新卒派遣で働くのはあり?正社員との違いや給与、向いている人を解説
目次
新卒の中には、正社員ではなく派遣社員になるという選択をする人もいます。
しかし、世間では「新卒で派遣は負け組」という声もあり、新卒派遣という働き方に抵抗がある人も多いのではないでしょうか。派遣社員には正社員にはないメリットがあるため、一概に負け組とは言えないでしょう。
この記事では、新卒派遣の特徴や正社員との違いについて触れたのち、派遣として働くメリット・デメリットについて解説します。新卒派遣に向いている人や派遣社員になる方法についても解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
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新卒派遣とは?
新卒派遣とは、新卒で正社員にならず派遣会社で働く人を指した言葉です。
「就職活動が難しい」「希望の仕事が見つからない」などの理由から、就職浪人ではなく、まずは派遣社員として社会人経験を積むことを選択する人も一定数います。
企業側も、かつては「新卒=正社員」という考え方を持っていました。しかし、働き方の多様化が進むにつれて、新卒派遣に対して良いイメージを持つようになってきています。
新卒派遣は、収入が安定しないというデメリットがあります。その一方で、派遣元のサポートが受けられる、就職のハードルが低いなどのメリットも多いです。
新卒派遣の割合はどのくらい?
厚生労働省の「若年者雇用実態調査の概況」を参考にすると、平成30年における新卒の労働状況は以下のとおりです。
卒業区分 | 正社員として勤務した | 正社員として勤務しなかった | 正社員以外の労働者として勤務した | 働いていなかった | 不明 |
大学卒 | 79.1% | 20.5% | 16.6% | 4.0% | 0.4% |
大学院修了 | 81.2% | 18.5% | 15.6% | 2.9% | 0.3% |
総数 | 70.5% | 28.5% | 24.0% | 4.5% | 1.0% |
「正社員以外の労働者として勤務した人」の総数の割合は24.0%です。正社員以外にはアルバイト等も含まれており、派遣社員の割合を正確に把握するのは難しいですが、概算では全体の1割〜2割程度が派遣社員と言われています。
続いて「正社員以外の労働者として勤務した理由」について、平成30年と平成25年を比較してみましょう。
年度 | 正社員に応募したが採用されなかった | 正社員を希望していなかった | 自分の希望する企業の正社員募集がなかった |
平成25年(前回調査) | 27.4% | 15.4% | 16.7% |
平成30年 | 23.4% | 18.8% | 11.2% |
平成25年の調査に比べると、「正社員求人に応募したけど採用されなかった」は4%減少する一方で、「正社員を希望していなかった」は3.4%増加しました。
各企業で多様な働き方が認められている背景もあり、近年は労働者側で派遣という働き方について抵抗がなくなっている印象があります。
ただし、「自分の希望する企業の正社員募集がなかった」という理由は、平成30度は約5%減少しました。「とにかく正社員として働きたい」「安定性を持って働きたい」という考えを持つ人は、近年増加傾向にあるようです。
新卒が選べる派遣の雇用形態
新卒が選べる派遣の雇用形態には、大きく分けて次の3つがあります。
- 常用型派遣
- 登録型派遣
- 紹介予定派遣
常用型派遣
常用型派遣とは、派遣会社の正社員として直接雇用契約を結ぶ形態です。長期的な雇用が基本となっているため「無期雇用派遣」とも呼ばれています。
派遣先との契約が終了したあとも派遣会社との雇用関係が継続し、給与が発生します。そのため、安心して働ける点が特徴です。
登録型派遣
登録型派遣とは、派遣先が決まった時点で派遣会社との雇用契約が結ばれる形態です。派遣が終了した際には、雇用契約が解消される仕組みになっています。
再度派遣先が決まったあとは、改めて派遣会社と雇用契約を結ぶのが一般的です。安定性では常用型派遣よりも不安がありますが、自分のライフスタイルに合わせて仕事を進めやすいというメリットがあります。
紹介予定派遣
