財務とは?わかりやすく簡単に解説
財務とは、資金繰りや予算管理、資金調達など、事業に欠かせないお金の調達・管理・運用を行う職種です。
財務の働きによって会社の経営状態が良くなることもある一方、最悪の場合は資金不足によって会社が倒産してしまう可能性もあるでしょう。それだけ、財務は責任重大な仕事です。
大企業などの財務担当者が多い会社では、トップのポジションにいる人を「CFO(最高財務責任者)」と呼ぶこともあります。
財務の仕事内容
財務は、会社のお金に関するさまざまな仕事を行います。同じ財務でも業界によって仕事内容は変わってきますが、下記の6つはどの業界でも共通しやすいです。
- 財務戦略の立案
- 資金調達
- 予算・資金管理
- 余剰資金の運用
- IR・監査対応
- 内部統制
財務戦略の立案
会社の運営には多くの資金が必要です。財務面で何かしらの課題があれば、企業価値は低くなってしまい、さらに資金調達が難しくなる可能性もあります。そこで行うべきなのが、財務戦略の立案です。
会社では、必要な資金を調達するほかにも、資産運用などによって資金を有効活用する必要があります。財務諸表や事業計画などのデータを細かく分析し、足りない資金の調達方法や余剰資金の用途などの計画を立案するのは財務の仕事のひとつです。
資金調達
事業の拡大や新しい設備の導入などにおいて資金が足りない場合は、資金調達を行う必要があります。また、運転資金を補填するために資金調達が必要なケースもあるでしょう。これらの資金調達は、財務の仕事です。
資金調達の方法には、主に下記2つの方法があります。
- 銀行からの借り入れ
- 株式や社債の発行
銀行からの借り入れでは、財務が直接銀行に交渉して、融資の契約を結ぶ場合もあります。株式や社債の発行に関しては、出資を募っても出資者が出てくるとは限らないため、すぐに資金を調達できるわけではありません。
どちらの資金調達も、会社の信用を担保に融資を依頼するため、なかにはこれらの資金調達の手段をとれない会社もあるでしょう。
常に会社の財務状況に目を配り、いざというときに資金を調達できるように、日ごろから銀行などの金融機関や投資家たちと関係性を築いておく必要があります。
予算・資金管理
会社の予算は、部署ごとに割り振られます。部署ごとの予算の分配や、分配後の管理も財務の仕事です。
必ずしも各部署が計画通りに予算を使用できるわけではありません。予算が余ってしまう分には大きな問題はありませんが、もし予算不足に陥ってしまうと事業が止まってしまう恐れがあります。
そのため、予算修正を行うと同時になぜ計画通りに予算を使用できていないのか、問題点を特定する必要もあるでしょう。予算がなくなり取引先への支払いが滞ることになれば、会社の信用にも影響するため、常に資金を管理しておくことが重要です。
余剰資金の運用
会社の経営状態などによっては、保有する資産のなかに余剰資金が存在する場合があります。財務は、この余剰資金を適切に運用する役割も担っています。余剰資金は、例えば以下のような運用方法があります。
- 投資商品の購入
- M&A(会社の買収・合併)
余剰資金を運用する際は、目先の利益を考えるのではなく、長期的な視点で計画を立てる必要があります。また、上手く余剰資金を運用すればさらなる利益が見込める一方で、失敗してしまうと会社の資産を失う恐れもあるため、綿密に計画を立てる必要があるでしょう。
IR・監査対応
「IR(Investor Relations)」とは、経営状態や財務状況を把握した上で、投資家向けに業績や今後の見通しなどを説明することです。財務は、業務上会社の経営情報に精通しているため、IRの仕事を担うケースも多いでしょう。
監査とは、会社の財務状況に不正や問題点がないかを第三者機関である監査法人が確認することです。財務は、監査法人に会社の財務状況を説明する仕事を担うことがあります。
また、監査法人に財務諸表や決裁書などの資料を提示し、内容に対して質問がある際にすぐ対応できるよう、待機しておく必要があるでしょう。
内部統制
内部統制とは、会社の事業や経営目標に基づいて、必要なルールを構築・運用することです。業務の効率化やコンプライアンス違反の防止など、内部統制にはさまざまな役割があります。
お金に関するコンプライアンス違反が発生した場合、会社の信頼を大きく損なう可能性があります。財務が会社の全体のお金を管理しているとはいえ、実際にお金を扱うのは各部署です。
各部署でコンプライアンス違反が発生しないよう、財務は社内のルールや仕組みの策定を担います。
財務と会計・経理の違い
同じくお金を扱う職種として、財務以外に会計や経理といった職種があります。これらの職種には違いがあり、それぞれ下記のような役割を担っています。
職種 | 仕事内容 | 業務例 |
財務 | 未来のお金を管理する | ・財務戦略の立案 ・資金調達 ・予算・資金管理 |
会計 | お金や物のやり取りを管理する | ・伝票の作成 ・帳簿への記帳 ・財務諸表の作成 |
経理 | 日頃のお金の流れを管理する | ・基本的には会計と同じ |
