インフラエンジニアとは?わかりやすく簡単に解説
インフラエンジニアとは、IT基盤の構築を行うエンジニアのことです。
システムエンジニアは知っていても、インフラエンジニアは聞き慣れないという人も多いのではないでしょうか。最初にインフラエンジニアの言葉の定義、システムエンジニアとの違いについて簡単に紹介します。
言葉の定義
インフラとはインフラストラクチャー(Infrastructure)の略で、人々の暮らしをサポートする基盤を意味します。ただしITの世界で使われるインフラという言葉は、主に情報システム(コンピューター・OS・通信回線・ネットワークなど)を指します。
つまりインフラエンジニアとは、コンピューター・OS・通信回線・ネットワークなどの情報システムを取り扱うエンジニアのことです。
システムエンジニアとの違い
システムエンジニアの仕事はITシステムの開発が中心で、ソフトウェアやアプリケーションなどの設計・開発に携わります。一方インフラエンジニアは、コンピューター・OS・通信回線・ネットワークなどが担当領域です。
コンピューター・OS・通信回線・ネットワークなどの基盤がないと、ソフトウェアやアプリケーションは作れません。そのため、インフラエンジニアの仕事がシステムエンジニアの仕事を支えているとも言えます。
SEに興味がある方は、「SE(システムエンジニア)とはどんな仕事?仕事内容や必要なスキルを紹介」も読んでみてください。
インフラエンジニアの仕事のやりがい
インフラエンジニアの仕事のやりがいは、主に次の3つです。
- 社会への貢献度が高い
- クライアントと信頼を築きやすい
- 幅広い知識やスキルが身につく
社会への貢献度が高い
インフラエンジニアは、社会への貢献度が高くやりがいがあります。メールやSNS、スマートフォンのアプリなどは私たちにとって身近なものですが、これらはインフラエンジニアが構築する情報システムなくして成り立たないためです。
インフラエンジニアは一般的な知名度こそ高くないものの、実は身近にあるさまざまなネットワーク技術を成立させています。
クライアントと信頼を築きやすい
インフラエンジニアはクライアントと信頼を築きやすく、やりがいにつながります。
ITインフラの保守・運用は、それまでの開発経緯や過去の障害履歴などを把握していないと実施できないため、クライアント側からすると発注先を簡単に変えることができません。そのため一度契約を締結した後は長い付き合いになりやすく、自然と信頼関係が築かれていきます。
またシステムの障害対応はクライアント側と合同で行うケースもあり、二人三脚で仕事を進めることが多いのも信頼が構築されやすい理由です。もし目の前でトラブルが解決できれば、相手から直接感謝の言葉をもらえることもあるでしょう。
幅広い知識やスキルが身につく
インフラエンジニアは、仕事を通じて幅広い知識やスキルを得られるので非常にやりがいがあります。
具体的には次のような知識・スキルです。
- ネットワーク知識
- サーバー知識
- セキュリティ知識
- プログラミングスキル
- マネジメントスキルなど
上記の知識・スキルは、IT業界全般で求められます。そのためエンジニアとしての成長につながるのはもちろん、インフラエンジニア以外へのキャリアチェンジにも役立つでしょう。
インフラエンジニアの仕事内容
インフラエンジニアの仕事内容について、下記4つの工程に分けて紹介します。
- 設計
- 構築
- システム監視・運用
- レポート分析
①設計
まずは顧客からの要望をヒアリングをして、システムの設計を進めます。
ただ理想を追うだけではなく、顧客から提示される予算も考えながらより良いプランを設計しなければなりません。要望を聞きながらどのような機能を持たせ、どのような性能を実現するのかといったことを検討する必要があります。
②構築
設計されたインフラを、実際にハードウェアへと繋いで構築していきます。
機器の組み立てや配線の接続は、物理的にサーバーをネットワークに繋がなければならないため、インフラ機器に関する一定の知識が必要です。またインフラエンジニア自ら直接機器を運ぶこともあるため、思った以上に重労働が課せられるフェーズだと言えるでしょう。
とは言えクラウド業務が主流になりつつある現在は、画面やコマンドを使って設定する場面も多々あります。
