融資審査

融資審査とはどんな仕事内容?審査の種類や職種としてのやりがい、年収事情を解説

融資審査とは?

融資審査とは、融資を希望する人に対して審査を行い、融資が可能か否かを判断する業務です。そもそも融資とは、お金を必要とする人や事業者に資金を貸し出すサービスを意味します。

一般消費者が融資を利用する場面には、以下の事例が挙げられます。

  • 家を買うため
  • 車を買うため
  • 将来の進学費用のため

一方、事業者が融資を利用するのは、以下のような場面です。

  • 工場で商品を作るための設備投資として
  • 新店舗を出店するための資金として
  • 新たに起業するための資金として
  • 販売代金を回収するまでのつなぎとして

融資を一度受けると、決められた期間までに借りた金額すべてについて、利子を上乗せして返済しなければなりません。

しかし、貸した相手に返済能力がなかったり、または事業者の事業が上手くいっていなかったりすると、貸し倒れになって貸した資金が戻ってこなくなるリスクが高まります。

融資審査は、このような貸し倒れリスクを防ぐために欠かせない役割を果たしています。

融資審査の種類と事例

一般消費者や企業にお金を貸し出す融資サービスは、幅広い業種で提供されており、その数だけ融資審査の種類が存在します。

ここからは、融資審査の主な種類と事例を紹介します。

種類

事例

公庫融資審査

政府金融機関である日本政策金融公庫による審査。民間の金融機関より審査基準が穏やかで、金利も低めに設定されている。

保証付融資審査

銀行が貸し出す事業者向け融資の審査。信用保証協会が連帯保証人となっているため、万が一貸し倒れても信用保証協会が代わりにお金を払ってくれる。

プロパー融資審査

銀行が貸し出す事業者向け融資の審査。銀行が単独で融資するため審査が厳しく、実績がある企業しか融資が受けられない。

不動産担保融資審査

返済が滞ったときに不動産を差し出すことを条件とする融資の審査。不動産を差し出すことで低い金利で長期間融資が受けられる。

売掛債権担保融資審査

返済が滞ったときに売掛金(将来取引先から受け取る予定の売上代金)を差し出すことを条件とする融資の審査。取引先の承諾が必要などの決まりがある。

ビジネスローン審査

返済が滞っても条件が指定されていない融資の審査。その分、審査で返済能力や信用の高さが厳しく審査される。

カードローン審査

返済が滞っても条件が指定されていない融資の審査。ATMで手軽に借りられるものの、金利が高めに設定されている。

融資審査の仕事内容

融資審査の仕事は、事業者と一般消費者どちらを相手にするかによって、大まかに2種類に分けられます。

ここからは、融資審査の仕事を以下の2種類に分けて解説していきます。

  • 事業者に対する融資審査
  • 一般消費者に対する融資審査

事業者に対する融資審査

事業者に対する融資審査では、事業者から提出された資料や事業所訪問、経営者との面談などを通じ、融資が可能かどうかを判断します。

融資審査は、主に以下の流れで進められます。

  1. 定量的評価による審査
  2. 定性的評価による審査
  3. 信用度のランク付け

定量評価による融資審査

定量評価による審査は、外部から客観的にわかる数字を用い、融資の妥当性を判断するために行う仕事です。

具体的には、事業者の決算書や確定申告書の数値から、「どのくらい収益を挙げているのか?」「これからどのくらい成長できそうか?」などを読み取ります。融資の判断には、直近3年分の経営資料を用いるのが一般的です。

例えば、損益対照表における経常利益は、事業者の1年間の経営活動において、どれくらい利益を生み出したかを表す数字です。この数字が大きければ大きいほど返済能力が高く、事業の成長性が高いことが期待できます。

また、貸借対照表に記載された純資産金額も、事業者の財産の健全性を判断するのに役立ちます。純資産とは、事業者が保有する資産(現金預金・有価証券・商品・土地・建物・設備など)から負債(借金・融資)を除いた残りの金額です。

資産総額から負債総額を引くことで、事業者が自由に使えるお金を見積れます。「事業者が自由に使えるお金」=「今後融資をした際の返済にあてるお金」となるため、純資産額が大きいほど融資の妥当性が高いです。