紹介予定派遣とは、派遣先の会社との直接雇用を視野に入れて、一定期間派遣として就業する形態です。最長6ヶ月の派遣期間が設けられており、終了後に派遣先の会社との直接雇用契約に切り替わります。
派遣期間中はいわば試用期間のようなもので、未経験でも現場で経験を積んでいけます。つまり、未経験でも正社員に登用されるチャンスがあると言えるでしょう。
ただし直接雇用は、派遣社員のみならず企業の同意も必要です。そのため紹介予定派遣を経由したからといって、必ず直接雇用に結びつくというわけではありません。
派遣と正社員の主な違い
派遣と正社員の違いは、主に下記のとおりです。
- 雇用主と雇用形態の違い
- 業務の範囲の違い
- 福利厚生の違い
雇用主と雇用形態の違い
派遣と正社員は、まず雇用主と雇用形態が異なります。
正社員は、企業と直接契約を結びます。一方、派遣社員の場合は登録した派遣会社と雇用契約を結ぶのが原則です。そのため、派遣社員と企業との間では派遣契約が結ばれることとなり、無期限ではなく有期雇用という扱いになります。
正社員のように雇用が約束されているわけではないので、派遣先の都合によって契約更新をストップされることもあるでしょう。派遣社員は、正社員の働き方と比べるとフットワークは軽い分、安定性は低いのが特徴です。
業務の範囲の違い
業務範囲は派遣と正社員で大きく異なる部分です。
将来の幹部ポジションを視野に入れる正社員は、会社の経営部分に携われるような仕事を任されることもあります。
しかし派遣社員の場合は、いずれ契約が終了することもあり、どうしても仕事が限定的になりがちです。正社員の手が回らないような事務や雑務が多く、スキルアップという部分ではあまり期待ができないかもしれません。
「派遣されてみたら思うような仕事をさせてもらえなかった」というのは、派遣社員の場合よくあることです。
福利厚生の違い
派遣と正社員の違いとして挙げられるのは、福利厚生の部分です。
正社員は企業と直接雇用契約を結んでおり、さまざまな保証がされています。例えば、会社内の設備や研修制度、通勤手当や家族手当といった福利厚生は、正社員のみを対象としている場合があります。
ただし派遣社員の場合、雇用主である派遣会社の福利厚生は受けられるので「福利厚生が利用できない」ということではありません。派遣会社によっては、スキルアップが目指せる研修や休暇制度に力をいれるところもあります。
新卒で派遣を選ぶメリット
新卒で派遣を選ぶメリットは、主に次のとおりです。
- 就職活動のハードルが低い
- 興味のある仕事を探しやすい
- 派遣会社からサポートが受けられる
- 企業の雰囲気を掴んでから入社できる
就職活動のハードルが低い
派遣は正社員と比べると、就職活動におけるハードルが低いというメリットがあります。なぜなら派遣社員の場合は、派遣会社に登録して経歴・スキル・希望条件等を伝えるだけで、定期的に仕事の紹介を受けられるからです。
正社員を目指すとなれば、書類選考や筆記試験、面接は三次まで用意されているケースもあり、内定までに多くの期間を要します。派遣社員であれば、紹介された仕事を受けるかどうかの判断で話が進むので、働きたいときにすぐに働けます。
就職活動の準備が少ない点も、派遣社員の大きなメリットと言えるでしょう。
興味のある仕事を探しやすい
派遣社員は、興味のある仕事を探しやすいというメリットがあります。派遣社員はさまざまな仕事を通じて、自分の適性を知る機会が生まれるからです。
例えば派遣先で「この仕事はあまり向いていない」と感じれば、今後別の仕事に目を向けることができます。もし「やりがいがある」と思うなら、その仕事が好きな仕事になることもあるでしょう。
また、すでに興味のある業界・職種があるのであれば、派遣会社にその旨を伝えておくことで、ある程度企業を絞って仕事を探してもらえます。
派遣会社からサポートが受けられる
派遣会社は個別に担当者がついており、手厚いサポートが受けられます。例えば、下記のとおりです。
- キャリアコンサルティング
- 職業適性検査
- スキルアップ支援(派遣社員向け研修・eラーニング)
- 応募書類の添削
- 面接対策
- 派遣先との調整
大手の派遣会社であれば、経験豊富なキャリアアドバイザーが在籍しています。派遣先に関して不安のある人でも、安心して相談できるでしょう。
企業の雰囲気を掴んでから入社できる
正社員を視野に入れている場合、派遣社員であれば企業の雰囲気を掴んでから入社できます。
