編集者(エディター)とは?
編集者(エディター)とは、書籍や記事の制作に携わる仕事です。
取材や校正はもちろん、編集者は「写真撮影は誰に依頼するか」「かかるコストはどれくらいか」など企画を立てるところから仕事を始めます。また関わる媒体によっては、著者やライター、デザイナーなどと一緒に仕事をすることも多い職種です。
なお編集者は、出版社や編集プロダクションに所属する以外にも、フリーランス(個人事業主)という働き方ができます。
編集者(エディター)のやりがい
編集者のやりがいは、主に次の3つです。
- 自分の制作物が多くの人の目に触れる
- 常に新しい情報をキャッチできる
- さまざまな業務に携われる
自分の制作物が多くの人の目に触れる
自分の制作物が世間に出回り、人の目に触れるのは大きなやりがいと言えるでしょう。
例えば書籍や雑誌であれば書店に置かれ、Web記事などであれば企業のホームページのコンテンツとして掲載されることになります。読んだ人の心を動かし、場合によっては人生に大きな影響を与えることもあるかもしれません。
常に新しい情報をキャッチできる
編集者の仕事は、常に新しい情報をキャッチできます。
雑誌やWebコンテンツは、トレンドを把握することが重要です。企画を練るうちに、世の中の最新情報がインプットされていくでしょう。また取材やインタビューなどによって、あまり世間に知られていないような情報が得られることもあります。
場合によっては自らが流行の最前線に立ち、トレンドを作り上げていくこともできるでしょう。
さまざまな業務に携われる
編集者はさまざまな業務に携われます。仕事内容が編集作業のみに留まらず、発案・企画から印刷・製本まであるからです。
またターゲットによって表紙のデザインや内容、キャッチコピーなども変化するため、毎日変わり映えのする仕事です。そのためルーティンワークになりにくく、飽きがこない点で大きなやりがいがあると言えるでしょう。
編集者(エディター)が携わる媒体
編集者が携わる代表的な媒体は、下記の4つです。
- 書籍
- 雑誌
- 漫画
- Webコンテンツ
書籍
編集者が携わる代表的な媒体が書籍です。編集者が携わる書籍にはさまざまなジャンルがあり、例えば次のような種類があります。
- 文芸
- 実用書(趣味、旅行、料理など)
- 児童書
- 専門書
- 写真集など
書籍の編集者は「どのような表紙にするか」「どのようなアーティスト・著名人を起用するか」など、企画の段階から関わることが多いのが特徴です。必要な人員の手配や経費精算なども編集者が担当することがあります。
雑誌
書籍のほか、雑誌も編集者が携わることの多い媒体です。編集者が携わる雑誌のジャンルは多岐にわたり、例えば次のような種類があります。
- 総合誌
- 専門誌
- ファッション誌
- ビジネス誌
- 情報誌
など
雑誌はトレンドが求められることの多い媒体で、常に新鮮な情報が求められています。情報収集力や分析力のある人なら、長く働き続けられる媒体でしょう。
また月間や週間など、書籍と比較して発行ペースの早さが特徴です。それに伴い企画を立ち上げる頻度も高くなりがちで、仕事が忙しくなりやすい媒体と言えるでしょう。
漫画
漫画家と協力しながら仕事を進めていくのが、漫画担当の編集者です。読者の心に刺さるような魅力的なストーリーやキャラクター設定、時代背景などを漫画家とともに考えます。
加えて漫画家が漫画を描き続けられるようにサポートする必要があるため、メンタルケアも編集者の仕事と言えるでしょう。漫画家との相性が何よりも重要な媒体です。
Webコンテンツ
近年増えてきている編集者の仕事が、Webコンテンツの制作です。
Webは媒体の違いはあれど、業務内容は雑誌や書籍と大きく変わりありません。企画立案、ライターやデザイナーの手配、原稿チェックなどを行います。
紙媒体との大きな違いは、Web媒体の場合は閲覧情報や読者層といったデータが取得できる点です。ユーザーの傾向が掴みやすく、次回の制作に必要な参考データが蓄積されていきます。従来の枠組みにとらわれることなく、柔軟な発想で企画できるのも特徴です。
編集者(エディター)の仕事内容
編集者の仕事内容を、以下の順番で紹介します。
- 発案・企画
- 予算計画
- スケジュール立案・調整
- 発注・依頼
- 撮影・取材のアポ取り
- 原稿・デザインの確認、修正指示
- 校正・校閲
- 入稿・ゲラ刷り
- 印刷・製本
書籍やWebなどさまざまな媒体がありますが、入稿・ゲラ刷り、印刷・製本を除いて大きな仕事の流れは同じです。
発案・企画
初めに発案・企画を進めます。これは編集会議の中で行われる業務で、読者が興味を持てるような内容を考えて、企画書を作成する段階です。