このように定量評価による審査では、経営資料のさまざまな数字を用いて、融資の妥当性を判断していきます。

定性評価による審査

定性評価による審査は、決算書などの数字だけでは測れない事業の将来性や成長性を判定するために行う仕事です。

定性評価で確認するのは、今後の事業計画や経営方針などです。定性評価による審査では、実際に企業を訪問して現場を視察したり、経営者との面談を行ったりします。

なお経営赤字の場合には、どの程度現状分析ができているか、また具体的な改善策や改善後の効果について確認します。経営が赤字だからといって、直ちに融資が否定されるわけではありません。

経営者への面談により、今後の改善策に納得性が高ければ、融資可能と判断する場合もあります。

信用度のランク付け

事業者に関して定量評価と定性評価ができたら、それをもとに信用度をランク付けして、融資するかどうかの判断材料にします。

判定基準は企業によって異なりますが、おおまかには以下のように分類できます。

  • 正常先
  • 要注意先
  • 要管理先
  • 破綻懸念先
  • 実質破綻先
  • 破綻先

信用度が高ければ、融資先として優良な事業者を意味します。一方、信用度が低くなるほど貸し倒れリスクが高くなるため、融資を断る可能性が高いです。

この信用度を元に、融資に保証を付けるか否か、返済が滞った場合の条件をつけるか否か、金利の高さや返済期間などの条件が決められます。

一般消費者に対する融資審査

一般消費者に対する融資審査では、一般消費者から提出された資料を元に、融資が可能かどうかを判断します。

融資審査は、以下の流れで進められます。

  1. 信用情報に対する審査
  2. 借入状況に対する審査
  3. 本人属性に対する審査

信用情報に対する審査

信用情報に対する審査は、これから融資を申し込む人に対し、これまで返済や支払いに遅延や延滞がなかったかどうかを確認する業務です。

信用情報は、国内のクレジットカード会社や消費者金融業者、銀行・信用金庫が加盟する団体によってそれぞれ記録されています。これらの信用情報は全ての機関で共有されており、融資を提供する企業は必要に応じて照会が可能です。

このように信用情報に対する審査は、融資を受ける人が今後きちんと返済してくれる人かどうかを判断し、貸し倒れリスクを減らす役割を果たしています。

借入状況に対する審査

借入状況に対する審査では、これから融資を申し込む人に対し、他社で借入がないかどうか、または他社からいくら借り入れているのかを確認します。

借り入れ状況を確認する理由は、貸金業法に「総量規制」と呼ばれるルールがあるためです。総量規制とは貸金業(消費者金融会社やクレジットカード会社など)において、「年収の1/3を超える金額を貸してはならない」とするルールです。

総量規制は金融庁が定めたルールであり、過度な借入による多重債務から消費者を守る目的があります。また、銀行などの金融機関は貸金業法の対象ではないものの、多重債務を防ぐための内部ルールが存在することが大半です。

このように借入状況に対する審査には、貸し倒れリスクが高い融資を未然に予防する役割があります。

本人属性に対する審査

本人属性に対する審査とは、これから融資を申し込む人の属性を調べることで、今後安定して返済できるかどうかを確認する業務です。返済能力を示す本人属性には、以下の内容が挙げられます。

  • 年齢
  • 雇用形態(正社員・派遣・アルバイト・自営業など)
  • 勤務先の企業(規模・業種など)
  • 年収(一年間に稼げる金額)
  • 住居形態(賃貸・持ち家)
  • 家族構成(扶養家族の有無)

本人属性に対する審査では、これらの要素を総合的に判断し、返済能力をスコア化します。そして、その他の信用情報や借入状況に対する審査内容も含めた総合判断により、金利や融資金額などの条件が決定されます。

融資審査の職種としての魅力ややりがい

ここからは融資審査における魅力ややりがいについて、以下の3つを取り上げて解説します。

  • 未来に挑戦する企業の健全な成長を後押しできる
  • 個人の叶えたい夢を無理なくサポートできる
  • 地域社会の発展に貢献できる

未来に挑戦する企業の健全な成長を後押しできる

融資審査の魅力・やりがいの1つ目は、未来に挑戦する企業の健全な成長を後押しできることです。

企業が事業を拡大したり、新たにビジネスを始めたりするとき、多くの場合必要になるのが資金です。いかに優れた事業計画を思い描いても、手元に資金がなければ何も始められません。

そのようなとき役に立つのが、融資による資金調達です。融資は返済が滞ったときに差し出す資産や過去の実績のみならず、事業の計画性・将来性も含めて総合的に判断するのが特徴です。

