営業企画とは?
営業企画とは、企画職の一種であり、営業活動の方針や戦略を練る職種です。営業企画の目的は、より安定的・効果的に売上や利益を確保することです。そのため、営業企画は営業方針の策定に加えて営業部門に対してさまざまな支援活動を行います。
会社の営業部門に対し幅広く影響力を及ぼす営業企画は、本社や営業本部などで募集されているのが一般的です。また、営業企画部がない会社では営業が営業企画を兼任するケースも見られます。
営業企画とマーケティングの違い
営業企画とよく混同される言葉の一つに、マーケティングが挙げられます。
マーケティングとは、そもそも「商品やサービスを売るためのさまざまな仕組み作り」を意味します。また、職業としてのマーケティングは、これらの仕組みづくりに関わる仕事を指します。そのため、マーケティングの及ぶ範囲は、商品企画から営業活動、広告宣伝まで多岐に渡るのが特徴です。
会社がなんらかの企画をする場面、基本的にマーケティング的考え方が絡んでいます。「マーケティングとは企画を実現する手段」と考えるとわかりやすいでしょう。営業企画においても、営業活動の効果を高めるためにマーケティング手法が使われています。
営業企画と営業の違い
営業も営業企画と違いがわかりにくい言葉の一つです。
営業とは、直接顧客との対話を通じて顧客のニーズに合った商品やサービスを提案し、売上に結びつける仕事です。営業は、言わば会社の営業活動における実行部隊であり、営業戦略を策定する営業企画とは別の職種にあたります。
このように営業企画と営業はそれぞれ役割が異なりますが、お互いに協力し合うことで会社の売上や利益に貢献しています。
営業に興味がある方は、「営業職とは何か説明!種類や仕事内容、向いている人の特徴や年収」も読んでみてください。
営業企画と企画営業の違い
企画営業も、よく似た響きから営業企画とよく混同される言葉です。
企画営業は営業職の一種であり、企画職の一種である営業企画とは異なります。企画営業とは、よりマーケティング手法を重視して営業活動を行う職種を指します。企画営業の特徴は、商談前に市場調査などの分析を行い、より顧客のニーズにマッチした提案を行うことです。
顧客自身も気づいていない潜在的課題を浮き彫りにし、それを解決できる商品やサービスの提案につなげます。さらに、企画営業の仕事は「売って終わり」ではなく、契約後も定期的なアフターフォローを行い、高い顧客満足度の実現を目指すのが特徴です。
営業企画の魅力ややりがい
ここからは営業企画の魅力ややりがいを3つ取り上げて解説します。
- 業績を左右する営業戦略に関われる
- 経営陣との距離が近い
- 営業成績を通して貢献度を実感しやすい
業績を左右する営業戦略に関われる
営業企画の魅力・やりがいの1つ目は、業績を左右する営業戦略に関われることです。
民間会社にとって、売上や利益を安定的に伸ばしていくことは至上命題といっても過言ではありません。営業企画が策定する営業戦略は、中長期にわたって営業部門や会社に影響を及ぼします。それだけに責任も大きく、やりがいも大きくなるでしょう。
経営陣との距離が近い
営業企画の魅力・やりがいの2つ目は、経営陣との距離が近いことです。
特に会社の業績に大きく影響を与える経営戦略の策定では、経営陣と打ち合わせしたり、プレゼンを行う機会が多くあります。経営陣との対話を通して、経営的目線や幅広い知見が得られるのも、営業企画の魅力と言えます。
営業成績を通して貢献度を実感しやすい
営業企画の魅力・やりがいの3つ目は、営業成績を通して貢献度を実感しやすいことです。
営業企画の仕事の成果は、営業部門の売上成績としてダイレクトに表れます。そのため、自分の努力を数字を通して実感しやすいことが営業企画の魅力と言えます。
営業企画の仕事内容
より安定的・効果的な売上や利益の確保を目指す営業企画の仕事は、目的によって大きく2種類に分けられます。
- 営業活動における方針・戦略の検討
- 営業目標達成に向けた支援
営業活動における方針・戦略の検討
営業活動における方針・戦略の検討は、営業企画に与えられた重要任務の一つです。営業活動はただやみくもに行えば成果が出るほど、甘いものではありません。
会社の商品やサービスが売れるには、前提として顧客のニーズを満たす必要があります。より安定的・効果的に売上や利益を会社にもたらすには、顧客のニーズに合った営業活動を行う必要があります。
そのために求められる仕事内容は、以下の通りです。
- 市場調査・消費者分析を通じたニーズ・トレンドの把握
- 競合分析・自社分析を通じた自社の強み・弱みの把握
- 売上・利益を伸ばす営業手法・アプローチの検討
