航空業界とは?
航空業界とは、空路を使い旅客や荷物を国内外に輸送する業界です。
航空会社は大規航空事業者である「メガキャリア」と、格安で利用ができる「LCC」に分けられます。路線数の多いメガキャリアの方が注目されがちですが、消費行動の変化によりLCCの人気も徐々に伸びてきました。
航空業界の2021年における市場規模や成長率、利益率は以下のとおりです。
業界市場規模 | 1.2兆円(108位/190業界) |
成長率 | −21.0%(190位/190業界) |
利益率 | −60.9%(188位/190業界) |
出典:業界動向SEARCH.COM「航空業界」
航空業界の代表的な企業
航空業界の代表的な企業と、その売上高は次のとおりです。
企業名 | 売上高 |
ANA HD | 7,286億円(※1) |
日本航空(JAL) | 4,812億円(※2) |
スカイマーク | 340億円(※3) |
ソラシドエア | 202億円(※4) |
スターフライヤー | 182億円(※5) |
AIRDO | 174億円(※6) |
※1 出典:ANAホールディングス株式会社「有価証券報告書」
※2 出典:日本航空株式会社「有価証券報告書」
※3 出典:スカイマーク株式会社「有価証券報告書」
※4 出典:株式会社ソラシドエア「有価証券報告書」
※5 出典:株式会社スターフライヤー「有価証券報告書」
※6 出典:株式会社AIRDO「有価証券報告書」
2020年(2021年決算)の航空業界の売上高ランキングでは、首位はANA HDで売上高7,286億円でした。2位は日本航空で、売上高は4,812億円です。
いずれも売上高上位はメガキャリアによる航空会社で、他の売上を大きく引き離していることがわかります。
航空業界の職種と仕事内容
航空業界の種類と、その仕事内容を職種別に見ていきます。
客室乗務員
キャビンアテンダントとも呼ばれる客室乗務員は、乗客の安全確保や快適な空間づくりを提供する仕事です。
具体的には乗客の出迎えや食事・飲み物の提供、離着陸時の安全確認などを行います。また、気象悪化や急病人が発生した際は、冷静かつ機敏に対応する必要があります。
海外の旅客へも対応をしなければならないので、一定の語学力が必要です。
パイロット
航空機操縦士であるパイロットは、航空機を操縦し旅客や物を目的地まで運ぶ仕事です。天候状況や燃料、整備状況などの確認もパイロット業務に含まれています。
パイロットになるには専門的な知識と技術が求められ、航空機に応じたライセンス(定期運送用操縦士、事業用操縦士など)の取得が必要です。
グランドスタッフ
グランドスタッフは、チェックインカウンターで航空券の発券や搭乗手続きなどを行う仕事です。
お客様と直接関わることが多く、高いコミュニケーション能力が求められます。また、英語力に関しても高い水準で身につけておく必要があります。
航空整備士
航空整備士は、航空機体を安全な状態に保つための点検や整備をする仕事です。
主に次のような業務があります。
- フライト前後の整備・点検を行うライン整備
- 航空機を格納庫に収納するドッグ整備
- 航空機の部品を精密検査するショップ整備
航空整備士になるには航空専門学校を卒業し、「二等航空整備士」「二等航空運航整備士」などの国家資格を取得する必要があります。
ディスパッチャー(運行管理)
ディスパッチャー(運行管理)は、機体が目的地へ安全に到着できるようフライトプランを作成する仕事です。機長と打ち合わせを行い、フライト中には無線で飛行ルートの気象状況や機体の揺れ予測などを伝えます。
ディスパッチャーになるには、運行管理業務を経験した後に「運行管理者技能検定」の取得が必要です。
グランドハンドリング
グランドハンドリングは、空港で必要な地上サポート業務を行う仕事です。具体的な仕事には到着した航空機の誘導、貨物コンテナの搭降載、航空機の移動などがあります。
担当する業務に応じて「危険物取扱者」「大型特殊自動車免許」といった資格が必要です。
航空管制官
航空管制官は、到着機の着陸順序を決定し管制塔から指示を出す仕事です。飛行場および周辺空域にある航空機の状況を確認し、走行経路の指示や離着陸の許可を出します。
なお、航空管制官は国家公務員に分類されている職種です。
入国審査官
