基礎研究

基礎研究とは?仕事内容や年収事情をわかりやすく解説

基礎研究とは?

基礎研究とは、新たな製品を開発するための基礎となる、未知の素材や物質、技術、仕組みなどを研究する職種です。基礎研究そのものがすぐに新たなサービスや製品になることは少ないですが、10年・20年といった長い年月をかけて成果がビジネスにつながっていきます。

基礎研究の内容は、分野によってさまざまです。医療や工業、農業などの数多くの分野で最先端の研究が行われています。

研究職には、基礎研究以外にも下記のような職種があります。それぞれ基礎研究とどのように違うか確認していきましょう。

  • 応用研究
  • 開発研究(臨床研究)

応用研究との違い

応用研究とは、基礎研究によって発見された技術や知識などを、どのように応用して他のことに活用できるかを考える研究です。また、すでに実用化されているものについても、応用研究によって新たな活用方法を考えます。

基礎研究はまったくの未開拓状態から研究するのに対し、応用研究は基礎研究という土台の上で新たなサービスや製品に結びつく研究を行います。時間や予算の制約が基礎研究よりもシビアになりやすく、社会ニーズの把握なども欠かせません。

開発研究(臨床研究)との違い

開発研究(臨床研究)とは、基礎研究や応用研究の結果を利用して新たな製品化を目指す研究です。製品化という目的をもって研究を行うため、基礎研究や応用研究よりもさらに実用性を重視して研究を行います。

新たな製品を生み出すほか、既存の技術やシステムの改良も開発研究の仕事です。基礎研究や応用研究とは違い、直接製品と関わるためもっともユーザーに近い研究職と言えます。

基礎研究の仕事内容

基礎研究の仕事は、主に下記の3つです。それぞれの仕事内容について、詳しく解説します。

  • 研究
  • 論文やレポートの作成と発表
  • 特許の申請

研究

基礎研究の仕事の大部分は、新技術や新素材などの研究です。基礎研究の分野は数多くあり、分野によって研究の方法や手順は異なるでしょう。

基礎研究は、研究職の中でも未知の技術や素材の研究を行う職種ですが、将来的に製品化を目指している場合はある程度の狙いや目標が設定されています。設定された目標を達成できるように日々研究を重ね、新たな技術・素材などを開発します。

論文やレポートの作成と発表

基礎研究を行うなかで、成功や失敗に関わらずさまざまな結果が出てきます。このような研究結果や研究過程を論文やレポートにまとめるのも、基礎研究では重要な仕事です。

研究の結果や過程がまとめられていなければ、どのような研究を行っていたのかや失敗の原因、成功の要因などを振り返ることができません。論文やレポートは、その後の応用研究や別の基礎研究の糧にもなるため、必ず作成する必要があります。

そして研究した成果は、学会で定期的に発表していくことになります。自分で発表したり、他社の研究の取り組み発表を聞くことで、さらなる気づきを得られることがあります。

特許の申請

研究成果について特許の申請を行うのも、基礎研究の仕事です。

研究成果を他の企業に無断で使用されてしまうと、自社の利益は少なくなってしまいます。そのため、特許を申請して研究成果を無断で使用されないようにします。

基礎研究が行われる場所や職場

基礎研究は、さまざまな機関で行われています。そのなかでも、基礎研究が働く主な場所や職場は下記の3つです。それぞれの特徴や仕事内容について、詳しく解説します。

  • メーカーの研究部署
  • 大学の研究室
  • 公的機関

メーカーの研究部署

メーカーの基礎研究の特徴は、自社の利益につながるような研究を行うことです。

基礎研究とはいえ、メーカーに利益がなければ研究を続けることはできません。そのため、社会のニーズに合った製品を開発するための基礎研究を行います。

メーカーでの基礎研究は、他の研究機関に比べて納期やコストなどがシビアになりやすい一方で、年収が高い傾向にあります。加えて、研究成果が製品化につながるため、やりがいも感じやすいです。

大学の研究室

大学の研究室では、ビジネスではなく学術的な視点で、時間や人手を多くかけて一つのテーマに取り組みます。

大学の研究室で基礎研究を行うには、博士課程を修了したのちに「ポストドクター」になるのが一般的です。そしてポストドクターとして成果を出すと、助教授などの役職で大学教員として正式に採用されることもあります。

しかし、メーカーの基礎研究と比べると競争率は高い傾向にあります。結果を出すだけでなく、教授との相性や学会での人脈作りなども重要になるでしょう。

公的機関

公的機関の基礎研究は、主に国や各省庁、都道府県などが運営する研究所で行います。利益や学術的な成果を求めるよりは、国のためになる研究を行うのが特徴です。

また科学捜査研究所のように、警視庁などに設置された研究所で研究を行うこともあります。公的機関であるため、就職するには国家公務員試験や地方公務員試験に合格する必要があります。

