営業職とは?
営業職とは、顧客に対して商品を販売する仕事です。 企業が商品を売るためには、顧客と接触し商品を売り込まなければなりません。そこで営業職が社外へ出て、見込み顧客へ商品をセールスします。また販売活動だけでなく、顧客からの問い合わせ対応も行います。 営業職はあらゆる業界に存在する職種であり、採用の現場でも高いニーズがあります。業務内容も幅広く、文系・理系に関係なく活躍できる職種です。
営業職の種類
ここでは、営業職の仕事内容や特徴をさまざまなカテゴリーに区分して紹介します。
営業先
営業職の営業先は、顧客が個人か法人かによって2つに分類できます。同じ営業職であっても、それぞれの営業スタイルは大きく異なります。
個人営業
個人営業の販売先は、一般消費者です。そのため、不特定多数の中から見込み顧客を定め、セールスを展開する必要があります。 個人営業を主とする業態として、以下の例が挙げられます。 家電量販店 個人向け生命保険 自動車ディーラー など 個人営業の難しい点は、顧客ニーズの複雑さにあります。顧客ごとに予算やニーズが大きく異なるため、顧客に合わせて適切な提案を行わなければなりません。加えて、企業の取り扱う商品やサービスの種類も多く、これらを把握する努力が求められます。
法人営業
法人営業では、企業を相手にセールスを行います。 商品やサービスが消費者に届くまでには、原料の調達や加工など多くのプロセスが必要です。これらの工程では、企業同士の商取引が数多く介在します。この企業間のビジネスを扱う営業スタイルが、法人営業です。 具体例として、以下の業態では法人営業が行われます。 鉄鋼メーカー 半導体メーカー 商社 ゼネコン など 個人営業と比較して、法人営業はセールスの流れも特殊です。なぜならコンペや入札で受注が決まる場合もあり、購入者の意思決定プロセスが複雑だからです。相手企業の決済者から承認を得る必要があるため、契約締結までに長い時間を要します。 加えて取引における契約金額も巨額であり、その額は個人営業とは比較になりません。そのため、1件の受注を得るまでには多大な努力を必要とします。そのぶん成約した時の達成感は大きいでしょう。
販売形態
営業職の仕事は、販売形態によっても大きく異なります。就職活動の際には、志望企業がどの販売形態で営業をしているのか確認しましょう。
メーカー(直接販売)
メーカーにおける営業職の特徴は、自社製品のみを扱う点です。十分な商品知識をつけた上で、顧客に対し自社製品のメリットをアピールする必要があります。 また、メーカーの営業職においては、理系出身者も多く在籍しています。なぜなら、メーカーには技術営業職という専門性の高い役割があるからです。 技術営業職は製品に関する高度な知識を持ち、客先の技術者との商談に参加します。法人営業の商談では専門的な知見が求められる場面も多いため、技術営業職の存在は欠かせません。 また、メーカーの営業職における特色は、自社の生産・開発部門と連携できる点です。営業職が得たマーケットの情報をもとに、生産数量や新製品の開発計画が決定されるからです。そのためメーカーの営業職は、自社のさまざまな部門との協力が求められます。
代理店(間接販売)
代理店における営業職は、契約先企業のサービスや製品の営業を代行します。 メーカーの営業職社員は数が限られているため、 全国の消費者に対してサービスを提供できません。そこで、地域に密着して顧客対応にあたる存在が、代理店の営業職です。 代理店の営業職は、地域の特色や風土、顧客の事情に精通しています。そのため、より顧客に寄り添った提案が可能です。また、メーカーとは異なり複数企業の商品を取り扱えるため、顧客に対し幅広い提案ができます。
商社
商社には、2つの異なる企業を仲介し、その間を取り持つ機能があります。そこで、企業同士の橋渡しの役割を担う存在が、商社の営業職です。 商社は、さまざまな取引先と契約を結ばなければなりません。ときには、商談相手が異国の地にいて、日本と商慣習が違う場合もあります。このようなケースにおいて、商社の営業職には企業間の利害関係を調整する力が求められます。 商社の営業職には、商品の売り込み以外にもさまざまな問題に対する折衝が必要です。商慣習や取引方法の違いを克服し、企業同士のビジネスを生み出せる点が醍醐味です。
販売ルート
販売ルートの違いによって、営業のスタイルも異なります。志望する企業がどのような手法でセールスをしているのか、あらかじめ確認しましょう。
新規営業
新規営業とは、これまで自社の商品やサービスを利用した経験がない顧客に向けて、セールスを行う手法です。市場の中で見込み顧客を探し出し、商品の提案を行います。
ルート営業
ルート営業とは、すでに取引をしている顧客の元を定期的に訪問し、顧客サービスを行う手法です。定期購入やサービスの運用保守を中心とした分野で行われます。この他にも、購入層が限られる原料や部品は、ルート営業を中心として展開されます。 例えば、以下のジャンルではルート営業が一般的です。 ビルメンテナンス 自動車部品メーカー など ルート営業では定期的な頻度で顧客の元を訪問し、サービスに対する満足度や顧客の状況を確認します。顧客が商品やサービスを利用するなかで新たな要望が生まれれば、それに対応できる提案を行います。
