人事とは?簡単にわかりやすく解説
人事とは、「企業の人材」に関わる職種であり、企業経営を人材面から支えるスペシャリストを意味します。
具体的には、採用活動を通じて優秀な人材を獲得し、その人材が最大限能力を発揮できる環境を用意して企業の成長や発展に貢献するのが役割です。人事活動は経営陣が決定した企業戦略と密接に結びつくため、重要な任務と言えます。
人事の仕事のやりがい・魅力
人事として働く人々は、仕事のどんな側面にやりがいや魅力を感じているのでしょうか。
人事の仕事を通して感じられるやりがいや魅力として、以下の3つが挙げられます。
- 採用活動に携われる
- 社員の成長に貢献できる
- 自社の顔として働ける
1つずつ順番に解説していきます。
採用活動に携われる
人事の仕事のやりがい・魅力の1つ目は、採用活動に関われることです。人事が行う採用活動は会社経営に密接に関わりがあり、会社の未来を新たに作る基盤となります。
企業が今後成長していくためには、優秀な人材を獲得することが欠かせません。人事にとって、その任務に関われること自体が誇りであり、仕事をする上でのやりがいとなります。
社員の成長に貢献できる
人事の仕事のやりがい・魅力の2つ目は、社員の成長に貢献できることです。なぜなら、人事の役割は採用した人材を教育・育成することでもあり、自身が採用に関わった社員の成長を目の当たりにできるからです。
採用活動が終わった後も研修などを通じて社員と関わっていくため、社員の成長を通じて自分の仕事の成果を実感できます。
自社の顔として働ける
人事の仕事のやりがい・魅力の3つ目は、自社の顔として働けることです。なぜなら、学校訪問や企業説明会などの採用活動において、人事は自社の顔としての会社の魅力をアピールする立場にあるからです。
応募者にとって人事はその企業の中で一番初めに接する人物であり、人事のイメージが企業のイメージに直結しかねません。人事のイメージが良ければ会社への好感度が上がり、悪ければイメージダウンにつながります。
このように人事には会社の印象を左右する大きな責任があり、自社の顔として働けることはやりがいにつながります。
人事の仕事内容
人事の仕事内容は幅広く、主に次の6つが挙げられます。
- 人材の採用
- 人材の教育・育成
- 人事評価・人事考課の実施
- 人材の異動・配置転換
- 人事制度の設計・運用
- 労務管理
人事の仕事内容のうちどこまでを担当するかは、企業規模によって異なります。人員配置に余裕のある大企業では業務の細分化が進んでおり、特定の業務を担当することが多いです。一方、人員に余裕がない中小企業では、一人で幅広い業務を担当します。
人材の採用
人材の採用業務は就活生にとって身近であり、人事の仕事内容の中でも最もイメージしやすい仕事です。人材の採用は経営計画に基づいて行われ、経営陣と打ち合わせをしながら進められます。
人材採用における具体的な仕事内容は、採用計画の立案や会社説明会での業務内容のアピール、書類選考・面接の実施、内定者の決定・フォローなどです。
人材の採用は、まずは「どの部署に何人の人材が必要なのか」を把握することから始まります。会社が目指す理想と現状のギャップから、求める人物像や採用人数を決めるのが、採用計画の立案です。
採用計画が決まったら、次に実施するのが応募者の選考です。具体的には、会社説明会を実施し、書類選考や面接を通じて人材を選んでいきます。
採用には新卒採用と中途採用の2種類があり、それぞれ採用基準が異なります。原則として新卒採用はポテンシャル重視、中途採用は経験重視で選ばれることが多いです。特に毎年実施される新卒採用は競争率が高いため、しっかりと採用計画を立てて進める必要があります。
人材の教育・育成
採用した人材に最大限能力を発揮してもらうには、人材の教育・育成が欠かせません。人事は研修の企画や運営を通じて人材のスキルアップを目指します。
研修内容は、新入社員や中堅社員など入社後のキャリアによって異なります。
これまで学生身分だった新入社員にとって会社で働くことは、いわば消費者から生産者への転換です。新入社員への研修では意識を変化させ、会社組織に適応してもらう必要があります。
そのため新入社員研修では、企業理念など自社への理解を深めるとともに、ビジネスマナーや論理的思考力といった社会人に必要なスキル習得を目指します。
一方、中堅社員は会社の中核メンバーとして業務を引っ張っていくことが役割です。個人として業績を上げることはもちろん、管理職としての役割を果たすため、マネジメント研修など次世代リーダー候補を育成する研修が行われます。
なお、研修は人事が講師を担当することもあれば、外部から講師をまねく場合もあります。
