電力業界

電力業界とは?年収や現状の課題、今後の動向・将来性などを解説

電力業界とは?

電力業界とは、ライフラインの一つである電気を供給している業界です。

2016年4月から電力の小売全面自由化が始まったことで、これまでガスや石油といった分野が中心だった企業も電力の販売事業へと新規参入しています。

ここ数年で業界の構図が変わりつつあるものの、電気は私たちの生活に欠かせないものであるため、これから先もなくなることはない業界と言えるでしょう。

電力業界の2021〜2022年における市場規模や成長率、利益率は以下のとおりです。

業界市場規模

19.2兆円

成長率

-3.7%

利益率

0.3%

出典:業界動向SEARCH.COM「電力業界

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、店舗や工場が稼働しにくくなったことで、電力需要は落ち込みました。その結果、2021〜2022年の成長率はマイナスとなっています。

電力業界の代表的な企業

電力業界の代表的な企業と、その売上高は次のとおりです。

企業名

売上高

東京電力HD

53,099 億円(※1)

関西電力

28,518億円(※2)

中部電力

27,051億円(※3)

東北電力

21,044億円(※4)

九州電力

17,433億円(※5)

中国電力

11,366億円(※6)

J-POWER

10,846億円(※7)

北海道電力

6,634億円(※8)

四国電力

6,419億円(※9)

北陸電力

6,137億円(※10)

※1 出典:東京電力HD株式会社「有価証券報告書
※2 出典:関西電力株式会社「有価証券報告書
※3 出典:中部電力株式会社「有価証券報告書
※4 出典:東北電力株式会社「有価証券報告書
※5 出典:九州電力株式会社「有価証券報告書
※6 出典:中国電力株式会社「有価証券報告書
※7 出典:電源開発株式会社「有価証券報告書
※8 出典:北海道電力株式会社「有価証券報告書
※9 出典:四国電力株式会社「有価証券報告書
※10 出典:北陸電力株式会社「有価証券報告書

売上高トップは東京電力HDで、2番手である関西電力と比べても約24,500億円の差があります。

東京電力HDは首都圏を中心にエネルギーサービスを展開しており、水力・原子力発電や送配電など幅広く事業を展開する企業です。中でも売上高の約8割を占める電気・ガスの小売事業が、売上に大きく貢献していると言えるでしょう。

電力業界主な事業

電力業界の主な事業を見ていきます。

発電事業

電気そのものを作り出すのが発電事業です。調達した液化天然ガスや石油、石炭などを用いて発電設備から電気を作ります。

国内の主な発電設備は、次のとおりです。

  • 火力発電
  • 水力発電
  • 原子力発電
  • 太陽光発電
  • 風力発電など

業界内で売上高上位である東京電力HDや関西電力などは、日本を代表する発電事業者です。加えて、再生可能エネルギーを用いた発電事業を進める事業者が、近年は増加傾向にあります。

送配電事業

配送電事業とは、発電事業者から受けた電気を小売電気事業者へ供給する事業です。主に電力を送るための利用料金(託送料金)を電力会社から得て収益を得ます。

単に電力を送るだけではなく、電力を送電するのに必要な設備(電線・変電所等)の管理、停電の防止なども送配電事業者の仕事です。

国内では2016年4月から電力自由化が始まり、現在は地域の大手電力会社以外も参入できるようになりました。

小売電気事業

小売電気事業とは、一般家庭やオフィスなどに電気を供給する事業です。直接消費者との接点を持つ事業であり、電気販売に際して価格設定や契約の手続きをします。

これまで小売電気事業は、東京電力や関西電力といった大手企業が受け持つ仕事でした。しかし電力の小売全面自由化に伴い、どのような企業でも小売電気事業者の登録をすれば参画できるようになりました。

