一般事務とは?
一般事務とは事務職の一種であり、所属する部署内で発生するさまざまな事務作業を、一手に引き受けて処理する職種です。
事務職にはさまざまな種類があり、役割は以下のように異なります。
種類 | 所属 | 業務内容 |
営業事務 | 営業部 | 営業活動に伴う事務処理 |
経理事務 | 経理部 | 企業のお金の管理に伴う事務処理 |
法務事務 | 法務部 | 企業経営に伴う法律関係の事務処理 |
人事事務 | 人事部 | 採用や異動・評価など人事活動に伴う事務処理 |
労務事務 | 労務部 | 労働管理に伴う事務処理 |
総務事務 | 総務部 | 経理や法務・人事・労務以をのぞく企業全体に関わる事務処理 |
「一般事務」という職種では、このような各事務の仕事全般を請け負うこともあります。なお、企業の規模が大きくなるほど所属部署が細分化され、業務も分けられるのが一般的です。
一般事務の仕事内容
一般事務の仕事内容は、所属する部署によって多岐にわたります。
ここからは、一般事務の仕事内容のうち、代表的なものを紹介します。
- 書類の作成
- 書類の整理・ファイリング
- データ入力
- 電話・メール・来客に対する受付対応
- 郵便物の仕分け・郵送
- 消耗品の補充・備品の管理
書類の作成
一般事務の仕事内容の一つが書類作成です。書類作成は企業経営のさまざまな場面で必要となるため、部署を問わず共通で行うことになります。
例えば、お客様に商品やサービスを販売する営業部では、見積書や請求書、納品書の他、プレゼンテーション資料や会議資料などの書類の作成が必要です。同様に、企業のお金の管理を担当する経理部では、伝票や帳簿などの書類作成を通して、お金の動きを記録します。
また、法律を取り扱う法務部では、公式文書など契約書を作成することが仕事です。企業の労働管理を扱う労務部でも、労働条件通知書や労働契約書など、労働に関する書類作成の業務があります。
このように、各部署に所属する一般事務では、企業経営に必要となるさまざまな書類を作成します。
書類のファイリング・保管
作成した書類を決められた場所にファイリングし、必要なときにいつでも取り出せるように準備しておくのも、一般事務の仕事です。
書類の中には法律によって一定期間の保管が義務付けられているものもあり、重要書類も多数存在します。書類を紛失するリスクをなくすためにも、クライアント名や日付順、種類ごとに分類しておくことが大切です。
データ入力
企業では日々取引や契約などの活動が行われており、これらをデータとして記録しておくのも一般事務の仕事です。
入力するデータには、新規顧客の情報や取引内容、売上金額などが挙げられます。どの情報も誤りがあれば企業の信頼に関わるため、正確性が求められます。
電話・メール・来客に対する受付対応
電話やメール、来客に対する受付対応も、一般事務の仕事です。具体的には、取引先からの電話を担当者につないだり、お客様を会議室に案内してお茶を出したりします。
受付対応は主に総務部の役割ですが、総務部が存在しない中小企業では、一般事務が対応するケースが多いです。また、営業部や法務部など各部署に対する問い合わせ対応についても、一般事務が代わりに担当することがあります。
郵便物の仕分け・郵送
企業に届いた郵便物を各部署に仕分けしたり、取引先に荷物を発送したりするのも一般事務の役割です。郵便物の仕分け・郵送は主に総務部の役割ですが、総務部が存在しない中小企業では、一般事務が担当します。
消耗品の補充・備品の管理
部署内に必要な消耗品を補充したり、備品を管理したりするのも一般事務の仕事です。
コピー用紙やプリンターインクなどの消耗品がなくなったり、パソコンやプリンターなどの備品が故障したりすると、業務が滞る原因となります。そのため、一般事務は消耗品や備品がいつでも使えるよう気を配る必要があるのです。
本来、消耗品や備品を管理するのは、企業全体の事務処理を取り仕切る総務部の役割です。
そのため、一般事務では部署内で必要な消耗品・備品の数を把握し、総務部と連携して管理を進めます。
一般事務の一日の流れやスケジュール例
一般事務の一日の流れやスケジュールを確認していきましょう。
8:45 | 出社(今日一日のスケジュール・メール確認) |
9:00 | 午前業務(メール返信・書類作成・データ入力) |
12:00 | 昼休憩 |
13:00 | 午後業務(電話・来客応対) |
18:00 | 退社 |
※あくまで一例であり、所属する部署や企業の規模によって仕事内容は異なります。
8:45|出社(今日一日のスケジュール・メール確認)
始業に合わせ、少し早めに出勤して準備をします。始業前に済ませておきたいのは、今日のスケジュールとメールの確認です。
来客がある場合は、必要な書類が速やかに出せるように準備しておきます。また、納期が近い書類の種類もチェックし、仕事の優先順位を決めます。週末を挟む月曜日はメールが貯まりやすいため、メール返信に時間がかかることが多いです。
9:00|午前業務(メール返信・書類作成・データ入力)
業務が開始したら、まずは優先度が高いメールに返信していきます。そして書類作成やデータ入力などを、優先度の高い順に行っていきます。始業直後は電話や来客が少ない傾向にあるため、作業効率が高いです。
12:00|昼休憩
多くの企業では、12:00前後に昼休憩の時間が設けられています。営業など外回りが多い業種では昼休憩の時間帯がバラバラなケースもありますが、一般事務の場合は毎日同じ時間に昼休憩をとれるでしょう。
