店長とは何か解説
店長とは、店舗の責任者として企画や人事、仕入れ、財務管理などさまざまな業務を担う職業です。どのような業界であっても店舗を構えるのであれば、基本的には店長、もしくは店長に類する役割を持った人が配置されます。
ひとえに店長といっても、業界によって行う仕事や役割が異なるでしょう。そのため、一般的な店長の仕事に加えて、それぞれの業界の知識やスキルを身に付ける必要があります。
店長の仕事内容
店舗の責任者である店長は、店舗運営にかかわる幅広い仕事を行います。先述した通り、業界ごとに店長の仕事内容が違う場合もありますが、主な店長の仕事内容は下記の7つです。
- 人材マネジメント
- 財務管理
- 在庫・仕入れ管理
- 資産管理
- 企画
- 本社との連携
- イレギュラー対応
人材マネジメント
店長は、店舗の運営に欠かせない人材をマネジメントする必要があります。店長が行う人材マネジメントは、主に下記4つです。
- 採用
- 育成
- 配置
- 評価
採用
店舗には従業員が欠かせないため、正社員やアルバイト、パートなどのさまざまな形態で採用を行います。店長は、店舗の責任者として書類選考や面接などの採用活動を行わなければなりません。
採用では、ただ従業員を増やすためではなく、店舗に必要な人材を採用する必要があります。そのためには、自社や店舗の経営戦略を把握することが重要です。従業員の採用は、企業価値を高めることにもつながります。
育成
育成は、店長として店舗を運営していくうえで欠かせない仕事です。店舗は、店長だけではなく従業員がいることで機能します。従業員の育成が店舗の質にもつながるため、従業員が個々の力を発揮できるよう、店長が研修やOJTなどを担当する必要があるでしょう。
特にアルバイトやパートがいる店舗の場合は、従業員の入れ替わりが多くなることもあるため、育成の業務負担が多くなる可能性があります。育成を通して、業務スキル向上だけではなく、従業員一人ひとりの特性などを把握することも重要です。
配置
社員の人員配置は、店長が行う人材マネジメントの中でも特に重要な仕事です。また、人員配置は店舗の規模によっても重要度が変わってきます。
例えば、一つひとつの店舗が小さいコンビニなどであればレジや品出しなどの役割分担はあるものの、配置を深く考える必要はありません。しかし、スーパーなど複数の売り場がある場合、それぞれの人材を適切に配置する必要があるでしょう。
時間帯や曜日、季節などによっても売り場の混み具合が変わるため、それらの影響を踏まえて人員を配置しなければなりません。そのほかにも、体調不良などによる急な欠勤にも対応できるようにしておく必要があるでしょう。店長は従業員を最適に配置できるよう、常に店舗全体を俯瞰して配置を考えます。
評価
店長は、上司としてそれぞれの従業員の働きに応じて適正に評価を行います。従業員の働きを評価して、成績が良くない従業員に対しては、責めるのではなく目標達成のために何が必要かを一緒に考えることが重要です。
客観的に評価がわかり、従業員のやる気や熱量を高める評価基準を作成すると、モチベーションを維持しやすいでしょう。評価基準がスキル向上や店舗の質向上にも影響する内容であれば、従業員の評価が上がるとともに店舗の評価も上がっていくでしょう。
財務管理
店長は店舗の収入・支出などのお金を管理して、正しく店舗を運営する必要があります。売り上げや予算の管理はもちろんのこと、家賃や光熱費などの日々の店舗運営に必要な支出も把握しておかなければなりません。
店舗の財務状況は本社に報告する必要があるため、報告書などにまとめる必要もあるでしょう。
在庫・仕入れ管理
店長は店舗の商品や材料の在庫を管理し、商品の売れ行きなどにあわせて適宜仕入れを行う必要があります。季節ごとのイベントに合わせて商品・材料を仕入れるなど、タイミングにあった適切な在庫・仕入れ管理が求められるでしょう。
在庫・仕入れ管理ができていなければ、販売機会の損失につながる恐れがあります。とはいえ、仕入れすぎると在庫を抱えてしまいかねません。適切な在庫・仕入れ管理を行うには、店舗の売れ筋商品などの把握が必要です。
資産管理
店舗そのものや設備、備品などの管理も店長の仕事です。どこでどのような設備や備品を使用しているか、修理や買い替えの必要があるかなどを常に確認しておく必要があります。
また、店舗の外装や内装は、常にお客様の目に留まるものであるため、常に綺麗にしておかなければなりません。
企画
店舗の売上を上げるために、キャンペーンやイベントなどを開催することがあります。本社からの指示で行うこともありますが、店舗単位で行うこともあるでしょう。これらのキャンペーンやイベントなどを企画するのも店長の仕事です。
イレギュラー対応
飲食や販売など、お客様と直接やり取りをする店舗では、苦情やクレームなどのイレギュラーが発生する可能性があります。このようなイレギュラーが起こった際は、その重要度によっては責任者である店長が対応する必要があるでしょう。
また、災害やその他のトラブルなどのイレギュラーが起こることも考えられます。その際にどのような行動をとるべきかを速やかに判断して、従業員に指示を出す必要があります。
本社との連携
