自動車業界とは?
自動車業界とは、自動車の製造や販売に関わる企業をとりまく業界のことを指します。自動車業界と言えば、自動車を完成させる自動車メーカーをイメージしがちですが、広い意味では素材メーカーや部品メーカーも自動車業界です。
私たちが日常生活でよく目にする自動車は、プラスチックや金属などの素材を部品に加工し、組み立てることで作られています。さらに完成した自動車は、ディーラー(自動車販売をする事業者)を通じて消費者に販売されます。
このように、完成した自動車が私たちの手に届けられるまでには、自動車業界のさまざまな企業が携わっています。
自動車業界の2021年の市場規模や成長率、利益率は以下のとおりです。
業界市場規模 | 57.0兆円(5位/190業界) |
成長率 | −5.6%(161位/190業界) |
利益率 | −0.7%(148位/190業界) |
出典:業界動向SEARCH.COM「自動車業界」
自動車業界は190種類ある業界の中でも5位に入る市場規模を誇り、まさに日本を代表する業界となっています。
自動車業界の代表的な企業
自動車メーカーはテレビCMなどを通じて積極的に広告宣伝をしているため、自動車業界を代表する企業は知名度の高い企業が多いです。
ここからは、自動車業界の代表的な企業とその売上高を紹介します。
企業名 | 売上高 |
トヨタ自動車株式会社 | 299,299億円(※1) |
本田技研工業株式会社 | 91,535億円(※2) |
日産自動車株式会社 | 84,245億円(※3) |
スズキ株式会社 | 35,683億円(※4) |
マツダ株式会社 | 31,203億円(※5) |
株式会社SUBARU | 27,445億円(※6) |
三菱自動車工業株式会社 | 20,389億円(※7) |
いすゞ自動車株式会社 | 19,081億円(※8) |
ヤマハ発動機株式会社 | 18,124億円(※9) |
日野自動車株式会社 | 14,597億円(※10) |
※1 出典:トヨタ自動車株式会社「有価証券報告書」
※2 出典:本田技研工業株式会社「会社概要」
※3 出典:日産自動車株式会社「有価証券報告書」
※4 出典:スズキ株式会社「会社概要」
※5 出典:マツダ株式会社「有価証券報告書」
※6 出典:株式会社SUBARU「有価証券報告書」
※7 出典: 三菱自動車工業株式会社「有価証券報告書」
※8 出典: いすゞ自動車株式会社「有価証券報告書」
※9 出典:ヤマハ発動機株式会社「有価証券報告書」
※10 出典:日野自動車株式会社「有価証券報告書」
断トツで売上トップを誇るトヨタ自動車は、全体の46.6%と過半数近くのシェアを占めます。2位には本田技研工業が14.3%、3位には日産自動車が13.1%と追随しているものの、4位以下の企業は10%のシェアにも届きません。
トップのトヨタ自動車をその他メーカーが追いかける構図は、今後も続いていくと予想されます。
自動車業界の職種別の仕事内容
自動車を部品から組み立てて完成させる自動車業界には、どんな職種や仕事内容があるのでしょうか?ここからは、自動車業界ならではの職種別の仕事内容をご紹介します。
※ここでは自動車業界の中でも代表的な「自動車メーカー」の仕事を紹介しています。
営業
自動車メーカーの営業の仕事は、消費者に商品を販売するディーラー(販売会社)の支援をすることです。自社商品の資料を作成してディーラーに渡し、他社商品との違いをアピールします。
キャンペーンを展開する時期は、その手伝いに参加することもあります。
生産管理
自動車メーカーにおける生産管理は、工場ラインにおける部品の組み立てから完成までを担当します。特に納期は信用に関わる部分であるため、厳守しなければなりません。
業務には、スピードを意識しながらも不良品を出さないように品質をコントロールし、必要な部品が不足することがないよう計画的に業務を進めることが求められます。
研究開発
自動車メーカーにおける研究開発の役割は、次に市場へと投入する自動車や新技術の開発に取り組むことです。近年では、電気自動車や自動運転などの次世代自動車が注力分野です。
なお、各メーカーが研究の対象とする範囲は幅広く、それぞれの分野に特化した専門家が日々しのぎを削っています。研究された技術は、既存商品の改良に使用されることもあります。
販売促進