13:00|午後業務(電話・来客応対)
午後になると、電話での問い合わせや来客も増え出します。また、即日対応が必要なイレギュラーな仕事が来ることもあるので、それを見越してスケジュールを組んでいます。
18:00|退社
一般事務は、18時など定時で退社できるケースが多いです。次の日のために休養をとったり、プライベートの予定を入れても良いでしょう
一般事務に向いている人
一般事務に向いている人の特徴として、以下が挙げられます。
- 正確かつスピーディに作業を進められる人
- 定型業務でも飽きずにコツコツ取り組める人
- 相手の意図を正確に理解して行動できる人
- 周囲から仕事を頼みたいと思われる人
- ワークライフバランスを重視して働きたい人
正確かつスピーディに作業を進められる人
一般事務に向いているのは、正確かつスピーディに作業を進められる人です。その理由は、
一般事務の仕事の中心はデスクワークであり、書類作成やデータ入力などの作業が多いからです。
一般事務が取り扱う書類やデータは、取引先情報など重要なものも多く、ミスが許されません。一方で仕事には納期があり、正確性とスピードの両面が要求されます。
定型業務でも飽きずにコツコツ取り組める人
一般事務に向いているのは、定型業務でも飽きずにコツコツ取り組める人です。一般事務は他の職種と比べると定型業務が多く、毎日同じ業務を繰り返しているような感覚を持つ人もいます。
しかし毎日同じ業務に見えても、一つ一つの仕事は企業にとって重要なものです。そのため、定型業務でも飽きずにやり遂げられる人が向いています。
手の意図を正確に理解して行動できる人
一般事務に向いているのは、相手の意図を正確に理解して行動できる人です。その理由は、一般事務は業務を通じて社内・社外問わずさまざまな人と接する機会が多いからです。
社内では部署内のさまざまな事務処理を担当するため、仕事を依頼してきた社員の意図を正確に理解して作業を進める必要があります。一方、社外では取引先と担当者をつなぐ役割があり、相手の意図を正確に担当者に伝えることが求められます。
周囲から仕事を頼みたいと思われる人
一般事務に向いているのは、周囲から仕事を頼みたいと思われる人です。一般事務に求められるのは部署内のサポートであり、周囲の社員が業務に専念できる環境を整えることだからです。
日頃から周囲の人を観察してコミュニケーションをとっていれば、社員からの信頼も高まり、よりやりがいのある仕事を頼まれるようになるでしょう。
ワークライフバランスを重視して働きたい人
一般事務に向いているのは、ワークライフバランスを重視して働きたい人です。その理由は、一般事務の仕事の多くは定型化されており、効率良く業務を進めれば定時に帰れることが多いからです。
このような背景から、一般事務は家庭や育児を仕事と両立させたい女性からも人気の職業です。
一般事務に向いていない人
逆に、一般事務に向いていない人は以下にあてはまる人です。
- はっきりと目に見える形での評価を期待する人
- クリエイティブな仕事がしたい人
- 人と関わるのが苦手な人
はっきりと目に見える形での評価を期待する人
はっきりと目に見える形での評価を期待する人は、一般事務に向いていない可能性があります。その理由は、一般事務の仕事は部署内のサポート業務が多く、仕事の成果を数値化することが難しいからです。
言い換えれば、企業への貢献度を直接確認できなくても、周囲の社員に「ありがとう」と感謝されることに喜びを感じられる人は、一般事務に向いています。
クリエイティブな仕事がしたい人
クリエイティブな仕事がしたい人も、一般事務に向いていない可能性があります。一般事務は他の職種より定型業務が多く、新しいアイデアを考えるより、決められた作業を正確にやり遂げることに重きが置かれているからです。
しかし、一般事務にクリエイティブな業務が全くないわけではありません。初めは補佐的業務を担当していても、その後経験を積んで管理職の立場になる人もいます。
一般事務全体を管轄する管理職になれば、業務改善案を考えるなどクリエイティブな仕事を任される可能性があります。
人と関わるのが苦手な人
人と関わるのが苦手な人も、一般事務には向いていない可能性があります。周囲の社員のサポートを期待される一般事務は、部署内の社員からさまざまな仕事を頼まれる立場にあるからです。
人と関わるのが苦手な人より周囲と良好な人間関係を築ける人の方が、社員の人柄や仕事への期待値を把握しやすく、円滑なサポートができるでしょう。
一般事務の仕事で役立つ資格
一般事務の仕事をするうえで、資格は必須ではありません。しかし、取得しておくと役立つ資格は存在します。一般事務として仕事をするにあたって役立つ資格は以下の通りです。
- MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)
- 秘書検定
- ビジネス・キャリア検定
- コンピュータサービス技能評価試験
- 日商簿記検定
- TOEIC
MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)
MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)とは、マイクロソフト社が提供するビジネス用ソフト「マイクロソフトオフィス」を使いこなす技能を証明する資格です。
