技術開発とは?
技術開発とは、新たに発見された知識や技術を活用し、実生活に役立つ商品・製品を世に生み出す職種です。わかりやすく例えるなら、「この技術を活用すればこんな商品が作れるのではないか」という可能性を探し出す仕事と言えます。
数学や物理学、工学、生物学などの学問知識は、存在するだけでは新たな価値を生み出せません。これらの知識を総動員し、社会のニーズに照らし合わせてカスタマイズすることで、暮らしに役立つ便利な商品や製品は作られています。
技術開発と研究開発の違い
研究開発は、技術開発と混同されやすい言葉の一つです。
研究開発とは、「新たな可能性を求めて商品化や製品化の土台となる技術」を研究する仕事です。そのため、研究開発の時点では、必ずしもその技術がどの商品・製品に使われるのか決まっていません。
一方、技術開発は「既存の技術を世の中のニーズにどう当てはめていくか」を考える仕事です。商品化・製品化のゴールが明確に決まっていることが多く、研究開発と比べると、予算や納期が厳しく求められる傾向があります。技術開発は研究開発より実利的な側面が大きな職種と言えます。
技術開発と商品開発の違い
商品開発も、技術開発と混同されやすい言葉の一つです。
商品開発は、商品企画が考えたコンセプトを元に、商品を完成させる仕事です。市場分析やアンケート調査をもとに消費者のニーズを分析し、ライバル他社と比較して差別化できる商品を作りあげます。
どんな商品にするか固まったら、経営陣や関係部署にプレゼンテーションを行い、商品化の承認を得るのが一般的な商品開発のプロセスです。
技術開発と商品開発、どちらも既存の技術を活用して商品を作り上げる仕事ですが、より技術的側面が強いのが技術開発です。
商品開発に興味がある方は、「商品開発とは?仕事内容や年収・給料、取得すべき資格などを紹介」も読んでみてください。
技術開発の仕事内容
研究開発と生産ラインの間に位置する技術開発の仕事内容は、その役割によって以下の3つに分けられます。
- 無駄を省いた生産プロセスの開発
- 商品を包み込むパッケージの開発
- ものづくりに欠かせない生産設備の開発
無駄を省いた生産プロセスの開発
ものづくりを行うメーカーにおいて、安定して売上高を確保するために行われるのが、効率的に商品・製品を作り出す生産プロセスの開発です。
生産プロセスの開発において必要となるのは、以下の仕事です。
- 生産ラインの設計
- 品質向上への取り組み
- 不具合によるフィードバック
生産ラインの設計
生産プロセスを開発するにあたって、もっとも大切なのが生産ラインの設計です。
商品には納期があり、納期に間に合うように商品を生産しなければなりません。また、必要以上に製造コストがかかり過ぎると、企業で利益を確保するのが難しくなります。そのため、安定して商品を供給するには、スピードと生産コストの両方を満たす生産ラインの設計が大切です。
さらに、生産ラインの設計においては、生産ラインの現状把握も欠かせません。現状の課題の中に、コスト増加や作業を停滞させる要因が隠れている場合があるからです。
現状の課題を十分に洗い出したら、仮説や検証を行って改善策を練り上げます。人員や職場環境の見直しも、見落としてはならない大切な要素です。このように試行錯誤を繰り返しながら理想的な生産ラインは作られています。
品質向上への取り組み
品質向上への取り組みも、生産プロセス開発における仕事の一つです。
品質向上への取り組みでは、既存商品の品質を高めるべく、使用する原料や素材を再検討して最適な組み合わせを考案します。既存商品における品質向上においても、生産スピードとコストが大切なのは変わりません。
生産スピードとコストのバランスを保ちつつ、既存商品を超える品質の商品を作り上げることが求められます。
不具合によるフィードバック
不具合によるフィードバックも、生産プロセス開発における大切な仕事の一つです。
生産ラインで起きた不具合は、今後も起こりうるリスク要因の一つです。そのため、不具合を放置することなく、原因を究明して再発防止に努めなくてはなりません。
不具合によって発見した課題は、改善策として生産ラインに落とし込みます。こうして検証を重ねながら、安全で安定した生産ラインは作られていきます。
商品を包み込むパッケージの開発
ものづくりを行うメーカーでは、商品だけでなく、商品を包むパッケージも売り上げを左右する要素の一つです。そのため、メーカーの中には、パッケージ開発を他社に依頼せず、自社でまかなう企業も多くあります。
