ゼネコンの営業の仕事内容とは?年収やきついと言われる理由を解説
目次
「ゼネコンの営業は他業種の営業と何が違うのだろう」「ゼネコンはきついって本当なのかな」と、興味はあるものの応募を躊躇っている人は多いのではないでしょうか。
ゼネコンはゼネラルコントラクターの略で、マンション、ビル、テーマパーク、トンネルといった大型の建築物を建てる会社です。地図に残る仕事と言われ、他の建築会社とは違う特徴があります。
この記事では、ゼネコンの営業職の仕事内容や特徴、年収などを解説します。きついと言われる理由や向いている人の特徴も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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ゼネコン営業とは?
ゼネコン営業とは、ゼネコンに勤務する営業職です。
そもそも、ゼネコンとはゼネラルコントラクターの略称で、総合建設業者という意味です。一般的な建築会社との違いは、主に以下の2点が挙げられます。
- 設計・施工・研究の3過程を全て自社で行う
- 売上が数千億~数兆円規模である
設計では、外観や内部をデザインする意匠設計や安全性確保のための構造設計など、建物に関わる全ての配置を計画します。その計画をもとに、下請け業者に工事を発注して建設現場で作業に入る施工に移ります。
またゼネコンでは、現場での気付きや顧客の声をもとに、業務効率化や耐震技術強化のため研究を行うのも仕事です。
ゼネコンではない他の建築会社や工務店が請け負う範囲は、「設計のみ」、もしくは「設計と施工」です。取り扱うのは、ゼネコンのような公共施設やビルなど大規模建築物ではなく、住宅建築がほとんどです。
なおさらに、ゼネコンの中でも売上規模によって「スーパーゼネコン」「準大手ゼネコン」「中堅ゼネコン」と区別されることがあります。
呼称 | 売上規模の目安 | 主な会社 |
スーパーゼネコン | 1兆円以上 | 大林組・鹿島建設・清水建設・大成建設・竹中工務店 |
準大手ゼネコン | 3000億円以上 | 熊谷組・五洋建設・戸田建設・長谷工コーポレーション・三井住友建設 など |
中堅ゼネコン | 1000億円以上 | 奥村組・大豊建設・東亜建設工業・東急建設・東洋建設 など |
つまりゼネコン営業は、インフラなど大型建築物を建てる大手企業で仕事を受注する、街づくりに欠かせない仕事と言えます。
ゼネコン営業の仕事内容
ゼネコン営業の仕事は、大型建築の案件を獲得し顧客の窓口になることです。
まず、顧客である公官庁や企業から社屋の移転や建て替えなどのニーズを聞き出し、他の部署と連携して設計、工期、費用の見積もりなど提案内容を決定します。顧客に提案し、自社のプランが選ばれれば正式に受注です。
案件獲得で終わりではなく、営業はその後も顧客との打ち合わせに参加し、施工の進捗を把握して報告するなど顧客のフォローに努めます。その他、電話やメール対応、見積もり作成など事務作業も仕事です。
ゼネコン営業の特徴
ここでは、ゼネコン営業ならではの他の営業と異なる特徴を2点解説します。
- 企業や自治体に対して営業を行う
- 大型プロジェクトに携わる
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
企業や自治体に対して営業を行う
ゼネコンの顧客は消費者ではなく、地方自治体などの公官庁や民間企業です。このような企業を相手にする営業活動をBtoB営業と言います。
一般消費者を相手にする建築会社と違い顧客が限られているため、一般的な建築会社と比較して顧客との信頼関係が何よりも重要です。
大型プロジェクトに携わる
ゼネコンが手掛けるのは一般的な建築会社のような住宅建築ではなく、マンション、競技場、ダム、商業施設など多くの人の生活に欠かせない大型建築物です。
長い期間、莫大な費用をかけて社内外の多くの人員が動員されるため、地図に残る建築物の一大プロジェクトを牽引できるのはゼネコン営業の醍醐味でしょう。
ゼネコン営業の平均年収
ここでは、スーパーゼネコン、準大手ゼネコン、中堅ゼネコンの各5社における平均年収を紹介します。以下の年収は事務職や現場職も含めた会社全体の平均金額のため、営業職に限定すると表の数値より高くなると想定されます。