人事評価・人事考課の実施
採用した人材に人事評価や人事考課を行うのも、人事の役割です。人事評価・人事考課には、仕事を適正に評価することで給与や昇進に連動させ、モチベーションアップにつなげる狙いがあります。
人事評価は主に、成績評価と能力評価、勤務評価に分けられます。
成績評価とは、仕事量やスピード、質を評価する評価方法で、成績に加えて活動のプロセスも評価するのが特徴です。
一方、能力評価は仕事を通じて身に付けた知識やスキルを評価する評価基準であり、難易度の高い仕事を成功させたり、緊急時に上手く対応できたりした場合などに高く評価されます。
勤務評価は、成績評価や能力評価だけでは見えにくい仕事への意欲や勤務態度を評価する評価基準です。主観で評価が変わりやすいため、上司や同僚、部下などさまざまな立場の人によって多角的に評価されることが多いです。
このように人事評価は、人事の部署内のみで行われるわけではなく、現場の責任者や同僚、部下などさまざまな立場の人と協力しながら進められます。
人材の異動・配置転換
社内の人材を適切な場所に異動・配置するのも、人事の仕事です。異動・配置は退職者の補充や新規部署の設立、業績向上への期待などさまざまな理由で行われます。
さらに人事異動にはいくつか種類があり、勤務地が変更となる転勤の他、人事評価に伴う昇給・降格、ジョブローテーションによる職種変更などが挙げられます。
仕事の流れとしては、まずは現場から意見を聞き取り、部門ごとの人材の偏りやばらつきをチェックします。そのうえで異動の必要があると判断したら、異動候補者の選定に移ります。
異動するかどうかの決定は、まず現場の責任者に打診を行い、その後異動候補者と面談を実施して合意を得るのが一般的です。
一度人事異動が発令されると、原則として社員は異動を拒否することができません。このため、人事異動を発令する際には事前に異動の打診や面談を実施し、社員の希望を十分に聞いた上で現場と調整する必要があります。
人事制度の設計
社内の人事制度を設計することも、人事の仕事内容の一つです。
人事制度は、狭い意味では人事評価や人事考課といった評価制度を指し、広い意味では福利厚生など働き方全般に関する取り決めを意味します。人事制度は社員の働きやすさやモチベーションに直結するため、公平で納得性が高い制度設計が求められます。
労務管理
労務管理は、人事活動に伴って発生するさまざまな事務手続きを処理する仕事です。
具体的には、以下の仕事があります。
- 雇用契約書の作成
- 就業規則の作成
- 社会保険・雇用保険の加入
- 社員の健康状態の管理
- ハラスメント対策
- 給与計算
- 勤怠管理
- 退職手続き
- 休職手続き
- 異動手続き
労務管理は大企業では別部署が担当することが多いですが、中小企業では労務管理も人事の仕事に含まれるのが一般的です。
人事に向いている人
以上の仕事内容から、人事に向いているのは次の特徴がある人です。
- 人柄が明るく好感が持てる人
- コミュニケーション能力が高い人
- 長期視野に立って計画的に物事を進められる人
- 口が固く機密情報を守れる人
- 鋭い人間観察力がある人
- 感情に流されず論理的に考えられる人
- 向上心が高く常に知識をアップデートできる人
1つずつ具体的に解説していきます。
明るく好感が持てる人
人事は明るく好感が持てる人が向いています。その理由は、人事が就職希望者や転職希望者にとって初めに接する人であり、人事の印象がそのまま会社のイメージとして認識されるためです。
会社の顔としての役割が求められる人事では、常に言動や表情を意識する必要があります。
コミュニケーション能力が高い人
人事はコミュニケーション能力が高い人が向いています。
その理由は、人事には人材採用や人事評価・制度設計を担当する機会があり、学生から中間管理職、経営層までさまざまな立場の人に関わる機会があるからです。立場や背景の異なる人とスムーズに意志疎通を図るには、高いコミュニケーション能力が欠かせません。
また、会社説明会で自社の魅力をわかりやすく伝えるうえでも、コミュニケーションスキルは役立ちます。
長期視野に立って計画的に物事を進められる人
人事の仕事は、長期視野に立って計画的に物事を進められる人が向いています。なぜなら、人材の採用・育成は短期で成果が出るとは限らず、その方針が正しいかどうか時間が経ってからでなければ判断できないケースが多いためです。
人事は目先の利益だけにとらわれることなく、長期視野に立って会社の利益を考える必要があります。
口が固く機密情報を守れる人
人事は口が固く機密情報を守れる人が向いています。