企画がしっかりと練られていないとユーザーに受け入れられることはないため、非常に重要なフェーズと言えるでしょう。発案・企画に際して情報が不十分なときは、調査レポートを作成したり読者アンケートを取ったりしてアイデアを掘り出すこともあります。
予算計画
企画・発案の次に行われるのが、予算計画です。書籍やコンテンツを制作するにあたって、具体的には次のような出費を考えなければなりません。
- ライターの原稿料
- カメラマンの撮影料
- イラストレーターのイラスト料
- デザイナーのデザイン料
- モデルの出演料
- 印刷料
など
決まっている予算内で最大限のコストパフォーマンスを引き出せるかどうかは、編集者の手腕にかかっています。
またどの項目にどれだけのお金を費やして制作するのかによって、書籍やコンテンツの方向性に変化が生まれるため、予算計画は編集者にとって欠かせない業務です。
スケジュール立案・調整
予算計画が終わったあとに考えなければいけないのが、制作スケジュールです。
書籍や雑誌といった紙媒体は発売日が、Web媒体であれば公開日が決められているのが一般的です。原稿データを事前に印刷会社や管理会社へ納めなければなりません。
そのため、制作する前にきっちりとスケジュールを調整する必要があります。
また、制作にはさまざまなポジションのスタッフが関わることになるので、スケジュールどおりに業務が進まないこともあります。定期的に進捗を確認して、状況を確認するのも編集者の重要な仕事だと言えるでしょう。
発注・依頼
具体的なスケジュールが決まったあとは、発注・依頼をします。編集者だけで仕事は完結せず、多方面のプロフェッショナルと協力しながら制作していく必要があるからです。
具体的には、出版や公開に至るまでに次のような専門家へ発注をします。
- ライター
- カメラマン
- デザイナー
- フォトグラファー
- モデル
- イラストレーター
など
発注・依頼は各プロダクションや企業に所属する人のほか、フリーランスで活動している人に対して行うこともあります。
その際「どれくらいの報酬なのか」「具体的な業務内容やスケジュールはどうなっているか」などを上手に提案しなければなりません。相手が納得できるように話を進める必要があり、編集者には高い交渉力が求められます。
撮影・取材のアポ取り
必要に応じて、撮影や取材のアポ取りにも参加します。
例えばグルメ雑誌であれば、飲食店のオーナーや店長へ取材をします。また専門誌であれば、その分野に精通した専門家や教授へ取材をすることもあるでしょう。
編集者は当日滞りなく撮影・取材が進められるよう、事前に現場の立ち合いや下見(ロケハン)といった準備をしておく必要があります。
原稿・デザインの確認、修正指示
取材後は実際に制作が始まりますが、納品された原稿に関してデザインの確認や修正指示が必要です。
記事が企画に沿った内容になっているかどうかをしっかり確認し、方向性にズレがある場合は書き直しや追記の指示を出します。またデザインについても写真が見やすいか、明るさに問題はないかといった細かい部分の確認をしなければなりません。
編集者には、相手が理解できるように伝える力や的確な指示を出す能力も必要です。
校正・校閲
文章・写真・デザイン等に問題がなければ、次に校正・校閲が必要です。読者が読みやすい文章になっているか、誤字や脱字がないかなどをチェックしていきます。
特に重要なのが、掲載された情報が事実に基づいているかどうかの「校閲」と呼ばれる確認作業です。誤った情報を発信したり、他者の著作物を無断で掲載したりすると、出版差し止めや損害賠償請求といったトラブルにもつながりかねません。
そのため出版社にとって、校正や校閲はじっくり時間をかけて進める作業と言えるでしょう。なお出版社であれば、校正や校閲を専門にする部署もあります。
入稿・ゲラ刷り
紙媒体の場合、完成前の作業として入稿・ゲラ刷りが待っています。入稿とは原稿を印刷所に渡すことであり、ゲラ刷りとは印刷物の試し刷りのことです。
印刷所で刷られた原稿を見ながら、文字がかすれていないか、色味がおかしくないかといった確認をします。
印刷・製本
最後は印刷と製本です。それぞれのページがまとめられて一つの書籍になります。
発売日・公開日までにCMやSNSなどで告知することもあります。発売日を迎えるまでが編集者の仕事です。
編集者(エディター)の仕事に活かせる資格
編集者に必須の資格はありませんが、次のような資格を持っていれば仕事に活かせる可能性があります。
- 校正技能検定
- DTPエキスパート認証試験
校正技能検定
校正技能検定は、校正業務に役立つ資格です。日本エディタースクールが主催している試験で、初級から上級の3段階があり、基本的な校正能力の証明ができます。