▼スーパーゼネコン
企業名 | 平均年収 |
鹿島建設 | 1,163万円 |
大林組 | 1,031万円 |
竹中工務店 | 1,009万円 |
大成建設 | 992万円 |
清水建設 | 971万円 |
出典:鹿島建設「第126期(2022年4月1日~2023年3月31日)有価証券報告書」
出典:大林組「第119期(2022年4月1日~2023年3月31日)有価証券報告書」
出典:竹中工務店「第85期(2022年1月1日~2022年12月31日)有価証券報告書」
出典:大成建設「第163期(2022年4月1日~2023年3月31日)有価証券報告書」
出典:清水建設「第121期(2022年4月1日~2023年3月31日)有価証券報告書」
▼準大手ゼネコン
企業名 | 平均年収 |
長谷工コーポレーション | 941万円 |
五洋建設 | 884万円 |
三井住友建設 | 881万円 |
熊谷組 | 845万円 |
戸田建設 | 835万円 |
出典:長谷工コーポレーション「第106期(2022年4月1日~2023年3月31日)有価証券報告書」
出典:五洋建設「第73期(2022年4月1日~2023年3月31日)有価証券報告書」
出典:三井住友建設「第20期(2022年4月1日~2023年3月31日)有価証券報告書」
出典:熊谷組「第86期(2022年4月1日~2023年3月31日)有価証券報告書」
出典:戸田建設「第100期(2022年4月1日~2023年3月31日)有価証券報告書」
▼中堅ゼネコン
企業名 | 平均年収 |
奥村組 | 936万円 |
東亜建設工業 | 927万円 |
大豊建設 | 807万円 |
東洋建設 | 802万円 |
東急建設 | 763万円 |
出典:奥村組「第86期(2022年4月1日~2023年3月31日)有価証券報告書」
出典:東亜建設工業「第133期(2022年4月1日~2023年3月31日)有価証券報告書」
出典:大豊建設「第74期(2022年4月1日~2023年3月31日)有価証券報告書」
出典:東洋建設「第103期(2022年4月1日~2023年3月31日)有価証券報告書」
出典:東急建設「第20期(2022年4月1日~2023年3月31日)有価証券報告書」
このように、ゼネコン営業の年収の目安は763〜1,163万円となっています。一般的な業界や職種と比べて高く、高年収が狙える職種であると言えます。
ゼネコン営業の魅力・やりがい
大型プロジェクトに携わるゼネコン営業ならではの魅力ややりがいは、主に3点が挙げられます。
- 年収が高い傾向にある
- 安定して長く働ける
- 自分の仕事が形として残る
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
年収が高い傾向にある
前述の通り、ゼネコン営業の平均年収は800~1000万円以上を超える企業が多いです。国税庁の「令和3年度 民間給与実態統計調査結果」によると日本人の平均年収は443万円で、ゼネコン営業は約2倍以上の高収入であることがわかります。
ゼネコンに限らず、営業職は会社の収益に直結する案件の獲得に不可欠な仕事です。繁忙期は残業や休日出勤もあるかもしれませんが、時間外労働の手当は漏れなく支給される会社がほとんどです。
他にも、住宅手当、資格取得援助金、海外勤務手当などの手当も充実しています。成約が決まると、さらにインセンティブも支給されます。
安定して長く働ける
ゼネコン15社の有価証券報告書によると、社員の平均年齢は40代、平均勤続年数は15~20年で、ゼネコンは長く勤務できる環境と言えます。
近年は人材不足も懸念されていますが、ゼネコンは生活に欠かせない建築物を手掛けるため、需要がなくなることはないでしょう。
長く勤務するほど昇給を重ねることができる上、さまざまな人と関わるゼネコンでの営業経験は、たとえ他業種に転職しても存分に活かせるはずです。
自分の仕事が形として残る
ゼネコンはよく「地図に残る仕事」と言われます。携わる案件は、何十年先まで残り続けるであろうインフラや商業施設がほとんどなためです。