市場調査・消費者分析を通じたニーズ・トレンドの把握
営業活動の方針を決めるにあたり、まずやるべきなのが市場調査や消費者分析を通じたニーズ・トレンドの把握です。
市場調査の具体的な方法には、アンケート調査や売上データ分析、インタビュー調査、SNSメディア分析などが挙げられます。
ニーズやトレンドは社会情勢に応じて刻々と変化しています。常に最新のニーズ・トレンドを把握することが、効果的な営業戦略を考える上で重要です。
競合分析・自社分析を通じた自社の強み・弱みの把握
顧客のニーズやトレンドを把握できたら、次に行うのが競合分析や自社分析です。
競合他社がひしめき合う中、顧客に自社を選んでもらうには、他社よりも優れた商品やサービスを提供できなければなりません。そのためには、競合他社と自社サービスを比較し、自社の強みや弱みを明確に把握しておく必要があります。
売上・利益を伸ばす営業手法・アプローチの検討
顧客ニーズと自社の強み・弱みが把握できたら、売上・利益を伸ばす営業手法・アプローチの検討に移ります。同じ営業活動でも、取り扱う商品やサービス、価格帯、顧客層などの違いによって効果的なアプローチは異なります。
ここで大切なのは、「自社がターゲットとする顧客に一番効果的なアプローチは何か」を考えることです。他社と差別化できる強みを活かし、自社の弱みや課題を改善する営業アプローチが見つかれば、営業成績の底上げが期待できます。
営業目標達成に向けた支援
営業目標達成に向けてさまざまな支援を行うことも、営業企画の大切な役割です。いかに優れた営業戦略を思いついても、営業社員がその戦略を実行しない限り、営業目標を達成することはできません。
営業社員が活動しやすいように営業企画が行う主な支援は、以下の通りです。
- 営業社員へのインセンティブ設定
- 営業コンテストの実施
- 営業ツールの制作
- 販促イベントの実施
営業社員へのインセンティブ設定
営業社員へのインセンティブ設定は、営業社員のモチベーションを高め、営業目標に向かわせる有効な支援方法です。
インセンティブは個人に設定することも可能ですが、営業社員同士の競争が激化すると営業ノウハウが共有されなくなったり、チームワークが乱れたりする恐れがあります。そのため、組織内における協力体制を重視するなら、チームでのインセンティブを設定するのが効果的です。
また、営業成績に加え、営業プロセスやチームへの貢献度を評価基準に入れる方法もあります。この設定方法なら、特定の営業社員だけでなく幅広い営業社員にインセンティブ報酬を受け取るチャンスを作れます。
営業コンテストの実施
営業コンテストの実施も営業社員のモチベーションを高めるのに役立ちます。営業コンテストとは、営業成績を競い合う社内大会であり、短期に集中して活動量を伸ばすのに向いています。
特におすすめなのは、チーム同士で戦うコンテストにすることです。チーム内の結束力を高めることで、お互いに助け合って営業成績を達成しようとする空気感が生まれます。
その結果、個人の営業スキルの底上げが期待でき、さらに営業ノウハウもチーム内に蓄積されやすくなります。
営業ツールの制作
営業ツールの制作は営業社員の雑務を減らし、営業活動の効率化に役立ちます。営業社員が営業活動で使用する主な営業ツールは以下の通りです。
- 名刺
- 会社案内
- 商品・サービスを説明するパンフレット
- ダイレクトメール
- お礼状
- 営業資料など
販促イベントの実施
販促イベントの実施も、営業がサービスや商品を売りやすくするのに役立ちます。販促イベントの目的は、イベント会場に顧客を呼び込み、商品やサービスをアピールすることです。
販促イベントは取り扱う商品やサービスによって、以下の種類が挙げられます。
- 商品プロモーション:体験イベント、製品発表会などで商品の認知度を高め売上につなげる
- 商品販売イベント:試食会や実演販売イベントなどを通じて売上につなげる
- 法人向け商談会:見本市や展示会などを行って契約に結びつける
営業企画に向いている人
これまで紹介してきた役割や仕事内容から、営業企画に向いているのは以下にあてはまる人です。
- 世の中の流行やトレンドに敏感な人
- データから背景や課題を読み解ける人
- 物事をさまざまな視点から多角的に捉えられる人
- 深く物事を考え最適解を追い求められる人
- 周囲の人を巻き込んで行動を起こせる人
世の中の流行やトレンドに敏感な人
世の中の流行やトレンドに敏感な人は営業企画の仕事に向いています。その理由は、商品やサービスの売れ行きは流行やトレンドと共に変化するからです。実現の可能性が高い営業戦略を策定するには、流行やトレンドを把握することが欠かせません。
