法務

法務とは何か簡単に解説!仕事内容や年収・給料などを解説

法務とは?簡単にいえば企業を法律面から支える専門家

法務とは、組織運営を法律面から支える職種を指します。

多くの人々が関わる組織運営では、日々膨大な契約が交わされて権利や義務が発生しています。権利や義務とは、お互いに守られなければならない約束事です。相手の権利を尊重し自分の義務を着実に遂行しなければ、損害賠償を請求されてしまうこともあります。

このようなリスクを未然に防ぎ、組織の損失を最小限に食い止めるために活動しているのが法務です。

法務の仕事内容

組織運営を法律面から支える法務の仕事内容は、活動目的によって次の3種類に分けられます。

  • 法律トラブルを未然に防ぐ予防法務
  • 起こったトラブル被害を最小限に抑える臨床法務
  • 法律知識からビジネスチャンスを切り開く戦略法務

法律トラブルを未然に防ぐ予防法務

取引先や顧客・従業員との法律トラブルを未然に防ぐために行われるのが、予防法務と呼ばれる業務です。近年は企業による不祥事が増えていることから、予防法務の重要性が叫ばれています。

予防法務が担う主な役割として、以下の5つが挙げられます。

  • 契約書類の審査・調整
  • 社内規定の作成・管理
  • コンプライアンス体制の整備
  • 機関業務の運営サポート
  • 監督官庁への問い合わせ

契約書類の審査・調整

契約書類が交わされるとき、お互いに権利と義務が発生します。このとき、契約書に記載された権利や義務が法律上妥当かどうか、自社にとって不利な内容が含まれていないかを専門家として審査するのが法務の役割です。記載内容に問題がある場合は、文言を調整する場合もあります。

契約書類を審査・調整するには、深い法律知識に加え、業界知識にも精通している必要があります。

社内規定の作成・管理

社内規定の作成・管理を作成することも、法律上のトラブルを防ぐためには欠かせない仕事です。

例えば、就業規則や賃金規則を作成すれば、労働条件が明確になり、残業代や解雇など労使間のトラブルリスクを減らせます。

ただし、社内規定を作成するだけではトラブル防止に十分とは言えません。従業員への周知を徹底し、状況に合わせて改定を行っていくことも必要です。

コンプライアンス体制の整備

コンプライアンス体制を整備することも、法律上のトラブルを防ぐのに有効です。過去に起きたコンプライアンス違反の事例では、顧客データの持ち出しや情報漏洩、パワーハラスメント、サービス残業などが挙げられます。

このような問題を回避するためには、企業全体でコンプライアンスに取り組む体制作りが必要です。具体的には、社内でのコンプライアンス研修の実施やチェック体制の見直し、社外監査役の配置、外部機関による監査の実施、内部通報制度の新設などが挙げられます。

株主総会の運営サポート

株主総会の運営サポートも、法律上のトラブルを避けるために大切な仕事です。

株主総会とは企業に出資してくれた株主に対し、企業の経営状況や今後の方針を説明する場です。株主総会では企業経営に関する質疑応答が行われ、重要方針の採択が行われます。

株主総会で法務に求められているのは、株主総会において株主を説得し、企業経営に対する理解を得ることです。例えば、株主総会での株主の反応を事前に読み、想定問答集を作成することが挙げられます。想定問答集を作るには、会社法に精通していることに加え、企業への世間の関心など外部目線で企業を見ることも大切です。

監督官庁への問い合わせ

督官庁への問い合わせも、所属組織の法令違反を避けるために必要な仕事です。業務内容に法令違反が疑われる場合は、監督官庁に問い合わせを行い、その業務を継続するかどうか判断します。

最近では、某大手飲食チェーン店による「おとり広告」に対し、消費者庁が措置命令を出した事例があります。実際には存在しない目玉商品を大々的に宣伝することで、既存商品の販売拡大につなげる戦略がとられていました。

おとり広告は短期的には売上高拡大をもたらしますが、長期的には消費者庁の処分によって企業の信頼そのものを失墜させます。このようなリスクを避けるため、法務は自社の業務の法的問題点について監督官庁に問い合わせをする必要があります。

法令改正に関する調査と周知徹底

法令改正に関する調査と周知徹底も、法律トラブルを避けるために求められる仕事の一つです。

法令は社会の変化に合わせて随時改正されるため、組織運営も法令改正に合わせて変えていかなければなりません。法令改定によって、これまでは適法だった業務が今後は違法になる可能性すらあります。