自分が契約を取って建てられた建築物の完成を見届けたときは達成感があり、自分の仕事が多くの人の安心安全な暮らしに役立っていると実感できるでしょう。
ゼネコン営業がきついと言われる理由
一方で、一部では「ゼネコンの営業はきつい」とも言われます。その主な理由は以下の5点です。
- 接待など業務時間外の付き合いがある
- 長時間の時間外労働がある
- 案件規模をプレッシャーに感じることがある
- ノルマが課される
- 女性が少ない傾向にある
ひとつずつ解説します。
接待など業務時間外の付き合いがある
ゼネコンの営業が案件獲得など成果を上げるためには、数少ない顧客との信頼関係が重要です。そのため、相手の都合に合わせて業務時間外などに会食やゴルフといった接待が入ることがあります。
プライベートな飲み会とは違って常に顧客に気を遣う必要があるため、ただ楽しくお酒が飲める場にはならないでしょう。精神的にも体力的にも、お酒が苦手な人はなおさら苦痛に感じるかもしれません。
長時間の時間外労働がある
「会員企業労働時間調査報告書(2021年度)」によると、日建連所属のゼネコンに勤務する非管理職の半数以上が年360時間以上の時間外労働をしています。
しかし、2024年4月から建設業界では36協定の特別条項における残業の上限規制が適用されます。これまでは何時間残業しても法令上問題ありませんでしたが、今後は罰則が科される可能性が高いです。
適切な勤務時間管理、人員の確保といった企業努力や世間の風潮によって改善が進むことが期待されます。
案件規模をプレッシャーに感じることがある
ゼネコンのプロジェクトは、社内外の業者を含めさまざまな人が従事し、工期が長く金額も大きいものです。もし都市開発や公共事業でトラブルが発生すると、企業や自治体に損害を与えるだけでなく、地域住民からの信頼も失いかねません。
そのため、自分が獲得した案件だからこそ、失敗できないという責任感がプレッシャーとなって押し潰されそうになることもあるでしょう。
ノルマが課される
ゼネコンに限らず営業職全般では、1人ひとりに契約件数のノルマが課されます。さらに、ノルマを達成するためただ案件を取れば良いのではなく、会社の利益となるか、自社で可能なプロジェクトかを適切に見極めなければなりません。
大手ゼネコンの場合は1件で動く金額が大きいため、他の建築会社と比べてノルマは厳しくない場合があります。しかし、ノルマの未達や赤字案件は人事評価で不利に働くこともあるため注意が必要です。
女性が少ない傾向にある
建築業界は男社会とよく言われます。2020年1月に策定された国土交通省の「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」によると、建設業界の入職者に占める女性の割合は2014~2017年にかけて20%前後の横ばいです。
ただし、近年は建築物のデザインや安全性、顧客への細やかな配慮において女性ならではの視点も求められています。女性社員獲得のために、以下のような取り組みを行う企業も増えました。
- 時短勤務・テレワーク・フレックスタイム制といった勤務体制の導入
- 建築現場の男女別更衣室の設置
- 技術職の女性採用枠の拡大
今後は建築業界において、女性社員の定着が期待されます。
ゼネコン営業に向いている人
ここでは、どのような人がゼネコン営業に向いているかを解説します。特徴は主に5つです。
- 粘り強く信頼関係を築ける人
- マネジメント能力が高い人
- 臨機応変な対応ができる人
- コミュニケーション能力がある人
- 体力がある人
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
粘り強く信頼関係を築ける人
ゼネコンの営業は、短期間で成果が出る仕事ではありません。「こういう建物を建てたい」という契約につながるニーズを引き出すには、顧客との信頼関係を築く必要があります。
なぜなら、顧客の経営戦略に関わることは関係の浅い第三者に簡単に教えてくれることではないからです。
信頼関係が築けても、契約に至るには顧客に費用も工期もかかる大きな決断を促すことになります。顧客の不安や悩みに寄り添い、粘り強く信頼関係を築ける人が向いています。
マネジメント能力が高い人
