デザイナーとは
デザイナーとは、製品や雑誌の表紙、ホームページなどのデザインに関わる仕事です。その仕事の種類は多岐にわたり、それぞれで求められる知識や仕事内容は大きく異なります。
共通しているのは「クライアントの求めるデザインを生み出すこと」です。例えば10代・20代女性をターゲットにするなら流行を取り入れ目を引くようなデザインにする、落ち着いた雰囲気を出したいなら派手な色は使わないなどです。
クライアントの思いがきちんと伝わるデザインを考案するのが、デザイナーの仕事と言えます。
デザイナーの種類と仕事内容
デザイナーにはさまざまな種類があり、仕事内容も大きく異なります。今回は計7種類のデザイナーの仕事内容を紹介します。
- Webデザイナー
- ファッションデザイナー
- グラフィックデザイナー
- エディトリアルデザイナー
- CGデザイナー
- DTPデザイナー
- UI/UXデザイナー
Webデザイナー
Webデザイナーは、Webサイトのデザインを制作する仕事です。クライアントの要望に応じたレイアウトや構成を考えるだけでなく、ユーザーの使いやすさも考慮する必要があります。
大まかな仕事の流れは以下の通りです。
- ヒアリング・情報の整理
- ワイヤーフレーム(骨組みとなるデザイン案)の作成
- デザイン制作
- コーディング
デザイン制作にはPhotoshopやIllustratorといったソフトを使うのが一般的です。
コーディングとは、デザインをもとにHTMLやCSS、JavaScriptなどのプログラミング言語を記述していく作業を指します。コーディング作業をコーダーと呼ばれる人へ依頼する場合もありますが、自身でもコーディングできるようになればデザインの幅が広がるでしょう。
ファッションデザイナー
ファッションデザイナーは洋服や小物などをデザインする仕事であり、以下のような流れで作業を進めるのが一般的です。ただ単に身につけるものをデザインするだけではありません。
- 流行やトレンドの調査
- デザイン作成
- パターン(型紙)制作
- 仮縫い作業
- 仕様書の作成
- サンプルチェック
- 最終確認・量産指示
パターン制作やサンプルチェックでは繰り返し修正し、細かい部分まで調整していきます。
またデザイナーには、自分でブランドを持って顧客一人ひとりの依頼に応じたデザインをする「オートクチュールデザイナー」と、企業に勤める「企業デザイナー」の2種類があります。
グラフィックデザイナー
グラフィックデザイナーは、主に印刷物(紙媒体)をデザインする仕事です。例えばポスターや雑誌の広告、パンフレットなどが挙げられます。大まかな仕事の流れは以下の通りです。
- ヒアリング
- デザイン制作・修正
- 印刷会社にデザインを入稿
仕事を円滑に進めるうえで大切なのは、工程ごとにクライアントへ確認したり書面にまとめたりすることです。要望と違うものに仕上がった場合、また1から作り直さなければならない場合もあります。
エディトリアルデザイナー
エディトリアルデザイナーは、ページ数が多い書籍やカタログなどをデザインする仕事です。流れを意識しながら、美しくユーザーが読みやすいものへと仕上げます。
大まかな仕事の流れは以下の通りです。
- クライアントや著者との方向性のすり合わせ
- ラフデザインの作成
- レイアウトの作成・原稿の配置
- 校正、校閲
- 入稿データ作成
グラフィックデザイナーと少し似ていますが、この2つには明確な違いがあります。
エディトリアルデザイナーは、ページ数が多い出版物のデザインを担当します。
一方でグラフィックデザイナーは、視覚表現全般のデザインを請け負う仕事です。出版物だけでなく、ポスターやパンフレットなどあらゆるデザインを担当します。
CGデザイナー
CGデザイナーは、CGソフトを使って2Dや3Dのグラフィックスを作成する仕事です。アニメや映画だけでなく、建築物や車の設計など幅広い業界で活躍しています。
2Dと3Dでは制作内容が大きく異なり、一般的には3Dの方が高度な技術が必要です。モデリングやマテリアル、ライティングなどさまざまな段階を踏むことでリアルな表現を生み出しています。作業量が多いため、工程ごとに作業を分担して行うのが一般的です。