このようなリスクを避けるには、法務部が率先して法律改正に関する情報を収集し、改正がもたらす影響を社内に周知する必要があります。

起こったトラブル被害を最小限に抑える臨床法務

いかに入念に予防法務を実践した場合でも、100%完全に法律トラブルを防ぐことはできません。いざトラブルが発生したときに必要になるのが、トラブル被害を最小限に抑えることを目的にする臨床法務の業務です。

臨床法務の代表的な業務には、以下のものがあります。

  • 企業間で発生した契約トラブルへの対応
  • 従業員との間で発生した労務トラブルへの対応
  • 知的財産権の侵害に対するトラブル対応
  • 監督省庁からの指導・処分に対する対応

企業間で発生した契約トラブルへの対応

日々多くの取引が行われている企業では、「代金が支払われない」「商品に対するクレームを受けた」「取引相手が反社会的勢力だった」などのトラブルが起きる場合があります。

このような場面に遭遇したときに法務に求められるのは、状況を正確に把握し、速やかに対処することです。具体的には、交渉を通じて着地点を探ったり、訴訟手続きを通じて法廷で争ったりする必要も出てきます。

法務だけでは手に負えない場合は、外部の弁護士と協力して事態の解決に努めます。

従業員との間で発生した労務トラブルへの対応

複数の人を雇用して組織を運営する企業では、従業員との間に労務トラブルが発生することがあります。具体的には、「不当解雇で訴えられた」「無断欠勤している従業員がいる」「パート社員に有給休暇取得を主張された」などの事例です。

上記の事例は、就業規則の策定など予防法務を徹底することである程度防げるものの、完全にトラブルを防ぐのは困難です。裁判を通じた損害賠償請求に発展する場合もあるため、相手の主張と法的バランスを見比べて法務が慎重に対応する必要があります。

知的財産権の侵害に対するトラブル対応

企業活動をしていると、知らず知らずのうちに相手の知的財産権を侵害し、損害賠償請求を受けるリスクがあります。逆に相手から知的財産権を侵害され、本来自社が獲得すべきだった売上が大幅に減少することもあります。

このような知的財産権の侵害に対応するのも、臨床法務における任務の一つです。

知的財産権とは、特許権や商標権、著作権に代表される権利のことで、生み出した創作物に対して一定期間の保護を与えるものです。知的財産権が法律上の権利として認められると、相手はその創作物を商品・サービスとして模倣できなくなり、模倣した場合は損害賠償請求の対象となります。

知的財産権を侵害した場合、または侵害された場合には、法務は速やかに示談交渉を行い、必要な場合は訴訟に踏み切る対応を行います。

監督省庁からの指導・処分に対する対応

監督省庁からの指導・処分に対する対応も、法務の仕事の一つです。

企業が所属する業種の中には、「業法」と呼ばれる法律によって企業活動に一定の制限がかけられているものがあります。具体的には、銀行法や食品衛生法、保険業法などがあり、公共の福祉を実現するため監督省庁が違法な活動を取り締まっています。

そのため、自社の活動が各種業法に違反している場合、監督官庁から行政指導を受けたり、行政処分を受けたりすることもありえるでしょう。

行政指導は監督官庁による助言やアドバイスであり、強制力はありません。一方、行政処分には強い権限があり、業務停止命令や許可取り消し処分などの要求ができます。

自社が行政指導や行政処分を受けた場合には、法務が監督官庁と速やかにコミュニケーションを取り、指摘部分を是正するなどの対処が求められます。

法律知識からビジネスチャンスを切り開く戦略法務

高度な法律知識を駆使し、新たなビジネスチャンスを切り開くために行われるのが戦略法務の仕事です。

本来、法務の活動は間接部門と呼ばれ、仕事が直接売上や利益を生み出すことはありません。しかし、新規事業や海外進出、企業間の吸収・合併など新たな分野に踏み込むことで、売上や利益を拡大させるチャンスを増やせます。

戦略法務に求められる任務は、以下の通りです。

  • 新規事業における法律サポート
  • 海外進出における法律サポート
  • 企業間提携に関する法律サポート
  • 企業間吸収・合併における法律サポート

新規事業における法律サポート

企業で新規事業を立ち上げるとき、法律面においてさまざまな手続きが必要となります。この手続きをサポートするのが、戦略法務に求められる任務です。

具体的には、「監督官庁からの許認可取得手続き」「新規事業における契約書の審査・調整」「ビジネスモデルの適法性確認」などが挙げられます。新規事業立ち上げ時にしっかり法務が関わることで、後々に起こりうる重大な法律トラブルのリスクを下げられます。