融資審査を通過すれば融資を通じて企業の成長を後押しでき、万が一融資審査で落ちたとしても、今後の事業計画を軌道修正するきっかけを作れます。このように融資審査には、将来有望な企業に優先的に融資を集中させる役割があります。

限られた資金を有効活用し、効率的に社会を発展させていく意味においても、融資審査は大切な役割を担っていると言えるでしょう。

個人の叶えたい夢を無理なくサポートできる

融資審査の魅力・やりがいの2つ目は、個人の叶えたい夢を無理なくサポートできることです。

「家を買いたい」「車を買いたい」「近い将来進学したい」など、人生にはまとまったお金が必要になる場面があります。買えるまで貯金すれば済む話ですが、それではいつ自分の夢が実現するかわかりません。

そのようなとき役立つのが、個人に対する融資です。利子を付けて返済する必要があるものの、夢を叶えるまでの期間を大幅に短縮できます。

融資審査で確認するのは、今後その人が借りたお金を返せるかどうかです。融資審査を通過すれば、それは融資側が「この人は今後長期に渡って融資を返済していける」と判断したことになります。

一方で融資審査に落ちれば、「自分の人生設計に無理があったのかもしれない」と気づく一つのきっかけになります。

このように融資審査は、顧客を人生における失敗から守る意味でも、重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

地域社会の発展に貢献できる

融資審査の魅力・やりがいの3つ目は、地域社会の発展に貢献できることです。融資審査の中には、信用金庫や地方銀行のように、地域社会の発展を目的として活動する組織による業務もあります。

信用金庫や地方銀行の特徴は、預金として集めたお金がその地域に住む住民や企業のために使われることです。

自分を産み育ててくれた街に恩返しがしたいと考える人にとって、融資審査を通じて地域社会の発展に貢献できることは、大きなやりがいになります。

融資審査に向いている人

融資審査に向いているのは、以下の特徴に当てはまる人です。

  • 慎重に考え責任感を持って行動できる人
  • 向上心が強く常に学び続けられる人
  • 誰にでもわかりやすく物事を伝えられる人
  • 経営的な視点で社会の動きを捉えられる人
  • 鋭い人間観察眼を持ち合わせる人

具体的に解説していきます。

慎重に考え責任感を持って行動できる人

融資審査は、慎重に考え責任感を持って行動できる人に向いています。なぜなら、融資審査に最も求められる役割は融資の妥当性を判断することであり、リスクの高い融資案件に対してブレーキをかけることだからです。

特に売上成績を求められる支店では、より多くの融資案件を獲得しようと無理な営業活動を行う場合があります。また中には、金融機関の裏をかき、返済できる目途がないにもかかわらず融資を受けようとする事業者もあります。

そのような危ない融資案件をあぶりだし、融資決定する前に排除するのが融資審査の役割です。万が一貸し倒れが発覚した場合、最も責任が問われるのも融資審査の担当者です。それだけに融資審査業務には、慎重に考え責任感を持って行動できることが求められます。

向上心が強く常に学び続けられる人

融資審査は、向上心が強く常に学び続けられる人に向いています。

そもそも融資審査の業務には、高度な専門知識と経験が求められます。近年はAI(人工知能)を活用したスコア化技術が注目されていますが、融資の全てをAIが判定できるわけではありません。

特に、事業者向け融資における将来性や成長性を判断するには、人による審査が不可欠です。金融商品に関する法律の改正も頻繁に行われるため、常に知識をアップデートし、万全の体制で審査に挑むことが求められます。

誰にでもわかりやすく物事を伝えられる人

融資審査には、誰にでもわかりやすく物事を伝えられる人が向いています。なぜなら、融資審査は一人で完結することはなく、多くの人のやりとりを経て最終的な融資の可否が決められるからです。

融資が受けられるか否かを決める融資審査は、相手の人生を左右する重大な決定事項です。融資希望者は、人生をかけて融資審査に挑んでいるといっても過言ではありません。そのため、融資審査は「気づかなかった」「知らなかった」では済まされない仕事だと言えます。

日常から誰にでもわかりやすく物事を伝えるよう意識できる人なら、融資審査においても的確に要件を伝え、業務を進められるでしょう。

経営的な視点で社会の動きを捉えられる人

融資審査には、経営的な視点で社会の動きを捉えられる人に向いています。その理由は、特に事業者の融資審査においては、事業の成長性や将来性など数字には現れない要素を判断することが不可欠だからです。