世の中の動きが自社商品にどのように影響を与えるのか、常に考えながら情報をチェックしておく必要があります。
データが示す背景や課題を読み解ける人
データが示す背景や課題を読み解ける人も、営業企画に向いています。なぜなら、効果的な営業戦略を策定するには現状把握が不可欠であり、さまざまなデータから背景や課題を読み解く必要があるからです。
一見単なる羅列にしか見えない数字であっても、その増減や変化に着目すると、現状の課題や問題点、自社の立ち位置が浮き彫りになります。普段からデータに興味がある人であれば、データ分析から営業戦略に必要なヒントを発見しやすくなるでしょう。
物事をさまざまな視点から多角的に捉えられる人
物事をさまざまな視点から多角的に捉えられる人も営業企画に向いています。営業戦略を策定して営業社員を動かす営業企画の仕事には、顧客ニーズ、営業社員の課題、取り巻く競合他社状況など、異なる立場による利害関係が絡んでいます。
そのため、自社の営業現場だけにとらわれることなく、さまざまな角度から状況を把握できる必要があるでしょう。
深く物事を考え最適解を追い求められる人
深く物事を考え最適解を追い求められる人も営業企画に向いています。その理由は、会社の売上や利益に直結する営業戦略は経営陣の関心事項であり、その提案には経営陣を納得させるだけの裏付けが求められるからです。
「いくらまでコストをかけられるか」「目標達成にどこまで労力をかけられるか」など、営業現場と目標数値のバランスを見比べ、実現可能性が高い戦略に仕上げる必要があります。
戦略策定後は、実績と目標を比較しながら営業アプローチを修正することも大切です。
周囲の人を巻き込んで行動を起こせる人
周囲の人を巻き込んで行動を起こせる人も、営業企画に向いています。いかに優れた営業戦略を思いついたとしても、その戦略は実行しなければ成果には結びつきません。
実際に営業活動を行うのは営業社員であるため、「売上目標達成に向けてどこまでも協力したい」と営業社員に思わせる言動が営業企画には求められます。
営業企画に向いていない人
逆に、営業企画に向いていない人は以下の特徴に当てはまる人です。
- 数字のプレッシャーに弱い人
- 地道な作業が苦手な人
- じっくり考えるより試してから判断したい人
数字のプレッシャーに弱い人
数字のプレッシャーに弱い人は、経営企画に向いていない可能性があります。その理由は、営業戦略を練る経営企画は経営陣からの期待が大きく、目標達成に向けたプレッシャーがかかりやすい職種だからです。
また営業戦略を決定しても、売上数値として結果がすぐ出るとは限りません。成果が出るまでかなり時間がかかることもあり、不安やプレッシャーに悩まされることもあります。
そのため営業企画には、プレッシャーを楽しんで原動力に変えるくらいの心の強さが求められます。
地道な作業が苦手な人
地道な作業が苦手な人も、営業企画に向いていない可能性があります。企画職の一種である営業企画は華やかなイメージがありますが、実際には地道に積み上げる作業が多いです。
数多くのデータから現状の課題・問題点を抽出する作業や、現状と目標を見比べて方針を調整する作業などは地道な作業の典型例です。営業企画の仕事を成功させるには、地道な作業も最後までやり抜く姿勢が求められます。
じっくり考えるより試してから判断したい人
じっくり考えるよりまずは試して判断したい人も、営業企画に向いていない可能性があります。会社の売上や利益を大きく左右する経営戦略の策定は、原則として失敗は許されません。
そのため営業戦略の策定では、市場やライバル他社、営業現場などあらゆる状況を冷静に分析し、失敗するリスクを最小限に抑えた内容に仕上げることが求められます。
営業戦略を経営陣に納得させる意味でも、客観的データに裏打ちされた営業戦略を用意する必要があります。
営業企画の年収や給料事情
営業企画の年収や給料事情について確認しておきましょう。
営業企画の年収 | 金額 |
年収(ボーナス含む) | 平均544.4万円 |
ボーナス(年間) | 平均126.3万円 |
出典:doda「営業企画とはどんな職種?仕事内容/年収/転職事情を解説」
国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、全国における正社員の平均年収は508万円であり、営業企画の平均年収544.4万円はそれより36万円程度高い金額です。
なお営業企画と一口に言っても、所属する会社や役職、営業成績などで年収は大きく異なります。営業企画として働きながら年収を高めていくには、経営陣に採用される説得力のある営業戦略を練り上げるとともに、戦略を営業成績につなげていくことが大切です。