基礎研究の魅力ややりがい

基礎研究には、多くの魅力ややりがいがあります。ここでは、下記3つの魅力ややりがいについて解説します。

  • 研究成果がでたときの喜びが大きい
  • 一つの分野を突き詰められる
  • 未知との出会いがある

研究成果が出たときの喜びが大きい

基礎研究の1番の魅力ややりがいは、なんといっても研究成果が出たときでしょう。基礎研究の成果はさまざまな分野で応用でき、世に出たときのインパクトは大きいです。

自分の研究成果が人々の暮らしに与える影響は大きく、魅力ややりがいを感じやすいでしょう。また、長い期間をかけて研究を行うため、達成感も得られます。

一つの分野を突き詰められる

基礎研究を行うには、その分野のプロフェッショナルである必要があります。場合によっては、退職まで一つの分野に携わり続けることもあるでしょう。プロフェッショナルとして一つの分野を突き詰め、他の人にはできない専門的な仕事ができるのは基礎研究の魅力です。

未知との出会いがある

基礎研究を行う中で、研究成果が出ることはもちろんのこと、予想外のデータなどが現れることがあります。予想していなかった未知のデータや結果が、大きな発見につながることもあるでしょう。

基礎研究では、このような未知との出会いがあるため魅力ややりがいがあります。

基礎研究に必要な知識や経験・スキル

基礎研究では、主に下記5つのような知識や経験・スキルが必要です。

  • 研究分野の専門知識
  • 専門的な研究に取り組んだ経験
  • コミュニケーションスキル
  • マネジメントスキル
  • 英語などの語学力

それぞれ詳しく解説していきます。

研究分野の専門知識

基礎研究にはさまざま知識が必要ですが、特に重要なのは研究分野の専門知識です。専門知識がなければ、基礎研究を行うことはできません。

そもそも、未経験で採用されることは基本的になく、新卒の場合は専攻学部や研究室での研究内容が重視される傾向にあります。研究機関によっては分野が細分化されている場合もあり、基礎研究に就くには得意分野を持っておくことも有効でしょう。

専門的な研究に取り組んだ経験

基礎研究では、専門的な研究に取り組んだ経験が欠かせません。専門知識ではなく、研究を進めるための論理的思考や課題解決能力が求められるからです。実際、修士課程や博士課程で専門的な研究に取り組んだことがある人が就活で採用される傾向にあります。

コミュニケーションスキル

基礎研究は、自分だけで淡々と研究を進めるだけではなく、チームで研究を進める必要があります。

また、場合によっては組織内だけではなく外部と連携して研究を進めることもあるでしょう。さまざまな立場の人と共同で研究を行うため、コミュニケーションスキルが必要です。

マネジメントスキル

基礎研究には、マネジメントスキルも欠かせません。大きな研究になるほど時間や費用がかかるため、定期的に成果を出すためには自分の研究をマネジメントする必要があります。

特にメーカーの基礎研究は限られた期間・予算で成果を上げなければならないため、マネジメントスキルが重視されるでしょう。

英語などの語学力

基礎研究を行う中で、海外の論文を読んだり英語で論文を作成したりする機会があります。分野によっては海外の研究者と共同で研究することも考えられるため、語学力が求められるでしょう。

特に自分の専門分野で頻出の用語をどのように英語で表現するかは、最低限理解しておくべきです。

基礎研究のキャリアパス

基礎研究の代表的なキャリアパスには、主に下記3つのようなものがあります。

  • 研究のプロフェッショナル
  • マネジメント職
  • 起業

それぞれ詳しく解説していきます。

研究のプロフェッショナル

研究のプロフェッショナルとして第一線で基礎研究を続けることは、もっともイメージしやすいキャリアパスでしょう。また、メーカーの場合は基礎研究の成果が出たあと、応用研究や開発研究(臨床研究)を任されることもあるかもしれません。