パッケージ開発で行われるのは、新たな加工技術の開発や商品を包むフィルムの性能向上です。パッケージ開発を推し進めることで、使いやすく手に取りやすい商品に仕上げていきます。
ものづくりに欠かせない生産設備の開発
ものづくりを行う企業において、商品を生産するために必要なのが生産設備の開発です。生産設備を開発してはじめて、企業は多品種な商品を安定して供給することができます。
生産設備を開発するにあたって必要となる仕事は、以下の通りです。
- 生産設備の設計
- 生産設備に必要な資材の調達
- 生産設備の建築
- 設備の動作確認
- 設備の保守・メンテナンス
生産設備の設計
生産設備の開発において、始めに行うのが生産設備の設計です。生産設備には、電気設備や制御システム、タービン、ポンプなどさまざまな機器が使用されています。
生産設備の設計には高度な専門知識が必要なため、各分野に精通した担当者が設計図を作成します。
生産設備に必要な資材の調達
生産設備の設計図が完成したら、次に行うのが生産設備に必要な資材の調達です。資材を調達するには、まず複数のメーカーに見積を依頼し、費用の概算を出します。
また導入を決定するには、費用に加えて設備が完成するまでの期間、生産設備の性能も大切です。費用・工期・性能の3つの要素を見比べて、最も条件に合うメーカーから設備の導入を決定します。
導入が決まったら、生産設備の仕様が設計図通りになっているか、不具合はないかの確認も怠りなく実施します。
生産設備の建築
資材が全て揃ったら、いよいよ生産設備の建築に映ります。生産設備は技術開発部で設計をしているため、設計に関わった担当者は建設の現場にも参加することが多いです。
建設の工程においても、設計図と異なるところがないか十分に確認を行います。
設備の動作確認
設備が完成したら、次に行うのが設備の動作確認です。いくら設備が完成しても、安定して商品を作れなければ意味がありません。
全ての機器が問題なく動くことを確認したら、設備を操作する担当者の安全確認も行います。確認が全て終わってはじめて、生産ラインの稼働に移ることができます。
設備の保守・メンテナンス
生産設備の開発の最後に行うのが、設備の保守・メンテナンスです。
定期的に生産設備が問題なく稼働できているかどうかの確認を行い、安定した商品供給に備えます。問題が発生した場合は、速やかに修理を手配し、いつでも生産設備が稼働できる体制を整えます。
技術開発のやりがい
ここでは、技術開発のやりがいを3つ取り上げて解説します。
- 企業の技術を根幹から支えられる
- 幅広い分野の技術開発に関わるチャンスがある
- グローバルに活躍できるチャンスがある
企業の技術を根幹から支えられる
技術開発のやりがいの1つ目は、企業の技術を根幹から支えられることです。技術開発が関わる生産ラインや生産設備などの開発は、ものづくりをする企業にとって欠かせない役割を担っています。
どんなに優れたマーケティングリサーチや商品企画を行っても、それを実現できる技術がなければ、商品を完成させることはできません。実際に世の中に商品が生み出されるまでには、生産コストや生産スピード、安全性などクリアしなければならない技術的課題がたくさんあるからです。
さらに技術開発には、商品機能の方向性を決めたり、他社商品との差別化を実現したりする役目もあります。このように、仕事を通じて企業の技術を根幹から支えられることが、技術開発の醍醐味と言えます。
幅広い分野の技術開発に関わるチャンスがある
技術開発のやりがいの2つ目は、幅広い分野の技術開発に関わるチャンスがあることです。技術開発は「この技術を活用すればこんな商品が作れるのではないか」という可能性を探し出す仕事だけに、関わる分野が特定の分野に限られません。
例えばレンズを加工する技術だけでも、医療や科学、光学分野など、商品化できる分野はたくさんあります。自社技術を活用して新たな商品化への道を切り開けるのも、技術開発のやりがいと言えます。
グローバルに活躍できるチャンスがある
技術開発のやりがいの3つ目は、グローバルに活躍できるチャンスがあることです。
ものづくりを手がける企業は、国内だけで生産活動を行うことは少なく、中国やタイ、マレーシアなど海外にも進出していることが多いです。
そのため技術開発では、日本の工場で働くのと同じように海外の工場に出向き、技術的指導や生産設備の設計、動作確認などを行います。
世界中の人が手にする商品のものづくりに関わっている実感は、技術開発における大きなやりがいと言えます。
技術開発者になるには?