店長は、売上や利益、イレギュラーなどの店舗運営にかかわる事柄を本社に報告しなければなりません。また、本社側から連絡や指示を受けることもあり、店舗の従業員に共有する必要もあるでしょう。本社が企画したキャンペーンなどを行うために連携する際も、店長が店舗側の代表者として対応しなければなりません。
本社との連携は、店長がただ従業員に指示をするだけでは不十分です。本社と従業員のパイプ役として、トップダウンで上からの指示を伝えるだけではなく、従業員から上がってくる意見にも耳を傾け、必要であれば本社に報告する必要があります。
店長の仕事の魅力ややりがい
仕事内容が幅広い店長には、多くの魅力ややりがいがあります。ここでは、業界にかかわらず、多くの店長が感じられる下記3つの魅力ややりがいを解説します。
- 従業員の成長サポートができる
- 店舗の代表として働ける
- チームで協力して目標を目指せる
従業員の成長サポートができる
店長は、採用や育成をはじめ、多くの従業員をマネジメントします。店舗の人材育成に深くかかわるため、従業員の成長サポートも求められる仕事でしょう。
また日々の業務やお客様への対応など、自分が研修やOJTによって育成した従業員が成長していく姿を見ることができます。人の成長を感じられ、さらにそれをサポートできるのは、店長の仕事の魅力ややりがいとも言えるでしょう。
店舗の代表として働ける
店長は、店舗運営におけるさまざまな仕事に「責任者」という立場でかかわっています。人によっては、20代や30代から店長として責任ある立場で仕事ができるため、活躍の機会は多く与えられるでしょう。
自分の裁量で仕事ができるため、自身の能力が店舗の経営に影響することを肌で感じ取れます。
チームで協力して目標を目指せる
店舗には売上をはじめ、成約数などのさまざまな目標が課せられます。これらの目標を達成することは大変ですが、その分目標を達成したときには大きな喜びを感じられるでしょう。
特に店長であれば、チームをまとめ上げつつみんなで協力して目標を目指していくので、店舗の責任者として大きな達成感を得られます。
店長の仕事の大変なところ
店舗の責任者である店長には、下記のような大変なところもあります。それぞれ、どのように大変か詳しく解説します。
- 目標達成のノルマがある
- 責任が重い
- 長時間労働になりやすい
- 人材管理が難しい
目標達成のノルマがある
店長は継続的に売上目標のノルマを達成し続けるために、さまざまな取り組みを行わなければなりません。売上実績を本社に報告する必要があるため、目標達成に対してプレッシャーを感じてしまう人もいるでしょう。
目標を達成できなければ、責任を問われることもあります。目標達成のための改善措置を考えるのはもちろんのこと、企業によっては異動や降格などの処遇を決められる可能性もあるでしょう。
責任が重い
店長は店舗の責任者としてさまざまな仕事を行うため、大きな責任を背負う必要があります。その責任に対してやりがいを感じる人がいる一方で、責任が重いと感じてしまう人もいるでしょう。
時間外労働があることも
店長は仕事の幅が広いため、時間外労働があることもあります。その結果、長時間労働になりやすい傾向にあります。業界によっては、従業員が出社する前の朝早くから、従業員が帰宅した後の夜遅くまで勤務することもあるかもしれません。
とは言え、現在では長く勤務することよりも従業員を効率良く配置してマネジメントすることが重要視されてきています。
人材管理が難しい
店長の仕事のひとつである人材マネジメントですが、大型の店舗などでは非常に多くの従業員を管理しなければなりません。各従業員の個性や性格などを把握しそれぞれに適した配置を考えることや、仕事の成果を評価することは、決して簡単な仕事ではありません。
時には人材管理の難しさに頭を悩ませることもあるでしょう。
店長に求められるスキル
幅広い仕事を担う店長には、さまざまなスキルが求められます。ここでは、特に重要な下記3つのスキルについて解説します。
- コミュニケーションスキル
- マネジメントスキル
- プランニングスキル
コミュニケーションスキル
店長は多くの従業員に指示を出すため、コミュニケーションスキルが欠かせません。従業員とコミュニケーションをとることで、個人の特性や向き・不向きを知ることができるでしょう。また、多くの従業員に慕われることで店舗運営がスムーズになり、店舗の雰囲気を良くすることや、顧客満足度の向上にもつながります。
マネジメントスキル
従業員に指示を出す立場である店長は、自分の能力だけを伸ばすだけでは成果を上げられません。店舗全体の質を向上させるには、従業員一人ひとりの能力を伸ばす必要があります。
そのため、従業員に適切な指示・指導を行うマネジメントスキルが必要です。従業員が気持ち良く働けるよう、不安や悩みを解消してモチベーション管理をするのも店長の重要な役割でしょう。
プランニングスキル
店長には、目標を達成するためのプランニングスキルが欠かせません。目の前の仕事をこなすだけの場当たり的な仕事の進め方では、店舗の目標を達成することは難しいでしょう。まずは全体像を把握して、目標を達成するための計画を立てる必要があります。
また、売上の増減や苦情、クレームなどのイレギュラーが起こった際、その裏にはかならず何かしらの原因があります。これらの問題をスムーズに解決するためにもプランニングスキルが必要です。
店長になるには?