③システム監視・運用
構築後は、インフラがサーバーダウンや通信遮断することなく正常に作動しているかどうかを常に確認しなければなりません。
システムが一時的に安定している場合でも、状況によってサーバーが許容できるアクセス量を大幅に超えてしまうことがあります。万が一トラブルが起こったら原因を早急に特定し、問題解決に努めなければなりません。
④レポート分析
システムの監視・運用を進めながら、その動作状況・内容をレポートにして分析します。監視項目の設定や再設計を行い、より効果的な運用に向けて改善や修正が必要な箇所を洗い出す目的もあります。
システム構築だけでなく、効果的な運用のための改善策を提案するまでがインフラエンジニアの仕事と言えるでしょう。
インフラエンジニアの種類
一口にインフラエンジニアと言っても、以下のように細分化される場合もあります。
- サーバーエンジニア
- ネットワークエンジニア
- セキュリティエンジニア
- 保守・運用エンジニア
サーバーエンジニア
サーバーエンジニアは、主にサーバーの構築や運用、保守をする仕事です。Webサーバーやデータベースサーバーといったさまざまなサーバーを取り扱うため、幅広い知識が求められます。
またサーバー機器をラックに固定したり、機器と配線を繋いだりといった物理的な作業も多く発生する職種です。
ネットワークエンジニア
ネットワークエンジニアは、主にネットワーク環境の設計・構築・運営をする仕事です。
ルーターやスイッチといったネットワーク機器を選定し、クライアントだけでなく社内ネットワークの保守や運用に携わることもあります。サーバーやデータベースだけでなく、セキュリティに関する知識や機器の特性なども知っておかなければなりません。
セキュリティエンジニア
セキュリティエンジニアは、社内のネットワークやシステムをサイバー攻撃から守る仕事です。セキュリティに配慮したシステム設計・運用に加え、サイバー攻撃を未然に防ぐための調査や対策などを行います。
ネットワーク環境が普及して情報セキュリティへの意識が高まる中、現在需要が高まっている職種の一つと言えるでしょう。
保守・運用エンジニア
保守・運用エンジニアは、システム障害が起こらないように保守・運用をする仕事です。
もし障害が発生したときは、すぐさま原因の究明を行って復旧に努めます。イレギュラー対応が求められることが多く、ソフト・ハードに関わらず幅広い知識が求められます。
また保守・運用エンジニアは顧客対応が多いため、コミュニケーションも必要な仕事と言えるでしょう。
インフラエンジニアに必要なスキル
インフラエンジニアに必要なスキルは、主に次の4つです。
- プログラミングスキル
- コミュニケーションスキル
- マネジメントスキル
- 英語スキル
プログラミングスキル
インフラエンジニアには、他のエンジニアと同じくプログラミングスキルが求められます。サーバーなどを自動処理をする際には、シェルスクリプトやPowerShellと呼ばれるバッチ系のプログラムを使用するからです。
プログラミングができるようになれば、サーバー上でアプリケーションを運用する際にも最適な設定ができます。
コミュニケーションスキル
インフラエンジニアには、コミュニケーションスキルも必要です。いずれの工程もチームで進めることが多く、目標を達成するまでメンバーとこまめに連絡取り合って業務に当たっていかなければなりません。
また社内だけでなく、レポート分析の際はクライアントにわかりやすく説明・報告するためのプレゼン力も求められます。
マネジメントスキル
インフラエンジニアとしてキャリアアップするためには、マネジメントスキルが必要です。実績を積めば積むほど、チーム全体をまとめるような仕事を任せられるからです。
インフラ開発のプロジェクトは短くても3ヶ月、長いものだと数年に渡って開発を行うことがあります。大きなプロジェクトを細かく段階に分けて、それぞれにどのくらいの期間・人員が必要かを事前に考え計画をしっかり練らなければなりません。
英語スキル
インフラエンジニアには、英語スキルが求められることがよくあります。ハードウェアやソフトウェアのマニュアルは英語で書かれていることが多いからです。
英語が読めれば、機器の組み立てや配線の接続もスムーズに業務を進められるでしょう。流暢な英語を話せるほどの英語力は不要ですが、読解力については高めておく必要があります。