財務が未来のお金を管理するのに対して、会計・経理は日頃や過去の活動におけるお金の管理が仕事です。経理は会計の一部であり、お金や物のやり取りを管理している会計のうち、お金の管理に特化しているのが経理です。
経理に興味がある方は、「経理とは?仕事内容や会計・財務との違い、年収・給料を紹介」も読んでみてください。
財務の仕事の魅力ややりがい
会社全体のお金の管理を担う財務の仕事には、多くの魅力ややりがいがあります。なかでも、とくに大きな魅力ややりがいは下記の3つです。
- 幅広い業務を担える
- 経営の意思決定に携われる
- 長期的に活躍できる
幅広い業務を担える
財務の主な仕事はお金の管理ですが、そのほかにも法律や経営などに関するさまざまな業務を行います。予算管理から会社の経営まで、さまざまな業務を担いたい人にとっては魅力ややりがいを感じられる職種でしょう。
また、財務として活躍する場合、会社のあらゆる課題に向き合う必要があります。会社運営への理解を深めることもでき、多くの知識を得られるでしょう。
経営の意思決定に携われる
財務は、資産状況などの内部情報を把握して財務分析します。財務分析の結果は、会社の経営において重要な意思決定の材料となるため、財務は経営に対してさまざまな助言を行うことができるでしょう。
また、会社の未来のお金を扱うため、自分の分析や意見が会社経営に大きな影響を与えます。その分、財務の責任は重く大変な仕事でもありますが、その立場から魅力ややりがいを感じる人は多いでしょう。
長期的に活躍できる
会社が存続する限り、未来のお金を管理する財務は欠かせません。特に、長期的なスパンでの成長を目指す会社の場合、分析や資金の調達・管理を行う財務がいなければ、経営の目途はつかないでしょう。
そのため、財務は長期的に会社に必要とされます。長期的に活躍することで自分の市場価値も高まり、重要なポジションにつくこともできるでしょう。また、幅広い業務を担うため、財務以外のさまざまなキャリアを築くこともできます。
財務の仕事に求められる知識・経験
お金に関する業務だけではなく幅広い業務を担う財務には、下記のような知識・経験が求められます。
- 財務諸表の知識
- 経理や税務などの知識
- US-GAAPやUSCPAの知識
- コーポレートファイナンスの経験
財務諸表の知識
財務は、財務諸表の数字をもとに財務分析を行い、財務戦略や余剰資金の運用計画を立てたり、予算管理などを行います。そのため、財務諸表を理解できるだけの知識が必要です。
財務諸表は下記の3つからなり、これらは「財務三表」と呼ばれています。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュフロー計算書
これら3つの読み方や仕組みを、財務は十分に理解しておく必要があります。
経理や税務などの知識
財務は自部門だけでなく、経理・税務・会計などお金を扱うさまざまな部門と連携して仕事を行うため、知識があるとよりスムーズに仕事を進められるでしょう。実際、公認会計士や税理士から税務へと転職するケースも多いです。
US-GAAPやUSCPAの知識
外資系の会社やグローバル展開を目指す会社の場合、US-GAAP(米国会計基準)やUSCPA(米国公認会計士)の知識を求められることもあります。これらは、アメリカの財務会計に使用される規則や資格です。海外を視野に入れて働くのであれば、身につけておいて損はありません。
コーポレートファイナンスの経験
コーポレートファイナンスとは、企業価値向上のために資金調達や事業投資をしたり、資金返済をするなど一連の活動のことです。財務の仕事と密接に関係しており、資金調達のために欠かせない知識でしょう。
なかには、金融機関とのつながりを強化するために、金融機関のコーポレートファイナンス経験者を求める会社もあります。
財務に必要な資格
財務になるために必須の資格はありませんが、詳しい専門知識が求められることは事実です。そのため、下記のような資格を持っていると良いでしょう。
- 日商簿記検定
- ファイナンシャルプランナー
- 公認会計士
- 税理士
財務にとって有用な資格は、難易度の高いものが多いです。受験するために業務経験が必要な資格もあるため、財務として働きながら資格取得を目指す方法もあります。
日商簿記検定
日商簿記検定とは、「日本商工会議所」が主催する検定試験です。日々の経営活動を記録したり、計算や整理を通して、経営状態や財務状況を明確にする技能を身につけられます。
日商簿記はどちらかというと経理の知識を持つことの証明となる資格ですが、財務諸表の基本的な仕組みや会計用語などの基礎知識を習得できるため、財務の仕事でも役立つでしょう。
受験する等級にもよりますが、比較的難易度が低く取り組みやすい資格であるため、財務を目指す第一歩として挑戦してみるのも良いでしょう。
※参考:日本商工会議所「日商簿記検定」
ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナーは、「日本FP協会」が主催する国家検定です。主に下記のような知識が身につきます。
- 金融
- 住宅ローン
- 税制
- 保険
- 年金
- 相続など