研究のプロフェッショナルになれば、自分が興味を持つ専門分野の知識や技術を高め続けることができます。

マネジメント職

研究者ではなく、研究部門やチーム全体を管理するマネジメント職に就くことも可能です。

研究テーマや計画の立案、予算管理などのマネジメントを行わなければならないため、自ら研究する時間は減ってしまう場合が多いです。

しかし、研究の責任者として企業経営などにも関わる重要なポジションでもあります。円滑に研究できる環境をいかに整えるかなど、さまざまな視点で研究をサポートします。

起業

基礎研究の経験を活かし、起業することもできます。

特に大学の研究室で基礎研究を行っていた場合、そのまま大学にいても研究成果を製品に繋げることは難しいです。そのため、成果をビジネスに繋げるべく起業する人もいます。

また、メーカーで培った知識や技術を活かし、起業して自らの手で新たな研究をスタートさせる選択肢もあります。

実現の難易度は高く、ビジネスセンスやコネクションも必要になりますが、成功すれば研究機関に在籍し続けるよりも大きな成果を挙げられるでしょう。

基礎研究に向いている人

基礎研究に向いている人は、下記のような特徴がある人です。

  • 粘り強い人
  • 探求心がある人
  • 何事にも前向きな人
  • 勉強が好きな人

それぞれ詳しく解説していきます。

粘り強い人

基礎研究は、成果が出るまで時間がかかるものが多いです。研究成果が出たときの達成感は大きいですが、成果が出るまでは我慢の期間が長く続きます。

研究の成果が目に見えずに進捗度がわかりにくいと、成果が出るまであとどれくらいの時間がかかるかもわかりません。

しかし粘り強く研究した先には、大きな成果が待っているのもまた事実です。成果がでるまで粘り強く研究を続けられる人に向いているでしょう。

探求心がある人

基礎研究は、まだ発見されていないことを探求する仕事です。そのため、探求心がある人に向いています。

探究心は研究の原動力となります。研究の結果が期待通りではなくても、探究心さえあれば研究のモチベーションを高く保てるでしょう。

何事にも前向きな人

基礎研究は、長い期間が必要なうえに失敗を繰り返すことも多いです。その失敗にめげず、前向きに研究できる人に向いています。

失敗したときにただ落ち込むのではなく、なぜ失敗したのかや失敗を繰り返さないためにどうすべきかを考えられると、研究が楽しくなり成果にもつながります。

勉強が好きな人

基礎研究は、日々勉強を続ける必要があります。研究の可能性を広げるには特定の分野だけでなく、さまざまな分野の知識が必要です。

そのため、基礎研究を行う人は継続的に勉強ができ、常に最新の情報を学び続けられる人でなければなりません。

基礎研究に向いていない人

基礎研究に向いていないのは、下記のような特徴がある人です。

  • 飽き性な人
  • 閉鎖的な環境が苦手な人
  • さまざまなキャリアパスを検討している人

それぞれ詳しく解説していきます。

飽き性な人

基礎研究が始まると、基本的には単一のテーマに数年、長い場合は10年・20年以上携わることになります。最初は興味がある分野であっても、長い年月の中で興味を失ってしまう人もいるでしょう。

飽き性な人だと、途中から研究が苦痛になってしまう可能性があります。飽き性の自覚がある人には、基礎研究の仕事は向いていないかもしれません。

閉鎖的な環境が苦手な人

基礎研究はチームで行うものの、その環境は閉鎖的になりがちです。チームメンバー全員がそれぞれその分野のスペシャリストであり、研究に欠かせない存在であることから、メンバーが固定となりやすいからです。

企業の一般的な部署のように頻繁にメンバーが入れ替わることはあまりないでしょう。そのため、閉鎖的な環境が苦手な人には向かない環境である可能性が高いです。

さまざまなキャリアパスを検討している

基礎研究の知識は、専門分野では大きく役立つ一方で、他の職種への転職には活かしづらい傾向にあります。

その分野の専門家や同業他社への転職などを考えている人にとっては大きな武器になりますが、そのほかのキャリアパスを検討している人は、それまでの成果をアピールしづらいかもしれません。

就職する時点でキャリアプランをある程度決めておかないと、将来的に後悔する可能性もあるでしょう。

基礎研究の年収や給料事情

基礎研究職の年収

基礎研究の年収や給料事情について確認していきましょう。

基礎研究の収入

金額

年収(ボーナス含む)

平均543.2万円

ボーナス(年間)

平均157.7万円

出典:doda「基礎研究とはどんな職種?仕事内容/給料/転職事情を解説

国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、全国における正社員の平均年収は496万円であり、基礎研究の平均年収は全国の平均年収よりも50万円ほど高いです。

ただし一口に基礎研究と言っても、所属する機関はメーカーや大学の研究室などさまざまです。また、勤務年数や役職などでも給与は変わってきます。上記の平均年収は参考程度に留めておきましょう。

実は就職する業界・会社選びよりも、重要なのは職業選び 自分の強み・特徴を活かした職業に就職をしない人は、早い段階で退職しているケースが多いです。単純にこの業界、この会社が好きとかではなく、自分の強み・特徴を活かした職業選択をするために適職診断をぜひご活用ください。

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