
価値観
会社によっても異なりますが、日系と外資系では、価値観に以下のような違いが見られることがあります。
区分 | 価値観の違い |
日系 | 組織への協調性が求められる。 成果主義的な評価制度はありつつも、外資系ほど実力がすべてという傾向は強くない。 |
外資系 | 成果主義・実力主義の世界。 「Up or Out(昇進か退職か)」という価値観が浸透している。 人事評価制度では生産性や成果を常にチェックされるため、成長のチャンスが多い。 |
日系コンサルファームは、その他の国内民間企業と似たような価値観であることが多いです。一方、外資系コンサルファームは「成果主義・実力主義」で知られます。頑張り次第では大きな年収アップが期待できる分、プレッシャーも大きい傾向にあります。
コンサルティング業界の代表的な企業
コンサルティング業界の代表的な企業と、その売上高をまとめました。
企業名 | 売上高 |
野村総合研究所 | 6,116億円(※1) |
三菱総合研究所 | 1,030億円(※2) |
ベイカレント・コンサルティング | 574億円(※3) |
日本M&AセンターHD | 404億円(※4) |
ドリームインキュベータ | 355億円(※5) |
リンクアンドモチベーション | 326億円(※6) |
船井総研HD | 288億円(※7) |
シグマクシス・HD | 156億円(※8) |
M&Aキャピタルパートナーズ | 151億円(※9) |
山田コンサルティングG | 146億円(※10) |
※1 出典:株式会社野村総合研究所「2021年度有価証券報告書」
※2 出典:株式会社三菱総合研究所「2020年度有価証券報告書」
※3 出典:株式会社ベイカレント・コンサルティング「2021年度有価証券報告書」
※4 出典:株式会社日本M&Aセンターホールディングス「2021年度有価証券報告書」
※5 出典:株式会社ドリームインキュベータ「2021年度有価証券報告書」
※6 出典:株式会社リンクアンドモチベーション「2021年度有価証券報告書」
※7 出典:株式会社船井総研ホールディングス「2021年度有価証券報告書」
※8 出典:株式会社シグマクシス・ホールディングス「2021年度有価証券報告書」
※9 出典:M&Aキャピタルパートナーズ株式会社「2020年度有価証券報告書」
※10 出典:山田コンサルティンググループ株式会社「2021年度有価証券報告書」
業界1位の野村総合研究所の売上高は圧倒的で、2位の三菱総合研究所に5倍以上の差をつけています。コンサルティング業界は野村総合研究所の独走状態と言ってもいいでしょう。
また、業界市場規模は9,000億円なので、1位の野村総研の売上高だけで市場全体の6割以上のシェアを占めていることになります。
コンサルティング業界の職種・仕事内容
コンサルティング業界の職種・仕事内容には、以下に挙げるものがあります。
- アナリスト
- コンサルタント
- マネージャー
- パートナー
アナリスト
アナリストは、クライアントの情報収集や分析・資料作成が主な業務です。チームに参加して、コンサルタントやマネージャーをサポートします。
アナリストは新卒など浅いキャリアの方が務める職位です。先輩コンサルタントへの同行、ミーティングの議事録作成などさまざまな経験を経て、一人前のコンサルタントを目指します。
コンサルタント
コンサルタントは、最前線で仕事を行うプレイヤーです。コンサルティング業界で働く職種として一番イメージしやすいものでしょう。
主な仕事はクライアントから悩みを聞き出し、共に課題解決にあたることです。一般的に、未経験から中途入社するとこの職位からスタートします。
マネージャー
マネージャーは、プロジェクト全体のマネジメントが主な業務です。責任者としてプロジェクトの管理・顧客との折衝・予算管理・部下の教育などを行い、ときにはメンバーのサポートや業務の効率化も行います。
プレイヤーとしてコンサルタントの仕事もこなしつつ、リーダーとしてチームをまとめる役割も持つ重要な仕事です。
パートナー
パートナーは、コンサルティングファームの経営と案件獲得が仕事です。部下をけん引するリーダーシップを発揮しつつ、会社の顔として大きな責任も担っています。
