ブライダル業界とは?
ブライダル業界とは、挙式や披露宴など結婚に関わるサービスを提供する業界のことです。
挙式をしたい新郎新婦に対して式場を用意したうえで、衣装のスタイリングや式の演出、ゲストへのもてなしといった挙式サービスを提供します。
運営会社が提供する式場は大きく以下の4つに分かれており、サービスを行う場所や方法によって挙式のスタイルも変わります。
- ホテル
- 専門式場・神社
- レストラン
- ゲストハウス
トレンドが重視され、流行の移り変わりが激しい業界なので、その動向はしっかりおさえておきたいところです。
ブライダル業界の代表的な企業
ブライダル業界の代表的な企業と、その売上高をまとめました。
企業名 | 売上高 |
テイクアンドギヴ・ニーズ | 394.82億円(※1) |
ツカダ・グローバルHD | 334.29億円(※2) |
BP(旧社名:ブライダルプロデュース) | 257億円(※3) |
エスクリ | 222.42億円(※4) |
ワタベウェディング | 196.7億円(※5) |
ディアーズ・ブレイン | 172億円(※6) |
アイ・ケイ・ケイホールディングス | 115.30億円(※7) |
クラウディアホールディングス | 70.1億円(※8) |
アルカンシエル | 36億円(※9) |
千趣会 | 17.3億円(※10) |
※1 出典:株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ「2021年度有価証券報告書」
※2 出典:株式会社ツカダグローバルホールディング「2021年度有価証券報告書」
※3 出典:株式会社BP「株式会社BP 会社概要」(売上高は2019年8月期/グループ全体)
※4 出典:株式会社エスクリ「2021年有価証券報告書」
※5 出典:ワタベウェディング株式会社「2020年12月期1連結決算説明資料」
※6 出典:株式会社ディアーズブレイン「業界動向SEARCH.COM」(2019年売上高)
※7 出典:アイ・ケイ・ケイホールディングス株式会社「2020年度有価証券報告書」
※8 出典:株式会社クラウディアホールディングス「2020年度有価証券報告書」
※9 出典:株式会社アルカンシエル「株式会社アルカンシエル 会社概要」(売上高は2022年3月期)
※10 出典:株式会社千趣会「2021年度有価証券報告書」
首位のテイクアンドギブ・ニーズと10位の千趣会の売上高には、20倍以上もの差があります。コロナ禍によって売上高に各社の明暗がはっきり現れた結果かもしれません。
ただし、感染症の流行という特殊事情によって大きく売上を落とした企業も多いため、コロナ収束後は各社の売上高に変動も見られるでしょう。
ブライダル業界の職種・仕事内容
ブライダル業界の職種・仕事内容には、以下のようなものがあります。
- ウェディングプランナー
- 司会者
- ブライダルスタイリスト
- バンケットサービス
- 介添人(ブライダルアテンダー)
ウェディングプランナー
ウェディングプランナーは結婚式の総監督を行う花形職種です。
主な業務は以下に挙げる3つです。
- 営業
- 打合せや式の準備
- 結婚式当日のサポート
ここで言う営業とは、式場を訪れたカップルを案内し、挙式の提案や予算の提示などを行うことを指します。ウェディングプランナーは挙式を検討しているカップルがまず初めに対面する相手であるため、式場の顔とも言えるでしょう。
挙式が決まったら、打ち合わせを通して新郎新婦のニーズを取り入れた理想の結婚式のイメージを形にしていきます。
当日は式が滞りなく進むようさまざまなスタッフと連携したり、業務の指揮を行ったりします。そのため、ウェディングプランナーには結婚式や披露宴に関するマナーや慣習の知識に加えて、コミュニケーションスキルも求められるでしょう。
司会者
司会者は結婚式をスムーズに進行し、結婚式という大事な晴れ舞台を演出する仕事です。
挙式当日はバンケット担当者や音響・照明スタッフと連携を取りながら式を進行します。司会によって式の印象や雰囲気は左右されるため、挙式当日の最も重要な役割の一つと言っていいでしょう。
また、式場所属ではなく、フリーランスとして結婚式の司会を専門に請け負う司会者もいます。
ブライダルスタイリスト
ブライダルスタイリストは新郎新婦の衣装やジュエリー・ブーケなどの小物を準備し、スタイリングを行う仕事です。事前の打ち合わせの際はコーディネートの提案や衣装の試着を行い、挙式当日は新郎新婦につきっきりで着付けやヘアスタイリングを担当します。
ブライダルスタイリストは新郎新婦の要望を聞きつつも、会場の雰囲気や季節感にも合うよう考慮しながらスタイルを提案しなくてはなりません。そのため、ブライダルに特化した専門的なスタイリングの知識や技能のほか、提案力も求められる仕事です。
バンケットサービス(バンケットスタッフ)
バンケットサービスとは、以下のような仕事を指します。
- 式場の準備
- ゲストの誘導
- ドリンクや料理の提供
- 片付け
加えて、当日は会場の雰囲気を盛り上げる役割も果たします。
バンケットサービスのスタッフはスムーズに式が進行するよう、チームで協力して業務にあたります。
介添人(ブライダルアテンダー)
ブライダルアテンダーとは、結婚式当日に新郎新婦に付き添う仕事のことです。