海外進出における法律サポート

企業が海外進出を目指すとき、法律面において高度な知識が要求されます。この法律手続きをサポートするのが、戦略法務における任務です。

具体的には、「現地における法令調査」「英文による契約書の審査・修正」「現地における支店の立ち上げ応援」などが挙げられます。海外進出では、英語での法律用語の理解に加え、相手国のビジネス慣習や文化も踏まえて交渉する必要があります。

企業間提携に関する法律サポート

企業と企業が業務提携する際には、意思決定に関するプロセスや守らなければいけないルールなどを明文化する必要があります。その手続きを担うのが、戦略法務における任務です。

また、技術情報なども共有するため、情報が漏洩することがないよう、機密保持契約を結ぶことも大切です。提携では自社が不都合なルールを押し付けられないよう、書類の一言一句まで法務が目を光らせ、お互いに納得できる文面にする必要があります。

企業間吸収・合併に関する法律サポート

新たな分野への進出や資金の獲得を目的に、企業間で吸収・合併が行われることがあります。吸収・合併は企業の生き残りをかけた経営判断であり、取引で動く金額も巨額です。それだけに失敗が許されず、法律の専門家としての法務の支援が欠かせません。

特に重要なのは、吸収または合併の対象となる企業の査定です。この作業は「デューデリジェンス」と呼ばれ、極めて専門的な知識が要求されます。また吸収・合併後に起きたリスク対応も、事前に決めておくべき内容です。契約書の隅々まで目を配り、自社に不利な項目がないように交渉を進めます。

法改正を求める国への働きかけ

企業を取り巻く環境は、自分から働きかけることで変えられる場合があります。自社が活動しやすい環境を目指して行うのが、法改正を求める国への働きかけです。

この働きかけは「ロビイング」とも呼ばれ、アプローチ先は法律を作る国会や法律を監督する行政機関です。具体的には、法務が経営者の意見を整理して業界団体として提言を行ったり、公的委員会に参加して意見を表明したりすることが挙げられます。

法務には、法律を守る側面だけでなく、法律を作り変える側面も期待されています。

法務に向いている人

これまで紹介してきた役割や仕事内容から、法務に向いているのは以下のような人です。

  • 向上心が強く常に学び続ける意欲がある人
  • 物事をわかりやすく説明できる人
  • 普段から経営的目線で物事を考えられる人
  • 倫理観を大切にした仕事ができる人

向上心が強く常に学び続ける意欲がある人

法務には、向上心が強く常に学び続ける意欲がある人が向いています。なぜなら、法務とは法律知識を武器に仕事をする職種であり、学ぶべき法律は数えきれないほどたくさんあるからです。

さらに法律は社会情勢に合わせて常に改正されます。そのため、過去の法律を知っているだけでなく、常に最新の法律知識を学び続ける姿勢が求められます。

物事をわかりやすく説明できる人

企業総務には、物事をわかりやすく説明できる人が向いています。その理由は、法務の仕事は自分一人だけで完結することは少なく、難解で抽象的な法律概念をわかりやすく説明し、相手の協力を引き出す必要があるからです。

法律の専門家ではない取引先や経営者、他部署の人々は、法務が感じる法律上のリスクを必ずしも理解してくれるとは限りません。しかし、そんな場面でも相手が納得できるように説明できれば、今後企業に起きうるトラブルを予防できます。

普段から経営的目線で物事を考えられる人

普段から経営的目線で物事を捉えて行動できる人も法務に向いています。その理由は、専門性が高い法務は他部署より経営陣と接する機会が多く、法律に関する経営アドバイスを求められるからです。

また、戦略法務として将来活躍していくなら、法律知識に加えて高度な経営知識も必要です。普段から経営的目線で物事を考えられる人なら、その発想や知識をスムーズに業務に結び付けられるでしょう。

倫理観を大切にした仕事ができる人

倫理観を大切にした仕事ができる人も法務に向いています。なぜなら、法務は法律における最後の砦であり、「違法なことは違法である」とはっきりと主張できる必要があるからです。

万が一、粉飾決算などの不正を意図的に見逃した事実が発覚すれば、企業の信頼は地に落ちてしまうでしょう。相手が上の立場でも萎縮することはなく、堂々と交渉できることが求められます。