コンサルティング業界の年収
コンサルティング業界の平均年収と、全業界の平均年収を比較してみましょう。
業界 | 平均年収 |
コンサルティング業界 | 987万円(※1) |
全業界 | 433.1万円(※2) |
※1 出典:業界動向SEARCH.COM「コンサルティング業界」
※2 出典:国税庁「民間給与実態統計調査」
コンサルティング業界の平均年収は987万円と、全業界の平均年収の約2倍以上です。「コンサルタントは高年収」のイメージ通りの比較結果と言えます。
マネージャー・パートナーなど上位の職種に昇進したり、外資系に転職したりすることで、さらなる高年収が狙えるでしょう。
コンサルティング業界の現状の課題
コンサルティング業界の現状の課題について解説します。
コンサルタントに要求されるレベルが年々上がっている
現在は、ただ解決策を提示するだけのコンサルタントの価値は低いと考えられています。
その理由としては、ネットを通じて専門知識を持つ人材にアクセスしやすくなったことや、コンサルタントだけが知りえていたノウハウを書籍やネット上で簡単に入手できるようになったことなどがあります。
以前はコンサルタントといえば、依頼者の相談に乗って解決をするのが仕事でした。しかし、今後はより個社の課題に沿った提案や、単なる課題解決・情報提供に留まらないプラスアルファの価値提供が求められるでしょう。
顧客のニーズが多様化している
企業の事業の多角化に伴い、コンサルタントが直面する経営課題も複雑化・多様化してきています。そのため、対応できない分野が多いコンサルティング会社は、チャンスを逃してしまうことになります。
これからのコンサルティングファームにはコンサルタントの専門性を高めることはもちろん、得意分野を広げるなどの対応が求められます。
最近では、企業の多種多様なニーズに応えられる体制を整えるため、積極的にM&Aを行うコンサルティングファームも増えています。
人材不足によりコンサルタントの確保が困難になりつつある
企業のコンサルティングニーズの高まりに伴って、コンサルタントの市場価値は高まっています。
一方で、人材獲得競争は激しさを増しており、業界内だけでは人材の確保が難しくなりつつあるのが現状です。そのため、昨今はコンサルタントを異業種から中途採用するケースも増えてきています。
人材不足に陥ると社員一人ひとりの負担を増やす恐れがあるため、人材確保は各企業の課題と言えるでしょう。
コンサルティング業界の今後の動向・将来性
コンサルティング業界の今後の動向・将来性について解説します。
市場規模は年々拡大
IDC Japanの「国内ビジネスコンサルティング市場予測」によると、2021年のコンサルティング業界の市場規模は5,724億円に達しています。
海外展開の活発化やあらゆる業界でのDX化コンサル需要を背景に、今後も市場は成長していくとみられ、同調査では2026年には8,732億円に達するとも予想されています。
アメリカをはじめ多くの国で市場規模が大きいコンサルティング業界は、日本を含めたアジア市場においても、今後一層の成長が期待されるところです。
IT系コンサルティングファームの台頭
近年、IT活用は企業の成長には不可欠とも言われています。コンサルティング業界でも、経営のみならずITの知識にも精通しているコンサルタントの需要は高まると考えられます。
ITコンサルにはDXによって業務を効率化するだけでなく、IoTやロボティクスなどの新しい価値を生み出すための高度なデジタル戦略が求められます。
昨今はIBMやアクセンチュアなどを筆頭に、多くのエンジニアを抱え、高度な自社テクノロジーを保有するITコンサルティングファームの台頭が目立ちます。
デジタル技術の普及による需要拡大
DX(デジタルフォーメーション)は政府も国を挙げて推奨している最中であり、今やDXを最重要課題としている企業も少なくありません。
新型コロナウイルス感染拡大を受け、デジタル化を進める会社も増えました。しかしツール導入や対策が遅れて困っている企業は多くあります。
今後はデジタル技術によってビジネスモデルや働き方、ひいては企業全体を改革できる知見や専門知識のあるコンサルタントが求められるでしょう。