上記の通り、ファイナンシャルプランナーはビジネスよりも個人の生活やライフプランにともなう資金計画の知識を学べる検定です。
とはいえ、金融全般の知識を習得できるため、経済や金融に関するニュースの内容をより詳細に理解できるようになり、財務の仕事にも活かすことができるでしょう。
※参考:日本FP協会「ファイナンシャルプランナー」
公認会計士
公認会計士とは、「公認会計士・監査審査会」が主催する国家資格です。代表的な会計資格であり、日本三大国家資格にも含まれます。難易度は非常に高いですが、資格を有していれば財務として将来重要なポジションに就くことも可能です。
職種のひとつである公認会計士は、主に独占業務である財務諸表の監査を行っています。そのため、公認会計士の資格を取得することで財務諸表に関するより深い知識を得られるほか、監査対応などの仕事にも役立てることができるでしょう。
※参考:公認会計士・監査審査会「公認会計士試験」
税理士
税理士とは、「国税庁」が主催する国家資格です。税金に特化した知識を得ることができ、有していれば公認会計士と同様に重要なポジションに就くことができるでしょう。
税理士は難易度の高い資格であり、下記の要件のいずれかを満たさなければ受験できません。
(1) 学識による受験資格
イ 大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、社会科学に属する科目(※1)を1科目以上履修した者 括弧 証明書類
ロ 大学3年次以上で、社会科学に属する科目(※1)を1科目以上含む62単位以上を取得した者
ハ 一定の専修学校の専門課程(※2)を修了した者で、社会科学に属する科目(※1)を1科目以上履修した者
ニ 司法試験合格者
ホ 公認会計士試験の短答式試験に合格した者(※3)
(2) 資格による受験資格
イ 日商簿記検定1級合格者(※4) 括弧 証明書類
ロ 全経簿記検定上級合格者(※5)
(3) 職歴による受験資格
イ 法人又は事業行う個人の会計に関する事務(※6)に2年以上(※7)従事した者 括弧 証明書類
ロ 銀行、信託会社、保険会社等において、資金の貸付け・運用に関する事務に2年以上(※7)従事した者
ハ 税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上(※7)従事した者
国税庁『税理士試験受験資格の概要』
財務に向いている人
財務は幅広い業務を担い、責任も重大であるため、向き不向きがある職種です。ここでは、財務に向いている人の特徴を3つ解説します。
- 情報分析ができる人
- 細かい業務でもミスが少ない人
- 説明が上手な人
情報分析ができる人
正しく財務分析をするためには、情報分析の能力が欠かせません。経営状態を見極めるために膨大なデータを分析する必要があるため、財務は情報分析ができる人に向いています。
また、情報分析からどのような行動をとるべきか、的確に判断することも重要です。
細かい業務でもミスが少ない人
財務は会社の経営に関わる重要な仕事ですが、財務分析そのものは細かい作業の繰り返しです。一方、その一つひとつの作業は全て経営に関わる重要な作業であるため、ミスは許されません。
そのため、財務には細かい作業でも確認を怠らず、ミスが少ない几帳面な人が向いています。
説明が上手な人
財務は、説明が上手な人に向いています。財務分析の結果を経営陣に説明する必要があるほか、IRなどで株主にプレゼンする必要があるためです。
財務戦略の説明は、今後の会社運営に大きく影響します。また、会社の経営状態によって金融機関の融資や株主の出資に影響が出るため、現状の経営状態を正しく伝えることは資金調達の面でも重要です。
財務に向いていない人
ここでは、財務に向いていない人の特徴を2つ解説します。
- 数字を読むのが苦手な人
- 大雑把な人
数字を読むのが苦手な人
財務は基本的に財務諸表などの数字で物事を判断するため、数字を読むのが苦手な人には向いていません。毎日数字と向き合うことになるため、数字に抵抗があると仕事が嫌になってしまう恐れもあります。
大雑把な人
財務の仕事は会社の経営に直結するため、細かな作業も正確に行うことが求められます。たった1円のミスでも、コンプライアンス違反やその他の問題が発生する可能性があります。そのため、大雑把な人には財務の仕事は向いていないでしょう。
財務の年収や給料事情
財務の年収や給料事情について確認していきましょう。
年代 | 財務の平均年収 |
20代 | 448万円 |
30代 | 605万円 |
全体 | 531万円 |
出典:マイナビエージェント「職種別平均年収ランキング 財務・会計」
国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、全国における正社員の平均年収は496万円です。財務全体の平均年収は、全国の平均年収よりも30万円ほど高いです。
このことから、会社において財務という職種の重要性が高いことが伺えます。また、キャリアアップすることで会社内でも重要なポジションに就くことができるため、年齢が上がるにつれてさらに年収がアップすることが期待できるでしょう。