DTPデザイナー
DTPデザイナーは、雑誌やチラシなどの印刷物(紙媒体)のデザイン制作と、印刷用データ
の作成を行う仕事です。ユーザーが内容を把握しやすいよう、バランスの良いレイアウトへと仕上げていきます。
大まかな仕事の流れは以下の通りです。
- 方向性のすり合わせ
- ラフデザインの作成
- デザイン制作・印刷用データの作成
- 試し刷り・チェック・修正
データの調整や加工などを行うDTPオペレーターという仕事もありますが、DTPオペレーターの仕事をDTPデザイナーが兼任している場合もあります。
UI/UXデザイナー
UIデザイナーは、さまざまなUIをデザインするのが仕事です。スマホアプリの画面やWebサイトなどユーザーが直接触れる部分をUIと言い、UIデザイナーは使いやすさや見やすさに配慮したデザインを設計します。
UXデザイナーは、どこに何を配置するか、どのような順番で情報を提供するかを決めながらデザインするのが仕事です。ニーズを把握しつつ、ユーザーが「快適に使える」「楽しい」と感じられるようなデザインを設計していきます。
Webデザイナーと違うのは、重視するポイントです。Webデザイナーはユーザーのことを考えつつも、見た目を重視したデザインを行うのが特徴です。一方でUI/UXデザイナーはユーザーが第一であり、機能性を重視してデザインを行います。
デザイナーに必要なスキル
デザイナーにはさまざまな種類があるため一概には言えないものの、必要なスキルは大きく分けて4つあります。デザインに関する知識以外の能力も必要です。
- デザインの知識やセンス
- 画像編集ツールを使いこなす能力
- コミュニケーション力
- 課題解決能力
それぞれ詳しく説明していきます。
デザインの知識やセンス
デザインの知識やセンスは、デザイナーとして活躍していくうえで基本となるスキルです。トレンドは時間が経つごとにどんどん入れ替わるため、常にアンテナを張り学び続けるのが大切です。多くの知識を身に付けておけば、クライアントの要望にも応えやすくなります。
知識はインターネットや書籍で得られますが、センスを自分で磨くことが可能です。例えば、さまざまなデザインの観察や分析を日々行うなどです。インプットとアウトプットを繰り返し、少しずつスキルを高めていくと良いでしょう。
画像編集ツールを使いこなす能力
大抵の場合、デザイナーは画像編集ツール(PhotoshopやIllustratorなど)を使って仕事をします。ただ単にソフトを使えるだけでなく、上手に使いこなせる能力があれば、クライアントの要望を実現しやすくなるでしょう。
また、バージョンアップした際は新機能をいち早く学び、表現方法を増やしていくのが望ましいです。
コミュニケーション力
デザイナーは、クライアントや同じ会社のメンバーとコミュニケーションを取りながら仕事を進めていきます。議論やプレゼン、クライアントとの打ち合わせなど人と関わる場面が多いため、コミュニケーション力は必須です。
場合によっては、クライアントに言いづらいことを伝えなければいけなかったり、意見が割れてしまったりもするでしょう。そんなとき、相手に不快感を与えることなく自分の思いを言語化できれば、あなたへの評価はグッと上がりやすくなります。
課題解決能力
デザイナー全般に共通しているのは「クライアントの求めるデザインを生み出すこと」です。そのためには、クライアントの意図を正確に読み取って課題を解決する能力が必要になります。
デザインはあくまで課題を解決するための一つの手段であり、正解・不正解は一概にありません。おしゃれなデザインに仕上げても、売上や成果につながらない可能性も十分あります。
課題解決能力を高めるにはヒアリング力も重要です。クライアント自身が言語化できていない部分まで深掘りしていければ、依頼内容の意図を把握しやすくなります。
デザイナーになるには
デザイナーになるための方法は主に4つあります。未経験であっても努力次第でデザイナーになれるため、諦めず学び続けるのが大切です。