初級は日本エディタースクールの指定科目の修得だけで認定されますが、中級や上級は原稿引合せの実技と専門知識が問われる学科試験が実施されるのが特徴です。
編集者としての校正業務はもちろん、校正技能検定に合格できれば出版社の校正担当として活躍できるでしょう。
DTPエキスパート認証試験
DTPエキスパート認証試験は、DPTや印刷に関する知識が身につく技能検定です。DTPは「Desk Top Publishing」の略で、コンピュータを使って印刷物を制作することを指します。
文字や画像、レイアウトにいたるまで印刷に関するさまざまな項目から出題されるのが特徴です。取得すれば印刷にも精通した編集者として、出版社で重宝されることでしょう。
編集者(エディター)に向いている人
編集者に向いている人の特徴は、大きく分けて次の3つです。
- 企画力・発想力が豊かな人
- 好奇心が旺盛な人
- コミュニケーションを取るのが好きな人
企画力・発想力が豊かな人
企画力・発想力が豊かな人は、編集者に向いています。出版物や公開記事がユーザーに受け入れられるためには、時として斬新なアイデアや発想が必要となるからです。
そしてただ理想の形を追い求めるのではなく、現状の予算や状況を踏まえた上で実現可能な領域で企画を練る力も求められます。さまざまな視点を持って物事を見られる人は、編集者としても活躍できるでしょう。
好奇心が旺盛な人
好奇心が旺盛な人も、編集者に向いています。好奇心を持ちさまざまな製品や作品に触れて「楽しい」「面白い」と感じられる人は、自身も同じように面白い作品や制作物を生み出せるからです。
また編集者は、必ずしも自分の得意な分野に携われるとは限りません。さまざまなものに対して興味が持てるような好奇心を持っている人は、未知のジャンルであったとしても、やりがいを持って仕事が進められるでしょう。
コミュニケーションを取るのが好きな人
コミュニケーションを取るのが好きな人は、編集者として活躍できるでしょう。
なぜなら編集者は、外注する際にライターを初めとするカメラマンやイラストレーターなど、さまざまな立場の人と関わることが多いからです。単に仕事を効率良く進めるだけでなく、お互いが気持ち良く仕事ができるような言葉遣いや気配りなどが求められます。
また編集者の場合、コミュニケーションは読者にも向けられています。伝わりやすいような文章、表現で読者の心に響くような内容を考えながら制作をしなければなりません。
編集者(エディター)に向いていない人
一方で編集者に向いていない人の特徴は、大きく分けて次の3つです。
- 時間管理が苦手な人
- 根気や体力がない人
- 流行に疎い人
時間管理が苦手な人
時間管理が苦手な人は、編集者に向いていないかもしれません。編集者の仕事には、タスク管理やスケジュール管理が求められるからです。
また入稿や製本など、各段階において期限が決められている仕事なので、時間厳守で納期を守れる人でなければ信頼を得るのは難しいでしょう。
根気や体力がない人
根気や体力がない人は、編集者には向いていません。納期が迫っている時期は残業することも多く、長時間勤務をしなければならない場面が多々あるからです。
また編集者は、社内の業務だけでなく撮影・取材のアポ取りなどで外の現場に赴く必要があります。デスクワークだけではなく自らの足を動かす必要があるため、体力が求められます。
流行に疎い人
流行に疎い人は、編集者として働くのは難しいかもしれません。
なぜなら編集者の仕事は、業界問わずさまざまな最新情報をキャッチする必要があるからです。特にファッション誌やビジネス誌などは、現在のトレンドを掴み企画を練るのが必須と言えるでしょう。
業務中だけのリサーチでは物足りないことが多く、日常的に「何が流行っているのか」「どうして流行っているのか」と考えを巡らせながら過ごす姿勢が大切です。
編集者(エディター)の年収や給料事情
編集者として働く正社員とアルバイト・パート、派遣社員の給与は次のとおりです。
勤務形態 | 年収・時給 |
正社員 | 年収499万円 |
アルバイト・パート | 時給1,145円 |
派遣社員 | 時給1,700円 |
出典:求人ボックス給料ナビ「編集者の仕事の年収・時給・給料」
総務省統計局の「家計調査」によると、国内全体の平均年収は433万円です。つまり正社員の編集者の年収は、比較的高いと言えるでしょう。
業界では従来の紙媒体に加え、今ではWeb媒体も取り扱うようになりました。しかしあらゆるジャンルの書籍を出版する総合出版社などはデジタル化にも対応するようになり、今も高い年収をキープしていることが推測されます。
ただし年収は企業の規模や業績、業務内容によっても変動するため、自分の年収が平均年収と一致するとは限りません。平均年収のデータは、あくまで参考程度に捉えておきましょう。