なぜなら現場で一定期間働くことで、職場の雰囲気や風通しの良さなど、求人情報からは得られない情報を知れるからです。もし働いていて違和感を感じるようであれば、入社しないという判断もできます。
「こんなはずではなかった」という就職後のミスマッチを防げるという点で、派遣という働き方は大きなメリットがあるでしょう。
新卒で派遣を選ぶデメリット
新卒で派遣を選ぶデメリットは、主に次のとおりです。
- 正社員よりも収入が安定しない
- 正社員になれるとは限らない
- 任される仕事が少ない
正社員よりも収入が安定しない
派遣は正社員よりも収入が安定しない可能性があります。派遣社員と正社員とでは、労働条件に違いがあるからです。
例えば派遣社員は、有給休暇の取得条件や賞与や昇給の有無が正社員と異なる場合があります。長期的な視点で考えると、同時期の正社員であっても徐々に給与に差が生まれてしまうでしょう。
また派遣先の企業が経営不振であれば、経費削減のために突如契約更新をストップされてしまう可能性もゼロではありません。
安定した収入を得て働きたいという人にとっては、派遣社員はやや働きづらい雇用形態と言えるでしょう。
正社員になれるとは限らない
直接雇用を視野に入れた紹介予定派遣で働いているからと言って、正社員が約束されているわけではありません。
なぜなら労働者側だけでなく、企業からの合意が得られなければ契約が終了することもあるからです。もし契約期間が満了となってしまった場合は、新たな派遣先を探す必要があります。
また仮に直接雇用を結べたとしても、企業によっては雇用形態が派遣のままということもあります。正社員を視野に入れて派遣として働くなら、直接契約時の雇用形態についても事前に知っておくことが大切です。
任される仕事が少ない
正社員との違いで触れましたが、派遣社員の場合、責任のある仕事はあまり任されないでしょう。派遣社員は雇用期間が定められていて、いずれは職場を離れるものだと考えられているからです。
「自分の裁量で仕事を進めたい」「責任のある仕事に就きたい」と考えている人にとっては、派遣という雇用形態は少し物足りなく感じるかもしれません。
ただし、将来正社員として働いてもらうことを前提としている企業の場合は、例外的に正社員と同じような仕事を任せようと考えていることがあります。
派遣社員に興味がある方は、「新卒で派遣はやめとけと言われるのはなぜ?マイナスイメージがある理由を解説」も読んでみてください。
新卒派遣が向いている人
新卒で派遣として働くのに向いているのは、以下のような人です。
- 将来ビジョンが定まっていない人
- 働いてから正社員を検討したい人
- さまざまな経験を積みたい人
将来ビジョンが定まっていない人
新卒派遣は、将来どのようにキャリアを積みたいか定まっていない人に向いています。派遣社員として働ければ、社会人経験を積みながら自分の適性がわかり、どのような仕事をしたいかが見えてくるでしょう。
また、ひとまず派遣で働いておけば、仕事の経験を活かして第二新卒や既卒枠で企業に応募できます。新卒という年齢の若さもアドバンテージとなるでしょう。
「在学中にやりたいことが見つからなかった」という人は、派遣という働き方も選択肢の一つです。
働いてから正社員を検討したい人
新卒派遣は、実際に働いてから正社員を検討したい人にもおすすめです。
正社員が退職するとなれば手続きが大変ですが、派遣の場合は契約期間が定められているため、同じ職場に居続けなければいけないという心配は必要ありません。
まずは一度働いてみて、職場の雰囲気や風通しの良さを見てから正社員を検討してみても良いでしょう。
さまざまな経験を積みたい人
さまざまな経験を積みたい人は、派遣が向いています。
なぜなら派遣会社からは派遣先での契約が終了しても、再度さまざまな業界や職種からの仕事紹介を受けられるからです。派遣には、製造業や情報通信業、金融保険業などさまざまな業界の仕事があります。
新卒で一度正社員となってしまうと、さまざまな業界や職種を経験する機会は減ってしまいます。さらに、転職を繰り返すと職務経歴書によって採用担当者からの印象が悪くなってしまうでしょう。
一方、派遣の場合は派遣先ですぐに契約終了となっても履歴書に企業名を書く必要がなく、職務経歴に傷がつくことはありません。
新卒派遣の給与相場