- 大学・専門学校に通う
- 民間スクールで学ぶ
- 独学で学ぶ
- 未経験可の企業へ就職する
大学・専門学校に通う
デザイン系の学校へ通うと、デザイナーに求められる知識を総合的に学べます。一般的に必要な期間は2~4年間です。
就職をサポートしてくれる学校も多いため、知識を学んだ後にすぐに働き始められる可能性は高いでしょう。著名な先生がいる学校の場合は、今後に役立つ有益な話が聞ける場合もあります。
デメリットは、他の方法よりも費用がかかること、働きながら学校へ通うのが難しいことです。長期間通い続けなければならないため、時間とお金に余裕がある人に向いていると言えます。
民間スクールで学ぶ
民間スクールはカリキュラムに沿って学習していくため、デザインに関する知識を効率的に学べます。オンラインで完結するタイプもあれば特定の場所へ通学するタイプもあり、自分のライフスタイルに合わせて選べるのが大きなメリットです。
かかる費用は大学・専門学校よりも安く済みます。ただし、地域によって通学するタイプのスクールがない場合もあります。興味のある人は、一度近くの民間スクールを調べてみましょう。
独学で学ぶ
独学は、動画サイトや書籍などを活用して自分でデザインを学んでいく方法です。勉強する場所・時間帯を選べるため、自分のペースを崩さずに学習を進められます。費用を抑えられる分「デザインを学びたいけれど金銭的にちょっと…」と悩んでいる人にもおすすめです。
デメリットとしては、効率的な学習が難しい点が挙げられます。身近に教えてくれる人がいないため、疑問点があった場合もすぐに質問ができません。
また独学は時間管理ができる人に向いているものの、そうでない人はサボりがちになってしまう可能性があります。一緒に勉強できる仲間を見つけたりSNSに学習経過をアップしたりするなど、モチベーションを保つ工夫が必要でしょう。
未経験可の企業へ就職する
新卒や未経験者でも可能な企業へ就職し、働きながらスキルを身に付けるのも一つの手段です。求人に未経験OKと記載している企業は、教育体制が整っている傾向にあります。
ただし、全くデザインに関わったことがない未経験者が応募できる求人は決して多くありません。応募が殺到する可能性もあるため、デザインの基礎について学んだりポートフォリオを作成したりと、自分の学習意欲を伝えるのがポイントです。
デザイナーが取得しておきたい資格
デザイナーに必須な資格はありません。しかし取得しておくことでデザインの知識を持っていることを証明でき、仕事や就職に役立つ可能性があります。
具体的には、以下のような資格はデザイナーと相性が良いです。
- Illustrator®クリエイター能力検定試験
- Photoshop®クリエイター能力検定試験
- 色彩検定
- Webデザイナー検定
- DTPエキスパート
- ファッションビジネス能力検定
- Webクリエイター能力認定試験
- 画像処理エンジニア検定
- CGクリエイター検定
業種ごとに有利に働く資格は大きく異なるため、自分の進みたい分野に合ったものを調べてみましょう。
デザイナーに向いている人
デザイナーに向いているのは以下のような人です。
- 誰かの役に立つのが好きな人
- 細かいところまでこだわる人
- 好奇心旺盛な人
それぞれ詳しく説明していきます。
誰かの役に立つのが好きな人
誰かの役に立つのが好きな人は、デザイナーに向いています。
デザイナーは、自分が良いと思うものだけを作り続ける仕事ではありません。クライアントが抱えている悩みや課題を解決できるよう考え尽くし、デザインを進めていきます。
誰かの役に立てるよう努力できたり、感謝されることにやりがいを感じられたりする人は、デザイナーとして長く活躍できるでしょう。
状況によっては、何度も修正依頼がくることもあります。そんなとき、誰かの役に立つのが好きな人なら、クライアントの要望を実現しようと粘り強く努力し続けられるでしょう。
細かいところまでこだわる人
細かいところまでこだわれる人は、デザイナーに向いています。クオリティの高いデザインは、細部にまで注目してこだわり抜くことで生まれるからです。
