葬儀業界

葬儀業界とは?現状の課題や今後の動向・将来性は?年収情報も紹介

葬儀業界とは?

葬儀業界とは、葬儀にまつわる全てのプロセスを担う業界です。

例えば、遺体の管理や通夜・葬式・火葬・供養などの段取りを行います。また葬儀に際しては、遺族へのケアやサポートなど高度なサービスを提供することも葬儀業界の仕事です。

なお、宗派や地域、葬儀社によって葬儀の形式やサービスの範囲は異なります。さらに葬儀業界では、飲食物や生花・祭壇・骨壺などさまざまな商材を取り扱うほか、死亡後の行政手続きや霊柩車・火葬場の手配も行います。

そのため葬儀業界は、葬儀以外の部分でも幅広い知識が求められるのが特徴です。

業界市場規模

0.1兆円

成長率

-2.9%

利益率

3.0%

出典:業界動向SEARCH.COM「葬儀業界

業界市場規模は0.1兆円と、比較的小規模な業界です。昨今、葬儀の小規模化・簡略化が進んでいることもあり、市場規模の拡大が難しい状況を迎えています。

葬儀業界の代表的な企業

葬儀業界の代表的な企業と、その売上高をまとめました。

企業名

売上高

ベルコ

475億円(※1)

日本セレモニー

342億円(※2)

セレマ

320億円(※3)

燦HD

200億円(※4)

ティア

132億円(※5)

レクスト

109億円(※6)

東京博善

93億円(※7)

きずなHD

92億円(※8)

サン・ライフHD

79億円(※9)

平安レイサービス

76億円(※10)

※1 出典:株式会社ベルコ「2021年度決算報告書
※2 出典:株式会社日本セレモニー「2021年度決算公告
※3 出典:株式会社セレマ「令和4年7月期 損益計算書
※4 出典:燦ホールディングス株式会社「2021年度有価証券報告書
※5 出典:株式会社ティア「2021年度有価証券報告書
※6 出典:株式会社レクスト「2021年度損益計算書
※7 出典:東京博善株式会社「2021年度決算公告
※8 出典:株式会社きずなホールディングス「2021年度有価証券報告書
※9 出典:株式会社サン・ライフホールディング「2021年度有価証券報告書」(式典事業)
※10 出典:平安例サービス株式会社「2021年度有価証券報告書」(葬祭事業)

売上高1位のベルコが、上位10社の売上合計のおよそ1/4を占めています。5位以下の企業は総じて売上高100億円前後と、他の業界と比べると業界全体の規模が小さいことが伺えます。

業界の特性上、大幅な売上高アップは考えにくく、業界規模や各葬儀会社の売上高は今後も横ばいで推移すると予想されます。

葬儀業界の職種別の仕事内容

葬儀業界の職種には、以下のようなものがあります。それぞれの仕事内容を見ていきましょう。

  • 葬祭ディレクター
  • 納棺師
  • エンバーマー
  • 生花

葬祭ディレクター

葬祭ディレクターは、葬儀が円滑に執り行われるよう調整する仕事です。具体的な業務としては、以下が挙げられます。

  • 遺体の搬送
  • 通夜・葬式の進行
  • 会場設営
  • 式に必要な花など物品の準備
  • 火葬場の手配
  • 見積書・請求書などの書類作成
  • 死亡届の手続き代行

業務内容が多岐にわたり、複数の業務を同時に進行することもあります。

納棺師

納棺師は遺体を清め、化粧や含み綿を施して棺に納める仕事です。亡くなってから葬儀までに期間が空く場合は、ドライアイスや防腐剤を使って綺麗な状態で遺体を保存しておきます。

納棺師は遺族が亡くなった人の顔を見て別れを告げられるよう、生前の姿に戻すという重要な役割を担っています。

エンバーマー

エンバーマーは遺体の修復を行うのが主な仕事です。納棺師とは仕事内容が少し異なり、さまざまな事情から生前の姿と変わってしまった遺体を、特殊な薬品を使ったり縫合などの処置をしたりして修復します。

特殊な技術が必要とされるため、エンバーマーは資格を取得した人が業務にあたるのが一般的です。

生花

生花は祭壇に飾る花や故人に手向ける花を手配し、生ける仕事です。葬儀で使用する花の全ての管理と手配を行います。遺族の要望を聞き取り、故人のイメージに合う花を取り入れることもあります。

色や形・バランスを考えつつ遺族のイメージに沿う祭壇をデザイン・設営しなくてはならないため、技術とセンスの両方が問われる仕事と言えるでしょう。

葬儀業界の年収

葬儀業界の年収

葬儀業界の平均年収と、全業界の平均年収を比較してみましょう。

業界

平均年収

葬儀業界

562万円(※1)

全業界

433.1万円(※2)

※1 出典:業界動向SEARCH.COM「葬儀業界
※2 出典:国税庁「民間給与実態統計調査

葬儀業界の年収は、全業界の平均年収と比べて130万円ほど高くなっています。平均並〜平均よりやや高い年収が狙える業界と言えるでしょう。

ただし、勤める葬儀社の規模や地域、職種によっても年収の変動が予想されるため、自分が入社を希望する葬儀社の待遇を個別にチェックしておくことをおすすめします。

葬儀業界の現状の課題

葬儀業界の現状の課題について解説します。

葬儀の小規模化

喪主の高齢化や核家族化により、葬儀の小規模化が進んでいます。親族や親しい人だけが参列する「家族葬」や、通夜を省略する「1日葬」など、昨今は簡略・小規模化された葬儀が増え、葬儀一件あたりの費用は減少しつつあります。

そのため、葬儀業界全体の売上は横ばいに留まっており、今後も葬儀業界の市場規模縮小は避けられないでしょう。

業界内での競争激化

葬儀業界においては、異業種からの新規参入が増えています。葬祭業を始めるにあたっては資格や行政の許認可が不要であり、参入障壁が低いためです。

実際にホテル・鉄道・小売業界からの新規参入や、オンラインの葬儀業者の台頭もあります。その結果既存の葬儀会社は、価格競争や顧客の取り合いといった厳しい市場環境にさらされています。

葬儀業界の今後の動向・将来性

葬儀業界の今後の動向・将来性について解説します。

葬儀需要は安定の見通し

高齢者の増加により、日本の死亡者数は緩やかながら増加傾向にあります。「令和2年度 厚生労働省白書」によると、2040年の死亡者数は1989年(平成元年)の2倍を超える水準に達する見込みです。

年度

死亡者数(1日あたり)

1989年

約2,200人

2019年

約3,800人

2040年(予測)

約4,600人

時代の移り変わりで葬儀の様式や考え方に変化があっても、亡くなった人を弔う習慣そのものがなくなることはないでしょう。劇的な市場拡大はないにしても、葬儀の需要自体は安定し続けると予想されます。

葬儀サービスの多様化が進む

新型コロナウイルスの流行もあり、「オンライン葬儀」と呼ばれる新しい形態の葬儀も登場しています。オンライン葬儀とは、葬儀や納骨の様子をライブ配信し、遠方に住んでいる人でもリモートで葬儀に参加できるようにしたサービスです。

このような顧客のニーズに合わせたきめ細やかな葬儀サービスの展開は、今後も続くでしょう。最近では「終活サービス」「墓参り代行サービス」「葬式セットの販売」など、新たなサービスや業態の展開も目立ちます。

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