新婦のメイク直しやドレスの裾持ち、撮影の際の衣装チェック、また新郎新婦が移動する際の案内などを行います。誰よりも新郎新婦に近い位置で身の回りのサポートを行い、満足度の高い挙式を演出します。
新郎新婦の気持ちを盛り上げたり緊張をほぐす声掛けを行ったり、司会と連携して挙式の進行をしたりと、高いコミュニケーションスキルが求められる職種です。
ブライダル業界の年収
ブライダル業界の平均年収と、全業界の平均年収を比較してみましょう。
業界 | 平均年収 |
ブライダル業界 | 471万円(※1) |
全業界 | 433.1万円(※2) |
※1 出典:業界動向SEARCH.COM「ブライダル業界」
※2 出典:国税庁「民間給与実態統計調査」
ブライダル業界の平均年収は、全業界の平均年収をわずかに上回っています。
ただし、経験年数やスキル、勤務する会社によって給与は大きく変動するため、必ずしも高年収を得られないというわけではありません。自分に合った就職先を見つけ、キャリアを積んでいきましょう。
ブライダル業界の現状の課題
ブライダル業界の現状の課題として、以下のような事柄が挙げられます。
新型コロナウイルス流行による挙式件数の減少
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年のブライダル業界の売上高・取扱件数は前年と比べて大きな減少を記録しました。2021年は回復の兆しが見られましたが、それでも以前の水準には戻っていません。
2019年 | 2020年 | 2021年 | |
売上高 | 2,537億5,800万円 | 1,115億9,600万円 | 1,739億1,600万円 |
取扱件数 | 86,304件 | 36,783件 | 60,489件 |
※出典:経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」
業界上位の企業も軒並み最終赤字を計上しており、新型コロナウイルスの流行は中小企業のみならず上場企業も含めてブライダル業界全体に大きな損失を与えています。
コロナ禍においてブライダル業界各社は、少人数で行う小規模の挙式やオンライン結婚式、屋外で行うガーデンウェディングなど新たな挙式スタイルを提案してきました。コロナ禍の制限の中で、いかに満足いくサービスを提供できるかが現状の課題です。
なし婚や晩婚化による挙式件数の減少
近年は、経済的な理由から挙式や披露宴を行わない「なし婚」が増加しています。女性の社会進出等による晩婚化が進んだことで、あえて派手な挙式は行わず、親しい友人や親族だけを招いた食事会で済ませるケースも見られるようになりました。
また、コロナ禍で結婚式を延期・中止したことから結婚指輪やフォトウェディングに費用をかけるカップルが増え、挙式を重要視する結婚プランそのものにも変化が見られます。
これまでのように一律の挙式サービスを提供するだけでは、多様化する消費者のニーズを満たせなくなっているようです。
婚姻数の減少
少子高齢化により若い世代の人口が減少していることから、婚姻数は年々少なくなっています。婚姻件数がピークだった昭和47年に比べ、現在はその半分以下まで落ち込みました。
年度 | 婚姻件数 |
昭和47年 | 109万9984組 |
令和2年 | 52万5490組 |
※出典:厚生労働省「人口動態統計 結果の概要(令和2年)」
人口減少によるカップルの絶対数の減少傾向は続くとみられており、今後ブライダル業界で扱う挙式数が劇的に伸びることは難しいでしょう。
ブライダル業界の今後の動向・将来性
ブライダル業界の今後の動向として、以下の事柄が挙げられます。
SNSでの集客
最近ではSNSを活用し、現地に足を運ぶことなく式場やドレス選びをする顧客が増えてきています。特にInstagramは写真が前面に出るため、式場の華やかな雰囲気を伝えるにはうってつけです。
これまでのブライダル業界では広告代理店に依頼し主に雑誌や広告、CMなどで集客を行っていました。しかし今後はInstagramなど自社アカウントのSNSを通して、自ら式場の魅力を伝え集客を行っていく発信力が重視されるようになるでしょう。
DXの促進
新型コロナウイルスの流行により、元来アナログであったブライダル業界もデジタル化にシフトしました。
現在は、オンラインでの式場の見学や接客・挙式打合せなども増えています。ブライダル業界で働く人からは、「デジタル化によって業務の効率が上がった」「来店による負担が減った」という声も挙がっています。
対面接触を減らすため、各社からオンラインでのブライダルフェア開催や模擬挙式、オンライン挙式の企画も生まれました。こうしたオンライン化の流れは今後も加速していくでしょう。
新市場・ニーズの開拓
ブライダル業界では国内での婚姻数減少を受け、海外事業に力を入れる企業も多いです。大手ブライダル企業を中心に、中国などアジア圏での拠点拡大を目指す動きが見られます。
また、訪日外国人が旅行を兼ねて挙式を行う「インバウンド婚」に対応して、海外需要を取り込もうとする企業もあります。
国内では婚姻件数の減少に伴い、今後一層ブライダル業界の競争激化が予想されるでしょう。生き残るためには画一的な挙式ではなく、自社の強みを生かすブランディング力で他社との差別化を図る力が必要です。