店長になるには各企業に入社した後に、店舗の従業員として一定の経験年数を経てから、昇進して店長となるのが一般的です。未経験からいきなり店長になることは難しいため、まずは店長候補として店舗の従業員になり、その業界や店舗運営に関する知識や経験を積みましょう。
店長に向いている人
店長に向いているのは、下記のような特徴がある人です。
- 目標に向かって実直に努力できる人
- リーダーシップがある人
- 実行力がある人
目標に向かって実直に努力できる人
店舗には、売り上げをはじめとするさまざまな達成目標があります。目標を達成するために何をすべきかを明確にしますが、すべきこと一つひとつは小さく地味なことかもしれません。
しかし、地味な仕事にも必ず意味があるため、すべきことに対して実直に努力できる人に向いています。
リーダーシップがある人
店長の仕事は、従業員に指示を出して店舗全体で結果を出すことです。店長自ら何でもやってしまうと従業員が育たないため、従業員を率いるリーダーシップがある人に向いています。
リーダーシップには「先頭するタイプ」と「後ろからバックアップするタイプ」の2タイプがあり、業界の特色や従業員の特性によって求められるリーダーシップのタイプは異なるでしょう。
実行力がある人
目標達成に有効なプランを立てることができても、実際に行動できなければ目標は達成できません。
「目標達成のために必要な取り組みだけど、今は大変だから一旦保留しよう」などと考えていては、いつまでたっても目標は達成できないでしょう。そのため、自身の役割を自覚してすぐに実行に移せる人が店長に向いています。
店長に向いていない人
なかには、店長に向いていない人もいます。店長に向いていない人は、下記のような特徴がある人です。
- 1人作業が好きな人
- 数字が苦手な人
- 柔軟性がない人
1人作業が好きな人
店長は、従業員に指示を出しながら常にチームで働き、従業員とコミュニケーションをとりながら働きます。そのため、1人作業が好きな人には向いていません。
店長が何でも1人でやってしまうと、従業員が育たないどころか「どうせ店長が何とかしてくれる」と思われてしまい、誰もついてこなくなる可能性もあるでしょう。
数字が苦手な人
店長は、売り上げの増減の原因を調べたり今後の計画方針を立てたりするために、数字をもとに物事を判断します。後々客観的に振り返りをするためにも、数字での判断は欠かせません。
また、定期的に報告を行っているとはいえ、本社側が実際の店舗の様子を把握するのは難しいです。最終的には数字で判断することが多くなるため、数字を用いた客観的な報告をしなければなりません。そのため、数字が苦手な人は店長に向いていないでしょう。
柔軟性がない人
店長には、常に新しい取り組みや発想が求められます。ときには過去の成功体験も大切ですが、固定概念に囚われていると新しい取り組みはできません。
「前はこれで成功したから次も同じで良いだろう」と考えてしまう人だと、新しい発想は生まれません。そのため、柔軟性がない人は店長に向いていないでしょう。
店長の年収や給料事情
店長の年収や給料事情について確認していきましょう。
収入 | 金額 |
年収(ボーナス含む) | 平均402万円 |
ボーナス(年間) | 平均59.5万円 |
出典:doda「店長とはどんな職種?仕事内容/給料/転職事情を解説【doda職種図鑑】」
国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、全国における正社員の平均年収は496万円であり、店長の平均年収は全国の平均年収よりも100万円ほど低いです。
店長は年代の幅が広く、20代で店長になる人も少なくはありません。そのため、日本の全年代の平均年収と比べると、どうしても低い水準になってしまうのです。
ただし、長く働いて実績を積めば、より高年収を目指せるでしょう。