新卒派遣のおおまかな給与相場は、次のとおりです。
業務内容 | 時給 |
採用アシスタント | 1,500円~1,850円 |
書類作成、経理業務 | 1,450円~1,650円 |
コールセンター業務 | 1,600円~1,850円 |
翻訳、通訳業務 | 1,400円~2,500円 |
Webデザイナー、グラフィックデザイナー | 1,600円~1,700円 |
出典:求人ボックス「派遣社員の求人検索」に掲載されている求人から目安の時給を算出
全体を通して見れば、派遣の時給は1,600円前後が相場となっていることがわかります。ここで、以下の想定で月収を考えてみましょう。
- 時給:1600円
- 就業時間:8時間で1時間休憩(7時間労働)
- 労働日数:20日間
計算すると、1,600円×7時間×20日間=224,000円です。厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、大卒の初任給平均額は平均して228,5000円です。つまり、新卒派遣と正社員とでは、同程度の給与が得られることがわかります。
なお翻訳、通訳業務など専門的なスキルが必要とされる業務については、比較的時給が高く設定されているようです。
新卒で派遣社員になる方法
新卒で派遣社員になる方法は、以下のとおりです。
- 派遣会社に登録する
- 仕事を紹介してもらう
- 就業を開始する
1.派遣会社に登録する
派遣社員として仕事の紹介を受けるには、まず派遣会社への登録が必要です。派遣登録は派遣会社を訪問して直接登録する手段のほか、電話やWEBからも登録ができます。派遣会社によって異なりますが、WEB登録の場合は次のような基本情報が必要です。
- 氏名
- 電話番号など連絡先
- 職務経歴
- 希望する業界・職種
- 希望の勤務地など
派遣会社によって取り扱っている業界・業種は異なります。派遣会社を利用する場合は、事前にどのような派遣求人があるのかをチェックしておくことが大切です。
また、登録したからといって、すぐに働かなければいけないということではありません。そのため、派遣の仕事に興味があるのであれば、まずは登録だけ済ませておくと良いでしょう。
2.仕事を紹介してもらう
登録された情報をもとに、派遣会社のスタッフが派遣先企業との相性を確かめながら希望に沿った仕事を紹介してくれます。
自分の希望からズレているような仕事を紹介された場合は、断ってしまっても問題ありません。また、働きやすさや福利厚生などが気になるのであれば、担当者にしっかりと確認しましょう。
3.就業を開始する
派遣会社から希望どおりの紹介が受けられたら承諾し、就業を開始します。派遣先企業の中には、就業前に顔合わせを実施する企業もあります。
派遣から正社員になる方法
派遣を選択する人の中には、正社員を視野に入れている人もいるでしょう。
派遣から正社員を目指す場合は、以下2つの方法があります。
- 「紹介予定派遣」に登録する
- 「常用型派遣」に登録する
「紹介予定派遣」に登録する
紹介予定派遣は契約満了後、労働者と派遣先企業の双方が合意すれば、そのまま派遣先で正社員になれる派遣形態です。紹介予定派遣は、他の雇用形態よりも正社員になれる可能性がある方法だと言えます。
ただし正社員を考えていても、派遣先企業から断られることもあります。必ず正社員になれるというわけではない点は、理解しておきましょう。
「常用型派遣」に登録する
常用型派遣とは、派遣会社の正社員になって派遣先企業で働くことです。無期雇用派遣とも呼ばれているとおり、長期的な雇用が原則となっています。
派遣されていない期間は、派遣会社の中でスキルアップやビジネスマナーに関するセミナー・研修が受けられます。派遣期間外であっても、給料がしっかり支払われるのが特徴です。
新卒で派遣社員になるのも選択肢の一つ
近年働き方が多様化している中で、「新卒は正社員」という固定概念が徐々に薄れてきています。そのため、派遣社員として働くことも、新卒のキャリアプランの選択肢の一つになっています。
紹介予定派遣や常用型派遣に登録すれば、正社員を視野に入れた就職も可能です。派遣社員だからといって、正社員への道が閉ざされるわけではありません。
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