この資格を取得すると、文章作成ソフトのWordや表計算ソフトのExcelの他、プレゼンテーションに使うPowerPoint、データベースを管理するAccessまで、一般事務に必要なパソコンスキルが幅広く身に付きます。
※参考:株式会社 オデッセイ コミュニケーションズ「マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)」
秘書検定
秘書検定は公益財団法人実務技能検定協会が運営するビジネス系資格であり、秘書に求められる知識やスキルがあることを証明できます。
役員や上司の補佐を行う秘書業務は一般事務と共通する部分も多く、一般常識やビジネスマナーのほか、電話応対や接客対応など実務に役立つスキルが幅広く学べます。
※参考:公益財団法人 実務技能検定協会「秘書検定」
ビジネス・キャリア検定
ビジネス・キャリア検定は、中央職業能力開発協会が運営する公的資格試験です。日常業務だけでは身に付きにくい専門知識が体系的に学べるのが特徴です。
事務系職種の8分野(人事労務・経理・営業・生産管理・法務・総務・ロジスティクス・経営戦略)において、厚生労働省が定める職業能力評価基準を満たすスキルを習得できます。
※参考:中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定」
コンピュータサービス技能評価試験
コンピュータサービス技能評価試験は、中央職業能力開発協会が運営する公的資格です。合格すれば、基本的なパソコン操作や情報セキュリティ対策ができることを証明できます。
実務で使う場面を想定して試験内容が作られているため、学んだ知識を職場で実践しやすいのもこの試験の特徴です。
※参考:中央職業能力開発協会「コンピュータサービス技能評価試験」
日商簿記検定
日商簿記検定は、日本商工会議所が運営する資格です。取得すると企業の経営活動を記録・計算できることを証明できます。
簿記検定は難易度によって3級・2級・1級に分かれており、実務としてアピールするなら2級以上の取得が望ましいです。簿記の知識があれば、経理部の補佐的業務を担当する場合や、経費計算をする場合などに役立ちます。
参考:日本商工会議所「日商簿記検定試験」
TOEIC
TOEICは、一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会が実施する検定試験です。英語の聞く力・読む力・話す力・書く力がスコアとして評価されます。
貿易会社など海外と取引がある企業では英語でのやり取りが発生するため、TOEICを取得しておくと、英語のコミュニケーション能力を客観的なスコアとしてアピールできます。
参考:一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会「TOEIC」
一般事務の年収や給料事情
ここからは、一般事務における年収や給料事情を紹介します。
勤務形態 | 年収・時給 |
正社員 | 年収319万円 |
アルバイト・パート | 時給1,004円 |
派遣社員 | 時給1,335円 |
出典:求人ボックス給料ナビ「一般事務の仕事の年収・時給・給料」
国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、全国における正社員の平均年収は496万円であり、一般事務の平均年収319万円はそれより177万円程度低い金額です。
一般事務の平均年収が低い理由には、補佐的業務が多いことや、残業が少ないことが考えられます。一般事務として働きながら給料を増やすには、補佐的業務をこなしながら経験を積み、専門業務を増やして評価を高めることが大切です。
一般事務に関するよくある疑問
ここからは、一般事務に関するよくある疑問に回答していきます。
- 一般事務と営業事務の違いは?
- 一般事務は楽というイメージは本当?
- 未経験で一般事務に採用されるのは難しい?
一般事務と営業事務の違いは?
一般事務と営業事務の最大の違いは、所属する部署です。部署内におけるさまざまな事務を処理する一般事務では、営業部のほか、経理部・人事部・総務部・労務部など、さまざまな部署の仕事を任される可能性があります。
一方、営業事務は営業部に所属し、営業活動に伴う事務処理を担当します。一般事務よりも業務の幅は狭まるものの、ある程度の専門性が求められるのが特徴です。
一般事務は楽というイメージは本当?
一般事務が楽かどうかは、人によって感じ方が異なるため一概には言えません。
一般事務は残業が少ない傾向にあることから、楽というイメージを持つ人が多いのは事実です。ただし、残業が少なかったとしても、定時内の仕事が常に忙しい可能性もあります。
楽というイメージだけで安易に職種を決めず、仕事内容や就業条件・給料などをよく確認して応募しましょう。
未経験で一般事務に採用されるのは難しい?
未経験で採用されるかどうかは求人内容によって異なり、一概には言えません。
一般事務は補佐的業務が中心であるため、未経験でも応募可能な求人も多くあります。そのため、他の職種の求人との比較では、一般事務は未経験者でも応募ハードルは低いと言えます。
ただし、一般事務は人気の職種であり、条件が良いほど求人倍率も高くなりやすいです。そのため未経験可の求人でも、経験者が優遇されることがあるので注意しましょう。