その理由は、採用活動が企業戦略と密接に関わっており、人事は企業機密を知れる立場にあるからです。さらに、人事評価や配置転換にも関わるため、従業員のプライバシーにも十分に配慮しなければなりません。
鋭い人間観察力がある人
人事は鋭い人間観察力がある人が向いています。
なぜなら、人事は人材の採用・評価・配置転換に関わる仕事であり、どの場面においても人間を鋭く観察し、適切に判断することが求められるからです。目に見えやすい業績だけでは足らず、本人の性格や適正も十分に考慮して総合的に判断する必要があります。
感情に流されず論理的に考えられる人
人事は感情に流されず論理的に考えられる人が向いています。その理由は、人事に関わる判断は会社のルールに基づき公平・客観的に行われるべきだからです。
不採用や降格処分、退職勧奨など、時には本人に不利益となる決定を下さなければならない場面もあります。そんな時も「かわいそうだから…」と躊躇することなく、適切に判断をすることが求められます。
向上心が高く常に知識をアップデートできる人
人事は、向上心が高く常に知識をアップデートできる人が向いています。なぜなら、時代に合う人材を獲得するには常に変化する社会情勢を把握しておく必要があるためです。
さらに、人事に関係する法律も数年単位で改正されることが多いです。法律を遵守した人事制度を設計するためにも、常に学ぶ姿勢を持って知識をアップデートしておく必要があります。
人事に向いていない人
逆に、人事に向いていないのは次の特徴がある人です。
- 仕事に対してはっきり目に見える成果を期待する人
- 表舞台で活躍したい人
- 社員に嫌われたくない人
- 会社に愛着がない人
1つずつ具体的に解説していきます。
仕事に対してはっきり目に見える成果を期待する人
仕事にはっきり目に見える成果を期待する人は人事には向いていません。なぜなら、営業の売上金額とは違い、人事の仕事の成果は目に見える形で数値評価することが難しいためです。
採用した人材が本当に会社に向いていたのかどうか、または人事評価が適正だったのか、配置転換が正しかったのかは数年経過してみなければわかりません。人事を希望する人は、このような人事の特徴を理解したうえで応募する必要があります。
表舞台で活躍したい人
表舞台で活躍したい人も人事には向きません。その理由は、優秀な人材を獲得して育成するのが人事の役割であるものの、それはあくまで裏方の仕事に留まるからです。
いかに優れた研修を企画・運営しても、身に付けたスキルで得た成果は社員本人の努力として評価され、人事の功績にはなりません。人事には、裏方に徹し社員の成長を陰からサポートする姿勢が求められることを理解しておきましょう。
社員に嫌われたくない人
社員に嫌われたくない人も人事には向きません。なぜなら、人事は会社全体の利益を考えて仕事をするため、時には個人の意向より会社の意向を優先した判断をしなければならないからです。
一方、特定の個人に肩入れすれば、会社のルールを押し曲げる結果となり、不公平感が生まれる要因を作ってしまいます。人事は社員に嫌われることを恐れず、常に公平な判断をすることが求められます。
会社に愛着がない人
会社に愛着がない人も人事には向きません。その理由は、人事は特定の部門だけに関わるのではなく、会社全体の利益を考えて行動する必要があるからです。
特に人事評価を行う場合は、その前提として企業理念やビジョンを深く理解している必要があります。人事には会社に愛着があり、企業理念やビジョンに心から共感できることが求められます。
人事になるにはどうすればいい?
新卒で人事を目指すなら、職種別に選考・採用を行っている企業を選んで応募する必要があります。日本の企業は内定後に配属を決めるケースが多いからです。
内定後に配属が決まる場合、必ず人事部で働けるとは限りません。営業や経理・総務に配属されることもあります。
「人事として働きたい」という強い意志があるなら、前提として「人事部」で募集している企業に応募しましょう。
人事の年収や給料事情
人事の年収や給料事情についても確認しておきましょう。
職種 | 平均年収 |
人事 | 478万円(※1) |
全職種 | 433万円(※2) |
※1 出典:マイナビAGENT「業種別平均年収ランキング 人事」
※2 出典:国税庁「民間給与実態統計調査」
人事の平均年収は478万円であり、全職種の平均である433万円と比較すると45万円程度高くなっています。
年収は企業規模や担当業務によって異なるものの、役職が上がったり、専門性が高い業務を任されたりすると高くなる傾向があります。人事に配属されたら手元の仕事をこなすだけではなく、業務の幅を広げて専門性を高めていくことが年収を増やすカギです。