入国審査官は、空港での外国人の出入国の審査、在留審査、難民認定に関連した調査業務を行う仕事です。自国へと入出国する外国人からパスポートやビザを提示してもらい、渡航目的の確認などを行います。
入国審査官も航空管制官と同様、国家公務員に分類される職種です。
税関職員
税関職員は、輸出入貨物の審査・検査や手荷物の検査をする仕事です。違法な物品の持ち込みがないか、持ち込みする物品の金額が所定ラインを超えていないかなどを徹底的にチェックします。
また、税関職員も国家公務員に分類される職種です。
航空業界の年収や給料
航空業界の平均年収と、全業界の平均年収を比較してみましょう。
業界 | 平均年収 |
航空業界 | 航空機操縦士:1,902万円 航空機客室乗務員:650万円(※1) |
全業界 | 433.1万円(※2) |
※1 出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査の職種別賃金額」
※2 出典:国税庁「民間給与実態統計調査」
全業界と比べ、航空業界の平均年収は非常に高い水準であることがわかります。特に航空機操縦士に関しては、実績を積めば年収2,000万円以上も期待できます。
なお平均年収は企業や職種、役職等によっても金額が前後します。
航空業界の現状の課題
航空業界は新型コロナウイルス流行の影響で売上が大幅に減少し、2020年度の成長率は全業界で最下位(※)という結果でした。
※参考:業界動向SEARCH.COM調べ
航空業界が抱える現状の課題について見ていきましょう。
パイロットの人材確保と教育
格安で利用できるLCCの参入や路線拡大で、各航空会社でパイロットの人材不足が深刻になりました。また新型コロナウイルスの流行により、訓練中断や有効期間内で実施試験を終えられない事態が多く発生し、若手人材が減少傾向にあります。
そのため航空業界では、パイロットを目指す人材に無利子の奨学金を提供する、パイロットの給料を見直すなどして、人材不足を補うための施策を進めています。
新型コロナウイルスの影響による旅客数の落ち込み
2020年度は新型コロナウイルス流行の影響で、国内線・国際線の旅客数が大幅に減少しました。
2020〜2021年度にかけては国外への渡航制限が厳しく、旅行目的で海外に行けない状況が続き、国際線の売上を大きく落としています。2022年6月からは入国制限が大幅に緩和されましたが、それでも依然として旅客数の回復が見込めていません。
国内だけでなく海外からの利用者も多い航空業界は、新型コロナウイルス流行の影響を大いに受けています。
参考:経済産業省「旅客運送業へのコロナ禍の影響とは」
航空業界の今後の動向・将来性
航空業界の今後の動向と将来性について解説します。
アフターコロナからの回復
IATA(国際航空運送協会)は、業界全体の旅客数を2024年までにコロナ前の水準に戻すことを目指していると発表しています(※)。各航空会社は、打撃を受けた業績のマイナスを回復させることが課題であると言えるでしょう。
JALやANAのようなメガキャリアでは、LCCと同じように一部のサービスを有料化、サービスプランの見直し等で赤字を補填するような動きがあります。またアフターコロナを契機とし、日本への観光ニーズを強化するためにLCC分野を強化していく見込みです。
※参考:IATA「Air Passenger Numbers to Recover in 2024」
非航空事業の拡大
新型コロナウイルス流行により大打撃を受けた航空業界は、航空事業だけに頼らない新しい収益モデルに着手していくと予想されます。
例えば、現在JALでは会員制のサービス「JALマイレージバンク」や物販に力を入れています。今後は航空事業の再編と同時並行で、日用品やレジャー、不動産、投資といった非航空事業の拡大が進むでしょう。
環境問題への取り組み
新型コロナウイルスが流行する前から進められていたのが、環境問題への取り組みです。
脱炭素社会が謳われる昨今、業界では航空機のCO2排出量が問題視されています。例えばJALでは、ごみとして捨てられていた原料を燃料とするバイオジェット燃料の実用化が検討されています。
経済・社会・環境の3つのバランスを保つことを目標とするSDGsも本格的に始まり、今後航空業界は自然や社会が共生できる事業の展開が必須と言えるでしょう。