販売する商材
扱う商材の違いによって、営業のスタイルも異なります。商材には、有形商材と無形商材の2つの区分が存在します。
有形商材
有形商材とは、実態として目に見える商品です。日用品から大型の工作機械まで、身の回りにあるあらゆる商材が該当します。大型の有形商材を扱う場合では、輸送手段や取り付け工事の手配も営業職の仕事です。 加えて有形商材の販売では、在庫管理も重要です。適正な在庫量を維持できなければ、欠品や消費期限切れによる損失が発生するからです。そのような損失を発生させぬように、営業職は製品の需給バランスに常に気を配らなければなりません。
無形商材
無形商材とは、実態として目に見えない商品です。 例えば、以下のような商品が該当します。 保険 コンサルティング ソフトウェア 各種サービス など 無形商材では、顧客に商品の価値を伝える際に五感に訴えるセールスができません。そのため無形商材のセールスにあたっては、顧客との信頼関係の構築や密なコミュニケーションが重要です。
営業手法
企業や扱う商材によって、営業手法はさまざまです。志望する業界では、どのようなセールスが展開されるのか確認しましょう。
飛び込み営業
飛び込み営業は、見込み顧客へ事前の連絡無しに接触する手法です。成約する確率は低いため、試行回数を増やして契約につなげます。
訪問営業
訪問営業は面談時間を設定し、時間をかけてセールスする手法です。商談を通じて信頼関係を構築し、相手のニーズを聞き出します。限られた時間の中で商談を進め、成約に導く交渉力が求められます。
インサイドセールス
インサイドセールスとは、顧客と対面せずにメールや手紙などでセールスを行う手法です。電話営業(テレアポ)も、インサイドセールスに含まれます。キャンペーンや割引販売など、顧客の関心を引く情報によって購買を促します。
インバウンド営業
インバウンド営業とは商品に関する情報を発信し、見込み顧客からの問い合わせに対応する営業スタイルです。見込み顧客はすでに自社商品に関心を持っているため、高い成約率を期待できます。
営業職の仕事内容|仕事の流れやプロセスごとに紹介
営業職は、見込み顧客の選定から契約締結、アフターフォローまでを一貫して担当します。ここでは一連の流れに沿って、営業職の業務内容を紹介します。
①市場調査
営業職が最初に行う仕事は、市場調査です。 市場のトレンドや消費者ニーズに関する情報収集を行い、マーケットで売れる見込みのある商品のコンセプトを予想します。この商品コンセプトについて開発や生産部門と協議し、自社で展開できる商品やサービスを考えます。
②販売戦略の立案
次に、市場調査で得られた情報を元に販売戦略を立てます。販売戦略の立案にあたっては、自社の強みや市場の動向、競合の動きに関する分析が必要です。 この分析から、以下の方針を決定します。 販売する製品 販売する地域 ターゲット顧客 販売価格 これらの販売戦略に沿って、商品やサービスを販売していきます。
③顧客訪問
見込み顧客や既存取引先への訪問も、営業職の仕事です。面談によって得た情報をもとに商品を提案し、成約に向けた交渉をします。
④契約締結
契約が成立した場合には、契約締結をします。 取引にあたっては、事前にさまざまな契約が必要です。営業担当が窓口となり、自社と顧客との契約締結を進めていきます。
⑤販売動向の予測
営業職は、販売動向の予測も行います。 顧客の需要量に応えるためには、将来の販売数量を予測しなければなりません。顧客訪問やマーケット調査によって得られた情報を元に販売計画を作成し、製造部門に対して生産や仕入れの指示をします。
⑤利益管理
利益管理も、営業職の重要な業務です。 原料コストの変動や競合との価格競争があるため、計画した利益率から乖離する場合もあります。商品の販売後には、実績として得られた利益について検証した上で次月以降の販売戦略を見直します。
⑥顧客からの問い合わせ対応
営業職は、顧客からの問い合わせにも対応しなければなりません。 商売をする上で、顧客からはさまざまな質問や連絡が寄せられます。これらの窓口として回答や提案を行います。
⑦与信管理・債権回収
顧客の与信管理や債権回収も、営業担当者の仕事です。 商品を販売するにあたっては、掛売り(後払い)を選択するケースもあります。掛売りの場合には、現金を受け取って取引が完了となります。債権の確実な回収も、営業担当者の重要な任務です。
⑧クレーム対応
クレームを受けた場合にも、営業職が対応にあたります。 クレーム内容の聴取や顧客への謝罪、社内への展開など迅速な初期対応が重要です。顧客側に大きな損害が発生した場合には、損害賠償に関する交渉に臨むケースもあります。
営業職の魅力・やりがい
営業職は社内と顧客の板挟みになる局面が多く、ハードな仕事です。その一方で、営業職にしか得られないやりがいや魅力があります。
お客様から直接感謝される
営業職の魅力は、顧客から直接感謝される点です。 誠実な仕事をすれば、その姿が顧客にも伝わり「あなたが担当者で良かった」と感謝の言葉をかけられる場面もあります。顧客から直接評価されるため、仕事にやりがいを感じられるでしょう。