営業は案件を獲得して仕事が終わるのではなく、建築物の完成まで顧客との連絡の窓口となって進捗を報告したり打ち合わせをしたりするなど、フォローを続けます。その過程では設計士、施工管理、下請け業者など多くの人と連携するでしょう。
また、長期間に渡るプロジェクトのため自身の体調管理に注意すべきなのはもちろん、建設現場は時に命に関わる危険が潜んでいます。円滑な業務遂行のため、危機管理も含めた全体の動きに気を配れるマネジメント能力が高い人が向いています。
臨機応変な対応ができる人
工期が長いほどプロジェクトにアクシデントはつきものであり、ときには計画通りに進まないこともあるでしょう。しかし、焦りやイライラは一緒に働く人や現場の空気を悪くしてしまいます。あまり神経を尖らせず、状況に応じて冷静かつ柔軟に対応しなければなりません。
また、顧客の中には建築に関する知識が乏しく、建築物に自社の要望を全て反映させようと無理難題を要求する人がいる場合もあります。
出来ないことははっきりと伝える、代替案を提案するなど、毅然とした対応をしつつも関係性を悪化させないための瞬時の工夫が求められます。
コミュニケーション能力がある人
営業は、プロジェクトの各工程に携わる社内外のあらゆる人と意思疎通しながら仕事を進めなければなりません。情報共有する際にはわかりやすく説明できる力が必要です。
営業活動や打ち合わせなどで社外の人を相手にすると、交渉力も求められます。そのため、誰とでも円滑にコミュニケーションが取れる人が向いていると言えます。
体力がある人
営業は外回りをしたり、現場を見に行ったりすることが多いです。大手ゼネコンであれば、全国さまざまな場所でプロジェクトを進行しているため出張もあります。さらに、休日は取引先との付き合いで飲み会やゴルフに出向くこともあります。
建築業界はいまだ昔ながらの男社会の一面が強く、体力で乗り切らなければならないシチュエーションが多々あります。働き方改革などの影響で今後の改善に期待が寄せられますが、社内外を駆け回る体力仕事には変わりありません。
ゼネコン営業への就職で有利に働く条件・スキル
最後に、ゼネコンの営業を目指す場合、採用に有利に働く条件やスキルを3つの側面から解説します。
- 学部面
- 資格面
- 経験面
それぞれ見ていきましょう。
学部面
ゼネコンの営業職は、学部を問わず応募可能です。新卒社員は一から育てることを前提としているため、建築が専門外であっても内定後や勤務開始後にわからないことを勉強しながら取り組めば問題ありません。
建築系の学部出身であれば、技術職や研究職とも円滑にコミュニケーションがとれるのがメリットと言えるでしょう。
資格面
応募に必要な資格は特にありません。しかし、入社前に取得しておくと就職活動で自分のスキルや意気込みを証明できます。学部卒で取得できるおすすめの資格と用途は、主に以下があります。
- 普通自動車免許…外回りや現場の視察
- 二級建築士試験…図面を読むことができる
- 宅地建物取引士…不動産ディベロッパーなどとのやり取り
特に建築士や宅建の資格があると、顧客からも専門的な知識があると認識され信用につながるかもしれません。入社前に取得できそうなものに挑戦してみるのがおすすめです。
経験面
営業職は社内外のさまざまな人と関わる仕事です。そのため、リーダーを務めた経験、サークルや部活動を運営した経験など、多くの人をまとめて何かを成し遂げた経験があれば活かすことができます。
しかし就職活動で重要なのは、ただ経験を語るのではなく、経験し学んだことを仕事でどのように活かすかをアピールすることです。
ゼネコン営業は責任と喜びが一体!街をつくる欠かせない仕事
ゼネコンの営業は、高収入で需要がなくなる心配もほぼない、安定した仕事と言えます。一方で、長時間労働や女性が働きづらい環境など、改善されるべき企業風土が残っているのも事実です。
しかし、働き方改革などの影響もあり、近年は時短勤務や育児休業など働きやすさを重視した制度を導入する企業も増えています。今後の法改正が追い風となれば、国や企業の取り組み次第でさらに働きやすい環境に変わっていくかもしれません。
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