インフラエンジニアが取得すべき資格
インフラエンジニアが取得すべき資格は、主に次の7つです。
- 基本情報技術者試験
- 応用情報技術者試験
- 情報処理安全確保支援士試験
- CCNA/CCNP/CCIE
- LPIC/LinuC
- AWS 認定ソリューションアーキテクト
- ORACLE MASTER(オラクルマスター)
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は、ITに関する基本知識や技能を習得できる国家資格です。情報処理全般への理解を証明するメジャーな資格ですが、出題範囲が広いため万全の対策が求められます。
試験は毎年春と秋の2回で、合格率は毎年25%前後です。
※出典:IPA独立行政法人 情報処理推進機構「基本情報技術者試験(FP)」
応用情報技術者試験
応用情報技術者試験は、IT技術のほか管理や経営の部分まで網羅的な知識が習得できる国家資格です。出題範囲は技術のみならず、ITにおける管理や経営など広い分野が出題されます。
取得すれば、技術から管理まで幅広い知識と応用力を身に付けたエンジニアであることを証明できる資格です。
試験は毎年春と秋の2回開催されます。合格率は20%前後と、基本情報技術者試験よりも難易度は高いです。
※出典:IPA独立行政法人 情報処理推進機構「応用情報技術者試験(AP)」
情報処理安全確保支援士試験
情報処理安全確保支援士試験は、セキュリティに関連する資格の一つです。セキュリティ全般に関する高度な知識が要求され、難易度の高い試験として知られています。
また資格を維持するためには、試験合格後も定期的に講習を受講しなくてはなりません。
※出典:IPA独立行政法人 情報処理推進機構「情報処理安全確保支援士試験」
CCNA/CCNP/CCIE
CCNA/CCNP/CCIEは、ネットワーク機器メーカーのシスコシステムズが提供する認定資格です。
いずれも世界共通基準の資格で、取得すればネットワークエンジニアとしての基本スキルが備わっている証明となります。
それぞれ難易度が異なり、出題内容は次のとおりです。
資格名(レベル) | 出題内容 |
CCNA(アソシエイト) |
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CCNP(プロフェッショナル) |
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CCIE(エキスパート) |
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LPIC/LinuC
LPIC/LinuCは、Linux環境の構築や運用に関する技術力を認定する資格です。更に、クラウドシステムやアプリケーション開発に必要なスキルを有した技術者であることの証明もできます。
LPICは世界で実施されている認定試験で、スコアと合否の判定だけを知らせる方式を取っているのが特徴です。一方LinuCは日本の市場に最適化した日本独自の試験であり、受験者はスコアや合否判定の他、合格基準や項目別スコアも教えてもらえます。
※出典:LinuC LPI-Japan「LinuCレベル3 300」
AWS 認定ソリューションアーキテクト
AWS 認定ソリューションアーキテクトは、Amazonが提供するAWS(Amazon Web Service)の認定資格です。
クラウドの知識を証明する中級レベルの認定資格で、AWSを一年以上使った実務経験をもつソリューションアーキテクト担当者を対象としています。他にもクラウドサービスに関する資格は存在しますが、AWSのシェアが最も高いため、優先して取得すべき資格と言えるでしょう。
AWS 認定ソリューションアーキテクトは、アソシエイトレベルとプロフェッショナルの2つです。
アソシエイトレベルは、AWSで必要なデプロイや管理の他、安全にも考慮した構成力が問われます。一方プロフェッショナルは、それに加え可用性・耐障害性・信頼性を考慮したアプリケーションの設計能力が必要です。
※出典:AWS Certified Solutions Architect「Professional認定」
ORACLE MASTER(オラクルマスター)