例えばWebデザイナーであれば行間をそろえたりサイトの雰囲気に合ったフォントにしたりする、ファッションデザイナーであればポケットの位置をミリ単位で調整するなどです。大雑把な人よりも、細かい作業が得意な人の方が「優秀」と評価されやすいでしょう。
好奇心旺盛な人
好奇心旺盛な人は、デザイナーに向いています。デザインはトレンドの移り変わりが激しく、日々のインプットが欠かせない業種だからです。
デザイナーには、世の中にアンテナを張って情報を収集する能力が必要です。流行に鈍感な人よりも、好奇心旺盛な人の方が積極的に楽しく行動できるでしょう。
デザイナーに向いていない人
反対に、デザイナーに向いていないのは以下に当てはまる人です。
- コミュニケーションが苦手な人
- 大雑把な人
- 柔軟な発想ができない人
コミュニケーションが苦手な人
コミュニケーションが苦手な人は、デザイナーに向いていないと言えます。クライアントや同じ会社のメンバーなどさまざまな人との交流が必須であり、密なコミュニケーションは欠かせないです。
もちろん他の職業でも必要な能力ですが、その中でもデザイナーは特にコミュニケーション力がカギとなります。上手なやり取りができないと、クライアントを不快にさせてしまったり信頼を失ったりする恐れもあるでしょう。
大雑把な人
デザイナーは細かい作業が多いため、大雑把な人には向いていないと言えます。ミリ単位の修正が必要な場合でも「これぐらいでいいか」とざっくり決めてしまうと評価が下がる恐れがあります。
作業の細かさは意識することで改善はできますが、大雑把な作業が癖になっている人は苦労するかもしれません。
柔軟な発想ができない人
柔軟な発想なくしては良いデザインは生み出せません。
自分の考え方に囚われすぎると、クライアントと意見が食い違ったり古臭いデザインになってしまったりする恐れもあるでしょう。複数のデザイン案を出さないといけない場合は、同じテイストのものばかりになってしまう可能性もあります。
斬新なアイデアを生み出すには、流行やトレンドを把握しつつ相手の意見を受け入れる素直さが大切です。
デザイナーの給料や年収事情
デザイナーの給料や年収事情は、デザイナーの種類によってさまざまです。ここでは一例として、Webデザイナーとファッションデザイナーの給料・年収事情を紹介します。
【Webデザイナーの場合】
勤務形態 | 平均年収・平均時給 |
正社員 | 年収449万円 |
アルバイト・パート | 時給1,094円 |
派遣社員 | 時給1,794円 |
出典:求人ボックス給料ナビ「Webデザイナーの仕事の年収・時給・給料」
【ファッションデザイナーの場合】
勤務形態 | 平均年収・平均時給 |
正社員 | 年収398万円 |
アルバイト・パート | 時給1,001円 |
派遣社員 | 時給1,397円 |
出典:求人ボックス給料ナビ「ファッションデザイナーの仕事の年収・時給・給料」
一方で、国内全業界の平均年収は以下の通りです。
【国内平均】
勤務形態 | 平均年収・平均時給 |
正社員 | 年収496万円(※1) |
アルバイト・パート | 時給1,144円 ※2022年6月度のデータ (※2) |
派遣社員(関東・東海・関西の場合) | 時給1,680円 ※2022年2月度のデータ (※3) |
※1 出典:国税庁「令和2年分 民間給与実態統計調査」
※2 出典:マイナビキャリアリサーチLab「2022年6月度アルバイト・パート平均時給レポート」
※3 出典:ジョブスリサーチセンター「2022年2月度 派遣スタッフ募集時平均時給調査【三大都市圏(関東・東海・関西)】」
同じデザイナーでも、正社員のWebデザイナーとファッションデザイナーを比較すると50万円程度の年収差があります。どの分野のデザイナーになるかで、給料は大きく変わってくるでしょう。
また、デザイナーはスキルアップに応じた年収アップも期待できます。上記で例に挙げたデザイナーは正社員の平均年収が国内平均よりも低くなっていますが、スキルアップ次第でより高年収を目指せます。