事業者に対する融資審査は、単に損益対照表や貸借対照表、キャッシュフロー計算書などの経営資料だけで決められるわけではありません。単に財務諸表が読めるだけでは足らず、常に経営的な視点で社会の動きを捉え、その優劣を先読みできる人が向いています。

鋭い人間観察眼を持ち合わせる人

融資審査は、鋭い人間観察眼を持ち合わせた人に向いています。人間性を評価する人物評価は、事業者向け融資でも一般消費者向け融資でも、審査基準に含まれているからです。

特に事業者向け融資のような大型融資案件になると、事業を統括する経営者が事業に与える影響は甚大です。

「融資先として経営者は信頼に値する人物か」「難しい局面でも決断できるか」「最後まで事業をやり遂げられるか」といった人間性は、これから融資するかどうかを決める上で重要な要素と言えます。

鋭い人間観察眼を持ち合わせ、正しく人間性を評価できる人なら、重要な判断の局面においてリスクの高い融資案件を遠ざけられます。

融資審査に向いていない人

逆に、融資審査に向いていない可能性がある人は、以下の特徴にあてはまる人です。

  • 倫理観が低い人
  • 数字が苦手な人
  • プレッシャーに弱い人

倫理観が低い人

倫理観が低い人は、融資審査に向いていない可能性があります。特定の事業者に便宜を図るために審査書類を改ざんしたり、不都合な事実の記載をあえて避けたりすることは、間違ってもあってはならないことだからです。

また融資審査は、融資をするか否かの最終的な判断に関わる仕事です。例えば知り合いの事業者から融資を依頼されても、リスクの高い融資案件を通すわけにはいきません。万が一融資を通した企業が倒産した場合、そのリスクは直接融資した企業に跳ね返ってきます。

その意味で、融資審査には高い倫理観が求められると言えます。

数字が苦手な人

数字が苦手な人は融資審査に向いていない可能性があります。融資審査は定量評価など数字から判断する側面が大きく、数字が苦手だと務まらないからです。

支店での融資業務には顧客への対応など人と接する業務も含まれますが、本部の融資審査の大半は、書面に書いてある数字と向き合う業務です。さらに、融資するか否かといった重大な決断を、書面に書かれた数字や文章だけで判断しなければなりません。

このような背景から、数字が苦手な人は融資審査の仕事に就いても苦労する可能性があるでしょう。

プレッシャーに弱い人

プレッシャーに弱い人は融資審査に向いていない可能性があります。融資するか否かの最終決定をするには、大きなプレッシャーがかかるからです。

融資審査において高度な専門知識を持っていることは大前提であり、その上でリスクの高い融資案件を見逃さない冷静な判断力が求められます。自分が関与した融資先が万が一倒産したら、その責任を最も背負うのは融資審査の担当者です。

それだけに、融資審査に求められる役割は大きく、業務におけるプレッシャーを覚悟しなければなりません。

融資審査の年収や給料事情

融資審査職の年収

融資審査における年収や給料事情について確認しておきましょう。

職種

平均年収

融資審査

508万円(※1)

全職種

443万円(※2)

※1 出典:求人情報・転職サイトdoda(デューダ)「融資審査/契約保全の年収詳細
※2 出典:国税庁「民間給与実態統計調査

融資審査の平均年収508万円は、全職種平均の443万円と比較すると、65万円程度高い金額です。年収が高い理由には、業務に高い専門性が求められることや、機密性が高い情報を取り扱うことなどが考えられます。

しかし上記は、あくまで融資審査全体における平均金額を示したものであり、個人による違いを反映したものではありません。実際に受け取る年収は、勤める企業や勤務年数、役職などで個人差があります。

融資審査として働きながら年収を高めていくには、与えられた業務をこなしながら専門性を高め、役職を上げていく必要があるでしょう。

実は就職する業界・会社選びよりも、重要なのは職業選び 自分の強み・特徴を活かした職業に就職をしない人は、早い段階で退職しているケースが多いです。単純にこの業界、この会社が好きとかではなく、自分の強み・特徴を活かした職業選択をするために適職診断をぜひご活用ください。

P−CHAN就活エージェント無料就職相談センターまずはお気軽にご相談ください!