社外の人脈が形成される
社外の人脈が形成されやすい点も、営業職の魅力です。 社内だけの交流に留まると、企業文化に染まってしまいがちになります。しかし、営業職ならば、社外の常識や価値観にも触れられるため広い視野を養えます。
世間の動向を直に感じ取れる
顧客やマーケットの動向を直接感じられる点も、営業職ならではのメリットです。 社内にいると、自社商品に対する世間の評価を感じ取りにくくなります。しかし営業職であれば、マーケットで顧客の生の声に触れるため、トレンドや自社に対する評価を直に感じられます。
コミュニケーション力が鍛えられる
営業職に従事していると、自然とコミュニケーション力が鍛えられます。 話す力だけでなく相手の話を聞く力も身に付くため、相手に寄り添った提案ができるようになります。
給料に歩合制が採用される場合がある
歩合制の場合は、営業成績が給料に反映されます。 歩合制とは、個人の業績を給料に反映するシステムです。不動産や証券の営業職では、高い 還元率が設定される場合もあります。そのような職種では、優秀な成績を残すと給料が大きく上昇します。
営業職の大変なところ
営業職は、仕事の成果を数値化しやすい職種です。成果が出た際には評価を受けやすい一方で、多くのストレスがつきまとうこともあります。
就業時間外の対応も多い
就業時間外の顧客対応は、営業職の大変な点の一つです。 営業職は社外とのやり取りが多いため、自社の就業時間外に問い合わせが入る場合もあります。急を要する案件もあり、就労時間外でも対応しなければならないケースも多々あります。
常に売上ノルマ達成に追われる
多くの営業職では、売上目標が設定されています。そのため、営業職はこのノルマ達成のために努力しなければなりません。 加えて、月例会議で売上の報告を求められる場合もあります。たとえ今月のノルマを達成したとしても、翌月にはまた次のノルマ達成に向けて尽力しなければならず、大きなプレッシャーがかかります。
対人関係のストレスがつきまとう
営業職では多くの人と関わるため、対人ストレスも大きくなります。 顧客との商談においては厳しい交渉を強いられる場面もあるため、ストレスとの向き合い方が重要です。
営業職に向いている人や必要なスキル
営業職は、多方面の人々と関わります。立場や主張が異なる人々とも協力する必要があり、多くのスキルが求められます。
人が好きな人
営業職の醍醐味は、人との関わりです。 そのため、人との交流や人脈づくりが好きな人は営業職に向いています。仕事で築いた広い交友関係は、さまざまな局面で役に立ちます。
調整力がある人
営業職では、調整力が求められます。顧客と社内の架け橋となることはもちろん、社内でもさまざまな部門を調整しなければならないからです。 立場の異なる人の主張に耳を傾けて解決策を導き出す業務であり、調整力がある人は重宝されます。
相手のニーズを聞き出せる人
営業職には顧客が抱える真のニーズを聞き出し、適切な商品を提案する力が求められます。顧客に最適な提案をするには、顧客に寄り添い傾聴する能力が欠かせません。 一般的に営業職は、高いトーク力が必要だと考えられています。しかし実際には、顧客のニーズを探る力の方が、トーク力よりも大事です。 そのため、必ずしも明るい性格でトークが上手である必要はありません。落ち着いていて淡々と話すタイプの営業担当者であっても、傾聴力に長けた人は良い成績を残しています。
営業職に向いていない人
顧客にとって、営業職は会社を代表する存在です。会社の名に恥じぬよう丁寧な対応が求められます。そのため、以下に該当する人には、営業職が向いていない可能性があります。
見た目や言葉遣いに気を使えない人
営業職である以上、見た目の清潔感や言葉遣いが求められます。そのため、これらに無頓着な人は営業職に向きません。 営業職は会社の窓口として機能するため、失礼のない振る舞いや身なりをしなければなりません。
ストレスが表情や態度に出やすい人
ストレスが表情や態度に出やすい人も、営業職に適しません。 営業職は、顧客や社内から意見や要望が集中する職種であり、ストレスが溜まりやすいです。しかし、顧客とのやり取りにおいて、感情的になってはいけません。どのような状況でも、落ち着いて対処できる冷静さが必要です。
営業職の年収や給料事情
営業職の年収や賃金は、以下の通りです。
勤務形態 | 年収・時給 |
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正社員 | 年収389万円 |
アルバイト・パート | 時給961円 |
派遣社員 | 時給1,258円 |
出典:求人ボックス給料ナビ「営業の仕事の年収・時給・給料」
基本的に営業職における年収は、所属企業の給与体系に依存します。また、成果によっても大きく年収が変動する職種であると言えます。 営業職で高い収入を求める場合には、高コミッション率の歩合制が導入されている金融や不動産業界がおすすめです。 ただし、高い歩合制の代償として、重いノルマも覚悟しなければなりません。ノルマの未達が続くと、当初期待していた高給水準に達しない可能性もあります。 年収や給与だけにとらわれず、自身の希望する働き方ができる企業を選びましょう。