技術開発者になるためには、ものづくりと関係が深い理系学部(工学部・理学部・理工学部・農学部・医学部・薬学部など)を卒業し、さらに大学院を修了しておくことが望ましいです。
大手や有名企業になるほど、技術開発者の採用条件に「修士以上」を付け加えるところが多いからです。
また、企業の技術を根幹から支える技術開発の仕事には、高い専門性が求められます。そのため、文系出身者よりも理系出身者が中心となります。
さらに技術開発者は、他の部門と協力しながら業務を進めたり、海外で工場の立ち上げに関わったりする場面が多くあります。チームワークを大切にできることや英語力をアピールできると、選考を有利に進められるでしょう。
技術開発に向いている人
これまで紹介してきた技術開発の特徴や仕事内容から、向いている人は以下に当てはまる人です。
- ものづくりを通して世の中に貢献したい人
- 仲間と協力して一つのことを成し遂げたい人
- 最先端の現場で活躍していきたい人
- 思い通りにならなくてもあきらめず頑張れる人
- 柔軟な思考で多角的に物事を考えられる人
ものづくりを通して世の中に貢献したい人
技術開発には、ものづくりを通して世の中に貢献したい人が向いています。なぜなら、技術開発は業務を通してダイレクトにものづくりに関われる仕事だからです。
技術開発はクリアしなければならないハードルも高く、自分が関わった商品や製品が世の中に出ることは、これまでの努力が報われたことを意味します。
企業の技術を根幹から支える技術開発の仕事は、ものづくりを通じて世の中に貢献したい人にとってぴったりの職業と言えるでしょう。
仲間と協力して一つのことを成し遂げたい人
技術開発には、仲間と協力して一つのことを成し遂げたい人が向いています。その理由は、技術開発の仕事は、企画部門や生産ラインなど他の部門の人々との協力関係なしには成り立たないからです。
仲間と協力して一つのことを成し遂げたい人なら、これまで作り上げてきた協力関係や人脈が自分の仕事を助けてくれるでしょう。
最先端の現場で活躍していきたい人
技術開発には、最先端の現場で活躍していきたい人が向いています。技術開発は新しい知識や技術を商品に導入する場面で必要な仕事であり、常に最先端の知識や技術が求められるからです。
最先端の現場で活躍していきたい人なら、貪欲に最新の知識や技術を吸収し、業務に役立てるられるでしょう。
思い通りにならなくてもあきらめず頑張れる人
技術開発には、思い通りにならなくてもあきらめず頑張れる人が向いています。技術開発の仕事は新たな商品や製品を生み出す試みのため、試行錯誤の繰り返しだからです。
思い通りにならなくてもあきらめず頑張れる人なら、逆境から活路を見つけ出して、技術開発の仕事に成功できる可能性が高まります。
柔軟な思考で多角的に物事を考えられる人
技術開発には、柔軟な思考で多角的に物事を考えられる人が向いています。なぜなら、新たな商品や製品を生み出す技術開発の仕事には明確な答えがなく、自分で回答を見つけなければならないからです。
柔軟な思考で多角的に物事を考えられる人なら、技術開発のような難易度の高い業務でも、最適解にたどり着く可能性を高められるでしょう。
技術開発に向いていない人
逆に、技術開発に向いていないのは、以下の特徴に当てはまる人です。
- プレッシャーに弱い人
- 地道な作業が苦手な人
プレッシャーに弱い人
プレッシャーに弱い人は、技術開発に向いていない可能性があります。その理由は、技術開発の仕事は製品化や商品化に向けて進めるにあたって、納期や品質が厳しく決められているケースが多いからです。
プレッシャーに弱い人の場合、思い通りに業務が進まないとき、プレッシャーに押しつぶされそうになることもあるでしょう。
地道な作業が苦手な人
地道な作業が苦手な人は、技術開発に向いていない可能性があります。
技術開発職には最先端で活躍する華やかなイメージがありますが、実際の現場は地道な作業の積み重ねです。場合によっては、多くの試行錯誤を経ても、どうすれば良いのか方向性すら見つからないことも少なくありません。
そのため、技術開発の仕事で成功を収めるには、地道な作業もいとわずやり抜く姿勢が求められます。
技術開発の年収や給料事情
最後に、技術開発における年収や給料事情について確認しておきましょう。
職種 | 平均年収 |
技術開発 | 448万円(※1) |
全職種 | 443万円(※2) |
※1 出典:マイナビAGENT「平均年収 |技術開発・工法開発」
※2 出典:国税庁「民間給与実態統計調査」
技術開発職の平均年収と全職種の平均年収に、それほど大きな差はありません。その意味で、技術開発の年収は平均的な金額であると言えます。
ただし、上記の年収はあくまで技術開発全体の平均金額であり、個別の条件を反映したものではありません。実際に受け取る年収は、所属企業や業界、役職、勤務年数などの条件によって大きく異なることに注意が必要です。
技術開発の仕事で年収を高めていくには、まずは与えられた仕事をしっかりとこなし、実績を出して役職を上げていく必要があります。