さらに消費者が、電圧の種類である「低圧・高圧・特別高圧」を選べるようになったことで、電力会社同士の競争が激化しています。

電力業界の職種別の仕事内容

電力業界について職種別に仕事内容を紹介します。

営業

営業は電力業界でも欠かせない職種です。代理店を経由して一般家庭やオフィスを訪問し、自社の電力メニューやプランを売り込みます。

顧客に対してどのようなメリットや魅力があるのかを上手に伝えなければならず、コミュニケーション能力が必要とされる職種です。

契約手続きの流れや電気料金について細かく聞かれることも多いので、柔軟な対応も求められます。

営業に興味がある方は、「営業職とは何か説明!種類や仕事内容、向いている人の特徴や年収」も読んでみてください。

燃料調達

燃料調達とは、安定して電力を供給するために国外から燃料を輸入する職種です。世界の企業と交渉し、国内にある発電所の仕様に合う燃料を購入します。

また輸入に際して、輸送する船を手配するのも燃料調達の仕事です。通関手続きもしなければならないので、関税や法律の知識も求められます。

燃料調達では国際的な目線はもちろん、情報分析力や高い交渉力が必要です。

設備の保守管理

保守管理は、発電所や配電設備が安全に稼働しているかどうかを点検します。一般家庭やオフィスだけでなく、工場やショッピングセンターなどあらゆる建物が対象です。

具体的な仕事には、設備の修理や部品の交換、災害時における復旧活動などがあります。一カ所でも点検に不備があれば、最悪の場合は建物の稼働を止める必要もあり、社会的責任の大きい業務と言えるでしょう。

電力業界の年収や給料

電力業界の年収

電力業界の平均年収と、全業界の平均年収を比較してみましょう。

業界

平均年収

電力業界

760万円(※1)

全業界

433.1万円(※2)

※1 出典:業界動向サーチ「賃金構造基本統計調査の職種別賃金額」に掲載される企業から平均値を算出
※2 出典:国税庁「民間給与実態統計調査

電力業界は、成果主義よりも年功序列による体制が強いと言われています。そのため、年齢や勤続年数に応じて徐々に年収が上がる傾向にあります。

なお東洋経済ONLINE「就活生注目!3年後離職率が低いトップ200社」によると、電力・ガスなどのエネルギー部門の離職率は4.1%となっており、長く働き続ける人が多いのも特徴です。

定着率が高く年功序列であるため、比例して平均年収も高くなっていると推測されます。

電力業界の現状の課題

電力業界の現状の課題について解説します。

電力小売全面自由化による価格競争

電力小売全面自由化が進み、消費者は電気の購入先をさまざまな事業者から自由に選べるようになりました。電力小売全面自由化の目的は、新規事業者を集め、競争により電気料金を安くすることです。

従来の電力業界は、発電から小売事業まで一つの電力会社が独占する垂直統合型ビジネスが一般的でした。しかし一般家庭やオフィス、飲食店等が電力会社を自由に選べるようになったことで、価格競争が激化すると予測されています。

価格競争により「良い顧客関係を築く」「多様なメニュー・プランを提供する」といったサービス向上が電力業界の今後の課題です。

原子力発電問題

電力業界として見過ごせない問題が、原子力発電です。福島原子力発電所の事故によって稼働停止していた原子力発電所を、今後どうするかという問題を抱えています。

現在は原子力発電から火力発電に切り替わっていますが、環境破壊や電気料金の高騰が問題視されている状況です。原子力発電を再稼働させるのかどうかを考え、難しいならばそれに代わる高い安全性を持つエネルギーの安定供給をしなければなりません。

これらの問題を解決することが、電力業界の大きな課題の一つです。

電力業界の今後の動向・将来性

電力業界の今後の動向について見ていきます。

発送電分離が進む

発送電分離とは、電力の発電と送電におけるネットワークを分けて、新事業者を加えた電力事業者の事業を平等にする動きのことです。電力小売自由化と同じような流れで企業間で価格競争が生まれ、消費者は安い料金で電気を利用できるようになります。

電力小売自由化との相乗効果で、今後は電気業界へと参入する企業がますます増えていくでしょう。

脱炭素社会に向けた動きが顕著になる

電力業界でも、脱炭素社会に向けた動きが顕著になってきました。脱炭素社会とは、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出ゼロ(カーボンニュートラル社会)を目指そうという社会の形です。

現在主力となっている火力発電は、二酸化炭素の排出量の多さが問題視されています。そのため今後は、再生可能エネルギーを活用した発電へと切り替える取り組みが各企業で求められるでしょう。

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