ORACLE MASTERは、アメリカのソフトウェア会社「Oracle Corporation」が認定する、オラクル社製品の知識を証明する資格です。
下記のように専門分野ごとに多数の認定資格があり、そこからさらに細かく分類されています。
- Database / MySQL /Enterprise Management
- Java / Middleware
- OCI (Oracle Cloud Infrastructure) / PaaS (Platform as a Service)
- SaaS (Software as a Service)
- O/S, H/W, 仮想化
世界的にも知名度が高いため、取得すれば技術力の高いエンジニアとして評価されるでしょう。
※出典:Oracle University「All Certification Exams」
インフラエンジニアに向いている人
インフラエンジニアに向いているのは、次のような人です。
- 細かい作業が好きな人
- チームワークが得意な人
- どんなことにでも興味を持てる人
細かい作業が好きな人
細かい作業が好きな人は、インフラエンジニアとして働きやすいでしょう。小さなミスが大きなトラブルにつながる仕事であり、設計段階から細かい部分にまで気を配る必要があるからです。
小さな違和感を見逃さず、注意深く作業にあたれるエンジニアが求められています。
チームワークが得意な人
チームワークが得意な人は、インフラエンジニアに向いています。ITインフラを構築するためには、さまざまな人と協力し合う必要があるからです。
具体的には各フェーズにおいてクライアント、上司・同僚、社内の関連部署とコミュニケーションを取る必要があります。インフラエンジニアは、さまざまな立場や職種の人たちとの連携が発生することの多い仕事と言えるでしょう。
どんなことにでも興味を持てる人
どんなことでも興味を持てる好奇心旺盛な人は、インフラエンジニアとして活躍できるでしょう。IT技術は日々進化を続けており、常に自分から最新の知識や情報を学び続ける姿勢が必要だからです。
常にアンテナを張り巡らせて、仕事で活かせそうな情報をインプットし続けられることは、インフラエンジニアとして活躍するための必要条件と言えます。
インフラエンジニアに向いていない人
一方でインフラエンジニアに向いていないのは、次のような人です。
- 地道な作業が好きな人
- 勉強が苦手な人
- 不規則な勤務をしたくない人
地道な作業が苦手な人
地道な作業が苦手な人は、インフラエンジニアに向いていません。インフラエンジニアは大掛かりな仕事だけでなく、端末設定確認・プリンタ設定確認などの地道な作業も多く求められるからです。
また基本的にはルーティンワークが多いため、毎日コツコツと頑張れる人でないと続けるのは難しいでしょう。
勉強が苦手な人
勉強が苦手な人は、インフラエンジニアに向いていません。インフラエンジニアは常に最新のIT技術に関する情報を吸収し続ける必要があり、仕事の時間以外にも勉強が必要となるからです。
プライベートの時間を犠牲にしてまで勉強をしたくないという人は、やりがいが得られずに働きづらさを感じるかもしれません。
不規則な勤務をしたくない人
不規則な勤務をしたくない人は、インフラエンジニアに向いていません。インフラエンジニアは常にシステムの監視が必要であり、シフト勤務が多いからです。
また場合によっては、夜勤や休日出勤をすることもあります。夜勤や休日出勤をすれば手当がつくものの、規則的な勤務を望む人には辛いかもしれません。
インフラエンジニアの年収や給料事情
勤務形態別に見たインフラエンジニアの給与は次のとおりです。
勤務形態 | 年収・時給 |
正社員 | 年収534万円 |
アルバイト・パート | 時給1,143円 |
派遣社員 | 時給2,340円 |
出典:求人ボックス給料ナビ「インフラエンジニアの仕事の年収・時給・給料」
総務省統計局の「家計調査」によると、日本国内の平均年収は433万円です。つまり、正社員のインフラエンジニアの平均年収534万円は、国内平均よりも100万円以上高いです。
ただし、実際に得られる給与は企業規模や担当する業務などによって異なります。上記のデータは参考に留めておき、実際の求人から納得できる給与の企業を選びましょう。