自動車メーカーにおける販売促進は、市場調査を通じて消費者のニーズを調べたり、新商品のコンセプトを設計したりします。
また、消費者の購買意欲を促進するためのキャンペーンやイベントを企画するのも仕事の一つです。
自動車業界の年収
自動車業界の平均年収と全業界の平均年収を比較してみましょう。
業界 | 平均年収 |
自動車業界 | 557万円(※1) |
全業界 | 433.1万円(※2) |
※1 出典:厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」
※2 出典:国税庁「民間給与実態統計調査」
自動車業界の平均年収は557万円であり、全業界の平均よりも100万円以上高くなっています。市場規模が大きく、日本を代表する業界であることから、平均年収も高くなっていると考えられます。
ただし、実際に得られる給与は企業規模や従事するポジションなどによって変わってくるため、一概に高い年収が期待できるわけではない点に注意しましょう。
自動車業界の現状の課題
就活生に人気の自動車業界ですが、課題もあります。ここからは自動車業界が抱える現状の課題について解説していきます。
人口減少と若者の車離れによる売上減少
日本国内の自動車販売台数は減少傾向にあります。
以下は、2018〜2021年の国内における自動車販売台数の推移です。
年度 | 年間合計販売台数 | 前年比 |
2018年 | 5,271,987台 | ー |
2019年 | 5,195,134台 | 76,853台の減少 |
2020年 | 4,598,527台 | 596,607台の減少 |
2021年 | 4,448,018台 | 150,509台の減少 |
出典:一般社団法人日本自動車販売協会連合会「新車・年別販売台数(登録車+軽自動車)」
4年間にわたり、自動車販売台数の減少が続いています。理由としては、少子高齢化や若者の車離れなどが挙げられます。
自動車販売台数の減少に伴い、自動車メーカーは自動車販売だけでの利益確保が難しくなってきている現状です。
自動車の二酸化炭素排出による環境問題
ガソリン車から排出される二酸化炭素が地球温暖化や大気汚染につながっているとして、環境問題になっています。
今後、海外で自動車人口が増えると、さらに二酸化炭素の排出量が増えると予想され、世界各国が二酸化炭素削減に取り組んでいます。ヨーロッパでは、一定数以上の自動車を販売したメーカーに罰金を課すというルールがあるほどです。
このような流れから、二酸化炭素排出量の多いガソリン自動車は今後減少していくと予想されます。
自動車業界の今後の動向・将来性
国内市場の伸びの鈍化や二酸化炭素規制など、課題を抱える自動車業界ですが、このまま何もせず傍観しているわけではありません。
新しい活路を見出すべく、自動車業界ではさまざまな取り組みが行われています。
二酸化炭素の排出が少ない電気自動車の製品開発
ガソリン車を減らす世界の潮流を受け、日本でも電気自動車を普及させる動きが加速中です。
政府は2035年までに、新車販売による電気自動車の割合を100%まで拡大する方針を打ち出しています。そして、それに合わせて自動車メーカー各社は、電気自動車の製品開発に力を注いでいます。
より安全性の高い自動運転技術の開発
自動運転技術の開発も、次世代技術として注目される分野の一つです。高速道路での運転やセンサーによる衝突を回避できる自動車が開発されており、自動運転技術の一部はすでに実現しています。
今後さらに技術が進化することで、交通事故が減り、配送トラックなどの人手不足の解消が期待できます。
カーシェアリングサービスの展開
カーシェアリングサービスは現在急成長中の事業分野であり、すでに自動車メーカーの系列会社で参入が始まっています。
車を所有するライフスタイルから、必要なときだけ利用するライフスタイルになれば、コストをかけずより手軽に自動車を利用できるようになるでしょう。
自動車の利用は、カーシェアリングサービスを通じて今後ますます増えていくことが予想されます。
車とサービスをつなぐコネクテッド技術の開発
コネクテッド技術とは、インターネット通信を活用して最適な移動を一貫して提供してくれる技術のことです。例えば、事故検知時の自動通報システムや盗難車両追跡システム、非常時の走行サポートなどがインターネットを通じて実現可能となります。
コネクテッド技術の普及により、自動車がより便利で安全なものになると期待されています。