法務に向いていない人

逆に、企業総務に向いていないのは、以下の特徴にあてはまる人です。

  • 周囲から嫌われるのを恐れる人
  • 仕事の成果をはっきり目に見える形で期待する人
  • 相手の立場から物事を考えられない人

周囲から嫌われるのを恐れる人

周囲から嫌われるのを恐れる人は、法務に向いていない可能性があります。

法務は役割上、イエスマンでは務まりません。「法律上適法か否か」の判断を行う法務の仕事は、相手の誤りを指摘する機会も多く、場合によっては相手から嫌われることもあるでしょう。

しかし、嫌われるからといって違法性を見逃していると、企業を大きなリスクにさらすことになります。そのため、周囲から嫌われることを恐れず、法務の役目を最後までやり遂げる必要があります。

仕事の成果をはっきり目に見える形で期待する人

仕事の成果をはっきり目に見える形で期待する人も、法務に向いていない可能性があります。

そもそも法令違反による企業リスクは、起きてみなければ被害の大きさを把握できません。そのため、日々リスクを避けるために尽力しているにも関わらず、その努力が過小評価されていると感じる人もいます。

相手の立場から物事を考えられない人

相手の立場から物事を考えられない人も法務には向いていない可能性があります。

法務の仕事では相手の立場から物事を考え、利害関係から起こりうるリスクや結果を先読みする必要があります。自分の立場にこだわって主張を続けていると、交渉が決裂してより事態を悪化させかねません。

利害関係が対立しやすい法務の仕事だからこそ、一歩距離を置き、相手の立場に立って物事を考えることが求められます。

法務の年収や給料事情

法務職の年収

ここからは、法務における年収や給料事情を紹介します。

勤務形態

年収・時給

正社員

年収550万円

アルバイト・パート

時給1,588円

派遣社員

時給1,023円

出典:求人ボックス給料ナビ「法務の仕事の年収・時給・給料

国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、全国における正社員の平均年収は508万円であり、法務の平均年収550万円はそれより42万円高い金額です。

法務の平均年収が高い理由には、法律に関する専門的な知識が必要であること、そして専門性の高さゆえに配置転換が少ないことが考えられます。法務として年収を増やすには、実務経験を積みながら専門スキルを磨き、役職を上げていく必要があります。

法務に関するよくある質問

ここからは、法務に関するよくある質問に回答していきます。

法務の仕事がきついと感じるのはどんなとき?

  • 「周囲の人に法律リスクを理解してもらえない」
  • 「学ばなければいけない法律が多く勉強が大変」
  • 「仕事の頑張りを評価してもらえない」

などの理由で仕事がきついと感じる人がいます。

しかし、これらの大変さがあるのも、企業を重大な法律トラブルから守るためです。自分に課せられた使命に気づければ、仕事に対して一歩違った受け止め方ができるでしょう。

法務に英語はどの程度必要?

日本国内でしか取引がない企業では、英語を使う場面はほぼないと言って良いでしょう。

しかし、海外に支店がある企業や海外進出を目指す企業では、英文契約書の読み書きができるだけの能力が求められます。また、実際に相手と交渉する場面になれば、英語を話す必要もあります。

これらを想定すると、所属する企業によってはかなり高度な英語力が求められる場面があると言えるでしょう。

未経験で法務になるには何をするべき?

法務には高度な法律知識が求められるため、未経験なら法学部卒業生が採用に有利です。

一方、法学部出身ではない人が法務を目指す場合は、「ビジネス・キャリア検定試験」「ビジネス実務法務検定」「ビジネスコンプライアンス検定」などの資格を取得することで、法律に関する素養と熱意をアピールできます。

法務と弁護士は何が違う?

法務と弁護士の最大の違いは、仕事をするうえでの立場です。所属する企業に雇われている法務は企業内部の情報に詳しく、迅速な対応ができます。実際に法務は、社内で発生するありとあらゆる法律業務を日々大量に処理しています。

一方、外部から顧問契約を結ぶ弁護士は、企業から見れば部外者にあたります。そのため、法務と比べると「適法か否か」の判断を第三者目線で冷静に判断できます。さらに高度な専門性を備えているため、法務だけでは対応できない複雑な法律トラブルにも対処できます。

実は就職する業界・会社選びよりも、重要なのは職業選び 自分の強み・特徴を活かした職業に就職をしない人は、早い段階で退職しているケースが多いです。単純にこの業界、この会社が好きとかではなく、自分の強み・特徴を活かした職業選択をするために適職診断をぜひご活用ください。

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